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第一集 壱ノ巻

*芦屋の末裔

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紫苑「ありがとう。清秋兄ちゃん。」


   あの後、紫苑は清秋に連れられて、先程正明と話していた廊下とは反対側の廊下の縁側に座っていた。


  
  清秋「いや。礼はいらないよ。それより、苦手な相手と話して疲れただろ。菓子とお茶を持って来る。」


  紫苑「え。そんな!悪いよ。清秋兄ちゃんだってさ、闘いの後に芦屋を牢に入れて、牢の術の強化してその後すぐに話会の司会したんだし。私より清秋兄ちゃんの方が疲れてるでしょ?」


清秋「別に大丈夫だ。」


   紫苑「大丈夫じゃないってば!私は、勿論従妹として心配もしてるけど、芦屋の事がある今、本家の当主が倒れでもしたらどうするのよ」


  清秋「それを言うなら、お前だって直系唯一の”姫”、それも強い霊力を持っている上に本家の血を直接引く人間だぞ。お前が体調を崩したって困るだろ。」



紫苑「た、確かにそうだけど。じゃあどうすれば...」


   現在、本家の使用人達は皆、話会後の宴会の準備や夕食の準備で動き回っており、誰も手の空いている者はいなかった。
だが、正直いって、紫苑も清秋も菓子を食べながら一休みしたいと思っていたのも事実だ。
だが、2人は忙しなく働く使用人にそれを言うのは悪いと思っていたのだ。



   清秋「なら、こうゆう時こそ創造式を使えばいい。丁度、今ならここには俺と紫苑以外は居ないからな。」


紫苑「そっか!その手があったわね。」


  .....こういった事は、陰陽師ならば誰もがすぐに思いつくのだが、疲れたふたりはすぐにその結論に達する事が出来なかったのだ。
   


   紫苑と清秋は、狩衣の袖の中から1枚の何もかかれていない符を取り出した。そして、そこに人型の式神創造の術言をかくと、その符を床に置いて呪文を唱えた。すると....


30秒ほどで使用人の服を着た男女の人型式が出来、その式は主に命じられるがまま台所へと向かった。





1分ほどして、式達が戻ってきた。式の手には、茶と和菓子の入っている皿を乗せたお盆があった。


   紫苑「ありがとう。」


  紫苑がそう言うと、紫苑の式はスッと消え、元の札に戻った。一方、清秋の式は、清秋が息を吹きかけると姿が消え、紫苑の式と同様に元の札に戻った。


   紫苑と清秋は、自分好みの温度に保たれた茶で喉を潤すと、和菓子に手を伸ばした。
紫苑の菓子も清秋の菓子も、季節の花をかたどった美しい菓子だ。そして紫苑は、持っていた自身のスマートフォンで菓子を撮影すると、口に菓子を入れた。(清秋はそのまま菓子を食べた。)




紫苑「おいしーー!(о´∀`о)幸せ!」


   その和菓子は、紫苑好みの甘さの菓子だった。そして、清秋の食べた菓子も、清秋好みの味だったようで、清秋は黙々と和菓子を食べ続けていた。


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