forgive and forget

恩田璃星

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欺瞞 1

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 深い深い口づけのせいで、酸素が足りない。
 まるで溺れているかのような感覚に陥る。

 「んっ、ハァっ」

 桐嶋も溺れているのだろうか。

 ふと知りたくなって薄く開いた目の隙間から見た彼の顔は、興奮の色を帯びていて酷く官能的だった。

 羽織っていた着物ごと下から担ぎ上げられ、そのままベッドに縺れ込む。

 「綺麗だな」

 「え?」

 「……着物」

 私のことなわけがない。
 母が成人式に準備してくれた青い京友禅の振袖のことだった。
 自分の自惚れが恥ずかしくなる。

 「この柄は、花薬玉…薬玉は端午の節句に簾や柱に飾るらしいよ」

 「へえ…」

 振袖の絵柄をじっくり見た後、桐嶋は襦袢の紐を丁寧に解き始めた。その様にさえ見入ってしまいそうになる。

 いつの間にか肌着の紐も解かれて一気に前を開かれると、胸が露わになる。

 「やっ」

 「…何これ。超ヤル気?」

 珍しく桐嶋が驚いている。
 マジマジと見られて体が発火しそう。

 「“大地先輩”と?」

 不意に眼差しが冷たくなる。

 「違っ。着物のときは、ブラは付けないの。…私みたいに…小さ目の場合」

「あぁ…納得」

 「…っ」

 いつもより冷たい手がショーツに手を掛ける。

 「あ」

私は咄嗟にその手を制止した。

 「手、邪魔」

 「でも…」

 「このままじゃ前回と同じことになるけど?」

 返事は待たれることなくスルリと剥ぎ取られた。
 体から離れる瞬間、布と自分の体が透明な糸で繋がっていたかもしれない。
 まだキスしかしてないのに。

 「園宮…今日も手遅れ?どうなってんだよ」

 意地悪く片方の口角を上げる。

 余りに恥ずかしい予想が当たり、居た堪れなくなる。

 「このままだと、こっちも手遅れになりそうだな」

 身体を起こされ、着物は汚さないようには椅子に掛けた。

 「来いよ」

 桐嶋はベッドの上で胡座をかいて私を呼んだ。
 誘われた先が膝の上と気づき、立ち尽くす。

 これはハードルが高すぎる。

 だけどーーー

 「園宮」

 桐嶋に名前を呼ばれるだけで、体が熱くなる。

 結局今日も私は、自分に言い訳をしながら私を辱しめた男に抱かれてしまうのだ。

 自分と桐嶋の気持ちに気付かないフリをして。


 躊躇いがちに桐嶋の太ももに跨り膝立ちになる。
 この後、どうしたら良いのか考えあぐねてしまう。
 こんなに近い所に、桐嶋がいる。

 「脱がせて」

 突然の言葉に立ち上がりそうになる。

 「欲しいだんろ?ここに」

 ちゅぷんという音と同時に長い中指が突き上げられ、第一関節で中をぐちゅぐちゅと擦り上げられた。

 「んやあぁっ」

 快感に耐え切れず、膝を折って桐嶋の首にすがりついてしまった。

 「俺のまで濡らす気か?ほら、早く」

 「あぅっ」

 ぬぽっと音がして引き抜かれた指は、私の中の分泌液でじっとりと濡れていた。

 黒いチノパンのボタンを辿々しい手つきで外し、ジッパーを下ろして脱がせる。

 「これ、も?」

 怖々とボクサーパンツ指差して、何とか許してもらえないかと桐嶋を見上げる。

 「当然」

 期待のこもった熱い目が私を見下ろす。

 赦してもらえないことを悟り、意を決してボクサーパンツのウエスト部分に手を掛けて引きずり下ろした。
 露わになった桐嶋のモノは既に十分漲っていた。

 腕を掴まれ引き倒され、頭をあげるとちょうど目の前にソレがそそり立つ。

 「…っ」

 生々しすぎて、思わず顔を背けた。

 「園宮、口でシたこと、ある?」

 質問の意味を理解し、何て答えるのが正解か分からない。
 初めてを奪ったのは桐嶋だけど、私にセックスを教えたのは大地先輩だ。
 なかなか慣れない私の体を開発すると同時に、男の悦ばせ方も手ほどきしてくれた。

 黙っていたら桐嶋が口を開いた。

 「…あるのかよ」

 苦々しい表情を見せるとすぐに

 「舐めろよ」

と、冷淡な声で言い放った。

 
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