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一体のキメラ

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私は創られた

人のようで人ではない

人と表示されたとしても

ピンクの鮮やかな髪は赤龍と白龍の血があるから

試しに血を混ぜたら成功した

けれど力は暴走した

抑えるには色々な犠牲が必要だった

何人もの血を使った

亡骸となっている赤龍と白龍とは別に乱雑に扱われる死骸

力を抑えることが出来たがいつ暴走するか分からない

健康的な肌なのは何人もの犠牲があるから

居所から捨てられた

新しい所に着いた

何をすればわからない

食事は一切取っていない

けれど初めてご飯を食べた

美味しいという感情を知った

初めて殴られた

どうやら感情を出しては行けないらしい

痛いという感情を知ったのに感情を出しては行けない

感情を知って胸が天へと導かれたような感じだった

それからしばらく新たな感情を知ることは無かった

何も変わらない生活がとうとう変わった

感情を出せと言われた

よく分からなかった

とりあえずいつも笑っていろと言われた

笑うということを知った

でもどうやって笑えばいいのかわからない

何故か殴られた

怒鳴られた

分からない

何回も殴られて教えられてやっと分かった

言われた通りいつも笑っていたら気持ち悪いと殴られた

何がいけなかったのだろう

どうやら主人の前では笑っていたらダメのようだ

分からない

私が生まれてきた意味はあるのだろうか

ただただ殴られて怒鳴られているだけ

いつものように主人の言われたとおりにする

嬉しい。悲しい。悔しい。楽しい。

色々な感情を学んだ

人を見て知った

あの時犠牲になった人はどのような感情だったのだろう

わたしはいつも無でいた

何にでもなれるように

魅力的な人に出会った

任務なんてそっちのけでひかれた

あの感情はなんだったんだろう

キュッとなるような

けれど落ち着くような

またあの時とは違うけど気持ち的には天に導かれた感じだ

神様にあったかのような感じ

でも、無でいなくてはならないのに

けれどあの日、私は解放された

もう感情を偽る必要は無い

分からない

なら聞けばいい

けれどあの時なぜ私を解放したのか聞こうとは思わなかった

殴られる心配はなかったのに

あれから色々なことがあった

笑顔が溢れる毎日だった

心配で胸が苦しかった時もあった

けれどあの人

兄さんの顔を見たら苦しいからあの時のよく分からない感情になる

安心して暖かくなる

束縛したくなる

何故こんなことを思ったのだろう

兄さんの自由を奪うことは出来ない

兄さんの目には私だけが写っていればいい

何故こんなことを思ったのだろう

そんなことは不可能だ

兄さんを見ると変な感情ばかりでてくる

心が変だ

私はどうしてしまったのか

人ではないのだから傷つけてしまう

いや、違う

私は人だ

キメラだとしても今だけは人でいたい

妹としてここにいたい

あなたの

兄さんの

隣にいさせて


ーーー


バタン

扉が閉じる

目が熱くなる

私はキメラだ…

ダリオルさんが兄さんに1枚の紙を渡すように言ったのを聞いた

よく見たらキメラのことだった

私がキメラだと知ったら

知ったら

知ってしまったら


「兄さん……」


お願いだから隣にいさせて
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