上 下
145 / 188

第142話 踏破の報告

しおりを挟む
 帰還した僕らは早速第48階層を制覇したことをギルドに報告した。これはエストレガス王国初の快挙であり、踏破した方法もギルドに記録されることになる。で、当然冒険者ギルドの応接室でギルドマスターにやった方法を伝えたわけだけど……。

「いやいやいや、そんなこと普通の収納魔法じゃ不可能だ。密閉した容器だろうと親和性Bの収納魔法でも生物の保管は不可能なんだからな?」
「そうなんですか?」

 僕らのやり方は通常不可能だったらしい。リーネの収納魔法の親和性はAだ。つまりこれはA以上の特権ということか。

「つまりそれは親和性SとAのほとんどお前達だけの特権ということだ。それに収納魔法の親和性Sとなると記録の上では歴史上存在しとらんし、Aでも国に一人現れるかどうかだぞ」

 ギルドマスターが頭を抱える。いやー、そうは言われてもねえ?

 まぁ、資質を強化したせいもあるんだろうけどね。でも強化魔法って永続しないはずなのにおかしな話かもしれない。実際、リーネに胸の成長率の強化をかけてたけど一日で消えていたから毎日かけてたんだよね。最後の試練をクリアしたら理由が聞けるかもしれない。

「ああ、そうなんですね。でも48階層のクリア方法自体はわかりますよ」
「本当か!?」

 やり方自体は言うだけなら簡単なんだけどね。実際にやると多分困難を極めると思うな。水の中でタートルドラゴンと戦うよりはマシだろうけど。

「ええ、池のそばに瓦礫の山がありましたから、それでゴーレムを作って魔法の鎖で縛り上げて釣り上げればいいんです。あの池はどこから水の外に出ても入口に出る仕様でしたからね。つまりはそういうことだったんだと思います」

 アレイスター師匠は土魔法に適正がなかったからこの方法が使えなかったんだね。多分相当な数のゴーレムを用意しないと釣り上げることは不可能だと思うけど。

「わかってたのなら試して欲しかったな。どの程度のゴーレムが必要かわからんではないか」
「相当な数が必要だと思います。それに僕らがやっても強化ブーストを使いますから参考にならないかと」

 土魔法に親和性Sのリーネの創る強化魔法をかけたゴーレムのパワーが参考になるとは思えないんだけど。

「……目安くらいにはなるだろ。まぁいい、それでどんなお宝が手に入ったんだ?」
「一つはこの龍神ザルスの指輪だな。これが人数分。それと大量の金塊と本が三冊だったな」

 サルヴァンが指輪を見せて答える。その性能を知れば誰もが欲しくなる程の神器に違いない。

「龍神ザルス様の指輪か。どのような性能なのだ?」

 指輪をしげしげと眺めながらギルドマスターが質問する。

「ありとあらゆる身体的負荷の軽減です。これがあればルウの強化ブーストを3つ以上重ねがけできるかもしれません」

 正直強化ブーストの重ねがけは2つでも結構しんどい。それだけ強化ブーストによる負荷というものは無視できないものがあるのだ。強化するものを間違えると自滅しかねないんだよね。

「なるほどな、というより今まで重ねがけで使っていたのか!? 下手をすれば取り返しのつかないことになるぞ」
「わかっています。そのあたりはちゃんと考えているつもりです」

 リミッター解除して大剣で斬っただけで両腕の骨が折れたからね(※第53話参照)。負荷は何も魔法だけの話じゃないことも理解してますとも。

「そうか、それならいいんだ。それで、本というのは魔導書か?」
「2冊は魔導書でした。もう一つは物語が書かれた本ですね。ちらっと見ただけなのでどんな物語かはわかりませんけど」

 まさか物語の書かれた本が報酬で出てくるとは思わなかったけどね。きっと何か意味があるのかもしれないからちゃんと読むつもりだけど。

「ほう、でどんな魔導書なのだ?」
「初見の魔法ですね。一つは神気発衝ディバインマッシャー、もう一つ深淵気発衝アビスマッシャーという魔法です。この後契約して試してみようかと思いまして」

 まだ本のタイトルしか見てないからどんな魔法かはわかんないけどね。

「凄そうな魔法だな。見せてもらってかまわないか?」
「ええ、どうぞ」

 2冊の魔導書をテーブルの上に置くと、ギルドマスターは神気発衝オーラマッシャーの魔導書を手に取った。そして本を開き内容を確認すると、大きく目を見開き僕たちに視線を向ける。

「この魔法はどうやら光属性の最強魔法に位置するらしい。審判ジャッジメントが最強だと思われて来たが、どうやら上があったようだ。だが問題は契約の条件だな」

 あの審判ジャッジメントを超える魔法か。正直あの魔法では心許ないと思っていたところだったんだよね。是非契約して使いこなさないと。

「どんな条件ですか?」
「光の親和性がSでなおかつ魔力1200を超えていることだ。その魔力を超えている人間は王国内だと2人しか知らんぞ」
「アレイスター師匠とリオネッセさんですね。二人とも確か1200超えてましたよね」

 二人ともレベル100台という領域に突入してるからね。どこでそんなにレベルを上げたのやら。

「ルウとリーネは今魔力どのくらいだ?  最近お前らうちでは鑑定しなくなったからな。情報がまったくない」
「僕は今レベル94で魔力が1437、リーネも同じレベルで1516です」
「人類史上最高値だな……。資質の強化とはそんなに上がるものなのか?」
「わかりません。そもそも強化って普通は永続されませんし。神様の眷属なら何か知ってると思うのでダンジョンに潜ったら聞いてみます」
「ちょっと待て。神様の眷属とはどういうことだ?」

