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短編
お茶会の後ー選択のドレスー
しおりを挟むホワイトゲート公爵家で行われるガーデンパーティ当日。
青い薔薇の刺繍とサファイアがふんだんに使用された銀色のドレスを着たメアリーは、向かい側に座って上機嫌なアタナシウスと頬杖をついて外を見やるティミトリスの格好が普段とは違って何倍にも増幅された色気で女性達が魅了されるのではと抱く。
アタナシウスは白、ティミトリスは黒を基調とした衣装。それぞれにメアリーと同じ繊細な青の刺繍が入れられており、色だけで言うと三人お揃いだ。
今日のドレスは父親達の選んだ……いや、彼等が選んだのだろうが最終的に選んだのはメアリーである。
今着ているドレスともう一着、どちらが良いかと訊ねられた。そのドレスはフリルとリボンが沢山着けられた淡いピンク色で、とても可愛らしいデザインだがマーガレットが招待してきた以上、気合を入れるなら青い薔薇のドレスにすると選んだ。
その時のアタナシウスは何故か吹き出していた。理由を聞いても「メイはやっぱり可愛いね」と惚気られただけ。
(そういえば、前にも何度かあったわね)
毎回メアリーのドレスを選ぶのはアタナシウスかティミトリスがするが、何度かメアリーにどれがいい? と選ばせた。
最初はそう、デビュタントを迎えた日だった。選んだドレスを着たメアリーを、迎えに来たミカエリスが一目見た瞬間思い切り顔を歪められた。金色の瞳にはメアリーに対する怒りが宿り、意味が分からず困惑した。
ファッションセンスがメアリーになくても用意された二着のドレスは父親達が選んだのだ、一級品の物ばかり。センスも良い。彼の態度の意味が分からず、馬車の中でも不機嫌なせいで会場に着くまで息苦しかったのを覚えている。
数年の間、ドレスを選ばされる事はなかったのに今日突然戻ったのは、やはり理由がある筈。
でも。
(今はお茶会に集中しましょう)
マーガレットのことだ。きっとミカエリスも呼んでいる。ミカエリスもマーガレットの招待になら応じる。
「着いたよ」
アタナシウスが告げると馬車が止まった。御者が扉を開き、先にティミトリスが降りた。外から差し出された手を掴みメアリーは降り、続いてアタナシウスも降りた。
受付係の者は驚きを隠せないでいたが、ハッとすると気持ちを切り替え招待状を要求。確認後、三人を会場へ入れた。
「み、見て! シルバニア公爵達よ……!」
「二人揃って参加!?」
「メアリー様が参加するとは思わなかったけれど……公爵達がいればね……」
他の参加者達はメアリーが参加した事にも、シルバニア公爵二人共もいる事にも驚愕する。主催者であるホワイトゲート夫人とマーガレットも彼等と同じだった。近付くと夫人は興奮を隠し切れておらず、頬を染めてティミトリスとアタナシウスを歓迎した。
「これはこれは公爵様方。ご参加いただきありがとうございます」
「メアリーの付き添いだ」
「メアリー様もありがとうございます。是非、楽しんでいってください」
「はい。ありがとうございます」
招待されたのはメアリーであり、二人は同行者。夫人の態度は招待されたのは二人でメアリーはおまけ扱い。不快に思いながらも顔には出さず、微笑みで返した。
マーガレットもアタナシウスとティミトリスに挨拶をし、次にメアリーにもした。やはりおまけのような扱いだ。
「そうだわ。今日はミカも呼んでるの! 遅れて来ると言っていたけどメアリー様は気にしないでね!」
「……ええ。殿下がいようがいないが私には関係ありませんので」
「まあ! そんな言い方良くないわ! メアリー様はミカの婚約者なんだから」
「……」
一々癪に障る言い方をしてくる。挑発しているのは明らかだ。目が若干メアリーを馬鹿にしている。だが、乗ってしまえば相手の思う壺であり、父親達を怒らせてしまう。あ、と思い、チラリとアタナシウスとティミトリスを見る。一人は微笑み、一人は呆れた相貌をしている。意図が察せられない二人じゃない。
「マーガレット。慎みなさい。メアリー様の前で皇太子殿下を愛称で呼ぶなんて」
「私とミカは幼馴染よ? ミカだって良いって言うもの」
「マーガレット……!」
「良いのではないかな、夫人。マーガレット嬢は皇太子のお気に入りだ。仲が良くても皇后になれないから拗ねているのだよ」
「なっ!!」
アタナシウスはメアリーの手を取ると歩き出す。ティミトリスも続く。
どれだけ良好な関係でも立場ではメアリーが上。正式な婚約関係を結ばないと隣にはいられない。幼馴染と言えど限度がある。
どちらが上かを指摘されたマーガレットは屈辱に染まった赤い顔でメアリーを睨むも向ける相手を間違えている。
「皇后になるのは私よ!! ミカとは婚約解消するとアタナシウス様が仰っていたのに、未だに継続なのはメアリー様が拒んでいるからでしょう!? ミカに愛されてないのに縛り付けるのは止めなさいよ!!」
「止めなさいマーガレット!!」
背後からの叫び声に止まった方がいいのにアタナシウスの足は止まらない。戸惑いがちに見上げると口を押さえていた。今にも笑い出すのを堪えていた。
「ぷ……っ、お、面白いね……」
「パパ様……」
「あー面倒くせえ。帰るか」
「え」
「だーめ、ティッティ。飽き性も程々にね。ここは皇太子の反応を見ようじゃないか。今の発言を参加しているほとんどの貴族は聞いてる訳だし」
……絶対態と怒らせたのだ。
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