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第59話 バイバイ初恋3
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「ライミス! ごめんなさい、私……!」
「いいんだアリシア。君が無事で良かった」
ああ、そうか。そういうことなんだ。うん、2人ならきっとお似合いだよね?
今きっと2人は抱き合っているのかな。後ろを振り向けばわかるんだけどダメだな。
「ルウ……」
リーネが呟く。僕は今どんな顔をしているのだろうか?
きっと、とても酷い顔をしているんだろうな。こんな顔、見せられないや。
「アリシアさん、僕のせいで巻き込んでごめんなさい。僕、行かなきゃ……」
「ルウ君? どこへ行こうって言うの? いいんだよ、気にしてないから……」
「じゃ!」
アリシアさんが言い終わる前に僕は手をひらひらさせると前へ走る。屋敷の奥へ行き、突き当たりの部屋に入るとその壁を破壊で破壊して無理矢理道を作る。
そうやって壁を乗り越えて僕は走った。1人になれる場所を求めて。それでも僕の走った後には雫がちらほら落ちていたようだった。
結構走ったと思う。そこは高台にある草むらで1本だけ大きな木が生えた場所だった。周りには誰もいない。
「……わかってたはずなのに。憧れは憧れのままでいいといつも自分に言い聞かせていたのに……」
わかっていた。アリシアさんは僕を男としてなんて見ちゃいない。6つも下の弟のような存在、もっと言えばただの年下の一冒険者に過ぎない。
それでもやっぱり、僕なんかじゃダメなんだという現実は辛かった。
「うぅ、うわぁぁぁっあっあっあっ……」
堪えていた涙が一気に溢れ出す。ずっと我慢していたけど1度崩壊してしまえばもう止められなかった。決壊した堤防に流れを止める力なんてあるわけがない。
誰も見ていない。だから思いっきり泣ける。この辛さを弱化で弱めれば楽になれるかもしれない。
でも、それはきっとしちゃいけないんだ。
現実を受け止めよう。たくさん泣いて、辛いことも悲しいことも悔しいことも全部流れてしまえばいい。そしたらきっとまた頑張れる。
「ルウ!」
その声はリーネ!?
1人になりたかったんだけどな……。あまり泣き顔とか見られたくないよ……。
それでもお構い無しに後ろから僕の肩に手を乗せる。
「リーネ、どうかしたの?」
僕が振り向かずに聞く。
ふわりと柔らかい感触。
リーネが僕を後ろから抱きしめたのか。
「ごめんね、まだ泣き足りないんでしょ?」
僕は答えない。なんかみっともない気がして。
「いいんだよ、泣いても。だからこっち向きなさい」
「やだ」
顔を見られてくないんだってば。
「あ、そう。だったらいいもん!」
するとリーネが前に回り、僕の頭を無理矢理引き寄せ、小さな胸へと導く。
「あんたは振られたの! アリシアさんとライミスさんなんてお似合いじゃない! あんたの入る隙間なんてないの!」
「うわっ! それが傷心中の仲間に言うこと?」
「うるさい! 私だってついさっき振られたんだ! 他でもないあんたに!」
リーネが涙混じりの声で僕を責める。
「え……!?」
「私の気持ちに気づかずアリシアさん、アリシアさんて! あんたがそんなに傷つくほどアリシアさんのことが好きなら私だって振られてるじゃないバカァッ!」
「そ、それは……!」
リーネの告白に僕はなんて言えばいいかわからなかった。なんかもう混乱しそうだよ。
「だから私も泣く! あんたも一緒に泣け!」
無茶苦茶な気もするけど、そっか、泣いていいんだ。
「う、うぅ……」
リーネの涙腺が崩壊したのか、嗚咽が漏れ始める。その嗚咽に僕はもらい泣きすると、また辛い気持ちが込み上げてきた。
「「うわぁぁぁっあっあっ……!」」
そして僕とリーネの泣き声が草原に響き渡る。いつの間にか僕たちは抱き合って泣いていた。
先に泣き止んだのは僕だった。リーネの気持ちを知ってちょっと気恥ずかしなり、抱きしめていた腕を離す。
「ルウ、落ち着いた?」
リーネは手で涙を拭う。顔が少し腫れていた。ガレスにやられて腫れただけじゃなさそうだ。
「うん、おかげさまで」
僕も涙を拭う。きっと僕も酷い顔をしているのかもしれない。
僕は立ち上がる。そして高台から見える街の風景を眺めた。なかなかの景観かもしれない。
「もう吹っ切れた?」
「さあ? でも、さよならはしないとね」
「そか、覚悟ができたなら大丈夫だね。ルウはもう望みないんだから、心の整理を早くつけなさいよね」
「エラい言われようだけどわかってるよ」
言い方に容赦ないな……。リーネなりの励ましと受け取ろう。
「大丈夫、私が手伝うから。私ならずっとルウのそばにいる。だから今から私と付き合いなさい」
「振られたんじゃなかったの?」
でもちょっとだけ意地悪をしたくなる。だってやられっぱなしなんだもん。
「女の子はフラれても逆転チャンスを神様から貰えることになってるの! それとも私じゃ嫌?」
「別に嫌じゃ……ないけど」
上目遣いはズルイと思う。でも嫌じゃないのは本当だ。リーネの元気ぶりを分けてもらえたらいいのかもしれない。
「なら決まりだね。言質とったからね?」
「はいはい、尻に敷かれそうで怖いな」
「癖になるかもよ?」
「……ならないことを願うよ」
バイバイ、僕の初恋……。
僕は空を見上げる。今日はとても良い天気で雲ひとつ見当たらなかった。
僕はリーネの手を握り返そうと思ったけど、できなかった。
でもいつか、この手をちゃんと握り返せる日が来るんじゃないかな、って思えた。
「いいんだアリシア。君が無事で良かった」
ああ、そうか。そういうことなんだ。うん、2人ならきっとお似合いだよね?
