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ちょうど昼休みに入る頃、晴臣の運転する社用車でeternoに戻ってくるなり、待ち構えていた白黒コンビに拉致され、連れ込まれたのは会社近くのカフェだった。
「で、どうなったの?」
真由先輩がおしぼりで手を丁寧に拭きながら、身を乗り出すように尋ねる。
ここ数ヶ月、そのゆるふわな見かけからは想像できない厳しい指導の中、口酸っぱく言われた教えの一つが頭を過り、反射的に口から出たのがこの一言。
「えっ、あ、はい。晴臣と付き合うことになりました」
「ちょっと、何よそれ!?全然意味分かんないんだけど!!」
「だって真由先輩がいつも『報告は結論から』って…」
「だからって話が飛躍し過ぎでしょう!!」
真由先輩がプンプン怒るので、嫌がらせの経緯や今後の対策について順を追って話してみたものの、彼女の眉間の皺をより深くしただけだった。
「それで何で椎名くんと付き合うことになったのよ?今まで相手にしてなかったのに。全然分かんない」
そりゃそうだ。
遼平くんとのキスや、2日間泣き通したこと、晴臣との約束上言えないことなど、重要なポイント全てを省略して話したため、真由先輩が唸るのも無理はない。
どう説明しようかと考えあぐねていると、飛鳥先輩が助け舟を出してくれた。
「あんな嫌がらせされたら誰だって心細くなって、近くで守ってくれる存在に心傾きますよ。しかも椎名くん、超優良物件だし。ね、蓮見」
「で…ですです!!」
カクカクと高速で首を縦に振ると、真由先輩が頬杖をつき、物憂げな表情で窓の外を見た。
「そういうものかなぁ…。でも残念。蓮見ちゃんならひょっとしたらひょっとして…って思ったんだけどなぁ…」
そんな意味深な言い方をされたら聞き返さざるを得ない。
「ひょっとするって…何がですか?」
「蓮見ちゃんなら社長の、仕事以外の生きる理由になれるんじゃないかと思ってたの」
真由先輩の想定外の重い言葉に、目を見張った。
私が遼平くんの生きる理由?
今までも、これからも永美ちゃんだけを愛している遼平くんの?
「そんなことあるわけ…」
自分で自分の失恋の傷口に塩を塗り込みながら、やっと口にしかけた否定の言葉は即座に否定し返された。
「あるの!だって、永美さんが亡くなってから社長が仕事以外で心を動かされるところなんて初めて見たの。今までどんな綺麗なモデルにもあんな顔したことなかった。お酒飲みながら楽しそうに笑ったことだってあの日から…一度もなかったんだよ」
今にも壊れてしまいそうな笑顔でまくし立てる様子を見て確信する。
真由先輩も、やっぱり遼平くんのことが好きなのだと。
それも、自分の気持ちよりも、遼平くんの幸せを優先してしまう程に。
「それは全部…私が社長の姪だからだと思いますよ」
やんわりともう一度否定すると、真由先輩は飲んでいた水の入ったグラスをガンッと叩きつけるように置いた。
「そんなことない!頼れるのはもう蓮見ちゃん以外いないの。社長が誰かのものになってくれでもしないと、私も一生前に進めないのよ!!」
いつもゆるふわな真由先輩の鋭い叫びが、胸に突き刺さる。
永美ちゃんの死は、何人の人生を狂わせたのだろう。
「…ごめんね、取り乱しちゃって。今の、忘れて。でも、社長のことは忘れないで」
その後すぐに運ばれてきたランチセットの味は、全然分からなかった。
「で、どうなったの?」
真由先輩がおしぼりで手を丁寧に拭きながら、身を乗り出すように尋ねる。
ここ数ヶ月、そのゆるふわな見かけからは想像できない厳しい指導の中、口酸っぱく言われた教えの一つが頭を過り、反射的に口から出たのがこの一言。
「えっ、あ、はい。晴臣と付き合うことになりました」
「ちょっと、何よそれ!?全然意味分かんないんだけど!!」
「だって真由先輩がいつも『報告は結論から』って…」
「だからって話が飛躍し過ぎでしょう!!」
真由先輩がプンプン怒るので、嫌がらせの経緯や今後の対策について順を追って話してみたものの、彼女の眉間の皺をより深くしただけだった。
「それで何で椎名くんと付き合うことになったのよ?今まで相手にしてなかったのに。全然分かんない」
そりゃそうだ。
遼平くんとのキスや、2日間泣き通したこと、晴臣との約束上言えないことなど、重要なポイント全てを省略して話したため、真由先輩が唸るのも無理はない。
どう説明しようかと考えあぐねていると、飛鳥先輩が助け舟を出してくれた。
「あんな嫌がらせされたら誰だって心細くなって、近くで守ってくれる存在に心傾きますよ。しかも椎名くん、超優良物件だし。ね、蓮見」
「で…ですです!!」
カクカクと高速で首を縦に振ると、真由先輩が頬杖をつき、物憂げな表情で窓の外を見た。
「そういうものかなぁ…。でも残念。蓮見ちゃんならひょっとしたらひょっとして…って思ったんだけどなぁ…」
そんな意味深な言い方をされたら聞き返さざるを得ない。
「ひょっとするって…何がですか?」
「蓮見ちゃんなら社長の、仕事以外の生きる理由になれるんじゃないかと思ってたの」
真由先輩の想定外の重い言葉に、目を見張った。
私が遼平くんの生きる理由?
今までも、これからも永美ちゃんだけを愛している遼平くんの?
「そんなことあるわけ…」
自分で自分の失恋の傷口に塩を塗り込みながら、やっと口にしかけた否定の言葉は即座に否定し返された。
「あるの!だって、永美さんが亡くなってから社長が仕事以外で心を動かされるところなんて初めて見たの。今までどんな綺麗なモデルにもあんな顔したことなかった。お酒飲みながら楽しそうに笑ったことだってあの日から…一度もなかったんだよ」
今にも壊れてしまいそうな笑顔でまくし立てる様子を見て確信する。
真由先輩も、やっぱり遼平くんのことが好きなのだと。
それも、自分の気持ちよりも、遼平くんの幸せを優先してしまう程に。
「それは全部…私が社長の姪だからだと思いますよ」
やんわりともう一度否定すると、真由先輩は飲んでいた水の入ったグラスをガンッと叩きつけるように置いた。
「そんなことない!頼れるのはもう蓮見ちゃん以外いないの。社長が誰かのものになってくれでもしないと、私も一生前に進めないのよ!!」
いつもゆるふわな真由先輩の鋭い叫びが、胸に突き刺さる。
永美ちゃんの死は、何人の人生を狂わせたのだろう。
「…ごめんね、取り乱しちゃって。今の、忘れて。でも、社長のことは忘れないで」
その後すぐに運ばれてきたランチセットの味は、全然分からなかった。
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