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第一章 運命の出会い

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――――繁華街 路地


(今日も一日が終わったなぁ…)

ぼんやりとそんな事を考えながら歩いていた玲。少し暗い気持ちで、普段は通らない路地裏を通った時、異変は訪れた

(…ん?)

微かに香る匂いに気づいた玲は、歩みを止めた。ほのかに甘い香りが、鼻腔をかすめる

風に乗って匂いが強くなってくる度に、感じる暖かさと、言いようのない安心感。匂いが強くなるにつれ、動悸が段々と大きくなる

「はぁっ…はぁっ…」

動悸に耐える様に、強く胸元を掴みその場にしゃがみ込んだ。立ち止まった場所は、メイン通りから少し外れた路地裏だった為、気に掛ける様な人はいない

動悸は良くなるどころか大きくなる一方で、玲の額には大粒の汗が滲み出ていた

(…体があ、ついっ…苦し、いっ…)

初めて感じる強烈な異変に、恐怖を感じ始めた玲。治まる気配を見せない異変に、自分はこのまま死ぬんじゃないのだろうかと思った程

早く治まれと思っていたその時、少し離れた所から声が聞こえてきた

「…じゃないか?」

「こ…じゃね?」

あまり良く聞き取れないが、声と共に二つの足音が近づいてくるのが分かった

「こっちから匂ってくるぜ」

はっきりと聞こえ始めた声に、このままじゃまずい事になると感じ、玲は何とか移動しようとするが、腰が立たず動けない。そして、とうとう声が玲を捕らえてしまう

「ははっ、オメガじゃん!」

「なになに~発情してんの?」

ニヤニヤと、いやらしい笑みを浮かべ、ジリジリと距離を詰めてくる二人の男

「くっるな!」

精一杯の虚勢を張ってみるが、男たちには微塵も効果はなく

「相手してあげるよー?」

玲の側にしゃがみ込み、ニヤニヤと笑っている男たち。一人の男が、玲をよく見ようと、前髪をつかみ無理やり上を向かせた

「しっかし、平凡だな。俺勃つか自信ねーわ」

「俺は全然おっけー、やれればなんでも」

(クソ野郎ども!何でどっかいかないんだよ!)

男たちは、玲の事など気にした風もなく、シャツに手をかけ始めた。行為が目的な男たちにとって、玲などただの道具に過ぎない。まともに抵抗出来ない玲は、悔しい気持ちで一杯だった

(俺が何したよ…番と出会いたかったから、発情期も来るの待ってたけど…こんな形は望んでなかった)

男たちが玲の体をいやらしい手つきで弄る。いちいちに反応してしまう体に、目には悔し涙が浮かぶ

(これからどうなるんだ?酷くされるのか?…それでも、俺には幸運な事なのかもな…平凡なオメガの相手をしてくれてるんだもんな…)

玲は自分に言い聞かせるよう、そう思った。諦めて、目を閉じる。どうせ、誰も助けてはくれないのだから、と

(現実は何て残酷なんだろう…そもそも、俺が夢見てた事が、間違い、か)

これから、どの位続くのか分からない快感。いつまで耐えなければいけないのか分からない恐怖を思うと、玲は初めてオメガである自分を恨んだ

その時だった。弄っていた男たちの手の感触が急に無くなり、不思議に思った玲は目を開ける

「―――誰の許可を得て、そいつに触れている…殺されたいか?」

長身の男が、玲に背中をむけ立っていた

「ってめぇ!何しやが…っ!!」

離れた場所に蹲りながら、自分を蹴り飛ばした男を見た途端、顔色を青くする男

「かっ海藤が、何でこんな所にっ!?」

後ずさりながらそう言った男。顔色は酷いものになっている

「散れ」

晃の、低く静かに放った言葉に、あからさまに怯えながら、男は気絶しているもう一人の男を抱え逃げて行く

男たちが居なくなったことで安堵し、玲はそのまま意識を手放した

「…俺の番…俺だけのオメガ…」

晃は壊れ物に触れるよう丁寧に、そして愛おしそうに抱きしめた

初めて感じる『愛おしい』と言う感情に戸惑いながらも、幸せを感じていた。確かに平凡な容姿の玲だったが、晃には『可愛い』としか感じられない

晃は玲を抱え直し、路地裏から去って行った

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