裏切りの先にあるもの

マツユキ

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ーーーーダンスホール





「皆の者、楽しめたであろうか。……さて、この場で報告すべき事がある」

貴族たちがざわめく

「カーティス公爵の息子、アラン・カーティスについてだ」

カーティス公爵、その名は他国まで知れ渡るほどだった。王の弟であるが、その事以上に当主であるネイサン・カーティスの手腕には目を見張るものがあった。

「カーティス公爵だと!?カーティスと言ったら陛下の親族だったよな?」

「あぁ、陛下の弟であるお方でそれだけではなく幅広く事業を展開している。王家にも劣らぬ権力をもっているのだ」

中年の貴族たちがヒソヒソと話す声が聞こえだす



「アラン様って言ったら、容姿もさることながらその手腕も目を見張るものがあるともっぱらの噂ですわ」

「それに、いままで言い寄ったご令嬢に見向きもしなかったときいておりますわ」

「アラン様は来ておられるの?」

「そうお聞きしていますわ。」

令嬢たちはまだ見ぬアランに色めき立っている




「このたび、アランから婚約の申し出があったゆえ承認した」

「こ、婚約ですって!?」

「何処の令嬢だ!?」

ざわめきが大きくなる

それもそのはず、大人たちにとっては権力のある者の婚姻は一大事なのだ







ーーーーセシル





あんなお姉さま見たことが無い

とても恐ろしかった……

「セシル…」

急に立ち止まったアランに、考え事をしていたセシルはぶつかってしまう

「アラン?……っ」


初めて会ったのは暗がりの庭、先ほどもお姉さまの顔が見れなくてうつ向いてばかりいたため、アランの顔をよく見ていなかったのだ


美丈夫がセシルの前にたっていた

(こんなに美しい男性は見たことがない…わたくしなんかよりもお姉さまの方が…)

「セシル……今から起こる事は私の本意だ。疑わず私を信じてくれるか?」

「何をおっしゃっているの?」

「私を信じてくれ」

とても真剣なその表情にセシルは困惑する

「急にどうされたの?わたくしには何をおっしゃっているのか……」

「私を信じて」




(わたくしが傍にいていい方ではないのかもしれない。わたくしは美しくなんてない。けれど、アランを信じたい……傍に居たいと願っている自分がいることもたしかだもの…気負わず心から話せた人だもの)





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