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第63話 行き止まりの先には何がある?

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 とにかく序盤は簡単だった。ダンジョンの中は時間がわかりにくいけどだいたいの感覚で休み、食事をしたり寝たりした。多分2日くらい経ったと思うんだけど、第9層のボス、トロルを倒し第10層にやって来た。第10層の適正レベルは20だからダンジョンはここからが本番らしい。

「第10層は石壁の迷宮か……。戦闘をするには手狭だな」

 アレサが剣を高く掲げて壁にぶつからないか確認する。高さは大丈夫そうだ。しかし飛び上がって叩き斬るのは無理そう。

「こう狭いと火の魔法は使いにくいよね。凍結魔法も道塞いじゃうし」
「大丈夫だよ、調節できるし」

 まぁ、なんとでもなるか。拡大解釈である程度のことはなんとかなる。
 サルヴァンを先頭に僕らは石壁の迷宮を進み始めた。まっすぐ行くと分かれ道がある。

「分かれ道みたいだな」
「そうだが、これはなんなんだろうな」

 分かれ道はいいんだけど、なぜか右側の道の真ん中に看板が立ってるんだろうね?
 しかも突き刺してあるわけじゃなく、重りがあるので移動可能だし。さらに書いてある文章も違和感が半端なかった。

「この先行き止まり。立ち入り禁止?」
「なんでわざわざ看板立てて報せてあるんだろうね?」

 もう見るからに怪しいんだけど。しかも場所的には転移陣から結構近い。人為的な何かを感じるのはしょうがないと思うな。

「よし、行き止まりへ行くぞ。何もなきゃ戻ればいいだけだからな」
「「「りょーかーい!」」」  

 サルヴァンが興味を惹かれ、行き止まりの方への行くことが決定した。僕も興味深々だよ。この先に何かあるって言っているようなもんだし。

 右側を道なりに進むとまた看板があった。

「なになに、この先は行き止まりなので行ってはいけません……?」
「いや、怪しすぎるだろ。無視だ無視!」

 サルヴァンが看板の文字を読み上げると、アレサが無視しろと不機嫌そうにツッコム。その先の通路はしばらく真っ直ぐみたいなんだけど、見える位置にまだ看板が置かれている。
 そこまで歩き、もう一度看板の文字を読み上げた。

「この先に進むと後悔します。来ないでってば」
「……なんなんだろうな、これは」
「つまりこの先に見られたくないものがあるってことじゃない?」
「ああ、そのようだな。後ろから誰か来たようだし聞いてみるか」

 アレサが誰かの気配を感じたようだ。後ろを振り向き少し待つと、5人組のパーティが姿を見せる。内4人は粗野な感じのある大柄な男たち。1人は女性だけど妙におどおどしている。

「あんたら、この先には何もないぜ。引き返したらどうだ?」

 開口一番それか。うん、この先に何かあるのはほぼ確定だね。

「え?     この先に何も無いんですか?     ではあなたたちはその何も無いとわかっているこの先に何の用があるんですか?」

 僕が意地悪そうな笑みを浮かべて質問すると、男どもの顔に剣呑さが増す。

「に、逃げてください!」
「あん?    お前バカか?     その逃げ道に俺らがいるんだろうが」

 女性が逃げてと叫ぶと大男が笑って答える。これは女性だけ無事ならいいかな。狭い通路だと身体の大きさは圧倒的優位性を持つ。手加減して戦う必要はなさそうだ。

「ルウ、無力化してくれ」
「うん、任せて。弱化ウィーク!」

 無声発動も交えて三半規管を弱化ウィーク、内リンパ液の分泌を強化ブースト。それを瞬時に人数分行う。

「あうっ!?」
「め、目眩が……?」
「た、立てねぇ……!?」

 一斉にその場に崩れ、地べたに座り込む。これでもう大したことは出来ないだろう。

「あの女の人が事情を知ってるようだし、他は石になってもらっていいんじゃない?」
「そうだな。リーネ頼む」
「い、石……?」

 情報は信用が大事だからねぇ。誤魔化しそうな大男どもはいらないでしょ。連れて行っても邪魔だし真っ当な冒険者とも思えない。

「わかったー。石化ペトリフィケーション

 石化魔法は対象が単体の魔法なので一体ずつ石化していく。念の為リーネはアレサの陰に隠れながら術を行使した。

 パキパキパキ……。

「い、いしにぃぃぃっっ!?」

 大男が絶叫をあげながら石になっていく。その様子を見た他の男どもが恐怖に顔を引き攣らせていた。1人石像が出来上がれば次へ、と1人ずつ石に変えていき、4体の石像が出来上がった。

「はい、回収回収」

 僕はその石像を4つとも収納する。その後はサルヴァンがその女性に質問だ。

「さて、君はこいつらの仲間ではないみたいだけど、こいつら何者?」
「た、助けてくれてありがとうございます……。この方たちはいわゆる冒険者殺しなんです」
「冒険者殺しか。弱いパーティを狙って殺し、金品を奪うやつか」

 冒険者殺しの殆どは元冒険者だ。なんらかの理由で追放や服役をしたため冒険者資格を剥奪された人たちで、まともな職に就けないため弱いDランクパーティに寄生して通行証を発行。その通行証でダンジョンに潜り、弱いパーティを狩って金品を奪うそうだ。死体はダンジョンが飲み込んでくれるらしい。

「で、君はなんでこいつらに協力してたんだ?」
「その、仲間がアイツらに捕まってて……」

     言いにくそうに女性が答える。まぁ、そういうことなら仕方がないのかな?
    しかし大人しそうな人だな。髪は短めで肩で切りそろえてあるみたいだけど。

「脅されているということか」
「はい……」
「こいつらの規模は?」
「後5人います。中には元Aランクの冒険者だった男もいます。逃げてください!」
「なるほど、なら実戦経験を積むにはもってこいということだな!」

     Aランクと聞きアレサのやる気がアップ。アレサって最近バトルマニア化してない?
    即死じゃなきゃなんとかするからやらせてあげたいとこだけど。

「き、危険です!     ギルドに報告して助けを求めるべきです!」
「そういうあんたは助けを求めたのか?」
「いえ、見張りがついていて……」

     申し訳なさそうに女性が答える。サルヴァンは何か言いたかったようだが止めたようだ。

「そうか、まぁいい。乗りかかった船だ。先に進んで残りをぶっ倒すぞ。そのAランクとやらはアレサに任せる」
「ああ、任せてくれ。ふふっ、楽しみだ。クランメンバー以外とまともな対人戦闘か」

    アレサがめちゃくちゃ嬉しそうだった。

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