10 / 209
第二章 魔法使いの少女シャロン
010-救いのないセカイ
しおりを挟む
~ 旅の記録 ~
【聖王歴128年 青の月 20日】
まさかこんなに早くメアリーさんとの別れが訪れるとは、完全に想定外だ。
さっさと勇者パーティを抜けて田舎に帰ろうかと思ったけど、ここエメラシティには魔法学校があり、勇者はそこに在籍している凄腕の魔法使いの女の子を仲間にしたいようだ。
まあ、もう少しだけ旅に付き合ってみるとするかな。
【聖王歴128年 青の月 21日】
エメラシティ滞在二日目。
勇者カネミツに連れられてやってきたのは、この街で一番巨大な建物だった。
どうやらここが目的地の魔法学園だそうで、校長と呼ばれる一番偉い人に対してカネミツは「最も優秀な子を連れて行きたい」という話をしており、つまりそれが先述の凄腕の魔法使いの女の子という事だ。
そして校長に呼ばれて現れたのは――シャロンという名の、恐ろしく無愛想な金髪幼女だった。
……いや、会話内容から察するに最高学年という事らしいので、もしかすると見た目よりもずっと年上なのかもしれない。
カネミツは是が非でもシャロンを連れて行きたいみたいだけど、彼女の表情から察するにあまり乗り気ではないようだ。
さすがのカネミツも「また来るよ」と言って今日は諦めてしまった。
【聖王歴128年 青の月 22日】
朝から魔法学校へ向かうと、偶然にもシャロンとばったり遭遇した。
シャロンは何故か冴えない表情をしており、カネミツがその理由を尋ねても黙っているばかり。
だが、中庭の近くにさしかかった頃、偶然耳にした教師達の会話によって、俺達はシャロンが落ち込んでいた理由を知る事となった。
「あのような小娘が歴史ある魔法学園の主席である事がそもそも滑稽であった」
「どうやら勇者が連れて行きたいと申し出ているそうだ」
「退学すれば研究室の空きが一つ増えますぞ」
そんな心ない会話の全てを……シャロン自身が聞いていたのだ。
教育者である人間がそのような状況という事は、つまりは周りの生徒達も……。
彼女は吹っ切れたような顔で、カネミツから受け取ったバラを地面に投げ捨てると「こんな愚民ばかりの場所に何年も居続けたなんて、時間の無駄だったわ」と吐き捨てるように言った。
【聖王歴128年 青の月 23日】
シャロンは魔法学校を辞めて、勇者パーティの一員となった。
俺は本当に良かったのかと問いかけたが、シャロンはただ一言呟くだけだった。
「時間の無駄よ。私に話しかけないで頂戴」
【聖王歴128年 青の月 20日】
まさかこんなに早くメアリーさんとの別れが訪れるとは、完全に想定外だ。
さっさと勇者パーティを抜けて田舎に帰ろうかと思ったけど、ここエメラシティには魔法学校があり、勇者はそこに在籍している凄腕の魔法使いの女の子を仲間にしたいようだ。
まあ、もう少しだけ旅に付き合ってみるとするかな。
【聖王歴128年 青の月 21日】
エメラシティ滞在二日目。
勇者カネミツに連れられてやってきたのは、この街で一番巨大な建物だった。
どうやらここが目的地の魔法学園だそうで、校長と呼ばれる一番偉い人に対してカネミツは「最も優秀な子を連れて行きたい」という話をしており、つまりそれが先述の凄腕の魔法使いの女の子という事だ。
そして校長に呼ばれて現れたのは――シャロンという名の、恐ろしく無愛想な金髪幼女だった。
……いや、会話内容から察するに最高学年という事らしいので、もしかすると見た目よりもずっと年上なのかもしれない。
カネミツは是が非でもシャロンを連れて行きたいみたいだけど、彼女の表情から察するにあまり乗り気ではないようだ。
さすがのカネミツも「また来るよ」と言って今日は諦めてしまった。
【聖王歴128年 青の月 22日】
朝から魔法学校へ向かうと、偶然にもシャロンとばったり遭遇した。
シャロンは何故か冴えない表情をしており、カネミツがその理由を尋ねても黙っているばかり。
だが、中庭の近くにさしかかった頃、偶然耳にした教師達の会話によって、俺達はシャロンが落ち込んでいた理由を知る事となった。
「あのような小娘が歴史ある魔法学園の主席である事がそもそも滑稽であった」
「どうやら勇者が連れて行きたいと申し出ているそうだ」
「退学すれば研究室の空きが一つ増えますぞ」
そんな心ない会話の全てを……シャロン自身が聞いていたのだ。
教育者である人間がそのような状況という事は、つまりは周りの生徒達も……。
彼女は吹っ切れたような顔で、カネミツから受け取ったバラを地面に投げ捨てると「こんな愚民ばかりの場所に何年も居続けたなんて、時間の無駄だったわ」と吐き捨てるように言った。
【聖王歴128年 青の月 23日】
シャロンは魔法学校を辞めて、勇者パーティの一員となった。
俺は本当に良かったのかと問いかけたが、シャロンはただ一言呟くだけだった。
「時間の無駄よ。私に話しかけないで頂戴」
0
お気に入りに追加
522
あなたにおすすめの小説
拝啓、私を追い出した皆様 いかがお過ごしですか?私はとても幸せです。
香木あかり
恋愛
拝啓、懐かしのお父様、お母様、妹のアニー
私を追い出してから、一年が経ちましたね。いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。
治癒の能力を持つローザは、家業に全く役に立たないという理由で家族に疎まれていた。妹アニーの占いで、ローザを追い出せば家業が上手くいくという結果が出たため、家族に家から追い出されてしまう。
隣国で暮らし始めたローザは、実家の商売敵であるフランツの病気を治癒し、それがきっかけで結婚する。フランツに溺愛されながら幸せに暮らすローザは、実家にある手紙を送るのだった。
※複数サイトにて掲載中です
赤貧令嬢の借金返済契約
夏菜しの
恋愛
大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。
いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。
クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。
王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。
彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。
それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。
赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる