運命の落とし穴

恩田璃星

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もう一つの落とし穴5

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 やっと開放され、クタクタの身体を広いバスタブに浸けると、一気に疲れが押し寄せてきた。

 無理もない。

 昨日は円香と飲みに行き、帰ってから羽立くんとのあれやこれやであまり寝てない。

 今日は今日で、久々に足立さんにみっちりしごかれたし。

 中でも一番消耗させられたのはやっぱり矢吹の件だ。

 時間が経つにつれ、バレなくて良かったという安心感より、今後バレたらという不安の方が大きくなっていく。

 ダメだ。ネガティブになってる場合じゃない。

 とにかくバレない方法を考えないと。

 足立さんの話だと、明日には正式に新プロジェクトメンバーの発表と顔合わせが控えていて、矢吹との接触はどうしても避けられなさそうだ。

 でも、それもきっとこのプロジェクトに携わっている間だけのこと。

 終わってしまえば、今までどおり一課との接点もなくなるはずだ。

 と、いうことは、プロジェクトの間だけでも、家で羽立くんと一緒にいる時間を減らせば、ボロが出る可能性も低くなるんじゃないだろうか。

 朝はお互い忙しいから大丈夫。

 問題は、夜だ。

 正確には寝る時。

 何せ羽立くんは頗る勘がいい。

 昨日みたいに触れらながら厳しく追求されたら、隠し通せる自信がない。

 …なんて、そんないやらしい場面を想像してしまったら、一気に来てのぼせたらしい。

 頭がクラクラする。 

 まずい。

 目の前真っ暗…



 意識が戻った時、私はバスローブ姿で脱衣所の床に寝かされていた。

 「羽立…くん?」

 「奏音さん!大丈夫ですか?気分は!?」

 「ちょっと頭痛い…けど、大丈夫」

 額に手を当てると、冷えたタオルが乗せられていた。

 心地よさにハーッと息を吐くと、羽立くんが同じタイミングでため息を吐いた。

 「心配かけてごめんね」

 これ以上のお小言は勘弁して欲しいな、と内心怯えていると、羽立くんはこれまたしっかり冷えたスポーツドリンクの蓋を開け、ストローを刺し、私に手渡しながら言った。

 「考えたんですけど…寝室、しばらく別々にしましょうか?」

 「えっ!?」

 正に倒れる直前まで考えていた、願ってもない申し出に、思わず目を輝かせてしまう。

 「倒れたの、俺のせいですよね?昨夜も無理させたし…」

 しゅんと下がった眉に、つい、「全然平気だよ」と言ってしまいそうになる口を、ぐっと引き結んだ。

 「でも俺、隣に奏音さんが寝てるのにちょっかい出さない自信0です。…さっき裸も見ちゃったし」

 「!!み、見たの!?」

 「ツルッツルの下半身まで余すことなく…って、純粋な人命救助の合間にですけどね」

 遂に…遂にアレを見られてしまった…!! 

 恥ずかし過ぎて、またのぼせそうになり、手に持っていたスポーツドリンクを急いで吸った。

 「これから式の準備で週末も忙しくなるだろうからその間だけです」

 「もしかして、日取り決まったの?」

 「はい。今日母から連絡がありました。十月の一週目の土曜だそうです」
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