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第二章「新たな旅立ち」
第46話「セレナさん」
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それからしばらくして。私は泣き止み、セレナさんも少しは気を許してくれた。皆で木の切り株に腰を下ろし、話を聞くことにした。
「そう、私はドラゴンだ。今はドラゴニストだがね」
「ええと……どう違うんですか?」
「そこから説明するのかい? 不勉強だねぇ……ドラゴンの姿はアンタも知っているだろ? トカゲのような身体をして翼が生え、大空を我が物にし、炎を吐いたり、鉄すら切り裂く爪を持ち、大地すら噛み砕く歯を持つ。でも、ドラゴニストはその全てを失うんだ。人間と性行為をした時点で、その爪も歯も翼も長い寿命も何もかも失うのさ」
「せ、性行為って……」
流石に赤面した。そんなド直球に言わなくても。確かに保険の授業で習ったことはあるけど。普段、あんまり考えないからなぁ。
「お前さんは随分ウブだね。今時の子はやりたい盛りが多いと聞くが。巷じゃ10代で初体験も珍しくないそうじゃないか」
「そ、それは一部だと思います。私はまだその……未経験で」
別に男の子が苦手というわけではない。ごく普通に話せる。アイン王子なんかがいい例だ。けど、残念ながら、デートしたことも付き合ったこともない。告白されたこともないし、当然こちら側から告白したことも無い。いい感じの男子もいたけど、いい雰囲気まではいかなかった。
「今時珍しいね。ノノはどうなんだい?」
「私はあんまり興味ないですね。常に異性を求める同胞もいますけど、私はどっちかというとご主人と側にいてその一生を見守りつつ、手助けできれば幸せなので。前の奴が男で除き趣味の変態で最低でしたから。今のご主人にはとっても良くしてもらってます」
「えへへ、ありがとノノ」
私とノノは互いに微笑んだ。それが伝染したのか、セレナさんも薄く笑みを浮かべた。
「私もどっちかというと恋だの、愛だのは考えたことなかった。馬鹿馬鹿しいとすら思った。でも、長からのお使いで何度か地上に行くことがあってね。ある商人の男が私を見初めたんだ。それが恋だの愛だの考える一つのきっかけになったね」
「へえ……」
「その男はしつこくてね。私をデートに誘おうと必死だったよ。最初は断ってたけど、根負けして渋々行くようになった。それから付き合いがあって、なんとなく惹かれていったんだ。本当になんとなくだけどね」
この世界で恋バナ聞けるなんて思わなかった。そうだよね、異世界といっても人がそこにいる事実は変わらないよね。でも、ドラゴンと人との恋愛って想像できなくて面白いわ。というか、恋バナ自体が新鮮なのかもしれない。理沙は異性に眼中ないし、ミカちゃんからはそういう話聞かないし……聞かないだけで実は興味があったりするのかな?
「どうしてその人と暮らさず、こんな島へ?」
「付き合ってる時は楽しかった。嫌なこともあったが、そんなの生きていれば当然だ。いつしか私達は互いを愛し合い、恋愛の一番深い部分まで行ったの。まあ、生々しい部分はウブなお嬢ちゃんには黙っておくよ」
「そうして頂けると幸いです……」
まあ、想像できなくもないけど、あんま、生々しいのはちょっとなぁ。
セレナさんのフォローは助かる。
「でも、私たちの事が長にその事がバレてしまい、私自身、ドラゴンとしての力を失った。群れから追い出され、家族同然だった連中に勘当された。罵る奴もいたし、暴力を振るおうとする奴もいた。私の親はとっくに亡くなってから誰も庇う人はいなかった。ドラゴンとして生きることは許されず、人里に降りるしか無くなった。だが、人とドラゴンは相容れぬ仲。人間は私を恐れ、旦那以外は私を避けていた。どんなにいい言葉をかけてこようが、相手の態度でわかるよ。内心は怖がっているのだと」
