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聖女の言葉を聞いて思い出したの
しおりを挟む癖っ毛な桜色の髪も、炎に燃えるような赤い瞳も、いるだけで異性を虜にする甘い顔も、発するだけで人を甘い快楽に落としてしまう低音も――全部……私のもの。だって彼がそう言ったから。
「俺の全部はミリーちゃんのものだよ。その代わり、ミリーちゃんの全部は俺のものだよ」
うん。私の全部はルーのものだよ。
*ー*ー*ー*ー*
薄い桃色の天蓋付きの大きなベッドの上。
「んん……ああ……」
「可愛いなあミリーちゃん」
私を後ろから抱き抱えるようにして座るルーの手が、剥き出しな胸を両手で好きなように揉んでいた。ルーの手によって着ていた服を脱がされ、全裸にされたと思うとこうして私の胸で遊び始めた。
「だってっ、ルーが触るから」
「ミリーちゃんの胸はずっと触っていたい程に柔らかくて大きくて楽しいんだ」
「ああっ……!」
胸を揉みながら、時偶先端を強く引っ張り捏ねる。痛みと同時に快感を見出だした私の身体は、中心部から蜜を流す。自分でも分かるくらい、そこはもう濡れている。
両の手の人差し指で固くなった先端を転がす。胸もいいけど、もっと触ってほしい場所がある。でも、恥ずかしくて言えない。
そして、ルーは私が言うのを待ってる。
「あ……あぁ……んっ」
「可愛い声だね。けど、俺はもっと可愛い声を聞きたいなあ?」
悪戯っ子みたいに赤い瞳を輝かせ、言って、と耳元で囁かれた。声と同時に入り込んだ吐息だけで大きく身体が震えた。私の身体はルーが敏感にした。何処をルーに触られても感じるように。声を聞いただけでもこうやって感じるようになってしまった。
「ルー……っ」
「ねえ……ミリーちゃん。ミリーちゃんは気持ち良くなりたいでしょう?」
「う、うん」
「なら、言って。ミリーちゃんが気持ち良くなってる所を見るのが俺は好きなんだ」
「さ……触って……ルー……、一杯、私を……ルーで気持ち良くして……」
「ふふ……いいよ。よく出来ました」
「あああっ!」
自分から強請るのはまだとっても恥ずかしい。だけど、言わないとルーは永遠に胸を触るだけしかしない。
ルーの左手が蜜で溢れたそこへ伸ばされた。表面を撫でられただけで私は甘く高い声を出してしまった。後ろでルーの笑う声がする。
「胸だけでこんなになっちゃうなんて。これじゃあ、もう誰も君が“聖女”だなんて信じないね」
“聖女”……
背後にいる魔族が零したその言葉に昔の記憶が久しぶりに甦った。
*ー*ー*ー*ー*
太陽を冠する国――ヘーリオス王国。
国の繁栄と豊穣を司る聖女の力を生まれながらに持っていた私、ミリディアナ=アクアローズには、生まれた時からの婚約者がいた。王国の第一王子スノー=ラ=ヘーリオス殿下。
生まれてすぐに聖女と判定された私は、未来の王妃として聖女として、幼少期より厳しい王妃教育と聖女教育を受けていた。清い心を保つ為にお父様と婚約者である殿下以外との異性の交流は許されず、教育がない日はいつも屋敷にある自分の部屋にいるのを強制された。
お母様と同じ蜂蜜色の金糸に、聖女の証である金色の瞳。ヘーリオス王国に現れる聖女は、代々金色の瞳を持つとされている。私も例外ではない。また、他者では絶対に持てない聖属性の魔力を持つのも理由の一つ。
貴族に生まれる子は例外があるとはいえ、魔力を持って生まれる。高位貴族になるにつれ魔力は強くなり、王族ともなれば膨大な魔力を持つ。私の未来の夫となるスノー殿下もそうである。
