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羽立くんは、締め上げた襟元を掴んだまま矢吹を引きずりながら、まっすぐ社長室のドアを目指した。
もしかして、本気でこのまま警察に突き出す気!?
同じことに気づいた善家社長が先回りしてドアに張り付いた。
「退け!」
ああ、敬語も吹っ飛んでる。
ただおろおろするしかできない私とは対照的に、善家社長は毅然と立ちはだかったまま微動だにしない。
「退きません!!」
善家社長は、羽立くんに負けないくらいの気迫で吼え返したかと思うと、その場に膝をついた。
「契約の件は、羽立さんの言い値で調印します。私の個人的なことも世間にバラしてもらっても構いません。ですが、海斗だけは…海斗を警察に連れて行くのだけは勘弁してください」
そのまま床に額を擦り付けるようにして土下座した社長の姿に、全員が言葉を失った。
たった一人、矢吹を除いて。
「やめろよ!…父さん…何でそこまで…!?」
「当たり前だ。お前が過ちを犯したなら、一緒に償う。私はお前の父親なんだから」
顔を伏せたまま答えた社長の言葉には、一切の迷いを感じない。
「常盤さんには、海斗が本当に申し訳ないことをしました。許して欲しいとは言えませんが…どうか、どうか…」
善家社長の謝罪を聞いた矢吹は、何かを堪えるように息を飲んだ後、いつの間にか緩められていた羽立くんの手から逃れて、社長よりも低く頭を床につけた。
「…奏音…ごめん。本当に悪かった」
「社長も、…海斗も顔を上げてください。昴が何と言おうと、私は被害を訴える気はありませんから」
ゆっくりと顔を上げる二人はそっくりで、正真正銘親子だった。
「二度もレイプされかけた相手をそんな簡単に許すとか、本っ当にバカとしか言いようがない」
言葉は辛辣ながらも、羽立くんは呆れたようにとびきり優しく微笑んでいる。
「…まあ、そこが好きなんですけど」
不意打ちの告白は二度目。
しかも、こんな状況。
にも関わらず、嬉しすぎて天に召されそう。
そして、頭が完全にお花畑化する直前、一連の羽立くんの言動の真意に気づいた。
きっと、矢吹と善家社長の関係を少しでも修復させるために、わざと突拍子もないことを言い出したに違いない。
「…いきなりあんなヘビーな生い立ち聞かされて、こんな茶番ごときで父親のこと許せって言っても無理でしょうけど…これからどれだけでも時間かけて、ちゃんとした関係築いていけばいいんじゃないですか?そうしたらー」
ほら、やっぱり。
羽立くんもなんだかんだ言いながら優しいんだよね。
と、一人胸を熱くしていたら、
「色んな意味で、矢吹さんはお父さん似って分かると思いますよ」
ポンっと矢吹の肩を叩いた羽立くんの微笑みは、天使から悪魔に変わっていた。
複雑な顔色の矢吹に宮本くんが追い討ちをかける。
「女と派手に遊んでたのも、『自分はそっちじゃない』って必死に言い聞かせてたんだろ?昴のこと好きになった初期の頃の俺と同じだな」
羽立くんはその場に崩れ落ちた矢吹を他所に、「慰謝料代わりです」と言いながら、しっかり善家社長の言い値の25%カットの額で契約を締結し直した。
もしかして、本気でこのまま警察に突き出す気!?
同じことに気づいた善家社長が先回りしてドアに張り付いた。
「退け!」
ああ、敬語も吹っ飛んでる。
ただおろおろするしかできない私とは対照的に、善家社長は毅然と立ちはだかったまま微動だにしない。
「退きません!!」
善家社長は、羽立くんに負けないくらいの気迫で吼え返したかと思うと、その場に膝をついた。
「契約の件は、羽立さんの言い値で調印します。私の個人的なことも世間にバラしてもらっても構いません。ですが、海斗だけは…海斗を警察に連れて行くのだけは勘弁してください」
そのまま床に額を擦り付けるようにして土下座した社長の姿に、全員が言葉を失った。
たった一人、矢吹を除いて。
「やめろよ!…父さん…何でそこまで…!?」
「当たり前だ。お前が過ちを犯したなら、一緒に償う。私はお前の父親なんだから」
顔を伏せたまま答えた社長の言葉には、一切の迷いを感じない。
「常盤さんには、海斗が本当に申し訳ないことをしました。許して欲しいとは言えませんが…どうか、どうか…」
善家社長の謝罪を聞いた矢吹は、何かを堪えるように息を飲んだ後、いつの間にか緩められていた羽立くんの手から逃れて、社長よりも低く頭を床につけた。
「…奏音…ごめん。本当に悪かった」
「社長も、…海斗も顔を上げてください。昴が何と言おうと、私は被害を訴える気はありませんから」
ゆっくりと顔を上げる二人はそっくりで、正真正銘親子だった。
「二度もレイプされかけた相手をそんな簡単に許すとか、本っ当にバカとしか言いようがない」
言葉は辛辣ながらも、羽立くんは呆れたようにとびきり優しく微笑んでいる。
「…まあ、そこが好きなんですけど」
不意打ちの告白は二度目。
しかも、こんな状況。
にも関わらず、嬉しすぎて天に召されそう。
そして、頭が完全にお花畑化する直前、一連の羽立くんの言動の真意に気づいた。
きっと、矢吹と善家社長の関係を少しでも修復させるために、わざと突拍子もないことを言い出したに違いない。
「…いきなりあんなヘビーな生い立ち聞かされて、こんな茶番ごときで父親のこと許せって言っても無理でしょうけど…これからどれだけでも時間かけて、ちゃんとした関係築いていけばいいんじゃないですか?そうしたらー」
ほら、やっぱり。
羽立くんもなんだかんだ言いながら優しいんだよね。
と、一人胸を熱くしていたら、
「色んな意味で、矢吹さんはお父さん似って分かると思いますよ」
ポンっと矢吹の肩を叩いた羽立くんの微笑みは、天使から悪魔に変わっていた。
複雑な顔色の矢吹に宮本くんが追い討ちをかける。
「女と派手に遊んでたのも、『自分はそっちじゃない』って必死に言い聞かせてたんだろ?昴のこと好きになった初期の頃の俺と同じだな」
羽立くんはその場に崩れ落ちた矢吹を他所に、「慰謝料代わりです」と言いながら、しっかり善家社長の言い値の25%カットの額で契約を締結し直した。
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