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…そんなこと言われたって。
晴臣ってかなりひねくれてるから真正面じゃなくて、ちょっと斜めから向き合わないと無理だと思う。
なんてことを考えながらカーテンを開けると、外は一面銀世界。
不思議なことに、そこでふと既視感を覚えた。
急いで寝室を出て部屋の間取りや設備を確認して回る。
間違いない。
ここ、遼平くんに渡されたマンションのカタログの中で、私が一番気に入っていたところだ。
雪のせいで確信が持てなかったけれど、海まで見える最上階からの眺望が特に好きで、完売の表示を見たときはかなり落ち込んだっけ。
まさか晴臣に買われていたなんて。
もう一度広いウォークインクローゼットに戻ると、女性ものの洋服がワンシーズン分揃えられていた。
それもほとんど私の好きなブランドのものばかり。
もちろん、チェストの中には下着も一式完備されていた。
…なぜブラのサイズまでピッタリなのかは甚だ疑問だけれど。
その後も探索を続ければ、食器棚のコーヒー、冷蔵庫の中のミネラルウォーター、バスルームのシャンプー類、ランドリーに置かれた洗剤に至るまで。
とにかくすべて、私の好みに合わせたもので揃えられていた。
晴臣―
私に復讐するとか言いながら、一体どんな気持ちでこの部屋で準備していたの?
この部屋を出で行くのは、それを本人に直接聞いてからでも遅くはないのかもしれないと思った。
*
日付が変わる少し前、やっと玄関のドアが開く音がした。
「おかえり」
リビングで声を掛けると、晴臣は驚いた顔でその場に立ち尽くし、やっと出てきた言葉は「…帰らなかったのか」だった。
「うん…ちょっと、晴臣に聞きたいことがあって」
あれ?
でもちょっと待って。
ここに来て何て聞いたらいいのか分からない。
”復讐とか言いながら私が居心地良い空間作ってくれてるじゃん?”
なんて自惚れたこと、いくら何でも言えやしない。
しどろもどろしていると、晴臣が勝手に喋りだした。
「どうせ手塚のことだろう?心配しなくても千歳の大事な遼平クンならいつもどおり出社して、光越との契約更新の書類にしっかり署名押印したさ。…流石に昨日の今日で憔悴してたけどな」
朝から気がかりだった遼平くんの様子を知れて、思わず胸を撫で下ろしてしまった。
その些細な仕草が、どれほど晴臣を傷つけるかなんて、知りもせずに。
「ほら…これで満足したなら脱げよ」
「…え?」
「こっちはきっちり約束果たしたんだ。ご丁寧に逃げるチャンスまでやったのに、自分の意思でここに残ったってことは、アイツのために俺に抱かれる覚悟ができてるってことだろう?」
今朝と同じ冷たい瞳が、私を真正面から見据えていた。
晴臣ってかなりひねくれてるから真正面じゃなくて、ちょっと斜めから向き合わないと無理だと思う。
なんてことを考えながらカーテンを開けると、外は一面銀世界。
不思議なことに、そこでふと既視感を覚えた。
急いで寝室を出て部屋の間取りや設備を確認して回る。
間違いない。
ここ、遼平くんに渡されたマンションのカタログの中で、私が一番気に入っていたところだ。
雪のせいで確信が持てなかったけれど、海まで見える最上階からの眺望が特に好きで、完売の表示を見たときはかなり落ち込んだっけ。
まさか晴臣に買われていたなんて。
もう一度広いウォークインクローゼットに戻ると、女性ものの洋服がワンシーズン分揃えられていた。
それもほとんど私の好きなブランドのものばかり。
もちろん、チェストの中には下着も一式完備されていた。
…なぜブラのサイズまでピッタリなのかは甚だ疑問だけれど。
その後も探索を続ければ、食器棚のコーヒー、冷蔵庫の中のミネラルウォーター、バスルームのシャンプー類、ランドリーに置かれた洗剤に至るまで。
とにかくすべて、私の好みに合わせたもので揃えられていた。
晴臣―
私に復讐するとか言いながら、一体どんな気持ちでこの部屋で準備していたの?
この部屋を出で行くのは、それを本人に直接聞いてからでも遅くはないのかもしれないと思った。
*
日付が変わる少し前、やっと玄関のドアが開く音がした。
「おかえり」
リビングで声を掛けると、晴臣は驚いた顔でその場に立ち尽くし、やっと出てきた言葉は「…帰らなかったのか」だった。
「うん…ちょっと、晴臣に聞きたいことがあって」
あれ?
でもちょっと待って。
ここに来て何て聞いたらいいのか分からない。
”復讐とか言いながら私が居心地良い空間作ってくれてるじゃん?”
なんて自惚れたこと、いくら何でも言えやしない。
しどろもどろしていると、晴臣が勝手に喋りだした。
「どうせ手塚のことだろう?心配しなくても千歳の大事な遼平クンならいつもどおり出社して、光越との契約更新の書類にしっかり署名押印したさ。…流石に昨日の今日で憔悴してたけどな」
朝から気がかりだった遼平くんの様子を知れて、思わず胸を撫で下ろしてしまった。
その些細な仕草が、どれほど晴臣を傷つけるかなんて、知りもせずに。
「ほら…これで満足したなら脱げよ」
「…え?」
「こっちはきっちり約束果たしたんだ。ご丁寧に逃げるチャンスまでやったのに、自分の意思でここに残ったってことは、アイツのために俺に抱かれる覚悟ができてるってことだろう?」
今朝と同じ冷たい瞳が、私を真正面から見据えていた。
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