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7話
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ドワイトはキャロンを前に緊張していた。
「どうしたの? いつもとは雰囲気が違うみたいだけど?」
「実はブリジットと離婚が成立したんだ。それを伝えたかったんだ」
「そうだったの?! もう私と婚約できるのよね?!」
「ああ、もちろんだとも。だから俺と婚約してくれないか?」
「もちろんよ! 喜んで受けるわ!」
「ありがとう、キャロン。愛してるよ」
「私もよ、ドワイト」
二人の気持ちは燃え上がり、キスを何度も繰り返した。
ドワイトはこれこそが本物の愛だと思い、政略結婚なんてくだらないと考えた。
「俺の両親に報告へ行こう。婚約とはいえ喜んでくれるさ」
「そうね、早いうちに挨拶をしないと」
こうして両親に挨拶することも決まった。
そしてドワイトの両親に挨拶をしに行ったのだが、思いがけないことを知ることとなった。
「父上、紹介したい女性がいるのですが……」
「今はそれどころではない! ドワイト! お前は何も知らないのか?!」
父親はキャロンの存在を無視した。
今はそれどころではないのだ。
だが言われようがドワイトには心当たりがなかった。
「何があったのです?」
「ファインズ商会がトマス商会への優遇をやめたんだ。しかも別件でトマス商会が多額の負債を抱えそうだ。このままでは倒産する!」
「そんなことが……。ですがファインズ商会がどうしてそのようなことを?」
「分からん。お前がブリジットに何かしたのではないか?」
ドワイトには心当たりがあり過ぎた。
ファインズ商会はブリジットの実家が出資している商会だ。
政略結婚はお互いの家が出資している商会を介した利益を期待してのものだった。
だが実際にはファインズ商会からトマス商会に一方的な負担を強いるものだった。
それでも政略結婚だったから仕方なく優遇措置が続けられていたのだ。
離婚した今となれば優遇されなくなって当然だった。
ドワイトは嫌な汗が流れた。
「父上、実は……ブリジットと離婚しました」
ドワイトは勇気を振り絞って告白した。
「大馬鹿者が! 全て納得できたぞ! お前が、お前が全ての元凶だったのか! このままでは当家も危ういぞ!」
「申し訳ありません! ですがこれは仕方のないことだったのです。俺はキャロンに本物の愛を見つけたのです。紹介します、キャロンです」
「は、初めまして……。キャロンと申します」
キャロンは激怒した父親に委縮していた。
「そうか、キャロン、お前がドワイトの浮気相手なのだな?」
「違います、父上。彼女は俺が見出した本物の愛の相手です」
「本物の愛だ? そんなものどうでもいい。ドワイト、お前は政略結婚が何なのか理解していなかったようだな。このままでは当家は破産するかもしれん。どう責任を取ってくれるんだ?」
「それは……」
ドワイトには名案が思い付かなかった。
父親はその姿を見て深いため息をついた。
「こうなってしまったからには仕方ないな。後はなるようになるか……」
父親はもういいとばかりにドワイトに手を振った。
もう出ていけという意図だと解釈したドワイトはこのまま帰ることにした。
キャロンとの婚約を認めてもらうどころの話ではない。
親にキャロンを紹介し婚約を認めてもらう狙いは失敗に終わった。
「わたしたち、どうなるの?」
キャロンは心配そうにドワイトに尋ねた。
「父上が落ち着かなくてはどうにもならないな」
「でも実家も大変でしょう? 商会も危ういのでしょう? 大丈夫なの?」
「大丈夫だ、俺を信じろ。俺がキャロンの愛を信じているように俺を信じてくれ」
「うん、分かったわ」
キャロンはドワイトの根拠のない説得により目が覚めた。
今までは愛によって判断力が失われていたが、冷静な判断力を取り戻した今、ドワイトが破滅目前だと理解できた。
このままではキャロン自身も彼と一緒に破滅してしまう。
そのことを予想できた彼女はドワイトの前から姿を消すことを決断した。
「いつか無事に問題が解決するといいわね」
「そうだな。それまで待っていてくれ、キャロン」
