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第二章 新たな出会い
第十四話
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『恐ろしい…そう思う事も無理からぬ事だ。しかしな、精霊が人間を愛する事を辞める、これこそ余程の事が無い限りあり得ぬこと。安心するがよい』
「あり得ない事なのですか?」
『さよう。愛すべき者たちが居なくなれば精霊の存在する意味がなくなってしまう』
「精霊の存在意義ですか?」
『そうだ。人間は精霊に生かされている。だが精霊も人間に生かされているのだ。それゆえ人間が居なくなれば精霊は神の元へ帰る事になる。つまり神の中に戻ると言う事』
「神の中に…では精霊も神の力の一部ってことか…」
『その通り。それゆえ、安心するがよい。古の昔から人間には善人もいれば悪人もいた。精霊や我等も利用される事が多々あったが精霊は愛する事を辞めなかった。まぁ、神の怒りはあったがな』
「か、神の怒りだってっ!?」
「…神のい、怒りですか…」
『あぁ、神の怒りとは常より災害に及ぶ。大地は割れ水は怒り風が吹き荒れる。』
「た、確かに父から何度も聞かされていた話です…」
「お、俺もだ…」
「あぁ、父王から聞いている。ゆえに書物に残す事によって戒めとし決して侵してはならぬと代々伝えられてきたのだ」
『しかし、この度はいささか難しいやもしれぬな』
「…やはり」
「いやな予感があたったという訳だな…」
「早く他の竜の子を救いださねば…」
「しかし殿下、竜の子がいったいどれほど犠牲となっているか…」
『まだ一つのみ』
「一つですか?」
『さよう。しかし犠牲になったその竜の子がいかんせん…』
「何かあるのですか?」
『竜の子が一つでも犠牲になれば神の怒りは免れない。精霊の怒りもいしかり。この度犠牲になった竜の子は時の精霊王のもの、怒りは計り知れんだろう』
「精霊王によって違うのですか?」
『四大精霊王は比較的温厚な者達だが不可侵の精霊王は気難しい者達ばかりだ』
「…というと?」
『同じ精霊王といえどもその力には差がある』
「力の差ですか?」
「精霊王だから皆強いんじゃないのか?」
『力は皆強大であるが、その力が及ぶ範囲があまりにも違いすぎるのだ』
「力の及ぶ範囲か…」
『さようだ。四大精霊尾は風・火・水・地。それらは生命が生きて行く上で必要となるもの。先ほども申したが、不可侵の精霊王は生命が侵す事の出来ないものだ。深緑の精霊王は生命を司り、闇の精霊王は深き闇を、光の精霊王は輝く光を司る。闇と光は対となる。闇と光の精霊王は常に共にあり、不可侵の精霊王の中では穏やかな方だ』
「では深緑の精霊王と時の精霊王は…」
『深緑の精霊王は大地に芽吹く生命を司る。木々や草木、水に生きる者や大地を駆ける者たちの生命もな。精霊王の中でも特段に慈愛心に満ちており、ありすぎるがゆえにそれらが脅かされた時の怒りは計り知れん』
「で、では…」
『我でも恐ろしく感じる。怒った時はな』
「…考えたくないな……ちょ、ちょっとまてよ…じゃぁ時の精霊王は」
『もっと恐ろしいぞ?』
「も、もっと!?」
『ふふ、あぁ。時の精霊王はその名の通り、時を司る。その力は精霊王の中では強大であり神もしかりだが我にも及ぶほどの力だ』
「か、神と竜神にも…」
『時とは過去・現在・未来。これらを管理し司る精霊王は神界・精霊界・人間界、これらとはまた別の次元に存在している』
「別の次元…」
「時の流れを管理している精霊王か…しかし、それが神やあなたにも及ぶほどの力なのですか?」
『よく考えてみよ。過去・現在・未来、これらを管理する。つまり、あのものが怒り狂ってしまえばすべてがもとに戻ることとなる』
「もとに…っ!!つ、つまり過去が無くなり…」
「過去が無ければ未来もない…」
『さよう。時とは恐ろしいもの。神すらも時間を戻してしまえばなかったものと出来る。もちろん簡単な事ではないがな』
「神すらも…」
『この度、時の精霊王が愛し子にと竜の子を守り人として与えた。時の精霊は精霊王ただ一人しかおらぬ。しかし、精霊王はその力ゆえに課せられた禁忌があまりにも多いのだ』
「禁忌ですか?」
『あの者は時の次元からでる事を許されておらず、他への関与を禁じられている』
「つまり誰にもあってはいけないと?」
『容易くは無いが会いに行く事は可能だ。時折、他の精霊王が会いにいっておるよ』
「では何故竜の子に…」
『それほど固執するのか…それは愛し子に唯一己が与える事が出来るものだからだ』
「唯一…」
『そう、時の精霊王が愛し子に与える事が出来る、己の深い愛情を示すたった一つの者なのだ。いままで時の精霊王の竜の子が犠牲になった事は無かった。それゆえ少しばかり…いや、我でも恐ろしくてならん』
「そ、そんな!!」
「時の精霊王、タムディアス様。お会いしたことは私もありませんが不可侵の精霊王の中でも一番気難しくあのお方が精霊王の中でも一番愛し子に対しての愛が深いとジン様が言っておりました」
「ジン様?」
「ジン様は風の精霊王です」
『確かにジンの言うとおりやもしれぬな…』
「我らはどうすれば良いのですか!?」
「ば、挽回は出来ないのか!??」
