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夢でも見ているかのような展開に、全くついていけずにその場で突っ立っていると、遼平くんは車から降り、助手席側に回ってドアを開けてくれた。
家まで送ってもらうだけじゃなくて、お姫様扱い。
私、今日死ぬのかもしれない。
目の前に立つ遼平くんから、ほのかにフゼア系の香りが漂って来ても、まだ信じられない。
「ほら、乗って」
優しく促され、私は魔法にかかったように車に乗り込んだ。
遼平くんは運転席に戻ると、ハザードを止めてからギアを変え、片手でハンドルを回しながら車を発進させた。
その仕草一つ一つが全部かっこいい。
「それで、さっきの話に戻るけど、どう?仕事。販売促進部だったっけ?」
「えっ!?あ、はい」
いけない。
つい見つめてしまっていた。
「えっと…今はデータの分析しかしてないけど、ゆくゆくは先輩達みたいにノベルティとかイベントの企画ができたらなって思ってます」
「ハハッ。何それ?面接じゃないんだから」
「だって、遼平くん社長だし」
「確かに会社では社長だけど、ちーちゃんは大事な姪っ子なんだから、困ったらいつでも、何でも相談して」
前は姪という立場がイヤだったのに。
『大事な』とつくだけで、最高のポジションにいるような気持ちになる。
気を良くした私は、それからは白黒コンビや社食の話をして遼平くんと夜のドライブを楽しんだ。
心の隅っこで「このままずっと家に着かなければいいのに」と願いながら。
でも、そんな願いは叶うはずもなく、あっという間に家に着いてしまった。
もっと家が遠ければ良かったのにと本気で思う。
「どうもありがとうございました」
「いえいえ。新入社員の初々しい話が聞けて楽しかったよ」
「あの…父に会っていく?」
「時間も時間だしね。また今度にするよ。よろしく伝えておいて」
「…はい」
少しでも長く一緒にいたくてした提案は、あっさりと却下されてしまった。
渋々シートベルトを外し、もう一度お礼を言ってから車を降りる。
家の門のところでちらりと振り返ると、窓を開けてこちらを見ていてくれていた。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
まだ遼平くんの車は動かない。
私が家に入るのを見届けてくれるつもりかもしれない。
本当は私の方が遼平くんを見送りたい気持ちを振り切って、家に入った。
誰かと話すと余韻が吹き飛んでしまいそうで、「ただいま」も言わずに階段を駆け上がって、ベッドにダイブした。
夢じゃない。
夢じゃないよね?
最後の「おやすみ」が、まるで恋人同士のやりとりの様だった。
脳内で、今夜のドライブを最初から何度もリプレイして余韻に浸っていると、鞄の中でスマホが震えた。
もしかして、遼平くん!?
手を伸ばしながら気づく。
彼は、私の連絡先なんて知らない。
だけど、テンションMAXの私はとことんポジティブ思考で、『もしかしたら』と勢いに任せてスマホを引っ張り出した。
ディスプレイに映っているのは晴臣からのメッセージ。
『家に着いたら連絡しろよ』
―そう言えば、ほんの数十分前、私、晴臣にキスされたんだった。
一気に白けてしまった。
安否確認なら既読スルーで十分でしょ。
ポイっとスマホを投げても、晴臣の冷たい視線が脳裏にチラつく。
絶妙なタイミング。
業務連絡みたいなメッセージ。
とは言え、私の遼平くんへの思いを知るたった一人からのそれは、『浮かれ過ぎだ』と戒められているように気持ちになる。
分かってる。
分かってるよ。
それでもー
髪やジャケットに、微かに移った遼平くんの香りが、どうしようもなく私の心を掻き乱した。
家まで送ってもらうだけじゃなくて、お姫様扱い。
私、今日死ぬのかもしれない。
目の前に立つ遼平くんから、ほのかにフゼア系の香りが漂って来ても、まだ信じられない。
「ほら、乗って」
優しく促され、私は魔法にかかったように車に乗り込んだ。
遼平くんは運転席に戻ると、ハザードを止めてからギアを変え、片手でハンドルを回しながら車を発進させた。
その仕草一つ一つが全部かっこいい。
「それで、さっきの話に戻るけど、どう?仕事。販売促進部だったっけ?」
「えっ!?あ、はい」
いけない。
つい見つめてしまっていた。
「えっと…今はデータの分析しかしてないけど、ゆくゆくは先輩達みたいにノベルティとかイベントの企画ができたらなって思ってます」
「ハハッ。何それ?面接じゃないんだから」
「だって、遼平くん社長だし」
「確かに会社では社長だけど、ちーちゃんは大事な姪っ子なんだから、困ったらいつでも、何でも相談して」
前は姪という立場がイヤだったのに。
『大事な』とつくだけで、最高のポジションにいるような気持ちになる。
気を良くした私は、それからは白黒コンビや社食の話をして遼平くんと夜のドライブを楽しんだ。
心の隅っこで「このままずっと家に着かなければいいのに」と願いながら。
でも、そんな願いは叶うはずもなく、あっという間に家に着いてしまった。
もっと家が遠ければ良かったのにと本気で思う。
「どうもありがとうございました」
「いえいえ。新入社員の初々しい話が聞けて楽しかったよ」
「あの…父に会っていく?」
「時間も時間だしね。また今度にするよ。よろしく伝えておいて」
「…はい」
少しでも長く一緒にいたくてした提案は、あっさりと却下されてしまった。
渋々シートベルトを外し、もう一度お礼を言ってから車を降りる。
家の門のところでちらりと振り返ると、窓を開けてこちらを見ていてくれていた。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
まだ遼平くんの車は動かない。
私が家に入るのを見届けてくれるつもりかもしれない。
本当は私の方が遼平くんを見送りたい気持ちを振り切って、家に入った。
誰かと話すと余韻が吹き飛んでしまいそうで、「ただいま」も言わずに階段を駆け上がって、ベッドにダイブした。
夢じゃない。
夢じゃないよね?
最後の「おやすみ」が、まるで恋人同士のやりとりの様だった。
脳内で、今夜のドライブを最初から何度もリプレイして余韻に浸っていると、鞄の中でスマホが震えた。
もしかして、遼平くん!?
手を伸ばしながら気づく。
彼は、私の連絡先なんて知らない。
だけど、テンションMAXの私はとことんポジティブ思考で、『もしかしたら』と勢いに任せてスマホを引っ張り出した。
ディスプレイに映っているのは晴臣からのメッセージ。
『家に着いたら連絡しろよ』
―そう言えば、ほんの数十分前、私、晴臣にキスされたんだった。
一気に白けてしまった。
安否確認なら既読スルーで十分でしょ。
ポイっとスマホを投げても、晴臣の冷たい視線が脳裏にチラつく。
絶妙なタイミング。
業務連絡みたいなメッセージ。
とは言え、私の遼平くんへの思いを知るたった一人からのそれは、『浮かれ過ぎだ』と戒められているように気持ちになる。
分かってる。
分かってるよ。
それでもー
髪やジャケットに、微かに移った遼平くんの香りが、どうしようもなく私の心を掻き乱した。
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