 神様の眷属という言葉に強く反応し、立ち上がってテーブルの上に身を乗り出す。ちょっとびっくりしたわ。

「最後の試練が公爵級悪魔と同程度の力を持つ神霊との戦いなんです。この試練に限り何度死んでも生き返らせてくれるそうで」
「そ、それはまたサービスがいいな。しかし最後の試練が神霊との一戦か。人の身で勝てるとも思えんが」

 多分そのための龍神ザルスの指輪なんだと思う。そのくらいしないと相手にならないということだろう。入念な準備が必要になりそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

専属奴隷として生きる

佐藤クッタ
恋愛
M性という病気は治らずにドンドンと深みへ堕ちる。 中学生の頃から年上の女性に憧れていた 好きになるのは 友達のお母さん 文具屋のお母さん お菓子屋のお母さん 本屋のお母さん どちらかというとやせ型よりも グラマラスな女性に憧れを持った 昔は 文具屋にエロ本が置いてあって 雑誌棚に普通の雑誌と一緒にエロ本が置いてあった ある文具屋のお母さんに憧れて 雑誌を見るふりをしながらお母さんの傍にいたかっただけですが お母さんに「どれを買っても一緒よ」と言われて買ったエロ本が SM本だった。 当時は男性がSで女性がMな感じが主流でした グラビアも小説もそれを見ながら 想像するのはM女性を自分に置き換えての「夢想」 友達のお母さんに、お仕置きをされている自分 そんな毎日が続き私のMが開花したのだと思う

愛理の場合 〜レズビアンサークルの掟〜

本庄こだま
恋愛
 美貌と妖艶。倒錯した性欲の覚醒。汚れた世界で信じられるものは、自分自身の“肉体”のみ……。  ウリ専レズビアンの「愛理」は、今宵も女を求めてホテル街に立ち、女に買われ、そして女に抱かれる。  ある夜、一人のレズナンパ師「恭子」に出会い「レズサークル」の乱交パーティーへと誘われた事から、愛理の運命の歯車が歪な音を立てて動き出すーー。  ※この作品は過度な性描写があります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。  ※この作品には同性愛描写、ふたなりの登場人物等、アブノーマルな設定が登場します。苦手な方はご注意ください。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。 しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。 最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。 それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。 婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。 だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。 これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

【完結】愛する人にはいつだって捨てられる運命だから

SKYTRICK
BL
凶悪自由人豪商攻め×苦労人猫化貧乏受け ※一言でも感想嬉しいです! 孤児のミカはヒルトマン男爵家のローレンツ子息に拾われ彼の使用人として十年を過ごしていた。ローレンツの愛を受け止め、秘密の恋人関係を結んだミカだが、十八歳の誕生日に彼に告げられる。 ——「ルイーザと腹の子をお前は殺そうとしたのか?」 ローレンツの新しい恋人であるルイーザは妊娠していた上に、彼女を毒殺しようとした罪まで着せられてしまうミカ。愛した男に裏切られ、屋敷からも追い出されてしまうミカだが、行く当てはない。 ただの人間ではなく、弱ったら黒猫に変化する体質のミカは雪の吹き荒れる冬を駆けていく。狩猟区に迷い込んだ黒猫のミカに、突然矢が放たれる。 ——あぁ、ここで死ぬんだ……。 ——『黒猫、死ぬのか?』 安堵にも似た諦念に包まれながら意識を失いかけるミカを抱いたのは、凶悪と名高い豪商のライハルトだった。 ☆3/10J庭で同人誌にしました。通販しています。

妹の身代わりとされた姉は向かった先で大切にされる

桜月雪兎
恋愛
アイリスとアイリーンは人族であるナーシェル子爵家の姉妹として産まれた。 だが、妹のアイリーンは両親や屋敷の者に愛され、可愛がられて育った。 姉のアイリスは両親や屋敷の者から疎まれ、召し使いのように扱われた。 そんなある日、アイリスはアイリーンの身代わりとしてある場所に送られた。 それは獣人族であるヴァルファス公爵家で、アイリーンが令息である狼のカイルに怪我を負わせてしまったからだ。 身代わりとしてやった来たアイリスは何故か大切にされる厚待遇を受ける。 これは身代わりとしてやって来たアイリスに会ってすぐに『生涯の番』とわかったカイルを始めとしたヴァルファス家の人たちがアイリスを大切にする話。

毒姫ライラは今日も生きている

木崎優
恋愛
エイシュケル王国第二王女ライラ。 だけど私をそう呼ぶ人はいない。毒姫ライラ、それは私を示す名だ。 ひっそりと森で暮らす私はこの国において毒にも等しく、王女として扱われることはなかった。 そんな私に、十六歳にして初めて、王女としての役割が与えられた。 それは、王様が愛するお姫様の代わりに、暴君と呼ばれる皇帝に嫁ぐこと。 「これは王命だ。王女としての責務を果たせ」 暴君のもとに愛しいお姫様を嫁がせたくない王様。 「どうしてもいやだったら、代わってあげるわ」 暴君のもとに嫁ぎたいお姫様。 「お前を妃に迎える気はない」 そして私を認めない暴君。 三者三様の彼らのもとで私がするべきことは一つだけ。 「頑張って死んでまいります!」 ――そのはずが、何故だか死ぬ気配がありません。

悪役令嬢はゲームのシナリオに貢献できない

みつき怜
恋愛
気がつくと見知らぬ男たちに囲まれていた。 王子様と婚約解消...?はい、是非。 記憶を失くした悪役令嬢と攻略対象のお話です。 2022/9/18 HOT女性向けランキング1位に載せていただきました。ありがとうございます。

処理中です...