勘当された。セレナさんは簡単に言うけど、それはとても辛かったのではないだろうか。家族同然だった人に悪口を言われたり、暴力を振るわれたり、もし、そんなことが自分に降り掛かったら私なら生きていけない。言葉にしていないだけでもっと傷ついたこともたくさんあったはずだ。旦那さんと結婚して人里で暮らすようになっても世間は冷たかった。誰もセレナさんとして見ず、ドラゴニストとして見ていた。その辛さは計り知れない。けど、戻ることもできない。ただ、茨の道を進むしか無かった。
「やがて、旦那が死んで私だけが残った。旦那は生前、多くの財と富を築いた大富豪にまでなってね。親戚からのやっかみは凄いもんだった。でも、私は金なんか興味なくてね。相続放棄して人里を離れたんだ。まあ、その後も親戚たちは揉めて大変だったって噂で聞いたけど、私にはもう関係ない。そしてここへ来たの」
「なんでこの島に?」
「この島は昔、旦那と初めて会った場所なんだ。あの時、私はドラゴンの姿をしていた。私は旦那を見た覚えはなかったが、あの人は覚えていてね。人里に降りた時、私だとすぐにわかったそうだよ。旦那は私を尊敬こそしたけど、恐怖はしなかった。メイ、お前もそうだ。お前も私をドラゴンというよりかは、私個人としてきちんと見ている。この世界じゃ相当な変わり者だ。」
「ええ、変わり者です。世界一の変わり者ですよ、私」
「ふふ、面白い子だ」
私の答えにセレナさんは微笑した。そう、私は変わり者だ。頭のネジがきっとどこか跳んでる。でも、そういう変わり者がいたって良いと思う。旦那さんがどういう気持ちでセレナさんに接していたかは知らない。けど、きっと彼もセレナさんに何か惹かれるものを感じたんじゃないかな。私もそう、何かこう、言葉に出来ないけど、感じるものがある。
「喉が渇いた、休憩にしよう」
「私もです」
「近くに泉がある。案内するからついといで。妖精もね」
「ええ」
私達はセレナさんの道案内に従い、森を歩くことにした。
しばらく歩いた先に泉が広がっていた。とても綺麗な泉で、太陽に反射してキラキラと輝いている。木々に囲まれた森の奥深く、人跡未踏の自然のままの泉。こういう場所ってファンタジー映画で見たことがある。ペガサスがいて、水遊びをする妖精たちがいて……。でも、そんな場所を実際に見ることができるなんて嬉しい。斧を落とせば、女神様も出てくるかもしれない。そんな乙女チックな妄想もできるほどに綺麗な泉だ。
「ここの泉は格別だ。人間でも飲み過ぎなければ大丈夫だ。飲んでみな」
「どれどれ……あ、美味しい!」
一口すくって飲むとひんやりとした冷たさが喉を潤す。飲みやすくて、後味もいいし、さっぱりとしている。何度でも飲みたくなるほど美味しい。けど、セレナさんの忠告通り三口くらいで止めておく。お腹を壊したら元も子もない。
「いいですね、こういう場所。ファンタジー映画でも見たけど、美術の教科書でもこういう風景画あったなー。絵を描くのは苦手だけど、こういうロマンチックなのは好きだからよく見てたっけ……」
理沙と仲良くなる前、私は一人でいることが多かった。男子と話をしても盛り上がらないし、遊ぶこともしなかった。暇な時は教室で教科書を開け、まだ習っていない先の範囲を読んでいた。国語とか社会なんかは面白くて読んでいる内にいつの間にか全部読み切ってたわ。
中でもよく読んでいた……というより、見ていたのは美術の便覧だ。便覧は美術の教科書とは別で滅多に使われず、美術の授業の時には必ず持ってきなさいと先生が言うのでその通りにしたが、使用した回数はほとんどなかった。多くの生徒達はいつしか持って来なくなり、存在自体忘れていった。
けど、私は便覧をいつも熱心に見てた。便覧は様々な絵画が写真付きで載っており、特にファンタジーな絵画や宗教画に見入ってしまった。絵心はないけど、絵を見ることはが大好きな私はその幻想的で日常ではあり得ない風景に好奇心と癒やしを感じ、虜になってしまった。暇さえあれば、お姉ちゃんと一緒に展示会や絵画展に行くこともあった。その延長で海外のファンタジー映画を見たりしたっけ。
「……映画っていうのは何だい?聞いたことないが。巷じゃ流行っているのかね?」
「え、あ、ええと、その……」
あ、しまった。思わず泉に見とれて本音が。この世界、ナイトゼナには映画なんて当然ない。どう言い訳しようか。
「それにアンタは言ってたね、養子だと。貴族でもないと」
