【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ

文字の大きさ
上 下
88 / 188

第85話 惨劇の後に

しおりを挟む
「いえ、あそこでアマラを捕縛しに行った場合、ドレカヴァクの動きが早まるだけです。アマラを見捨てて他の街を襲うでしょう」

 つまりどっちに転んでもドレカヴァクを捕らえることは出来なかった。少なくともあの時点ではベターな選択だったと思う。アレクさんが責任を感じる必要はないと思う。

「私もそう思います。今はとにかくすぐに村の様子を見に行くべきでしょう」
「リーネを連れて行けばすぐに村に着くはずだ。襲われている可能性もある。それなりの戦力は必要だろ」

 リオネッセさんも村の様子が気になるのだろう。すぐに行くことを主張する。サルヴァンもその意見には賛成のようだ。

「よし、なら勇猛と神撃、龍炎光牙全員で行こう。ルウ君の作業も大事だが、リオネッセを連れて行かないわけにはいかない。すまないが中断だ。残りはここで待機!」
「わかった」

 ライミスさんが指示を出し、僕達はあの村へ急行することになった。




 そして村へと戻って来たんだけど、酷いものだった。あちこちからする死臭、血の跡、壊れた家屋。今の時刻は昼の3時。しかし人っ子一人見当たらない。

「アレイスター、どうだ?」
「ダメだな、生命反応は……、ん?    微かだが小さい反応があるな」

 アレイスター師匠の捜索サーチに一つだけ反応があったようだ。

「すぐに向かいましょう。案内を」
「ああ、こっちだ」

 アレイスター師匠が先導する。その後を僕達が追う。人の死体が全然見当たらない。しかし死臭は酷い。なんなんだろうね、全く。

 ようやく辿り着いたのは壊れた家屋。壁は破壊されて穴が空いており、そこかしこに血がこびりついている。

「反応はこの下からだな」

 木の床の中に下に続く通路はなさそうだ。でも反応は下だという。なら穴を空けよう。

破壊ディストラクション

 魔法で木の床を破壊する。するとその下は空洞だ。覗くとその空洞の隅っこに女の子が1人倒れていた。見るとこの空洞にどうやって降りたのか、階段がない。これは一体どういうことだろう。

「人がいるね。防壁プロテクション

 防壁プロテクションで階段を作りながら数人で降りる。一応鑑定。念の為ちょっと詳しめにするか。

 ルカ    14歳     148cm     人間    女性
 レベル1   魔力85    スロット3
 ※※※村の少女。
 状態:衰弱。胃も弱っている。

 うん、危険な状態だね。それにしてもレベル1なのに凄い魔力だ。彼女には魔法の才能があると思う。

「衰弱しているけど生きてる」

 僕は駆け寄って彼女に回復ヒールをかける。拡大解釈で体力の回復だ。後は何か飲食させるべきか。胃の調子と意識も回復ヒールしておこう。

「ん……」

 ルカが目を覚ます。そして僕と目が合った。よくよく見ると結構可愛いかも。紫の長い髪と紫の瞳がどこか神秘的だ。

「あなたは誰……?    そうだ、ママは?   パパは?     ねぇ、村のみんなはどうなったの?」

 ルカは目を覚ますなり、周りを見ながら叫ぶ。少し錯乱気味だな。無理もない。

「落ち着いて。自分の名前は言える?」
「ル、ルカ……」
「じゃあルカちゃん。まずは外へ出よう。話はそれからかな」
「はい」

 少し落ち着いたのを確認し、アレクさんがお姫様抱っこで防壁の階段を登る。そして登り切って地に下ろすと、ルカは呆然となって周りの景色を眺めていた。
 そして涙が溢れ出す。

「そんな……!    どうして……!    パパ、ママ、みんな……!    えぐっ、えぐっ……!」

 ルカは声をあげて泣き始めた。もう村に彼女を知る人はいない。親しかった人も、両親もいない。そして彼女の住んでいた村はもう廃墟と化していた。



 やがて彼女は泣き疲れて眠ってしまったようだ。話は戻って落ち着いてからじゃないと無理だろう。少なくとも、最低限知るべき情報は無情にも目の前にあるのだから、それで十分な気もする。

「とりあえず彼女は保護しよう。孤児院に預けることになるが、それでいいかな?」

    少し考え、ライミスさんが口を開く。

 さすがにクランハウスで面倒を見ることはできないからね。ハウスキーパーしかいない時もあるし、彼女には新しい人間関係が必要だから孤児院の方がいいと思う。ただ1つ気になるのは、どうやって彼女があそこにいたかだ。とはいえ、僕たちを罠にはめるためにあそこに入れました、なんてこと普通に考えてあるわけがないよね。うん、僕の考えすぎだよこれは。

「異議なし」

 口を揃えてそう答える。とにかくこのことを一刻も早くギルドに伝える必要がある。この惨劇には恐らくアマラも関わっているはずだ。

 つい先日までアマラのコミュニティの子達は生きていた。それなのにその2日後には食われていた。アマラがあの子たちを差し出したのか、それともドレカヴァクの独断なのかはわからない。奴の人間性というものを1度確認しておくべきだろうか。

「じゃあ戻ろうか。リーネ君。すまないがまた頼む」
「はい」

 リーネが再び屋形を取り出し、僕らはアプールの街へ戻ることになった。



 アプールの街に戻りライミスさんとアレイスター師匠は王城へ報告に、アレーテさんとアレクさんがギルドに報告へ行くことになった。教会へは僕たち龍炎光牙とリオネッセさんが行く。リオネッセさんは狙われている可能性が高いからね。サルヴァン達にも来てもらうよう頼んだのだ。




 そして全ての報告が終わり、僕は再び魔道具の制作に戻ることになった。うん、頑張ったよ僕は。

 そして準備はできた。後は宝石をそれぞれの装備に埋め込むことで対ドレカヴァクの切り札となる武器が出来上がる。さすがに埋め込むには鍛治技術が必要なので、急ぎで工房に依頼して来た。夜だったので文句を言われたけど、事情を話して引き受けて貰えたから良かった。割り増し料金は仕方がないよね。

    そして次の日にはルカちゃんに話を聞くことができた。なんでも悪い魔導士が悪魔を引き連れてみんなを殺して回っていたそうだ。間違いなくアマラだろう。あいつはもう堕ちる所まで堕ちたようだ。救えない。

 そうして着々と準備は整っていったんだけど、次の日ギルドに差し出し人不明の手紙が届いたんだ。

 届けたのは闇属性の使い魔だったらしい。そして手紙にはこう書かれていたそうだ。



 聖女へ。

 ドレカヴァクはオルベスタにいる。早く来ないとみんな死ぬ。早く何とかしろ。



 随分上から目線な文で、書いてある文字も汚かった。もしかしてこれはアマラが書いたのではないだろうか……?
     あいつがよくわからなくなってきたな……。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

処理中です...