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第136話 閉鎖的な村7

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「ま、守り神様!?」
「な、なんと?」
「おいおいおいおい、マジかよ!」

 セルバが再び姿を現したことに皆が驚きの声を挙げる。うん、やってみるもんだね。

「しかしいいのか?    爵位級悪魔だぞ」
「いや、悪魔じゃなくなってると思うよ。鑑定してみればわかることだから。鑑定アイデンティファイ

 セルバ
 種族     人造聖霊     レベル82    魔力1428
【スキル】
 審判ジャッジメント
 彩光剣

 セルバつっよ!
 魔力1428って確か子爵級じゃんか。1500で伯爵級だから子爵級でも上位ってことか。

「どうだった?」
「人造聖霊だって。スキルも光属性のものに変わっているよ」
「じ、人造聖霊かよ。またとんでもないもん生み出したな……」

 サルヴァンが聞くので正直に答える。これ報告したら大量の聖獣とか作らされるんじゃなかろうか。でも有事の際には強力な戦力として運用できるし準備はしておいてもいいのかもしれない。

「感謝するぞ、少年よ。ふむ、しかしそうなると少年は私の創造主、マスターということになりますかな?」
「あー、別にそれはいいよ。それより今まで通り村の守り神として生活してください」

 そもそもそれが目的だし。滅ぼして恨みを買ったままでは困ることになるかもしれないからね。

「良いのですかな?」
「ええ、それが一番いいと思います」
「ありがとうございます創造主様」

 セルバは深々と頭を下げる。それを聞いていたフランソワや村長と息子は喜んで手を取り合っていた。

「ありがとうございます。そしてあなた方に心からの謝罪を」
「うむ、その、すまなんだ」
「わ、悪かった」

 そして謝罪の言葉を口にし、頭を下げる。どうやらこれでこの件は良い方向に傾きそうかな。

「謝罪を受け入れる。その代わりと言っちゃなんだけど、クリフォトの種について知っていることを教えてくれ」
「……わかりました。話しましょう」
「親父、いいのか?」

 村長としては板ばさみなんだろうな。とはいえクリフォトの種への信仰を捨てさせて大丈夫なのか、という不安もある。

「なに、話すくらいならかまわんさ」

 そして村長はアマラとの出会いを話し始めた。




「なるほど、村長はアマラに金で買収されて信仰を勧め、巫女を立てたと。そして祈りと信仰を対価に3人は人魔となったわけか」
「ええまぁ、そんなところです。そして巫女様のお陰でこの村の豊穣も約束され、たまたまやって来た盗賊も退治できたのです」

 なるほど、祈りと信仰だけでここまで助けて貰えるならそりゃ悪魔であっても崇めるだろうね。

「それじゃ信仰は村全体に浸透しているだろうな。そうなると信仰を捨てさせるのは難しいんじゃないか?」
「そうですね。いくら守り神様のことがあるとはいえ、村の人達は反対するでしょう」

 ルードの言うようにそれは無理だろう。それは巫女さんもわかっているようだ。当たり前と言えば当たり前なんだろうけど。

「別に捨てなくてもいいんじゃないかな。むしろ捨てるのは危険かもしれない」
「なんでだよルウ。つか聖人のセリフじゃねぇだろそれ」
「まぁ聞いてよルード。対価が祈りと信仰ということは当然そこには理由があると思うんだ。それがなんなのかは予測の域を出ないしどうしようもないと思う。問題は祈りと信仰を止めたことをニーグリが感知できる可能性があるということなんだ」
「感知できるとどうなるんだ?」
「ニーグリは好戦的な性格ではないようだけど、村を滅ぼしてしまうかもしれない。あくまで可能性だけどね。でも何があったか調査ぐらいはすると思うんだ」

 調査するにしてもセルバより格上の悪魔を派遣するだろうし、その時セルバが悪魔じゃなくなっていたら僕たちに牙を向けてくる可能性は捨てきれない。そう、悔しいけど僕たちは見逃されているのだ。

「確かにろくなことにならんな」
「はっきり言って労力とリターンが噛み合っていないと思う。もしニーグリ本人が来れば僕たちじゃ勝てないし、万が一僕たちのせいで村が滅んだら嫌じゃない?」
「……確かにそれは嫌だな」

 僕の話にルードは納得したようだ。村長も巫女さんもほっとした表情をしている。無茶振りされると思っていたのだろう。

「まぁ、俺たちの目的は達成できているからな。しかしそうなるとここに来た意味無かったのかもしれんな」

 そう。調べたところで手を出さない方がいいなら報告だってしない方がいいのだ。つまり調査自体大した意味は無いことになる。なにもしない、という結果だけ見ればの話だけどね。

「あはははは、そうでもないよ。収穫ゼロって訳じゃないし。少なくとも仮説は立てられたかな。ま、それで防げる訳じゃないんだけどね」

 うん、仮説は立てられるけど防ぐ手立てなんてあって無いようなもんだ。でも収穫無しという訳じゃない。アレサはいい経験ができたし、僕も人造聖霊を作ることに成功したのは成果として十分だろう。

「そっか、なら良かった。よし、じゃあアプールに帰るか」
「さんせーい」

 サルヴァンの帰る提案に皆が賛成する。帰れば後輩達が待っているからね。

「セルバよ、また私と戦ってくれるか?」

 アレサはセルバに近づき握手を求めた。するとセルバはニッコリと笑い、その右手を握り返した。

「今度は純粋に剣のみの力比べと致しましょう。人間にも貴方ほどの剣士がいたこと、嬉しく思いますぞ」
「私もだ。また会おうセルバよ」
  
 アレサは自分と同格の剣の使い手が生きていることに喜びを隠しきれないようだ。とても爽やかな笑顔を返している。

「では皆様、今回のこと本当に申し訳ございませんでした。また村に来た時は歓待いたしますね」
「ええ、よろしくお願いします」

 そしてフランソワさんも僕たちに再度頭を下げる。今度来る時は歓迎してくれるようだ。

 そして僕たちは村を後にし、アプールへと帰るのだった。
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