「は、はい」
「昔、貴族の家の子供は家庭教師に勉強を教わるのが普通だった。けど、今では様々なお家と交流することを目的にお坊ちゃん・お嬢ちゃんは金持ち学園に通わせるのが流行りだそうだ。特に美術なんてのは金持ちの道楽でしかない。日曜学校は文字をかけない庶民の為に始めた神父様の厚意が始まりだ。なので、美術は基本的に教えないのさ」
「……」
つまり、貴族のボンボンでもないし、養子で一庶民な私。そんな私が美術の授業を受けていることはおかしいということか。なるほど、それじゃあ疑われて当然か。
「ま、教えた所で生活の役には立たないからね。それでメイ、あんたは何者だい?」
「ええと……その」
私は尻込みした。言うべきか、言わざるべきか。正直に話しても信じてくれるかどうか。何せ、自分でも突拍子もない話だと思うし。うーん、どうすればいいのかな。ノノに視線を送るも彼女は俯いたままだ。判断は任せるということかな?
「正直に言いな。私を大好きな友達だと思ってるんだろう? 私は自分の事を話した。アンタも自分の事を話さないとフェアじゃないと思うが?」
「うーん、すっごく突拍子もなくて、信じ難い話かもしれませんが、それでも聞いてくれますか?」
「どんなに素っ頓狂な話でも聞かせてもらうよ。友達の話なら尚更ね」
「はい」
私は頷いた。友達と言ってくれたのが少し嬉しかった。それが私に話をする決心をくれた。だから、口は軽く滑るように真実を伝えていった。何故、この世界に来たのか。裏切りや友達との出会いや冒険の日々。嘘偽りなく全てを吐き出していく。ノノは特に口を挟まず、ただ静かに私とセレナさんを見守っていた。
「そう、私はドラゴンだ。今はドラゴニストだがね」
「ええと……どう違うんですか?」
「そこから説明するのかい? 不勉強だねぇ……ドラゴンの姿はアンタも知っているだろ? トカゲのような身体をして翼が生え、大空を我が物にし、炎を吐いたり、鉄すら切り裂く爪を持ち、大地すら噛み砕く歯を持つ。でも、ドラゴニストはその全てを失うんだ。人間と性行為をした時点で、その爪も歯も翼も長い寿命も何もかも失うのさ」
「せ、性行為って……」
流石に赤面した。そんなド直球に言わなくても。確かに保険の授業で習ったことはあるけど。普段、あんまり考えないからなぁ。
「お前さんは随分ウブだね。今時の子はやりたい盛りが多いと聞くが。巷じゃ10代で初体験も珍しくないそうじゃないか」
「そ、それは一部だと思います。私はまだその……未経験で」
別に男の子が苦手というわけではない。ごく普通に話せる。アイン王子なんかがいい例だ。けど、残念ながら、デートしたことも付き合ったこともない。告白されたこともないし、当然こちら側から告白したことも無い。いい感じの男子もいたけど、いい雰囲気まではいかなかった。
「今時珍しいね。ノノはどうなんだい?」
「私はあんまり興味ないですね。常に異性を求める同胞もいますけど、私はどっちかというとご主人と側にいてその一生を見守りつつ、手助けできれば幸せなので。前の奴が男で除き趣味の変態で最低でしたから。今のご主人にはとっても良くしてもらってます」
「えへへ、ありがとノノ」
私とノノは互いに微笑んだ。それが伝染したのか、セレナさんも薄く笑みを浮かべた。
「私もどっちかというと恋だの、愛だのは考えたことなかった。馬鹿馬鹿しいとすら思った。でも、長からのお使いで何度か地上に行くことがあってね。ある商人の男が私を見初めたんだ。それが恋だの愛だの考える一つのきっかけになったね」
「へえ……」
「その男はしつこくてね。私をデートに誘おうと必死だったよ。最初は断ってたけど、根負けして渋々行くようになった。それから付き合いがあって、なんとなく惹かれていったんだ。本当になんとなくだけどね」
この世界で恋バナ聞けるなんて思わなかった。そうだよね、異世界といっても人がそこにいる事実は変わらないよね。でも、ドラゴンと人との恋愛って想像できなくて面白いわ。というか、恋バナ自体が新鮮なのかもしれない。理沙は異性に眼中ないし、ミカちゃんからはそういう話聞かないし……聞かないだけで実は興味があったりするのかな?
