forgive and forget

恩田璃星

文字の大きさ
上 下
33 / 108

別離 1

しおりを挟む
 「園宮さん!無事だった!?」

 出迎えてくれたのは都築くんで、桐嶋は裏口に私の荷物を置くと

 「俺このまますぐ現場行かなきゃなんねーから二階の空き部屋、好きに使え。あと、ここの鍵だけはちゃんと持ってろよ」

と、言い残して、去ろうとする。

「え!?現場?じゃあコート返す!」

 私にコートとニットを着せてるせいで、桐嶋はロンT1枚の薄着だった。

 慌ててコートを脱ごうとする私を見てもっと慌てたのは桐嶋で、

「バカ!」

と、血相を変えて走って来た。

「え?何で?」

 桐嶋の目が「何考えてんだてめぇ」と言っている。

 あ。
 そうでした。
 私ノーブラでした。

 だから着替えるって言ったのに…。

 結局桐嶋は裏口のハンガーポールに掛かっていたジャケットだけ羽織って行ってしまった。

 都築くんは楽しそうに笑いながら

 「荷物運ぶよ」

と言って2階に上って行った。

 どうせ長居をするつもりはないので、荷物は解かずに着替えだけして一階に降りると、都築くんがコーヒーを淹れてくれた。

 「…都築くん、今日仕事は?」

 「冬馬に留守番頼まれちゃって。サボりというか」

 「それは…本当にごめんなさい」

 「全然気にしないで。で、何があったの!?」

 迷惑掛けてる手前、ざっくりと説明する。
 都築くんが妙に聞き上手で、つい女子会みたいになってきた。

 「うっわ~。ヤバいねそいつ。手錠って」

 「そうなんだよね~。まさかそこまでされるなんて思ってなくて」

「園宮さん冬馬といい元カレといい、重い系に囲まれて大変だね」

 「…重い系?」

 「冬馬は激重で粘着質だよ。今日だって涼太から園宮さんが会社に来てないって連絡受けてすぐGPSで居場所突き止めちゃったからね~」

 「GPS!?」

 「…あ。イヤ。嘘。冗談!」

 「都築くん?」

 「ほんと、俺も詳しくは知らない!!」

 不自然なまでの慌てっぷりで、都築くんはキッチンへ逃げて行った。

 これは嘘でも冗談でもないな。

 実際桐嶋、真っ直ぐ大地先輩の家に来たっぽかったし…。

 さて。
 
 今の私の懸案事項
 1 スマホがない
 2 何がGPSの発信機?

 この2つ。

 2は桐嶋に後で聞くことにして、1はやっぱり大地先輩にもう一回会うしかないな。

 気が進まないけど父の事務所に行くことにする。

 スマホはないからお財布と、桐嶋から預かっている鍵を持って…

 …鍵?

 2つ目の懸案事項があっさり解決した。

 最初に見た時からやけに大きなキーホルダーが付いてるなと思ったら…これだったのか。

 いつでも返せるように鞄に入れていたんだった。

 正直気持ち悪いので外そうとしたけどなかなか外れない。
 仕方がないので付けたまま鞄に入れた。

 「じゃあ、行ってきまーす」

 そう告げて出て行こうとしたら、都築くんが隠れていたキッチンから飛び出してきた。

 「園宮さん?どこ行くの!?」

 「父の事務所にちょっと…」

 「え!手錠の元カレ居るんでしょ!?」

 「…いるけど…大丈夫だと思うよ?父や事務局の人たちもいるし」

 「…冬馬がGPS持たせたり俺を見張りにつけたりした理由が分かった気がするよ。車出すからちょっと待って」

 え…都築くん見張りだったのか。
 GPSと見張りって監禁と変わらいんじゃないだろうか…。

 都築くんの車は真っ白なSUVだった。
 ほんと、桐嶋とは何もかも正反対なのに何で友達やってるのか聞いてみたくなる。

 だけどあっという間に父の事務所に着いてしまった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...