裏切りの先にあるもの

松倖 葉

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アランが見たセシルの瞳は不安に揺れ弱々しく、そこに光りは見えなかった。そうなるだろう事は分かっていた。『大丈夫だ』そう声をかけようとした時、セシルが何かに耐える様に瞳を閉じる。再度開かれた時、そこに弱さはなく瞳は強く輝いていた

「アラン、姉を…いえ叔母上をどうか、」

「分かっている。共に、だ」

セシルはアランの言葉に微笑み強く頷く



――――



従者から聞いた日から既に7日が経っていた。受刑場からの情報、カナリアの身辺調査。そして未だ謎の男がキャロルを何処へ連れ去ったのか。急いで調べにあたりようやく居場所が判明したのだ

7日も経ってしまった。キャロルがどんな目にあっているのか、無事なのかもわからないこの状況はセシルにとって、とても辛く苦しい7日間

従者から聞いてすぐにロイドへ伝達を送り、受け取ったロイドはその日の内にセシルの元へ駆けつけ、調査に協力していた。セシル同様ロイドにとっても辛く苦しい7日間に変わりなかった

そしてキャロルの無事を確認するまでは終わりではないのだ

「すぐに向かう。だが、情報提供者から聞いた話だと男は精神が病んでいる可能性が高い。追い詰められたと知れば、何をするかわからない。あくまでも隠密に進める。よいな!」

アランが整列する私兵に号令をかけ、それを合図に一行は目的地へと足を進める




――――

(あれから幾日過ぎたのかしら…ニーナは無事よね…?)

キャロルの両足には、厚みのある鉄の足輪がはめられており、その輪は鎖に繋がっていた

何度も鎖から逃れようとしたが、鎖は頑丈でびくともしなかった

「このままずっと…誰もこないのかな…これは私への罰なのだわ。償ってきたつもりだけれど、幸せ過ぎたもの…これは私が受け止めなければならない事…」

クリフに連れてこられてから、幾度も繰り返している言葉は、まるで自分に必死に言い聞かせているようだった

震える声が、沸き起こる恐怖心を必死に隠そうとする

怖くてたまらない。キャロルを見るクリフの目に生気は感じられず、目が合う度に嫌な汗が背中を伝う

毎日決まった時間に食事を持って来る以外、クリフがキャロルの前に現れる事はなかった

一体何がしたいのかは分からないが、キャロルには其が現状で唯一の救いだったのだ

しかし、わずかにあった安堵が唐突に終わりを告げる

何時ものように食事を持って来たクリフの様子が、何時も以上に不気味さに包まれていた

持って来た食事をテーブルに置き、キャロルの側まで歩いて来るクリフに、好奇心だろうか、いや紛れもない恐怖心から、『それ以上近づかないで』と思いが口をついで

「クリフ、」

キャロルの声に歩みを止めたクリフは、ゆっくりと口を開く


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