「どうしてその人と暮らさず、こんな島へ?」
「付き合ってる時は楽しかった。嫌なこともあったが、そんなの生きていれば当然だ。いつしか私達は互いを愛し合い、恋愛の一番深い部分まで行ったの。まあ、生々しい部分はウブなお嬢ちゃんには黙っておくよ」
「そうして頂けると幸いです……」
まあ、想像できなくもないけど、あんま、生々しいのはちょっとなぁ。
セレナさんのフォローは助かる。
「でも、私たちの事が長にその事がバレてしまい、私自身、ドラゴンとしての力を失った。群れから追い出され、家族同然だった連中に勘当された。罵る奴もいたし、暴力を振るおうとする奴もいた。私の親はとっくに亡くなってから誰も庇う人はいなかった。ドラゴンとして生きることは許されず、人里に降りるしか無くなった。だが、人とドラゴンは相容れぬ仲。人間は私を恐れ、旦那以外は私を避けていた。どんなにいい言葉をかけてこようが、相手の態度でわかるよ。内心は怖がっているのだと」
勘当された。セレナさんは簡単に言うけど、それはとても辛かったのではないだろうか。家族同然だった人に悪口を言われたり、暴力を振るわれたり、もし、そんなことが自分に降り掛かったら私なら生きていけない。言葉にしていないだけでもっと傷ついたこともたくさんあったはずだ。旦那さんと結婚して人里で暮らすようになっても世間は冷たかった。誰もセレナさんとして見ず、ドラゴニストとして見ていた。その辛さは計り知れない。けど、戻ることもできない。ただ、茨の道を進むしか無かった。
「やがて、旦那が死んで私だけが残った。旦那は生前、多くの財と富を築いた大富豪にまでなってね。親戚からのやっかみは凄いもんだった。でも、私は金なんか興味なくてね。相続放棄して人里を離れたんだ。まあ、その後も親戚たちは揉めて大変だったって噂で聞いたけど、私にはもう関係ない。そしてここへ来たの」
「なんでこの島に?」
「この島は昔、旦那と初めて会った場所なんだ。あの時、私はドラゴンの姿をしていた。私は旦那を見た覚えはなかったが、あの人は覚えていてね。人里に降りた時、私だとすぐにわかったそうだよ。旦那は私を尊敬こそしたけど、恐怖はしなかった。メイ、お前もそうだ。お前も私をドラゴンというよりかは、私個人としてきちんと見ている。この世界じゃ相当な変わり者だ。」
「ええ、変わり者です。世界一の変わり者ですよ、私」
「ふふ、面白い子だ」
私の答えにセレナさんは微笑した。そう、私は変わり者だ。頭のネジがきっとどこか跳んでる。でも、そういう変わり者がいたって良いと思う。旦那さんがどういう気持ちでセレナさんに接していたかは知らない。けど、きっと彼もセレナさんに何か惹かれるものを感じたんじゃないかな。私もそう、何かこう、言葉に出来ないけど、感じるものがある。
「喉が渇いた、休憩にしよう」
「私もです」
「近くに泉がある。案内するからついといで。妖精もね」
「ええ」
私達はセレナさんの道案内に従い、森を歩くことにした。
しばらく歩いた先に泉が広がっていた。とても綺麗な泉で、太陽に反射してキラキラと輝いている。木々に囲まれた森の奥深く、人跡未踏の自然のままの泉。こういう場所ってファンタジー映画で見たことがある。ペガサスがいて、水遊びをする妖精たちがいて……。でも、そんな場所を実際に見ることができるなんて嬉しい。斧を落とせば、女神様も出てくるかもしれない。そんな乙女チックな妄想もできるほどに綺麗な泉だ。
「ここの泉は格別だ。人間でも飲み過ぎなければ大丈夫だ。飲んでみな」
「どれどれ……あ、美味しい!」
