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第二章 コンプレックスと無条件の愛
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ついつい眉間に皺が寄ってしまう。今日は玲の元に、早く帰るつもりでいた晃だったが、招かれざる客のせいで、帰りが遅くなってしまうのが確定してしまった
「何時の予定になっているんだ?」
「19時に、来られるとの事です」
「ッチ…大人しくしていれば良いものを」
玲との時間を奪った人物への苛立ちからか、何時にも増して凶悪な雰囲気を醸し出している。しかし、相手を邪険に出来ないのも事実
昔、親父が恩を受け、それからの付き合いなのだそうだ。だが、親父を助けてくれたのは、今回約束を取り付けて来た親子の祖父にあたる人物で、晃も親父に会わせてもらった事があるが、実に出来た人だった事を覚えている
だが、その息子夫婦とその子供は、お世辞にも出来た人物だとは言えない。こちらが仕立てに出ているのを良い事に、無遠慮に何でもかんでもを求めて来る、寄生虫の様な者達だった
晃としては、関わり合いになりたくは無いのだが、親父の手前、こればかりはどうする事も出来ないのだ
深い溜息が出てしまうのは、仕方なかった
――――
「組長、お時間です」
「…分かった」
渋々立ち上がり、例の者達が待っている場所へ移動する事に
黒塗りの高級車に乗り、移動する晃は、今玲はどうしているだろうか、と玲の事ばかりを考えていた
最近は、何故だか少し頑張りすぎている様な、そんな気がしてならなかったから、余計に心配だった
玲が番だと分かってから、何故だか分からないが、玲の心情や感情が良く分かる様になっていた。些細な心の動きも分かる様になり、不思議に思ったものだったが、昔親父から聞いた話を思い出したのだ
番同士は、お互いの事が良く分かる、と親父は言っていた。あの時は、そうなのかとただ頭で理解しただけだったが、番を得てようやく親父が言っていた意味が、理解出来た
理屈ではなく、ただ分かってしまう
玲の焦りや、不安。喜びや悲しみも分かってしまう。だから、番はお互いを深く愛し、守る様に出来ているのだと、分かった
そんな事を考えていると、指定された場所に着き、店の中に入って行く。相手は既についているみたいで、そのまま通された
扉を開けると、吐き気のするようなオメガの匂いが、部屋中に充満していた
(――――クズ共が)
無感情にそのまま部屋に入り、席に着く。ちなみに、番のいるアルファに番以外のオメガの匂いは効かない。まぁ、吐き気を催すと言ういみでなら、ある意味効いてはいるが
「晃!来てくれたのね!」
豊満な体を見せつける様に、娼婦の様な恰好をした女が、晃に近づこうとする
「――――用件は、なんでしょう」
無意識に低くなる声に、一瞬怯えた様子を見せたが、度胸だけはあるのか、女の父親が言った
「あ、晃君。あの話は考えてくれたかね?いや、なに。娘が早く話を進めろと、うるさくてね。で、どうだね?」
「もうっ!お父様ったら!」
「その話でしたら、既に返事はしたはずですが」
茶番を始めようとした親子に、そう冷たく言った晃
「返事をした?いいえ!聞いてないわ!」
「うーん…すまないが、私も聞いてないな。で、どうだね?」
こおれは安に、YES以外の返事は受け取らないと、そう言う事だ
(こいつらは、いったい何様のつもりなんだ…俺が、海藤組が自分たちの良いように動くとでも言いたいのか?)
沸々と積もっていく怒りと嫌悪感に、ついつい口が出そうになるのを耐えると、
「家、お断りしたはずでっす。それに、私には既に番がおりますので、当然ながら受ける事は出来ません」
そうはっきりと言うと、
「―――なんですって…?晃に、番?」
「いつだ!?そんな話聞いていないぞ!」
「つい最近です。そもそも、これは私個人の事。口外する必要のない事ですが。それが何か問題でも?」
冷たい声に、鋭い目で見やると、高圧的に怒鳴って来た父親は、黙り込んでしまった。しかし、
「問題ないですって…?問題大有りよ!晃、貴方の隣は、私以外にはありえないわ!どこのどいつよ!教えなさい!」
偉そうにそう言った女に、
「――――俺の番に、手を出すつもりか?」
先程の比にならない程、冷たい声で晃が言った。女を見る晃の目は、酷く冷たい。番に手を出せば、殺す。その目がそう物語っていた
「…っ!」
初めてそんな目で見られたことに、恐怖で腰を抜かしてしまった女をしり目に、もう用は済んだとばかりに、席を立つ
「では、失礼」
それだけ言って、晃は店を後にする
――――
「幹弥、玲の警護を増やせ。あの女、何をしでかすか分からない。それから、親父に番に会わせろとうるさく言われてる。今回の件もある、早めに玲を親父に会わせておいた方が良いだろう」
「そうですね。あの様子だと、執念深く調べだしそうですし。親父の件でしたら、こちらにも連絡が来ていましたので、今週中に面会できるように、予定を調整しています」
