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呆気にとられている間に、両手を頭の上にまとめ上げられた上、両脚の間には晴臣の膝まで割り入れられ、自由を奪われてしまった。
「…まるで蝶の標本みたいだな」
そんな感想を漏らす晴臣の目は仄暗い。
骨ばった長い指がブラウスの第一ボタンに掛けられた。
「いやっ!晴臣、やめて!!」
「俺だってこんなことしたくない」
「じゃあ…」
『こんなことやめて』と続いた言葉は強い逆説の接続詞にかき消された。
「けど!!俺は千歳を一人で泣かせた自分が許せない。もし……永美さんを忘れられない癖に、忘れる気なんてない癖に、千歳の肌に一つでもあの男の印が残ってたら…絶対にあの男のことも許さないから」
言い終えたと同時にプツリとボタンを外した晴臣の手は、震えていた。
もしかして、晴臣も本当は確かめるのが怖いのだろうか。
そう考えたら、ボタンを外す手を止めない晴臣が痛々しくて、酷くいたたまれない気持ちになって、気付いたら叫んでいた。
「やめてってば!キスされただけなのに、そんな物残ってるわけないでしょう!!」
「…キス…?」
呟くなり晴臣の瞳孔がカッと開いた。
「あいつ…!」
社長室に戻ろうと走り出した晴臣にしがみつき、必死に止める。
「待って!何でキレてるのよ!?キスされただけって言ってるでしょ!?痕なんて残ってないのに!!」
「離せ!そういう問題じゃな…」
振り返って私を引き剥がそうとする晴臣の手が止まった。
不思議に思って顔を上げると、さっきより一層瞳孔の開いた目が、私の胸元辺りに釘付けになっている。
釣られて私も目を遣れば、第三ボタンまで外されたシャツのせいで顕になった胸の谷間が、ピタリと晴臣に押し当てられていた。
「バッ、バカバカ!えっち!!どこ見てるのよ!?」
ベチっとビンタをかまして、慌ててボタンを留め直す。
晴臣は全く動じずに、残念そうにその様子を眺めている。
「だ、大体、晴臣だって何回も勝手にキスしたじゃない」
「……何回もって、一回じゃないのか!?」
そういう意味でいったんじゃないのに、実際一回ではなかったので、即座に否定できないでいると、晴臣の怒りが再炎上してしまった。
「あいつ、やっぱり許さない!!おじさんにもシレッと嘘吐きやがって!!」
今度は両手で晴臣の腕を掴んで引き止める。
「本当にやめて!遼平くんは嘘なんて吐いてない!!」
「そこまでして庇うほど好きなのか!?」
いつか、晴臣は、自分がeternoに入社したのは、私の恋の終わりを見届けるためだと言った。
晴臣の言ったとおり本当にそんな日が来るなんて。
それも、こんなに早く。
晴臣の問いかけに答えることで、週末に手放した初恋に、完全な別れを告げる。
「…じゃない」
「え?」
「もう、好きじゃない」
「…まるで蝶の標本みたいだな」
そんな感想を漏らす晴臣の目は仄暗い。
骨ばった長い指がブラウスの第一ボタンに掛けられた。
「いやっ!晴臣、やめて!!」
「俺だってこんなことしたくない」
「じゃあ…」
『こんなことやめて』と続いた言葉は強い逆説の接続詞にかき消された。
「けど!!俺は千歳を一人で泣かせた自分が許せない。もし……永美さんを忘れられない癖に、忘れる気なんてない癖に、千歳の肌に一つでもあの男の印が残ってたら…絶対にあの男のことも許さないから」
言い終えたと同時にプツリとボタンを外した晴臣の手は、震えていた。
もしかして、晴臣も本当は確かめるのが怖いのだろうか。
そう考えたら、ボタンを外す手を止めない晴臣が痛々しくて、酷くいたたまれない気持ちになって、気付いたら叫んでいた。
「やめてってば!キスされただけなのに、そんな物残ってるわけないでしょう!!」
「…キス…?」
呟くなり晴臣の瞳孔がカッと開いた。
「あいつ…!」
社長室に戻ろうと走り出した晴臣にしがみつき、必死に止める。
「待って!何でキレてるのよ!?キスされただけって言ってるでしょ!?痕なんて残ってないのに!!」
「離せ!そういう問題じゃな…」
振り返って私を引き剥がそうとする晴臣の手が止まった。
不思議に思って顔を上げると、さっきより一層瞳孔の開いた目が、私の胸元辺りに釘付けになっている。
釣られて私も目を遣れば、第三ボタンまで外されたシャツのせいで顕になった胸の谷間が、ピタリと晴臣に押し当てられていた。
「バッ、バカバカ!えっち!!どこ見てるのよ!?」
ベチっとビンタをかまして、慌ててボタンを留め直す。
晴臣は全く動じずに、残念そうにその様子を眺めている。
「だ、大体、晴臣だって何回も勝手にキスしたじゃない」
「……何回もって、一回じゃないのか!?」
そういう意味でいったんじゃないのに、実際一回ではなかったので、即座に否定できないでいると、晴臣の怒りが再炎上してしまった。
「あいつ、やっぱり許さない!!おじさんにもシレッと嘘吐きやがって!!」
今度は両手で晴臣の腕を掴んで引き止める。
「本当にやめて!遼平くんは嘘なんて吐いてない!!」
「そこまでして庇うほど好きなのか!?」
いつか、晴臣は、自分がeternoに入社したのは、私の恋の終わりを見届けるためだと言った。
晴臣の言ったとおり本当にそんな日が来るなんて。
それも、こんなに早く。
晴臣の問いかけに答えることで、週末に手放した初恋に、完全な別れを告げる。
「…じゃない」
「え?」
「もう、好きじゃない」
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