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彼の彼3
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宮本くんを引きずるようにして、レストランを飛び出したまでは良かった。
ドアの外に出た途端、どっちに向かって歩けばいいのか分からなくなってしまった。
金曜の夜にゆっくり、こんな話ができるような個室のあるお店、都合よく空いてはいない。
そして、私が連れている宮本くんは、悪目立ちするほど見た目が華々しい。
こんなところ、知り合いに見られた日には、絶対に面倒くさいことになる。
何より、宮本くんは、羽立くんにフラれたせいか、すごくやつれていて顔色が悪い。
それが自分のせいだと思うと、あまり長い時間迷わなかった。
「行くよ、宮本くん」
「行くって、どこに?」
「私んち」
「は?あんた、初対面の男家に上げんのかよ!?」
自分でも、どうかしてるとは思う。
だけど、仕方ないじゃない。放っておけない性分なんだから。
それに、羽立くんほどの男を恋人にしている宮本くんが、私ごときを襲ったりするとは思えない。
「いいから黙って付いてきて!!」
返事も待たずに歩き出すと、後ろから宮本くんが付いてくる気配がした。
玄関の前までブツブツ文句を言ってたくせに。
宮本くんは、ご飯、冷蔵庫の残り物で作った具だくさんスープ、常備菜のもやしと塩昆布の梅干しあえ、先週作りすぎて冷凍していた茄子と鶏肉のトマト煮までをペロリと平らげた。
私は、宮本くんのあまりに気持ちの良い食べっぷりに、ちゃぶ台を挟んでた喫驚していた。
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした」
「美味かった。久々にちゃんとしたメシ食ったからかな」
「良かった。さっきまで死にそうな顔してたもんね」
生気の戻った顔を見て、謎の達成感が私を満たす。
「昴のことはともかく…」
テーブルの上のティッシュで口元を拭きながら、宮本くんは私の部屋をキョロキョロと見回した。
「部屋もちゃんと片付いてるし、料理も上手い。おまけに面倒見までいいのに、何で見合いなんてしてんだよ?彼氏いねーの?」
この男…!
さっきまで泣きそうな顔してたくせに、満腹になった途端ズケズケと。
自慢じゃないけど、告白されたことは結構ある。
ただし…女の子から。
異性からは、人生で一度だけ。
その上、絶対に振り向いてもらえない相手に片想いを続けてしまい、あと2年経てば私も立派な妖精(=30歳処女)の仲間入りだ。
でも、宮本くんにこれを言うと、羽立くんのプロポーズを断った理由を変に誤解されそうなので黙っておくことにした。
ドアの外に出た途端、どっちに向かって歩けばいいのか分からなくなってしまった。
金曜の夜にゆっくり、こんな話ができるような個室のあるお店、都合よく空いてはいない。
そして、私が連れている宮本くんは、悪目立ちするほど見た目が華々しい。
こんなところ、知り合いに見られた日には、絶対に面倒くさいことになる。
何より、宮本くんは、羽立くんにフラれたせいか、すごくやつれていて顔色が悪い。
それが自分のせいだと思うと、あまり長い時間迷わなかった。
「行くよ、宮本くん」
「行くって、どこに?」
「私んち」
「は?あんた、初対面の男家に上げんのかよ!?」
自分でも、どうかしてるとは思う。
だけど、仕方ないじゃない。放っておけない性分なんだから。
それに、羽立くんほどの男を恋人にしている宮本くんが、私ごときを襲ったりするとは思えない。
「いいから黙って付いてきて!!」
返事も待たずに歩き出すと、後ろから宮本くんが付いてくる気配がした。
玄関の前までブツブツ文句を言ってたくせに。
宮本くんは、ご飯、冷蔵庫の残り物で作った具だくさんスープ、常備菜のもやしと塩昆布の梅干しあえ、先週作りすぎて冷凍していた茄子と鶏肉のトマト煮までをペロリと平らげた。
私は、宮本くんのあまりに気持ちの良い食べっぷりに、ちゃぶ台を挟んでた喫驚していた。
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした」
「美味かった。久々にちゃんとしたメシ食ったからかな」
「良かった。さっきまで死にそうな顔してたもんね」
生気の戻った顔を見て、謎の達成感が私を満たす。
「昴のことはともかく…」
テーブルの上のティッシュで口元を拭きながら、宮本くんは私の部屋をキョロキョロと見回した。
「部屋もちゃんと片付いてるし、料理も上手い。おまけに面倒見までいいのに、何で見合いなんてしてんだよ?彼氏いねーの?」
この男…!
さっきまで泣きそうな顔してたくせに、満腹になった途端ズケズケと。
自慢じゃないけど、告白されたことは結構ある。
ただし…女の子から。
異性からは、人生で一度だけ。
その上、絶対に振り向いてもらえない相手に片想いを続けてしまい、あと2年経てば私も立派な妖精(=30歳処女)の仲間入りだ。
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