一口すくって飲むとひんやりとした冷たさが喉を潤す。飲みやすくて、後味もいいし、さっぱりとしている。何度でも飲みたくなるほど美味しい。けど、セレナさんの忠告通り三口くらいで止めておく。お腹を壊したら元も子もない。
「いいですね、こういう場所。ファンタジー映画でも見たけど、美術の教科書でもこういう風景画あったなー。絵を描くのは苦手だけど、こういうロマンチックなのは好きだからよく見てたっけ……」
理沙と仲良くなる前、私は一人でいることが多かった。男子と話をしても盛り上がらないし、遊ぶこともしなかった。暇な時は教室で教科書を開け、まだ習っていない先の範囲を読んでいた。国語とか社会なんかは面白くて読んでいる内にいつの間にか全部読み切ってたわ。
中でもよく読んでいた……というより、見ていたのは美術の便覧だ。便覧は美術の教科書とは別で滅多に使われず、美術の授業の時には必ず持ってきなさいと先生が言うのでその通りにしたが、使用した回数はほとんどなかった。多くの生徒達はいつしか持って来なくなり、存在自体忘れていった。
けど、私は便覧をいつも熱心に見てた。便覧は様々な絵画が写真付きで載っており、特にファンタジーな絵画や宗教画に見入ってしまった。絵心はないけど、絵を見ることはが大好きな私はその幻想的で日常ではあり得ない風景に好奇心と癒やしを感じ、虜になってしまった。暇さえあれば、お姉ちゃんと一緒に展示会や絵画展に行くこともあった。その延長で海外のファンタジー映画を見たりしたっけ。
「……映画っていうのは何だい?聞いたことないが。巷じゃ流行っているのかね?」
「え、あ、ええと、その……」
あ、しまった。思わず泉に見とれて本音が。この世界、ナイトゼナには映画なんて当然ない。どう言い訳しようか。
「それにアンタは言ってたね、養子だと。貴族でもないと」
「は、はい」
「昔、貴族の家の子供は家庭教師に勉強を教わるのが普通だった。けど、今では様々なお家と交流することを目的にお坊ちゃん・お嬢ちゃんは金持ち学園に通わせるのが流行りだそうだ。特に美術なんてのは金持ちの道楽でしかない。日曜学校は文字をかけない庶民の為に始めた神父様の厚意が始まりだ。なので、美術は基本的に教えないのさ」
「……」
つまり、貴族のボンボンでもないし、養子で一庶民な私。そんな私が美術の授業を受けていることはおかしいということか。なるほど、それじゃあ疑われて当然か。
「ま、教えた所で生活の役には立たないからね。それでメイ、あんたは何者だい?」
「ええと……その」
私は尻込みした。言うべきか、言わざるべきか。正直に話しても信じてくれるかどうか。何せ、自分でも突拍子もない話だと思うし。うーん、どうすればいいのかな。ノノに視線を送るも彼女は俯いたままだ。判断は任せるということかな?
「正直に言いな。私を大好きな友達だと思ってるんだろう? 私は自分の事を話した。アンタも自分の事を話さないとフェアじゃないと思うが?」
「うーん、すっごく突拍子もなくて、信じ難い話かもしれませんが、それでも聞いてくれますか?」
「どんなに素っ頓狂な話でも聞かせてもらうよ。友達の話なら尚更ね」
「はい」
私は頷いた。友達と言ってくれたのが少し嬉しかった。それが私に話をする決心をくれた。だから、口は軽く滑るように真実を伝えていった。何故、この世界に来たのか。裏切りや友達との出会いや冒険の日々。嘘偽りなく全てを吐き出していく。ノノは特に口を挟まず、ただ静かに私とセレナさんを見守っていた。
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