「もちろんよ」
そしてキャロンは失踪した。
そのことに気付いたドワイトは絶望した。
「どうしたの? いつもとは雰囲気が違うみたいだけど?」
「実はブリジットと離婚が成立したんだ。それを伝えたかったんだ」
「そうだったの?! もう私と婚約できるのよね?!」
「ああ、もちろんだとも。だから俺と婚約してくれないか?」
「もちろんよ! 喜んで受けるわ!」
「ありがとう、キャロン。愛してるよ」
「私もよ、ドワイト」
二人の気持ちは燃え上がり、キスを何度も繰り返した。
ドワイトはこれこそが本物の愛だと思い、政略結婚なんてくだらないと考えた。
「俺の両親に報告へ行こう。婚約とはいえ喜んでくれるさ」
「そうね、早いうちに挨拶をしないと」
こうして両親に挨拶することも決まった。
そしてドワイトの両親に挨拶をしに行ったのだが、思いがけないことを知ることとなった。
「父上、紹介したい女性がいるのですが……」
「今はそれどころではない! ドワイト! お前は何も知らないのか?!」
父親はキャロンの存在を無視した。
今はそれどころではないのだ。
だが言われようがドワイトには心当たりがなかった。
「何があったのです?」
「ファインズ商会がトマス商会への優遇をやめたんだ。しかも別件でトマス商会が多額の負債を抱えそうだ。このままでは倒産する!」
「そんなことが……。ですがファインズ商会がどうしてそのようなことを?」
「分からん。お前がブリジットに何かしたのではないか?」
ドワイトには心当たりがあり過ぎた。
ファインズ商会はブリジットの実家が出資している商会だ。
政略結婚はお互いの家が出資している商会を介した利益を期待してのものだった。
だが実際にはファインズ商会からトマス商会に一方的な負担を強いるものだった。
それでも政略結婚だったから仕方なく優遇措置が続けられていたのだ。
離婚した今となれば優遇されなくなって当然だった。
ドワイトは嫌な汗が流れた。
「父上、実は……ブリジットと離婚しました」
ドワイトは勇気を振り絞って告白した。
「大馬鹿者が! 全て納得できたぞ! お前が、お前が全ての元凶だったのか! このままでは当家も危ういぞ!」
「申し訳ありません! ですがこれは仕方のないことだったのです。俺はキャロンに本物の愛を見つけたのです。紹介します、キャロンです」
「は、初めまして……。キャロンと申します」
キャロンは激怒した父親に委縮していた。
「そうか、キャロン、お前がドワイトの浮気相手なのだな?」
「違います、父上。彼女は俺が見出した本物の愛の相手です」
「本物の愛だ? そんなものどうでもいい。ドワイト、お前は政略結婚が何なのか理解していなかったようだな。このままでは当家は破産するかもしれん。どう責任を取ってくれるんだ?」
「それは……」
ドワイトには名案が思い付かなかった。
父親はその姿を見て深いため息をついた。
「こうなってしまったからには仕方ないな。後はなるようになるか……」
父親はもういいとばかりにドワイトに手を振った。
もう出ていけという意図だと解釈したドワイトはこのまま帰ることにした。
キャロンとの婚約を認めてもらうどころの話ではない。
親にキャロンを紹介し婚約を認めてもらう狙いは失敗に終わった。
「わたしたち、どうなるの?」
キャロンは心配そうにドワイトに尋ねた。
「父上が落ち着かなくてはどうにもならないな」
「でも実家も大変でしょう? 商会も危ういのでしょう? 大丈夫なの?」
「大丈夫だ、俺を信じろ。俺がキャロンの愛を信じているように俺を信じてくれ」
「うん、分かったわ」
キャロンはドワイトの根拠のない説得により目が覚めた。
今までは愛によって判断力が失われていたが、冷静な判断力を取り戻した今、ドワイトが破滅目前だと理解できた。
このままではキャロン自身も彼と一緒に破滅してしまう。
そのことを予想できた彼女はドワイトの前から姿を消すことを決断した。
「いつか無事に問題が解決するといいわね」
「そうだな。それまで待っていてくれ、キャロン」
「もちろんよ」
そしてキャロンは失踪した。
そのことに気付いたドワイトは絶望した。
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