【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

3話

ティルソンはカトリーナの家へと足を運んだ。
彼の心は想いを告げることへの緊張と期待でいっぱいだった。

カトリーナは彼の幼馴染の女性だ。
昔から知っている間柄であり、彼女と婚約したいと思うようになったのはヘレンとの婚約後だった。
タイミングの悪さが悲劇の始まりだったのかもしれない。

だが今はヘレンとの婚約も解消された。
彼女に想いを告げる障害はなくなったのだ。

ティルソンがカトリーナの家に着き、彼は気合を入れ直した。

「よおし、やるぞ！」

そして意を決して扉を叩いたのだ。



使用人により応接室へと通されたティルソンは緊張していた。
そのまま少し待ち、カトリーナが姿を現した。

「ティルソン、急にどうしたの？」
「久しぶりだな、カトリーナ。実はどうしても伝えたいことがあったんだ」
「そんなに改まって伝えることなの？」
「ああ。実はヘレンとの婚約を解消したんだ」

カトリーナは驚いた。
ティルソンとヘレンがそのように悪い関係だったとは知らなかった。
もしかしたら別の問題があったのかとも考えた。

「どうしてそんな決断をしたの？　彼女には問題なさそうな印象しかなかったけど……」
「ヘレンは素晴らしい女性だけど、俺の心は満たされなかった。彼女を愛しているわけではなかったんだ。彼女との関係は婚約関係ではあったが心は虚しいものだった……」
「そうだったの……」
「そして気付いてしまったんだ。カトリーナ、君のことを考えると胸が高鳴る。君と一緒にいたいんだ。そうすれば心が満たされ楽しい日々を過ごせると信じている」

カトリーナは彼の言葉を受け止めながら、自分の心の中で葛藤が起きているのを感じた。
彼女はティルソンの思いに戸惑いながらも、彼の真剣な眼差しに心を揺さぶられた。
彼から想いを告げられたことで彼女の中でティルソンの存在が急速に大きくなっていった。

それは以前から彼のことを好きだったのではないかと錯覚するほどの変化だった。

婚約者のいないカトリーナはティルソンの言葉で自分も婚約者ができるのではないかと期待してしまった。
それも自分の返事次第だ。
こうなってしまったことで、以前から彼のことが好きだったと思い込んでしまった。

「ティルソン、私もあなたのことを大切に思っているけれど……」
「カトリーナ、俺は君を愛している。君がいれば俺の心は解放される。一緒にいて楽しさを感じられるんだ。それなのに安心感もある。他の女性ではこうはならないだろう。それくらいカトリーナでなければ駄目なんだ」

ティルソンの言葉はカトリーナの心に響いた。
彼の自信が愛の証明だと感じられた。
それでもすぐに結論を出せはしない。

「ティルソン、あなたの気持ちを受け止めたいと思う。でも……不安もあるの」
「どんな困難が待ち受けていても、君と一緒なら乗り越えられると思う。俺は君の隣にいたい。君と共に新しい未来を築きたいんだ」

カトリーナは彼の言葉に勇気をもらい、心を決めた。

「ティルソン、婚約しましょう」

その瞬間、ティルソンの顔に安堵と喜びが広がった。

「ありがとう、カトリーナ。君といることで俺の人生がどれだけ明るくなるか想像もつかないよ。これからは二人で幸せになろう」
「ええ」

カトリーナも微笑んだ。

本来であれば相手のことをよく調べてから返事をするものだが、昔から知っている関係がそれを無視してしまった。
二人は昔から知っている関係であるが、何もかもを知っているわけではない。
ましてや間近にあった出来事まで知っているはずがない。

カトリーナはティルソンが何をしたのか正しく知らないまま、愛に翻弄されてしまった。