今きっと2人は抱き合っているのかな。後ろを振り向けばわかるんだけどダメだな。
「ルウ……」
リーネが呟く。僕は今どんな顔をしているのだろうか?
きっと、とても酷い顔をしているんだろうな。こんな顔、見せられないや。
「アリシアさん、僕のせいで巻き込んでごめんなさい。僕、行かなきゃ……」
「ルウ君? どこへ行こうって言うの? いいんだよ、気にしてないから……」
「じゃ!」
アリシアさんが言い終わる前に僕は手をひらひらさせると前へ走る。屋敷の奥へ行き、突き当たりの部屋に入るとその壁を破壊で破壊して無理矢理道を作る。
そうやって壁を乗り越えて僕は走った。1人になれる場所を求めて。それでも僕の走った後には雫がちらほら落ちていたようだった。
結構走ったと思う。そこは高台にある草むらで1本だけ大きな木が生えた場所だった。周りには誰もいない。
「……わかってたはずなのに。憧れは憧れのままでいいといつも自分に言い聞かせていたのに……」
わかっていた。アリシアさんは僕を男としてなんて見ちゃいない。6つも下の弟のような存在、もっと言えばただの年下の一冒険者に過ぎない。
それでもやっぱり、僕なんかじゃダメなんだという現実は辛かった。
「うぅ、うわぁぁぁっあっあっあっ……」
堪えていた涙が一気に溢れ出す。ずっと我慢していたけど1度崩壊してしまえばもう止められなかった。決壊した堤防に流れを止める力なんてあるわけがない。
誰も見ていない。だから思いっきり泣ける。この辛さを弱化で弱めれば楽になれるかもしれない。
でも、それはきっとしちゃいけないんだ。
現実を受け止めよう。たくさん泣いて、辛いことも悲しいことも悔しいことも全部流れてしまえばいい。そしたらきっとまた頑張れる。
「ルウ!」
その声はリーネ!?
1人になりたかったんだけどな……。あまり泣き顔とか見られたくないよ……。
それでもお構い無しに後ろから僕の肩に手を乗せる。
「リーネ、どうかしたの?」
僕が振り向かずに聞く。
ふわりと柔らかい感触。
リーネが僕を後ろから抱きしめたのか。
「ごめんね、まだ泣き足りないんでしょ?」
僕は答えない。なんかみっともない気がして。
「いいんだよ、泣いても。だからこっち向きなさい」
「やだ」
顔を見られてくないんだってば。
「あ、そう。だったらいいもん!」
するとリーネが前に回り、僕の頭を無理矢理引き寄せ、小さな胸へと導く。
「あんたは振られたの! アリシアさんとライミスさんなんてお似合いじゃない! あんたの入る隙間なんてないの!」
「うわっ! それが傷心中の仲間に言うこと?」
「うるさい! 私だってついさっき振られたんだ! 他でもないあんたに!」
リーネが涙混じりの声で僕を責める。
「え……!?」
「私の気持ちに気づかずアリシアさん、アリシアさんて! あんたがそんなに傷つくほどアリシアさんのことが好きなら私だって振られてるじゃないバカァッ!」
「そ、それは……!」
リーネの告白に僕はなんて言えばいいかわからなかった。なんかもう混乱しそうだよ。
「だから私も泣く! あんたも一緒に泣け!」
無茶苦茶な気もするけど、そっか、泣いていいんだ。
「う、うぅ……」
リーネの涙腺が崩壊したのか、嗚咽が漏れ始める。その嗚咽に僕はもらい泣きすると、また辛い気持ちが込み上げてきた。
「「うわぁぁぁっあっあっ……!」」
そして僕とリーネの泣き声が草原に響き渡る。いつの間にか僕たちは抱き合って泣いていた。
先に泣き止んだのは僕だった。リーネの気持ちを知ってちょっと気恥ずかしなり、抱きしめていた腕を離す。
「ルウ、落ち着いた?」
リーネは手で涙を拭う。顔が少し腫れていた。ガレスにやられて腫れただけじゃなさそうだ。
「うん、おかげさまで」
僕も涙を拭う。きっと僕も酷い顔をしているのかもしれない。
僕は立ち上がる。そして高台から見える街の風景を眺めた。なかなかの景観かもしれない。
「もう吹っ切れた?」
「さあ? でも、さよならはしないとね」
「そか、覚悟ができたなら大丈夫だね。ルウはもう望みないんだから、心の整理を早くつけなさいよね」
「エラい言われようだけどわかってるよ」
言い方に容赦ないな……。リーネなりの励ましと受け取ろう。
「大丈夫、私が手伝うから。私ならずっとルウのそばにいる。だから今から私と付き合いなさい」
「振られたんじゃなかったの?」
でもちょっとだけ意地悪をしたくなる。だってやられっぱなしなんだもん。
「女の子はフラれても逆転チャンスを神様から貰えることになってるの! それとも私じゃ嫌?」
「別に嫌じゃ……ないけど」
上目遣いはズルイと思う。でも嫌じゃないのは本当だ。リーネの元気ぶりを分けてもらえたらいいのかもしれない。
「なら決まりだね。言質とったからね?」
「はいはい、尻に敷かれそうで怖いな」
「癖になるかもよ?」
「……ならないことを願うよ」
バイバイ、僕の初恋……。
僕は空を見上げる。今日はとても良い天気で雲ひとつ見当たらなかった。
僕はリーネの手を握り返そうと思ったけど、できなかった。
でもいつか、この手をちゃんと握り返せる日が来るんじゃないかな、って思えた。
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