強い祝福が原因だった

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納得したのなら④

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 ――数日後。訪問日にやって来たラウルを迎えたエイレーネーは、お茶を用意している庭に案内した。天気が良い日は庭で会うのが定番となった。ラウルと会う日で雨になった事がない。もしかすると天気が悪い日は父が快晴にしてくれていたりして、なんて笑むと「多分、そうなんじゃないか」とラウルも釣られて笑う。


「母上から聞いたんだが……ホロロギウム公爵夫妻は離縁したそうだな」
「ええ」


 先日、ロナウドが来てダグラスと話した内容に離縁も含まれていた。理由を話すと何とも言えない顔をされた。ガブリエルに関して自分自身にも原因があるとラウルは感じている。エイレーネーにもそれは言える。
 ホロロギウム家は他家となった。他家の事情に首を突っ込むな、とはダグラスの言葉。頷くしかない。


「社交界はホロロギウム夫妻の離縁で話題が埋まっているよ。特に、公爵が魔法研究を始めたのが大きい」
「以前から、魔法研究所に支援はしていたみたいなの。領地にいるお祖母様とも話を付けられたみたいだし、これからは好きだった魔法に携わっていけそうよ」
「公爵は……魔法が好きだったんだな。でも、魔法が好きだと言えない環境にいたから、あんな風になってしまった」
「お父さんは自分から公爵様に会おうとしなかったの? って聞いたの。そうしたら」


 魔力も安定せず、意図せず魔法を使ってロナウドに怪我を負わせる危険や母からの言い付けもあり自分から近付こうと考えた事がないと淡々と述べられた。父らしいと苦笑した。

  
「エイレーネーは公爵と会ったのか?」
「昨日会ったわ」
「昨日?」


 会えばお互い気まずいだろうが1度は顔を合わせるべきだとは、お互い心のどこかで持っていた。昨日訪問したロナウドはダグラスを呼びに行くエイレーネーを引き止めた。エイレーネーに用があるのだと。待っても中々話さないロナウドを黙って待った。そして——静かに頭を下げたロナウドに驚く羽目となった。貴族としてのプライドが高いロナウドがずっと嫌ってきたエイレーネーに頭を下げたと言ったら、信じる人は極僅かとなる。顔を上げてもらうとかなり気まずそうな目をしていた。


『今までの事がなかった事になるとは思っていない……ただ……今まですまなかった……』
『公爵様は……今でも私がお父さんに見えますか?』


 ずっとエイレーネーを通してダグラスを見続けられた。母メルルといる時にあった寂しそうな目は多分……子供の頃から抱いていた気持ちが浮かんでいた。問われたロナウドは『いや……』と否定した。


『エイレーネーをエイレーネーとして見てこなかった。メルルに魔法を見せていたお前が、陛下達やメルルにだけ会っていたダグラスに見えていた。私が会いに行っても結界で弾き、魔法を使えない私を馬鹿にしていたダグラスに』


 真相はダグラスは馬鹿にしていなければ、結界で弾いていた訳でもない。祝福の魔法がダグラスを危険と判断して近付かせなかった。知らないところでずっと守られていた。

 母と次に会うのは葬儀の時だけと口にしたロナウドはとても寂し気に笑っていた。母によって兄弟仲も魔法も全て狂わされても、愛されていたのは確かだったから。そこに愛がなければ複雑な思いをせずに済んだのに。

 結局ダグラスには会わず、短い会話を終わらせたロナウドは帰って行った。今までにされた事を許せはしなくても次に会う時、公爵様じゃなく叔父様と言えていたらいいな、と背が見えなくなるまで見送りをした。

  
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