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本当の嘘
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そんな噂、全然知らなかった。
無理もない。
当時の私には友達と呼べる人なんて一人もいなかったから。
自分の噂なんて耳に入りようもなかった。
「最初に私を助けてくれたのも、そういうことが目的だった?」
思い返せば、あのときも男子達にビッチ呼ばわりされてたっけ。
ついこの間までセフレ以下の存在だと思っていた。
だから、最初からカラダ目的で近づいたと言われても、驚くことなんてないはずなのに。
声が震える。
「違う。…助けたのはたまたまだ。噂を聞き始めたのはお前と昼飯食べるようになったくらいから」
ああ、良かったと胸を撫で下ろせば、別の意味で衝撃的なセリフが耳に飛び込んできた。
「初めて弁当食ったとき本当に美味くてさ。絶対嫁にしようって思ったんだよ」
「…え?」
一瞬、頭が真っ白になる。
「…そしたら異常に噂が気になり始めて。タイミング悪くウインナー食ってるし、フェ○させれば滅茶苦茶上手いし、ピル飲んでるって言うし…でも、その割にナカはギチギチだろ?もう俺ワケ分かんなくなって」
「ちょ、待っ…もう一回言って?」
「だから、ナカギチギチ」
「そこじゃなくて!!今…よ、『嫁』って言った?」
それまで懸命に弁解をまくし立てていた口がピタリと止まり、急に高嶺くんの歯切れが悪くなった。
「悪い…今のなし。一旦忘れろ」
あ。
やっぱり、ただの間違いだったんだ。
そりゃあそうだ。
地味で暗くてダサいうえに、淫乱と噂されれる女を「嫁」にしたいなんて誰が思うだろうか。
おまけに当時の高嶺くんは高校生だ。
結婚なんて考えるはずもない。
つい食いついてしまった恥ずかしさを誤魔化すように
「だよね!」
と、顔を上げて無理やり笑顔を作って見せる。
すると、眼鏡がなくても分かるほど、赤くなっている高嶺くんの顔が見えたと思ったら、次の瞬間にはその腕の中に抱きしめられた。
「…バカ。そんな顔するなよ。嘘は言ってないけど、そのうちちゃんと言うから。今のは聞かなかったことにしろって言ってるだけだ」
胸の奥がギューッと締め付けられ、堪えていたら、勝手に目から涙が出てきた。
「おい!泣くなって!!」
「違っ、嬉しく…て、勝手に。こんなの初めてで、どうやって止めたらいいか、分からな…っ」
「あー!もーー!!人の気も知らずに煽ってくんな、バカ!!」
嬉しくて泣いているだけなのに、一体何に煽られるというのか。
もしかして、涙?
高峰くん、ドSだから。
「ご、ごめんなさい。本当は、高嶺くんにとって私なんて『下僕』ですらなくて、ぶっちゃけただの『穴』だと思ってたから…」
頭の上で、「ヒュッ」と音を立てて喉を鳴らしてから、高嶺くんがボソリと呟いた。
「…ただの、『穴』…」
しまった。
ぶっちゃけ過ぎた。
「ご、ごめんなさい」
「いや、謝らなくていい。…下らない噂信じて、長年静花にそんなふうに思わせてたのは他でもない俺だ」
『そうだ!そうだ!!全部高嶺が悪い!!』という声が読者さまから聞こえてくる。
「でもな…同時にお前が俺と出会う前も、俺の前からいなくなった後も、他の誰にも抱かれてないってずっと知りたかったことが知れて、頭おかしくなりそうなくらい嬉しくて─」
言いながら、私の涙を高嶺くんの唇が拭っていく。
「さっきからその喜びと、吐き気がするほどの罪悪感とのクソデカ感情が俺の中でずっとせめぎ合ってるのに、初めての嬉し泣きまで俺のせいとか言われたら、うっかり抱き殺しそうになるだろ?」
無理もない。
当時の私には友達と呼べる人なんて一人もいなかったから。
自分の噂なんて耳に入りようもなかった。
「最初に私を助けてくれたのも、そういうことが目的だった?」
思い返せば、あのときも男子達にビッチ呼ばわりされてたっけ。
ついこの間までセフレ以下の存在だと思っていた。
だから、最初からカラダ目的で近づいたと言われても、驚くことなんてないはずなのに。
声が震える。
「違う。…助けたのはたまたまだ。噂を聞き始めたのはお前と昼飯食べるようになったくらいから」
ああ、良かったと胸を撫で下ろせば、別の意味で衝撃的なセリフが耳に飛び込んできた。
「初めて弁当食ったとき本当に美味くてさ。絶対嫁にしようって思ったんだよ」
「…え?」
一瞬、頭が真っ白になる。
「…そしたら異常に噂が気になり始めて。タイミング悪くウインナー食ってるし、フェ○させれば滅茶苦茶上手いし、ピル飲んでるって言うし…でも、その割にナカはギチギチだろ?もう俺ワケ分かんなくなって」
「ちょ、待っ…もう一回言って?」
「だから、ナカギチギチ」
「そこじゃなくて!!今…よ、『嫁』って言った?」
それまで懸命に弁解をまくし立てていた口がピタリと止まり、急に高嶺くんの歯切れが悪くなった。
「悪い…今のなし。一旦忘れろ」
あ。
やっぱり、ただの間違いだったんだ。
そりゃあそうだ。
地味で暗くてダサいうえに、淫乱と噂されれる女を「嫁」にしたいなんて誰が思うだろうか。
おまけに当時の高嶺くんは高校生だ。
結婚なんて考えるはずもない。
つい食いついてしまった恥ずかしさを誤魔化すように
「だよね!」
と、顔を上げて無理やり笑顔を作って見せる。
すると、眼鏡がなくても分かるほど、赤くなっている高嶺くんの顔が見えたと思ったら、次の瞬間にはその腕の中に抱きしめられた。
「…バカ。そんな顔するなよ。嘘は言ってないけど、そのうちちゃんと言うから。今のは聞かなかったことにしろって言ってるだけだ」
胸の奥がギューッと締め付けられ、堪えていたら、勝手に目から涙が出てきた。
「おい!泣くなって!!」
「違っ、嬉しく…て、勝手に。こんなの初めてで、どうやって止めたらいいか、分からな…っ」
「あー!もーー!!人の気も知らずに煽ってくんな、バカ!!」
嬉しくて泣いているだけなのに、一体何に煽られるというのか。
もしかして、涙?
高峰くん、ドSだから。
「ご、ごめんなさい。本当は、高嶺くんにとって私なんて『下僕』ですらなくて、ぶっちゃけただの『穴』だと思ってたから…」
頭の上で、「ヒュッ」と音を立てて喉を鳴らしてから、高嶺くんがボソリと呟いた。
「…ただの、『穴』…」
しまった。
ぶっちゃけ過ぎた。
「ご、ごめんなさい」
「いや、謝らなくていい。…下らない噂信じて、長年静花にそんなふうに思わせてたのは他でもない俺だ」
『そうだ!そうだ!!全部高嶺が悪い!!』という声が読者さまから聞こえてくる。
「でもな…同時にお前が俺と出会う前も、俺の前からいなくなった後も、他の誰にも抱かれてないってずっと知りたかったことが知れて、頭おかしくなりそうなくらい嬉しくて─」
言いながら、私の涙を高嶺くんの唇が拭っていく。
「さっきからその喜びと、吐き気がするほどの罪悪感とのクソデカ感情が俺の中でずっとせめぎ合ってるのに、初めての嬉し泣きまで俺のせいとか言われたら、うっかり抱き殺しそうになるだろ?」
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