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ーーーー庭
初めて会ったベンチに腰を掛けるセシルとアラン
この場所に来てずいぶん時間がたつが二人はしゃべろうとしなかった
状況に反して穏やかな時が流れる
「……セシル、急な事で驚かせたな」
穏やかな声音でアランが話し出す
「……えっ?……確かに、驚きました。」
「セシルは…私の事を覚えていないか?」
「え?アランとは今日初めて…」
「やはり覚えていないのだな……」
何処か悲しそうな表情のアラン
「わ、わたくし……あの、ごめんなさい…」
「謝る必要はない。覚えていないのは仕方ない事だからな。」
「アランはわたくしの事ご存じだったの?」
「ふ、あぁ。ずっと昔にな」
ズイッとセシルに顔を近づけからかうように笑った
「っ!ち、近いです!」
「ハハッ」
先ほどの悲しそうな顔はもうなかった
(よかった……)
アランの悲しそうな顔を見たとき胸がチリチリとしてセシルは落ち着かなかったのだ
「アラン……その、こ、婚約の事なのですが…」
「あぁ」
「急な事でわたくし困惑してしまって……いったいどういう事か聞いてもいいですか?」
「実はお姉さんとセシルの婚約者との事はずいぶん前から知っていたんだ」
「え!?」
「チャンスだと思ったんだよ。」
「チャンス…?」
「だから陛下に頼み込んで婚約の了承をもらった」
「陛下に……でも、わたくしがクリフ様とお姉さまとの事を知ったのは今日です。何故アランが知っているのですか?」
「ずっと見ていたからね」
「ずっと……?」
「ずっとだ…ずっと前からセシルの事を愛していた」
「……っ!」
「覚えていないのは無理もない…子供の頃に一度会っただけだからな」
「子供の頃にアランとお会いしたことが…?」
「私の一目ぼれさ…5才も年が下の令嬢、しかも幼い子供に一目ぼれだ。笑えるだろ?」
「いえ、そんなことは……」
「それ以来、セシルの事が頭からはなれなくなってな…コンラッド殿との婚約が決まったと聞いた時は愕然とした。まだ学生だった私には力なんてないからな」
「……アラン」
「だから見守って行こうと決めたんだ。セシルが幸せになれるならと」
「………」
「だが違った。キャロル嬢との事を聞いた時はコンラッド家に乗込もうとしたさ。まぁ、止められたがな」
「クス クス」
「ふ、だから……その勢いのまま陛下に直談判しにいったと言うわけさ」
「まぁ、意外と大胆なのですね」
クスクスと笑うセシルを愛おしそうに見つめる
「セシル…君はまだ整理がついていないかもしれない。だが、私の思いに偽りはない」
「…えぇ、アランが嘘をつくような人ではないのは分かります」
「セシル、承認をもらった後に言うのもなんだが……私と結婚してくれるか?」
「クスクス………アラン、わたくしは自分のアランに対しての気持ちがまだわかりません」
「あぁ……」
「……それでも、いいですか?」
「っ!……かまわないさ。愛していると言わせてやるからな」
「……なっ!わかりませんよ!?」
「ハハッきっと…いや、必ず君は私を好きになる」
羞恥心から顔がどんどん赤くなってしまう
「クックックッ顔が真っ赤だぞ?」
「ほっほといて!」
「ハハハッ」
初めて会ったベンチに腰を掛けるセシルとアラン
この場所に来てずいぶん時間がたつが二人はしゃべろうとしなかった
状況に反して穏やかな時が流れる
「……セシル、急な事で驚かせたな」
穏やかな声音でアランが話し出す
「……えっ?……確かに、驚きました。」
「セシルは…私の事を覚えていないか?」
「え?アランとは今日初めて…」
「やはり覚えていないのだな……」
何処か悲しそうな表情のアラン
「わ、わたくし……あの、ごめんなさい…」
「謝る必要はない。覚えていないのは仕方ない事だからな。」
「アランはわたくしの事ご存じだったの?」
「ふ、あぁ。ずっと昔にな」
ズイッとセシルに顔を近づけからかうように笑った
「っ!ち、近いです!」
「ハハッ」
先ほどの悲しそうな顔はもうなかった
(よかった……)
アランの悲しそうな顔を見たとき胸がチリチリとしてセシルは落ち着かなかったのだ
「アラン……その、こ、婚約の事なのですが…」
「あぁ」
「急な事でわたくし困惑してしまって……いったいどういう事か聞いてもいいですか?」
「実はお姉さんとセシルの婚約者との事はずいぶん前から知っていたんだ」
「え!?」
「チャンスだと思ったんだよ。」
「チャンス…?」
「だから陛下に頼み込んで婚約の了承をもらった」
「陛下に……でも、わたくしがクリフ様とお姉さまとの事を知ったのは今日です。何故アランが知っているのですか?」
「ずっと見ていたからね」
「ずっと……?」
「ずっとだ…ずっと前からセシルの事を愛していた」
「……っ!」
「覚えていないのは無理もない…子供の頃に一度会っただけだからな」
「子供の頃にアランとお会いしたことが…?」
「私の一目ぼれさ…5才も年が下の令嬢、しかも幼い子供に一目ぼれだ。笑えるだろ?」
「いえ、そんなことは……」
「それ以来、セシルの事が頭からはなれなくなってな…コンラッド殿との婚約が決まったと聞いた時は愕然とした。まだ学生だった私には力なんてないからな」
「……アラン」
「だから見守って行こうと決めたんだ。セシルが幸せになれるならと」
「………」
「だが違った。キャロル嬢との事を聞いた時はコンラッド家に乗込もうとしたさ。まぁ、止められたがな」
「クス クス」
「ふ、だから……その勢いのまま陛下に直談判しにいったと言うわけさ」
「まぁ、意外と大胆なのですね」
クスクスと笑うセシルを愛おしそうに見つめる
「セシル…君はまだ整理がついていないかもしれない。だが、私の思いに偽りはない」
「…えぇ、アランが嘘をつくような人ではないのは分かります」
「セシル、承認をもらった後に言うのもなんだが……私と結婚してくれるか?」
「クスクス………アラン、わたくしは自分のアランに対しての気持ちがまだわかりません」
「あぁ……」
「……それでも、いいですか?」
「っ!……かまわないさ。愛していると言わせてやるからな」
「……なっ!わかりませんよ!?」
「ハハッきっと…いや、必ず君は私を好きになる」
羞恥心から顔がどんどん赤くなってしまう
「クックックッ顔が真っ赤だぞ?」
「ほっほといて!」
「ハハハッ」
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