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四天王寺ロダンの足音がする『四天王寺ロダンの挨拶』より
その25
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(25)
「白井邦夫殺し及び母親殺し」
ここからはあの日の事にせまります。つまり一月三日に発生した大火事とそれに隠された殺害です。ここでは二人がともに殺害されていますので、一つの事件としていいと思います。
時は佐伯良一が殺害されてから、数年過ぎた頃です。
この頃田中少年は竹田にある佐伯百合の実家に祖父母と一緒にいたのです。
その頃、母親の佐伯百合と白井邦夫は竹田を出て、大阪に出ていました。
佐伯百合の実家は地元で小さな純喫茶「エデン」というお店をしていました。そこは小さなお店で、ごく普通の喫茶店でした。夏頃でしょうか、そんな田中少年の所に小さな包みが届いたのです。それは大阪にあるNという銘菓でした。
それは母親が息子の自分の為に送ったものでした。喜んだ田中少年はそれを一口食べると、突然口から泡を吹きだし始め、その場で卒倒しました。
次に目は覚めた時は病院でした。
一体何が起きたのか分からない少年は、病院の点滴チューブを見ながら考えたのです。
あれはもしや毒だったのではないかと?
自分が父親にしたようなものではなかったかと。
では誰がそんなことを?
何の目的で?
田中少年は考えました。
それは、大阪に居る母親と白井邦夫のどちらかしかない。
しかし、そんなことをして何になると言うのだろう。自分は父親については心中思おうことがあって、もしかしたら間接的に死の時期を早めるお手伝いをしたかもしれないが、自分が死ぬことでどんな得があると言うのだろうか?
田中少年は、ふとその時、思い出したことがあるのです。
父親の佐伯良一の葬儀の際、背を向けて隠れるように誰かに電話をする母親の声を。
「ええ…そうです。保険金ですね…はい、私の口座に振り込んでください、あと、お願いしていた祖父母と息子の件も…お願いします」
「僕はその時、母親が僕も保険に入れたのではないか?おそらく『息子の件も』といったのは、おそらく祖父母の保険のついでだと分かった。まぁ当時僕は子供だから保険の意味は良く分からなかったが、その時シンプルに思ったのは『人が死んだらお金になるんだ』ということだった。それだけだった。
…となると大阪から届いた銘菓で死ぬのは僕でも祖父母でも誰でもよかったという事だ。
僕はね、それを思うと母親の言葉を思いだし、実は殺した父親が毎晩、酒を飲むたび呪詛のように吐き出していた言葉を思いだすようになったんだ」
あの守銭奴め、
俺が死ぬのを待っているんだろう。
多額の保険金を手に入れたら誰と上手くやるつもりだ?
ああ、分かっているそれをあの子にやるつもりなのだろう!!
そうか…、
僕は思った。
母親は僕を殺害しようとした、
そう、あの子のために!!
僕はその時烈火のごとく憤怒した!!