スノーの名の通り、純白な髪は右耳の下から尻尾のように垂れ、王族特有の紫色の瞳をしている。王妃様譲りの美貌と王様譲りの膨大な魔力、優れた知性と年齢を重ねていく毎に上がっていく魔法と剣の腕。将来有望な青年に育つこと間違いなし。
将来の夫婦として、私達が初めて出会ったのは六歳の時。既に王妃教育と聖女教育が始まっていた為、お父様以外の異性に会ったことがなかった。そのせいで私はとても緊張していたし、お父様以外の男性に会うのが怖かった。緊張と恐怖からプルプルと震えていると、肩に大きな手が乗った。
「大丈夫かい?ミリディアナ」
「は……はいっ」
「怖がる必要はない。殿下は、お前の未来の夫となる人なのだから」
優しく、子供をあやす声色に緊張と恐怖が幾分か和らぐ。
扉がノックされた後、護衛の騎士と共に入室したその人に心奪われた。
一面の雪を思わせる純白な髪と神秘的できらきらと輝く紫色の瞳があまりにも綺麗だったから。
お互いに自己紹介をし、簡単な挨拶を済ませると二人だけにされた。お父様に行かないでと裾を引っ張るも、顔を顰められた。あ、と声を漏らし手を離した。
あんな顔……初めてされた。どうして? ねえ、どうして?
「おい」
「!」
呆然とする私にスノー殿下が声を掛けた。びくりと肩が跳ねた。
恐る恐る、スノー殿下の方を向いた。
「……」
「……」
丸で睨むように私を見つめてくるスノー殿下。何かしたかな。名前を言って、挨拶をしただけ。他には何もしていない。
見つめるだけで何も言わないスノー殿下と怖くて何も言えない私。
先に痺れを切らしたのはスノー殿下だった。
「婚約者だからと言って、あまり私に馴れ馴れしくするなよ。所詮、聖女だから王子である私と婚約を結ばれたに過ぎない令嬢なのだからな」
「……」
あまりの言いように言葉を失った。
私……この人と結婚するの? 結婚して、王妃として、聖女として、この人の隣にいて支えていかないと駄目なの?
そんなの……そんなの……っ
そこから先はどんな会話をしたか覚えてない。ただ、スノー殿下からの明らかな拒絶に私は厳しくて自由がない教育にこれからも縛られ、成人を迎え結婚しても一切の自由がない未来に絶望した。
スノー殿下と顔合わせを済ませると、次の日から王妃教育と聖女教育は王城で行われることとなった。移動の時間が惜しいからと住まいも王城に移された。城付きの侍女が毎朝部屋に来て着替えをし、食事を済ませ、王妃教育と聖女教育を終えると湯浴みをし、食事を済ませると後は寝具の準備をする。
毎日部屋で泣いた。教育の厳しさに泣いていると抱き締めてくれるお母様もお父様もいない。ずっとお世話をしてくれた侍女達もいない。本当なら、アクアローズ伯爵家から侍女を数人連れて来る予定だったのに、駄目だと却下されたらしい。ここに来る道中お父様に教えられた。
未来の王妃であり、聖女でもある私の世話は城が完璧にすると。
帰りたい、帰りたい、お家に帰りたい、……聖女にも未来の王妃にもなりたくない……!
ベッドの上でスノー殿下の冷たい声と顔が鮮明に思い出される。あれ以来、スノー殿下とは会っていない。あんなことを言われた手前、会おうとも思わない。数度、城の侍女に殿下にお会いしますか? と聞かれたがいらないと首を振った。殿下に会える時に会いますとだけ言った。
お父様とお母様も政略結婚だが、一目見てお互いを気に入ったらしい。私も、仲睦まじい夫婦になりたかったな。……スノー殿下相手だと永劫不可能な夢だとしても。
「泣いてるの?」
すると突然、私しかいない筈の部屋に知らない声がした。驚いて顔を上げると見たことのない少年が立っていた。
癖っ毛な桜色の髪に炎に燃えるような赤い瞳がきょとんと私を見つめていた。
「だ……誰……っ」
何時からいたの?
