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第二章 魔法使いの少女シャロン

010-救いのないセカイ

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~ 旅の記録 ~

【聖王歴128年 青の月 20日】

 まさかこんなに早くメアリーさんとの別れが訪れるとは、完全に想定外だ。
 さっさと勇者パーティを抜けて田舎に帰ろうかと思ったけど、ここエメラシティには魔法学校があり、勇者はそこに在籍している凄腕の魔法使いの女の子を仲間にしたいようだ。
 まあ、もう少しだけ旅に付き合ってみるとするかな。

【聖王歴128年 青の月 21日】

 エメラシティ滞在二日目。
 勇者カネミツに連れられてやってきたのは、この街で一番巨大な建物だった。
 どうやらここが目的地の魔法学園だそうで、校長と呼ばれる一番偉い人に対してカネミツは「最も優秀な子を連れて行きたい」という話をしており、つまりそれが先述の凄腕の魔法使いの女の子という事だ。

 そして校長に呼ばれて現れたのは――シャロンという名の、恐ろしく無愛想な金髪幼女だった。
 ……いや、会話内容から察するに最高学年という事らしいので、もしかすると見た目よりもずっと年上なのかもしれない。
 カネミツは是が非でもシャロンを連れて行きたいみたいだけど、彼女の表情から察するにあまり乗り気ではないようだ。
 さすがのカネミツも「また来るよ」と言って今日は諦めてしまった。

【聖王歴128年 青の月 22日】

 朝から魔法学校へ向かうと、偶然にもシャロンとばったり遭遇した。
 シャロンは何故か冴えない表情をしており、カネミツがその理由を尋ねても黙っているばかり。
 だが、中庭の近くにさしかかった頃、偶然耳にした教師達の会話によって、俺達はシャロンが落ち込んでいた理由を知る事となった。

「あのような小娘が歴史ある魔法学園の主席である事がそもそも滑稽こっけいであった」

「どうやら勇者が連れて行きたいと申し出ているそうだ」

「退学すれば研究室の空きが一つ増えますぞ」

 そんな心ない会話の全てを……シャロン自身が聞いていたのだ。
 教育者である人間がそのような状況という事は、つまりは周りの生徒達も……。
 彼女は吹っ切れたような顔で、カネミツから受け取ったバラを地面に投げ捨てると「こんな愚民ばかりの場所に何年も居続けたなんて、時間の無駄だったわ」と吐き捨てるように言った。

【聖王歴128年 青の月 23日】

 シャロンは魔法学校を辞めて、勇者パーティの一員となった。
 俺は本当に良かったのかと問いかけたが、シャロンはただ一言呟くだけだった。

「時間の無駄よ。私に話しかけないで頂戴」
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