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Jinx
最終話
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今度はさすがの俺でもグッと来た。
優子がこんな風に泣くなんて、子供のとき以来だ。
どこか寂しいような、照れくさいような。
少し話をずらして、優子を泣き止ませようと試みる。
「本当はガータートスって、披露宴の最中に新郎が新婦のスカートの中に潜って、口でガーターリングを外して、ブーケトスと同じように投げるらしいけど。依子絶対嫌がるだろうし、園宮家お堅いから結婚取り止めにされても困るから止めといた」
「とか言って、本当は、披露宴中にそんなことしたら、園宮さんのことそのまま襲いそうだったからじゃないの?」
予想通りのツッコミ。
「…さすが都築。よく分かってんな」
でも優子は泣き止まない。
やっぱこんなんじゃ無理か。
仕方ない。
奥の手を使うか。
「あ、そーだ。祝儀代わりって言っちゃナンだけど、ココの宣伝するとき、俺の顔も名前も好きなように使っていいから」
あんなに泣いていた優子が、ピタリと泣き止み、怪しく目を光らせた。
「……好きなように?」
こうして、商魂たくましい姉の画策により、『絶望的なまでに美形で愛妻家の設計士が造ったClassic Palaceで挙式した二人は離婚率が低い』というジンクスが生まれましたとさ。
めでたしめでたし。
と、綺麗に終わっていれば良かったのだがー
式の数日後。
「あ、お帰りー」
家に帰ると招かれざる客が我が家のリビングに鎮座していて、あろうことか依子がソイツの上で寛いでいた。
「ちょ、依子。おま…ソレ!?」
「あ、これ?今日都築くんに改めて式のお礼とお詫びに行った時にね、このソファの話になって!座り心地最高って言ったら、お祝いにって譲ってくれたの!」
依子の口から紡がれるソイツへの賛辞と、俺にもたまにしか見せないような笑顔に腸がぐつぐつと煮えくり返り始める。
そう。
招かれざる客はーーー
ーーー俺のソファだった。
『今すぐ熨斗付けて返してこい!!』と怒鳴りつけるより早く、煌めく瞳と赤らめた頬で依子が俺の口を動かせなくする。
「すごく高級なものだから、買い取るよって言ったら、『代金はもう冬馬にもらってるようなもんだから』って言われて…話がよく見えなかったんだけど…もしかしてあの時はおかしな対抗意識燃やしてたけど、私が気に入ってたから、それを見越して支払ってくれてたの?」
くっっそ!!
都築のヤツ余計なことしやがっって!!!
そんな嬉しそうな顔されたら本当のことなんて…ガチでソファに嫉妬してるなんて言えやしねー。
ムカつく。
まじでムカつく。
でもーーー
依子がこんなに喜ぶなら、許してやるか。
その後、しばらくソファへの嫉妬でストレスマックスになった俺が優子に呼び出され、飲まされ、吐かされ、この事実が判明しー
Classic Palaceのジンクスは『絶望的なまでに美形で、度を越した愛妻家の設計士が造ったClassic Palaceで挙式した二人は離婚率が低い』に上書きされた。
Jinx
ー完ー
優子がこんな風に泣くなんて、子供のとき以来だ。
どこか寂しいような、照れくさいような。
少し話をずらして、優子を泣き止ませようと試みる。
「本当はガータートスって、披露宴の最中に新郎が新婦のスカートの中に潜って、口でガーターリングを外して、ブーケトスと同じように投げるらしいけど。依子絶対嫌がるだろうし、園宮家お堅いから結婚取り止めにされても困るから止めといた」
「とか言って、本当は、披露宴中にそんなことしたら、園宮さんのことそのまま襲いそうだったからじゃないの?」
予想通りのツッコミ。
「…さすが都築。よく分かってんな」
でも優子は泣き止まない。
やっぱこんなんじゃ無理か。
仕方ない。
奥の手を使うか。
「あ、そーだ。祝儀代わりって言っちゃナンだけど、ココの宣伝するとき、俺の顔も名前も好きなように使っていいから」
あんなに泣いていた優子が、ピタリと泣き止み、怪しく目を光らせた。
「……好きなように?」
こうして、商魂たくましい姉の画策により、『絶望的なまでに美形で愛妻家の設計士が造ったClassic Palaceで挙式した二人は離婚率が低い』というジンクスが生まれましたとさ。
めでたしめでたし。
と、綺麗に終わっていれば良かったのだがー
式の数日後。
「あ、お帰りー」
家に帰ると招かれざる客が我が家のリビングに鎮座していて、あろうことか依子がソイツの上で寛いでいた。
「ちょ、依子。おま…ソレ!?」
「あ、これ?今日都築くんに改めて式のお礼とお詫びに行った時にね、このソファの話になって!座り心地最高って言ったら、お祝いにって譲ってくれたの!」
依子の口から紡がれるソイツへの賛辞と、俺にもたまにしか見せないような笑顔に腸がぐつぐつと煮えくり返り始める。
そう。
招かれざる客はーーー
ーーー俺のソファだった。
『今すぐ熨斗付けて返してこい!!』と怒鳴りつけるより早く、煌めく瞳と赤らめた頬で依子が俺の口を動かせなくする。
「すごく高級なものだから、買い取るよって言ったら、『代金はもう冬馬にもらってるようなもんだから』って言われて…話がよく見えなかったんだけど…もしかしてあの時はおかしな対抗意識燃やしてたけど、私が気に入ってたから、それを見越して支払ってくれてたの?」
くっっそ!!
都築のヤツ余計なことしやがっって!!!
そんな嬉しそうな顔されたら本当のことなんて…ガチでソファに嫉妬してるなんて言えやしねー。
ムカつく。
まじでムカつく。
でもーーー
依子がこんなに喜ぶなら、許してやるか。
その後、しばらくソファへの嫉妬でストレスマックスになった俺が優子に呼び出され、飲まされ、吐かされ、この事実が判明しー
Classic Palaceのジンクスは『絶望的なまでに美形で、度を越した愛妻家の設計士が造ったClassic Palaceで挙式した二人は離婚率が低い』に上書きされた。
Jinx
ー完ー
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