社長の×××

恩田璃星

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誰よりも大切な存在 3

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 いつもより乱暴な運転のせいであっという間に家に着いた。

 家政婦の好美さんが作ってくれていた夕飯を掻き込んで、律から逃げるようにお風呂へ直行。

 こんなとき、お風呂が二つあって良かったと心から思う。
 とにかく急いで部屋に逃げ込まなければ。


 髪も乾かさずに階段を一段抜かしで駆け上がり、二階の廊下に出たところで私の足が急ブレーキをかけた。

 部屋の前でパジャマ姿の律が待ち構えている。
 呼吸一つ乱さず、薄茶の地毛をしっかり乾かし、石鹸の香りを漂わせながら。


「遅かったな」

 余裕たっぷりの表情で言って、部屋に入る様、顎で合図。

 ああ、やっぱり無駄な抵抗だった。


 律が私に優しいのも、隠し事を許さないのも、私たちの関係が主従関係みたいなものだから。

 律は感が鋭いし、私はすぐ顔に出るタイプということもあって、律は私のことを知り尽くしている。

 唯一、私が律を好きになりかけたことがあるということを除いて。





 律のことを好きかもしれないと思ったのは、母が私に何も告げずに私たち家族が住んでいた家を出て行った中2の冬。

 離婚の覚悟はとっくにできていたものの、何の言葉もなく、突然姿を消されたのが相当ショックで、何日も眠れない日々が続いた。

 そんな私に気付いた律が、ある晩ホットミルク片手に私の部屋に現れ、寝付くまで一緒に居てくれて、その日は驚くほどぐっすり眠れた。

 ただそれだけのことだったけれど、思春期まっただ中の私にとっては律のことをそういう対象として意識するには十分な出来事だった。

 だけどー

 「あっ、イヤっ!!りっちゃん!止めて!!」

 「じゃあ隠してること全部言う?」

 「それは無理っ」

 「じゃあ止めない」

 「あああっ!ちょ、お願い!ほんと無理だって…あーっ!!」


 昔から律は私が隠し事をすると、こうして私の部屋に乗り込んできて私の身体を苛める。

 ってやらしい意味じゃなく。

 中学に入ってから二人とも運動部に入っていて、お風呂上りのストレッチやマッサージを一緒にやるのが習慣になっていた。
 当然、体に触れざるを得ない。

 それまでは何とも思ってなかったのに、私はあの夜を境にドキドキするようになってしまっていた。
 正直、もしかして律も…と期待しつつ。

 でも、律は私の身体に触れても顔色一つ変えることはなかった。
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