「そうか。それで頼む」
そう言うと、疲れた様に目を瞑ってしまった晃。幹弥は、邪魔をしない様に、静かにそして速やかに、自宅へと急ぐのであった
「何時の予定になっているんだ?」
「19時に、来られるとの事です」
「ッチ…大人しくしていれば良いものを」
玲との時間を奪った人物への苛立ちからか、何時にも増して凶悪な雰囲気を醸し出している。しかし、相手を邪険に出来ないのも事実
昔、親父が恩を受け、それからの付き合いなのだそうだ。だが、親父を助けてくれたのは、今回約束を取り付けて来た親子の祖父にあたる人物で、晃も親父に会わせてもらった事があるが、実に出来た人だった事を覚えている
だが、その息子夫婦とその子供は、お世辞にも出来た人物だとは言えない。こちらが仕立てに出ているのを良い事に、無遠慮に何でもかんでもを求めて来る、寄生虫の様な者達だった
晃としては、関わり合いになりたくは無いのだが、親父の手前、こればかりはどうする事も出来ないのだ
深い溜息が出てしまうのは、仕方なかった
――――
「組長、お時間です」
「…分かった」
渋々立ち上がり、例の者達が待っている場所へ移動する事に
黒塗りの高級車に乗り、移動する晃は、今玲はどうしているだろうか、と玲の事ばかりを考えていた
最近は、何故だか少し頑張りすぎている様な、そんな気がしてならなかったから、余計に心配だった
玲が番だと分かってから、何故だか分からないが、玲の心情や感情が良く分かる様になっていた。些細な心の動きも分かる様になり、不思議に思ったものだったが、昔親父から聞いた話を思い出したのだ
番同士は、お互いの事が良く分かる、と親父は言っていた。あの時は、そうなのかとただ頭で理解しただけだったが、番を得てようやく親父が言っていた意味が、理解出来た
理屈ではなく、ただ分かってしまう
玲の焦りや、不安。喜びや悲しみも分かってしまう。だから、番はお互いを深く愛し、守る様に出来ているのだと、分かった
そんな事を考えていると、指定された場所に着き、店の中に入って行く。相手は既についているみたいで、そのまま通された
扉を開けると、吐き気のするようなオメガの匂いが、部屋中に充満していた
(――――クズ共が)
無感情にそのまま部屋に入り、席に着く。ちなみに、番のいるアルファに番以外のオメガの匂いは効かない。まぁ、吐き気を催すと言ういみでなら、ある意味効いてはいるが
「晃!来てくれたのね!」
豊満な体を見せつける様に、娼婦の様な恰好をした女が、晃に近づこうとする
「――――用件は、なんでしょう」
無意識に低くなる声に、一瞬怯えた様子を見せたが、度胸だけはあるのか、女の父親が言った
「あ、晃君。あの話は考えてくれたかね?いや、なに。娘が早く話を進めろと、うるさくてね。で、どうだね?」
「もうっ!お父様ったら!」
「その話でしたら、既に返事はしたはずですが」
茶番を始めようとした親子に、そう冷たく言った晃
「返事をした?いいえ!聞いてないわ!」
「うーん…すまないが、私も聞いてないな。で、どうだね?」
こおれは安に、YES以外の返事は受け取らないと、そう言う事だ
(こいつらは、いったい何様のつもりなんだ…俺が、海藤組が自分たちの良いように動くとでも言いたいのか?)
沸々と積もっていく怒りと嫌悪感に、ついつい口が出そうになるのを耐えると、
「家、お断りしたはずでっす。それに、私には既に番がおりますので、当然ながら受ける事は出来ません」
そうはっきりと言うと、
「―――なんですって…?晃に、番?」
「いつだ!?そんな話聞いていないぞ!」
「つい最近です。そもそも、これは私個人の事。口外する必要のない事ですが。それが何か問題でも?」
冷たい声に、鋭い目で見やると、高圧的に怒鳴って来た父親は、黙り込んでしまった。しかし、
「問題ないですって…?問題大有りよ!晃、貴方の隣は、私以外にはありえないわ!どこのどいつよ!教えなさい!」
偉そうにそう言った女に、
「――――俺の番に、手を出すつもりか?」
先程の比にならない程、冷たい声で晃が言った。女を見る晃の目は、酷く冷たい。番に手を出せば、殺す。その目がそう物語っていた
「…っ!」
初めてそんな目で見られたことに、恐怖で腰を抜かしてしまった女をしり目に、もう用は済んだとばかりに、席を立つ
「では、失礼」
それだけ言って、晃は店を後にする
――――
「幹弥、玲の警護を増やせ。あの女、何をしでかすか分からない。それから、親父に番に会わせろとうるさく言われてる。今回の件もある、早めに玲を親父に会わせておいた方が良いだろう」
「そうですね。あの様子だと、執念深く調べだしそうですし。親父の件でしたら、こちらにも連絡が来ていましたので、今週中に面会できるように、予定を調整しています」
「そうか。それで頼む」
そう言うと、疲れた様に目を瞑ってしまった晃。幹弥は、邪魔をしない様に、静かにそして速やかに、自宅へと急ぐのであった
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