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頑なな花(高嶺Side)

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あれだけ勝手に帰るなと念を押しておいたのに。
シャワーを終えてバスルームから出てくると、静花は忽然こつぜんと姿を消していた。

来望くるみ!!静花はどこだ!?」

書斎に鞄を取りに行かせた幼馴染兼秘書の森永来望の所に走ると、酷く怪訝そうな顔をされた。

「は?…何の話?誰もいなかったけど。まだ寝ぼけてるの?いいから早く服着なさいよ」

そんなはずはない。
さっきまで、確かに俺の腕の中に居たのに。

寝室に戻り、昨日手に入れたばかりの静花の番号に、祈るような気持ちで電話する。

しかし、静花の声がすることのないまま、数回鳴った呼び出し音は、ブチッと切られてしまった。
そして、即座にリダイヤルしたときには、もう無機質な音声が流れるだけの状態に。

─拒否られてる…だと!?

何でだ?

もしかして。
本当は、ソファで寝ていた静花を自分のベッドまで運んだのがバレていた?

それとも。
さっき寝ぼけたフリして色々・・ヤった挙げ句、殆ど聞いたことのない静花の喘ぎ声でイッたのに気づかれていた??

分からない。
昔から、本当に。
静花のことだけは分からない。

あいつが俺を好きだということ以外は。

「景!スマホ持ったままフルチンで突っ立ってないで、さっさと服着なさいよ!!もう本当に期日に間に合わないってばーーーーっ!!」

本当は仕事なんてしている場合じゃない、と言いたいところだが。
元々忙しかったのに、静花に会うために無理して時間を作っていた皺寄せも重なっていて。
何もできない、地獄のような日々がしばらく続いた。



今日が終われば。
今日が終われば、明日は丸一日オフ。

結局、ここまで来るのにあの日から一ヶ月近くかかってしまった。

仕事の合間を縫って、静花にも勤務先Love Birdsにも何度か電話をしたものの、

『この電話は、お繋ぎすることができません』

のアナウンスしか聞くことはできないまま。

早く手を打たないと、やっと再会できたのに、また静花が俺の前から消えてしまうかもしれない。
何せあいつの行動は全く予測不可能だから。

はやる気持ちを抑えつつ、今日最後の仕事『付き合いで入らされた社会奉仕系団体の懇親会@そこそこ高級なクラブ』に取り掛かる。

「いらっしゃいませ。高嶺先生♡」

別に好き好んでこんなところ女の子のいる店に来ているわけじゃない。

こういう団体に所属しての異業種との人脈づくりも、まだまだこの世界では若手の俺には欠かせない仕事だったりする。

そう。
大事な仕事であることは分かってる。
でも。
やっぱり明日まで待たずに静花に会いに行こうか。

なんて考えて、早めにお開きに持ち込んだからって─

何で店を出た途端、バッタリ静花と出くわすんだよ?

しかもそれは、よりによって、見送りの女の子たちに囲まれているときだった。
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