どうしてこうなった

文字の大きさ
上 下
12 / 21

ふざけた夕食

しおりを挟む
 
 結局、世話係は来ず。来たところで最初に来たアリサとどうせ変わらないだろうとレインリリーはそろそろ夕食の時間かと時計を確認、自分で着替えられるドレスに着替えるとノックをされて返事をした。入室したのは大人し気な少女。

「お客様を食堂へご案内します」
「ありがとう」

 お客様呼ばわりは変わらずでもアリサと比べると遥かにマシ。

「あの、着替えは……」
「自分でやったわ。お気遣いありがとう」
「……すみません」

 嫌味だと思われただろうか、俯き謝る彼女にどう声を掛ければ良いか分からず、取り敢えず食堂へ案内してもらった。書類上夫のクレオンとかなり距離がある席に座らされると料理が置かれていく。ステーキとサラダ、スープ、パン、飲み物。全て置かれてもレインリリーは固まってナイフとフォークを持てずにいた。既に食事を始めているクレオンが顔を顰め、食すよう促してくる。

 ——これをどう食べろと……

 ステーキは真っ黒でソースからは異臭がし、サラダはドレッシングで腐りを誤魔化し、スープの水面には大量の胡椒が掛けられ、飲み物の色は薄い灰色。距離が離れたクレオンには見えないからこそ、料理に悪意を盛り付けた。料理人のする事じゃない。恥を知れと罵りたい。ジルが心配になってくるも、食べる姿勢を見せないままでいればクレオンはうるさくなる。食べられはしないと壁に立つ使用人達は薄ら笑いを浮かべている。クレオンの側に控える執事も然り。

 食事は一日の楽しみだとメデイアの時から大好きで、それを汚されれば黙ってはいられない。食べないと高を括る使用人達はナイフで豪快にステーキを切り始めたレインリリーにギョッとした。大きめに切ったステーキをフォークに刺し、態と音を立てて食べだした。目に余る動作にクレオンが耐え切れなくなり勢いよく立ち上がった——瞬間、皿を両手に持ちクレオンの許へ大股で行き皿を叩きつけた。

「なんですかこのふざけた料理は!!」
「な、なにを……あ」

 突然の行動に勢いを無くしたクレオンはレインリリーが持ってきたステーキ皿を見て言葉を失った。全体的に真っ黒に焼かれ、異臭がするソースが掛けられたステーキ。呆然として使用人達を見ると俯くか顔を青く染めている者しかいない。

「こんなゴミ以下の食事を食べろだなんて、ノーバート公爵家はとても変わった食事をなさるのですね」
「いや、これは」
「食べろと叱られたので一口食べましたが見目通りの味です。これなら、街で食べる方が遥かにマシです。ジルを連れて食事をしてきます」
「ま、待て」

 呼び止めるクレオンを無視し、早足で部屋を出てジルがいる使用人部屋へ行き、彼を連れ街の料理屋に向かった。途中、執事や門番から引き止められるも命と同等に大切な食事を疎かに出来ないと一蹴し、ジルを連れ出した。

 食事の件を聞いたジルがとても憤慨するも「心残りがどんどん消えていって嬉しいって事にするわ」と苦笑しるレインリリーだった。

  

  

  
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

私の完璧な婚約者

夏八木アオ
恋愛
完璧な婚約者の隣が息苦しくて、婚約取り消しできないかなぁと思ったことが相手に伝わってしまうすれ違いラブコメです。 ※ちょっとだけ虫が出てくるので気をつけてください(Gではないです)

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

処理中です...