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3話

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ベアトリスはすぐにクラリスの元へ向かった。
しかしクラリスはまだ帰宅しておらず、しばらく待つこととなった。

その頃のクラリスは公園を散策しながら考えをまとめようとしていた。
ケネスとのやり取りを思い返せば上手く丸め込まれたようにも思え、やはり納得できないという結論に至った。

帰宅したクラリスが見たのは訪問の予定もないベアトリスだった。
クラリスは慌ててベアトリスに駆け寄る。

「どうしたの? 約束していたかしら?」
「違うの、私、聞いたの。ケネスと一緒にいた女性、お金で雇われた人だったのよ」
「えっ、それって……」
「悪いとは思ったけど後をつけさせてもらったの。カフェのマスターを買収してウェイトレスに変装してこっそり話を聞かせてもらったわ」

ベアトリスの行動力にクラリスも驚いたが、それよりも重要なことはケネスがなぜそういったことをしたのかだ。
雇われたという言葉からもただ事ではない。

「……どういった話だったの?」
「ルイーザとの浮気をわざと疑わせて、別人だったと誤解させる話だったわ」

クラリスは腑に落ちた。
そしてまんまとケネスの策に嵌ってしまった自分が情けなく思えた。

「……私、騙されたのね」
「そう、ね……」

クラリスは悲しみが込み上げてきて涙が出てきた。

「もうケネスのことは信用できないわ……」
「クラリス、あなたは悪くないわ。悪いのはケネスよ」

クラリスはベアトリスの優しい言葉に感謝し、悲しんでいては彼女を心配させるだけだと考えた。
それならば元気を演じるしかない。

「ベアトリス、今日は嫌な気分を忘れたいの。お酒を飲んで一緒に過ごしましょう」
「わかったわ、付き合うわよ」

ベアトリスは一瞬迷ったが、クラリスの悲しみを少しでも和らげたいという思いから、その提案を受け入れることにした。

「あっ、そうだったわ。思い出したことがあったから待っていてくれる?」

唐突にクラリスが告げた。

「いいけど、時間、かかりそう?」
「すぐに済むわ」
「なら私のことは気にしなくていいから。待ってるわね」
「ごめんなさいね」

クラリスはそう言って家の中に入っていった。
その表情は悲しみを引き摺りつつも前向きさを感じさせるものだった。

少なくとも悪いことではなさそうだと判断し、ベアトリスはただ待つことに決めた。

クラリスの用はケネスの書斎で見つけた手紙を回収することだった。
わざわざルイーザとの浮気を証明する証拠を残してくれたのだから利用しない手はない。
どう役立てるかは未知数だが、手元に残しておけば役立つかもしれないと思ってのことだった。

手紙を回収したクラリスはベアトリスのところへ戻った。

「待たせたわね。お酒だけど、どこかで飲まない? 普段とは違う気分になりたいの」
「それなら大衆向けの酒場にでも行ってみる? そんなところならケネスと鉢合わせすることもないと思うし」
「そうね、行ってみたいわ」
「なら決まりね」

クラリスは大衆向けの酒場に行ったことはない。
好奇心を刺激され、心が元気を取り戻してきたことを感じ取っていた。
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