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「はい、じゃあOJT始めるので、新入社員は15分後に会議室に集合してください」
一時解散の号令を聞くなり、ぞろぞろと移動を始める集団の中から一つ飛び出した頭を見つけて駆け寄る。
「晴臣!」
そんなに大きな声は出してはいない。
でも、相当耳が良いのか私が呼ぶと必ず応える晴臣は、やっぱりピタリと足を止めて振り返った。
「何だよ?」
涼しげを通り越した冷たい切れ長の目が、私を見下ろしてくる。
昔からクールだ何だって女子からはモテまくっているけど、こんな無愛想な男、幼馴染じゃなかったら絶対に親しくなっていない。
「『何だよ?』じゃないわよ!受付ではまともに話せなかったけど、何で晴臣までeternoにいるよの!?」
「何でって、そりゃ…」
途中まで理由を言いかけたところで、晴臣の目が私から逸れた。
「もしかして、あの人達の差し金?就職先まで言いなりになってどうするのよ?たった一度の自分の人生でしょう!?」
日頃口の悪い晴臣が反論してこないのが珍しくて、調子に乗って捲し立ててしまった。
いけない。
こんなことしている場合じゃない。
早く本題に入って例のことを口止めをしないと。
そう思っているうちに、今度は私が突如場違いな名前で背後から呼び止められた。
「ちーちゃん」
低く、甘い声が耳に滑り込む。
この声はー
「遼平くん!!!」
と、全てを忘れて叫びそうになるのを辛うじてこらえる。
お説教モード全開でさぞ小憎たらしくなっているであろう自分の顔を、サッと整えてゆっくりと振り返る。
「手塚社長、本日からどうぞよろしくお願いいたします」
深々としたお辞儀を終えると、遼平くんがポカンとした表情で私を見つめている。
「…遼平くん?」
不安になって、つい、いつもの調子で呼びかけた私に、遼平くんは我に返ると、少し照れくさそうに目尻を下げた。
「あ…ああ、ごめん。子どもの頃から知ってるちーちゃんが随分大人の女性に見えたから」
嬉しい。
そんな風に言ってもらえるなんて。
少しでも大人っぽく見せたくてメイクも髪型も研究してきたこれまでの努力が報われた感動に、一人耽る。
「あれ、もしかして君は…」
「椎名晴臣です」
「やっぱり!晴臣くんだよね。一度ちーちゃんと家に来てくれた」
同意を求めるように、遼平くんが私の背中をポンポンと叩いた。
一時解散の号令を聞くなり、ぞろぞろと移動を始める集団の中から一つ飛び出した頭を見つけて駆け寄る。
「晴臣!」
そんなに大きな声は出してはいない。
でも、相当耳が良いのか私が呼ぶと必ず応える晴臣は、やっぱりピタリと足を止めて振り返った。
「何だよ?」
涼しげを通り越した冷たい切れ長の目が、私を見下ろしてくる。
昔からクールだ何だって女子からはモテまくっているけど、こんな無愛想な男、幼馴染じゃなかったら絶対に親しくなっていない。
「『何だよ?』じゃないわよ!受付ではまともに話せなかったけど、何で晴臣までeternoにいるよの!?」
「何でって、そりゃ…」
途中まで理由を言いかけたところで、晴臣の目が私から逸れた。
「もしかして、あの人達の差し金?就職先まで言いなりになってどうするのよ?たった一度の自分の人生でしょう!?」
日頃口の悪い晴臣が反論してこないのが珍しくて、調子に乗って捲し立ててしまった。
いけない。
こんなことしている場合じゃない。
早く本題に入って例のことを口止めをしないと。
そう思っているうちに、今度は私が突如場違いな名前で背後から呼び止められた。
「ちーちゃん」
低く、甘い声が耳に滑り込む。
この声はー
「遼平くん!!!」
と、全てを忘れて叫びそうになるのを辛うじてこらえる。
お説教モード全開でさぞ小憎たらしくなっているであろう自分の顔を、サッと整えてゆっくりと振り返る。
「手塚社長、本日からどうぞよろしくお願いいたします」
深々としたお辞儀を終えると、遼平くんがポカンとした表情で私を見つめている。
「…遼平くん?」
不安になって、つい、いつもの調子で呼びかけた私に、遼平くんは我に返ると、少し照れくさそうに目尻を下げた。
「あ…ああ、ごめん。子どもの頃から知ってるちーちゃんが随分大人の女性に見えたから」
嬉しい。
そんな風に言ってもらえるなんて。
少しでも大人っぽく見せたくてメイクも髪型も研究してきたこれまでの努力が報われた感動に、一人耽る。
「あれ、もしかして君は…」
「椎名晴臣です」
「やっぱり!晴臣くんだよね。一度ちーちゃんと家に来てくれた」
同意を求めるように、遼平くんが私の背中をポンポンと叩いた。
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