「…ジン様は時の竜の子が犠牲になった時、すぐにタムディアス様にお会いしに行かれたそうですが、深い時の次元に行かれていたみたいでお会いできなかったそうです」
「あり得ない事なのですか?」
『さよう。愛すべき者たちが居なくなれば精霊の存在する意味がなくなってしまう』
「精霊の存在意義ですか?」
『そうだ。人間は精霊に生かされている。だが精霊も人間に生かされているのだ。それゆえ人間が居なくなれば精霊は神の元へ帰る事になる。つまり神の中に戻ると言う事』
「神の中に…では精霊も神の力の一部ってことか…」
『その通り。それゆえ、安心するがよい。古の昔から人間には善人もいれば悪人もいた。精霊や我等も利用される事が多々あったが精霊は愛する事を辞めなかった。まぁ、神の怒りはあったがな』
「か、神の怒りだってっ!?」
「…神のい、怒りですか…」
『あぁ、神の怒りとは常より災害に及ぶ。大地は割れ水は怒り風が吹き荒れる。』
「た、確かに父から何度も聞かされていた話です…」
「お、俺もだ…」
「あぁ、父王から聞いている。ゆえに書物に残す事によって戒めとし決して侵してはならぬと代々伝えられてきたのだ」
『しかし、この度はいささか難しいやもしれぬな』
「…やはり」
「いやな予感があたったという訳だな…」
「早く他の竜の子を救いださねば…」
「しかし殿下、竜の子がいったいどれほど犠牲となっているか…」
『まだ一つのみ』
「一つですか?」
『さよう。しかし犠牲になったその竜の子がいかんせん…』
「何かあるのですか?」
『竜の子が一つでも犠牲になれば神の怒りは免れない。精霊の怒りもいしかり。この度犠牲になった竜の子は時の精霊王のもの、怒りは計り知れんだろう』
「精霊王によって違うのですか?」
『四大精霊王は比較的温厚な者達だが不可侵の精霊王は気難しい者達ばかりだ』
「…というと?」
『同じ精霊王といえどもその力には差がある』
「力の差ですか?」
「精霊王だから皆強いんじゃないのか?」
『力は皆強大であるが、その力が及ぶ範囲があまりにも違いすぎるのだ』
「力の及ぶ範囲か…」
『さようだ。四大精霊尾は風・火・水・地。それらは生命が生きて行く上で必要となるもの。先ほども申したが、不可侵の精霊王は生命が侵す事の出来ないものだ。深緑の精霊王は生命を司り、闇の精霊王は深き闇を、光の精霊王は輝く光を司る。闇と光は対となる。闇と光の精霊王は常に共にあり、不可侵の精霊王の中では穏やかな方だ』
「では深緑の精霊王と時の精霊王は…」
『深緑の精霊王は大地に芽吹く生命を司る。木々や草木、水に生きる者や大地を駆ける者たちの生命もな。精霊王の中でも特段に慈愛心に満ちており、ありすぎるがゆえにそれらが脅かされた時の怒りは計り知れん』
「で、では…」
『我でも恐ろしく感じる。怒った時はな』
「…考えたくないな……ちょ、ちょっとまてよ…じゃぁ時の精霊王は」
『もっと恐ろしいぞ?』
「も、もっと!?」
『ふふ、あぁ。時の精霊王はその名の通り、時を司る。その力は精霊王の中では強大であり神もしかりだが我にも及ぶほどの力だ』
「か、神と竜神にも…」
『時とは過去・現在・未来。これらを管理し司る精霊王は神界・精霊界・人間界、これらとはまた別の次元に存在している』
「別の次元…」
「時の流れを管理している精霊王か…しかし、それが神やあなたにも及ぶほどの力なのですか?」
『よく考えてみよ。過去・現在・未来、これらを管理する。つまり、あのものが怒り狂ってしまえばすべてがもとに戻ることとなる』
「もとに…っ!!つ、つまり過去が無くなり…」
「過去が無ければ未来もない…」
『さよう。時とは恐ろしいもの。神すらも時間を戻してしまえばなかったものと出来る。もちろん簡単な事ではないがな』
「神すらも…」
『この度、時の精霊王が愛し子にと竜の子を守り人として与えた。時の精霊は精霊王ただ一人しかおらぬ。しかし、精霊王はその力ゆえに課せられた禁忌があまりにも多いのだ』
「禁忌ですか?」
『あの者は時の次元からでる事を許されておらず、他への関与を禁じられている』
「つまり誰にもあってはいけないと?」
『容易くは無いが会いに行く事は可能だ。時折、他の精霊王が会いにいっておるよ』
「では何故竜の子に…」
『それほど固執するのか…それは愛し子に唯一己が与える事が出来るものだからだ』
「唯一…」
『そう、時の精霊王が愛し子に与える事が出来る、己の深い愛情を示すたった一つの者なのだ。いままで時の精霊王の竜の子が犠牲になった事は無かった。それゆえ少しばかり…いや、我でも恐ろしくてならん』
「そ、そんな!!」
「時の精霊王、タムディアス様。お会いしたことは私もありませんが不可侵の精霊王の中でも一番気難しくあのお方が精霊王の中でも一番愛し子に対しての愛が深いとジン様が言っておりました」
「ジン様?」
「ジン様は風の精霊王です」
『確かにジンの言うとおりやもしれぬな…』
「我らはどうすれば良いのですか!?」
「ば、挽回は出来ないのか!??」
「…ジン様は時の竜の子が犠牲になった時、すぐにタムディアス様にお会いしに行かれたそうですが、深い時の次元に行かれていたみたいでお会いできなかったそうです」
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