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「んっ…」
差し込む朝日の眩しさに、華は目を覚ました
「ここは…何処?」
目を開けると、見たことのない景色に戸惑う
キョロキョロと恐怖に耐えながら、周囲を確認した。だがやはり、見たことも来たこともない場所だった
体が僅かに震え出す。エレベーターのボタンを押してからの記憶がないばかりか、どうやって此処まで来たのかさえ分からない
華が悶々と考えていた時、部屋の扉が開いた
「起きたか」
「え…」
声の方を見た華はカチンと固まった
「…ん?」
(男の人…!?)
華の困惑を他所に、首を傾げながら近づいてくる
「…もう、落ち着いたみたいだな」
「だ、誰…ですか?」
「あぁ、すまない。俺は佐伯頼久だ」
頼久が優しく微笑む。華はその表情を見た途端に、恐怖も忘れ見とれてしまう。半ば強制的であった感情移行であるが、華が気付く事はない
(何だか甘い香りが、する)
頼久から漂ってくる甘い香りは、華の鼻孔から体に染み渡る
(もっと、近くで…)
「華…」
エレベーターでの狂気染みたものではないが、頼久もまた華と同様の思いに刈られていた
『触れたい』
二人はその感情に逆らう事はせず、二人の右手は自然に指先を絡め合う。そして左手はお互いを確かめ合うように、頬や唇、首筋を優しく撫でる
その瞳は『愛しい』と言っていた
「華…」
「あ…」
頼久の顔が華に近づく。そして僅かにあった距離がゼロになる
「んっ…」
激しさはない口づけだった。優しく、愛していると伝えるように何度も啄む
数分だっただろうか。華は初めて感じる異性の優しい気持ち、そしてその中にある愛を感じ、瞳は涙の膜で覆われていた
初めて会ったのに、何故こんなにも安堵するのか。何故こんなにも、離れがたいのか。そして何故こんなにも愛しいと感じるのか
華は自分の感情と葛藤する。普段の自分からは、考えられない感情の渦。理解しがたい思い
拗らせてしまっている華には、素直に受け入れる事は出来なかった。だが、この感情に逆らう事も出来ないでいる
「ち、違う…」
「何がだ?華、俺の…運命の番…」
「っ!?な、何で知って…!」
「ん?」
「私が、お」
「お?…あぁ、Ωだって事か?」
華は自分がΩだと言う事を隠していた。今の時代、隠す必要はないのだが、やはりΩだと言う事実がコンプレックスで、誰にも知られたくなかったのだ
「まさか、隠していたのか?」
「あ、あ、」
華はガタガタと震え出す
「おっおい!どうした?Ωだって事は、」
「いや!!」
震える華に触れようとした頼久の手を、力一杯にはね除け華は駆け出した
「え…」
頼久は華から拒絶されたことに、かなりショックを受け固まってしまう
暫くの間、固まっていた頼久は、ハッと我を取り戻し、華の後を追ったが時は既に遅く、華はいなくなっていた
「嘘だろ…」
差し込む朝日の眩しさに、華は目を覚ました
「ここは…何処?」
目を開けると、見たことのない景色に戸惑う
キョロキョロと恐怖に耐えながら、周囲を確認した。だがやはり、見たことも来たこともない場所だった
体が僅かに震え出す。エレベーターのボタンを押してからの記憶がないばかりか、どうやって此処まで来たのかさえ分からない
華が悶々と考えていた時、部屋の扉が開いた
「起きたか」
「え…」
声の方を見た華はカチンと固まった
「…ん?」
(男の人…!?)
華の困惑を他所に、首を傾げながら近づいてくる
「…もう、落ち着いたみたいだな」
「だ、誰…ですか?」
「あぁ、すまない。俺は佐伯頼久だ」
頼久が優しく微笑む。華はその表情を見た途端に、恐怖も忘れ見とれてしまう。半ば強制的であった感情移行であるが、華が気付く事はない
(何だか甘い香りが、する)
頼久から漂ってくる甘い香りは、華の鼻孔から体に染み渡る
(もっと、近くで…)
「華…」
エレベーターでの狂気染みたものではないが、頼久もまた華と同様の思いに刈られていた
『触れたい』
二人はその感情に逆らう事はせず、二人の右手は自然に指先を絡め合う。そして左手はお互いを確かめ合うように、頬や唇、首筋を優しく撫でる
その瞳は『愛しい』と言っていた
「華…」
「あ…」
頼久の顔が華に近づく。そして僅かにあった距離がゼロになる
「んっ…」
激しさはない口づけだった。優しく、愛していると伝えるように何度も啄む
数分だっただろうか。華は初めて感じる異性の優しい気持ち、そしてその中にある愛を感じ、瞳は涙の膜で覆われていた
初めて会ったのに、何故こんなにも安堵するのか。何故こんなにも、離れがたいのか。そして何故こんなにも愛しいと感じるのか
華は自分の感情と葛藤する。普段の自分からは、考えられない感情の渦。理解しがたい思い
拗らせてしまっている華には、素直に受け入れる事は出来なかった。だが、この感情に逆らう事も出来ないでいる
「ち、違う…」
「何がだ?華、俺の…運命の番…」
「っ!?な、何で知って…!」
「ん?」
「私が、お」
「お?…あぁ、Ωだって事か?」
華は自分がΩだと言う事を隠していた。今の時代、隠す必要はないのだが、やはりΩだと言う事実がコンプレックスで、誰にも知られたくなかったのだ
「まさか、隠していたのか?」
「あ、あ、」
華はガタガタと震え出す
「おっおい!どうした?Ωだって事は、」
「いや!!」
震える華に触れようとした頼久の手を、力一杯にはね除け華は駆け出した
「え…」
頼久は華から拒絶されたことに、かなりショックを受け固まってしまう
暫くの間、固まっていた頼久は、ハッと我を取り戻し、華の後を追ったが時は既に遅く、華はいなくなっていた
「嘘だろ…」
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