母親はそういうつもりだったのかと。
僕はこの時、自分を守るために母親を殺さなければならないと思った。
これはその時からの田中さんの心境を僕が書き写したものです。
「それから日々、僕は色んな本を図書館で読んだんだ。親父が言っていた『不倫』という言葉もその時初めて意味を知った。なんと背徳な意味なんだとね。そう大人が読むようなものから、色んな殺害の記事なんかも…、でも特に自分にとって有益だったのはいくつもの探偵小説だった。ドイル、アガサクリスティ、江戸川乱歩…それらは素晴らしい犯罪が書かれていたからね。だから僕はそれらを読みながら明確な犯罪計画を立てたんだ。それはまさにロダン君、君が言う通り「愉快」で堪らなく悦に入る境地だった、そしてやがて僕は明確な殺害方法を考えたんだ。よくも自分を殺そうとしたな、そんなにあの子が大事かと心で僕は泣きながらも、一方ではこの殺人事件の完成に心から震えていたんだ。それがこの『三四郎』だったんだ」
「白井邦夫殺し及び母親殺し」
ここからはあの日の事にせまります。つまり一月三日に発生した大火事とそれに隠された殺害です。ここでは二人がともに殺害されていますので、一つの事件としていいと思います。
時は佐伯良一が殺害されてから、数年過ぎた頃です。
この頃田中少年は竹田にある佐伯百合の実家に祖父母と一緒にいたのです。
その頃、母親の佐伯百合と白井邦夫は竹田を出て、大阪に出ていました。
佐伯百合の実家は地元で小さな純喫茶「エデン」というお店をしていました。そこは小さなお店で、ごく普通の喫茶店でした。夏頃でしょうか、そんな田中少年の所に小さな包みが届いたのです。それは大阪にあるNという銘菓でした。
それは母親が息子の自分の為に送ったものでした。喜んだ田中少年はそれを一口食べると、突然口から泡を吹きだし始め、その場で卒倒しました。
次に目は覚めた時は病院でした。
一体何が起きたのか分からない少年は、病院の点滴チューブを見ながら考えたのです。
あれはもしや毒だったのではないかと?
自分が父親にしたようなものではなかったかと。
では誰がそんなことを?
何の目的で?
田中少年は考えました。
それは、大阪に居る母親と白井邦夫のどちらかしかない。
しかし、そんなことをして何になると言うのだろう。自分は父親については心中思おうことがあって、もしかしたら間接的に死の時期を早めるお手伝いをしたかもしれないが、自分が死ぬことでどんな得があると言うのだろうか?
田中少年は、ふとその時、思い出したことがあるのです。
父親の佐伯良一の葬儀の際、背を向けて隠れるように誰かに電話をする母親の声を。
「ええ…そうです。保険金ですね…はい、私の口座に振り込んでください、あと、お願いしていた祖父母と息子の件も…お願いします」
「僕はその時、母親が僕も保険に入れたのではないか?おそらく『息子の件も』といったのは、おそらく祖父母の保険のついでだと分かった。まぁ当時僕は子供だから保険の意味は良く分からなかったが、その時シンプルに思ったのは『人が死んだらお金になるんだ』ということだった。それだけだった。
…となると大阪から届いた銘菓で死ぬのは僕でも祖父母でも誰でもよかったという事だ。
僕はね、それを思うと母親の言葉を思いだし、実は殺した父親が毎晩、酒を飲むたび呪詛のように吐き出していた言葉を思いだすようになったんだ」
あの守銭奴め、
俺が死ぬのを待っているんだろう。
多額の保険金を手に入れたら誰と上手くやるつもりだ?
ああ、分かっているそれをあの子にやるつもりなのだろう!!
そうか…、
僕は思った。
母親は僕を殺害しようとした、
そう、あの子のために!!
僕はその時烈火のごとく憤怒した!!
母親はそういうつもりだったのかと。
僕はこの時、自分を守るために母親を殺さなければならないと思った。
これはその時からの田中さんの心境を僕が書き写したものです。
「それから日々、僕は色んな本を図書館で読んだんだ。親父が言っていた『不倫』という言葉もその時初めて意味を知った。なんと背徳な意味なんだとね。そう大人が読むようなものから、色んな殺害の記事なんかも…、でも特に自分にとって有益だったのはいくつもの探偵小説だった。ドイル、アガサクリスティ、江戸川乱歩…それらは素晴らしい犯罪が書かれていたからね。だから僕はそれらを読みながら明確な犯罪計画を立てたんだ。それはまさにロダン君、君が言う通り「愉快」で堪らなく悦に入る境地だった、そしてやがて僕は明確な殺害方法を考えたんだ。よくも自分を殺そうとしたな、そんなにあの子が大事かと心で僕は泣きながらも、一方ではこの殺人事件の完成に心から震えていたんだ。それがこの『三四郎』だったんだ」
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