全く知らない、それも異性の子。恐怖が勝って掠れた声しか出なかった。
「そう脅えないで」
悲しそうな声を出した彼は、ゆっくりと私のいるベッドの近くまで来て、端に腰掛けた。
あんまりにも悲しそうにするから、私は少し警戒心と恐怖を隅に置いて恐る恐る近付いた。
「あな、た、誰?」
それでも、声は掠れてる。
「俺? 俺はルーリッヒ。君は?」
「み、ミリ、ディアナ」
「ミリディアナ、か。可愛い名前だね」
ふにゃりと微笑まれて思わず顔に体温が集中した。スノー殿下と同等の美貌なのに、彼からは温かさしか感じない。
もっとこっちにおいで、と隣をポンポン叩かれた。優しそうだけどやっぱりまだ怖い。
「怖い?」
私は頷いた。
「そっか。聖女だもんね。しょうがないか」
「知ってるの?」
「そりゃあね。城で知らない人はいないよ」
そっか。それもそうかも。
「ねえ、君が怖がることは絶対しないから、もっと近くにおいで」
「本当に……?」
「うん。本当だよ。さあ、おいで」
「……う、うん」
信じて……いいよね?
彼の言葉に従って、隣に移動した。ちょっと離れて座ったらもっとこっちと手招きをされた。あまりに近いと流石に駄目。困った顔をする私に彼は「ミリーちゃん」と呼んだ。
「ミリーちゃん?」
「うん。ミリーちゃん。親しみを込めてミリーちゃんって呼んでみたけど、嫌?」
「ううん、嫌じゃ、ないよ」
初めて誰かに愛称を作られた。お父様やお母様は私をミリディアナと呼ぶ。他の人もミリディアナお嬢様やお嬢様としか呼ばない。
初めて会ったのにルーリッヒに抱いた恐怖心はもうなかった。
「俺のことも好きに呼んで」
「じゃあ……ルーって呼んでいい?」
「いいよ。ミリーちゃんはどうして泣いていたの?」
話していいか分からなかったけど、ルーから発せられる温かい雰囲気をすっかり信用してしまってつい話してしまった。
聖女の力を生まれた時から持ち、第一王子と婚約を結ばれたけどその王子に嫌われてしまい、厳しいだけの王妃教育と聖女教育が嫌で家に帰りたいと泣いていたことを。
話している間ルーは静かに聞いていた。話し終わると私の頭に手を伸ばし、髪を梳くように撫でた。
「そう。ミリーちゃんは頑張ったんだね。でも酷いね。婚約を結ばれたのはミリーちゃんのせいじゃないのに」
「しょうがないよ。聖女が生まれたら、聖女を守る為に王家に迎え入れないとならない決まりだから」
「ミリーちゃんはそれでいいの? 将来、必ず自分以外の好きな相手を見つけてミリーちゃんを蔑ろにするの確定な王子と結婚して」
「……私じゃ、どうにも出来ないよ。でも、不思議。ルーとは今会ったばかりなのに、もうこんなにお話してる」
「俺はミリーちゃんと話してみたいと思ったからね。ねえミリーちゃん。なら、こうしない?」
「うん?」
ルーの出した提案に私は驚いた。
「どう?」
「でも……もしそうなったら、お父様とお母様に迷惑が……」
「そうはならないよ」
「どうして分かるの?」
「何時か教えてあげる。それより、どうする? 俺に乗る? 乗らない?」
「……ルーは、私を大事にしてくれる?」
勿論、と頷いて見せたルーに私は提案に乗った。
ルーの提案とは、難しいことはない。私がルーを好きになること。
私に会う気も、交流を図ろうともしないスノー殿下は未来永劫私を好きになるのはないと断言した。あの殿下の態度だ、私もそう思う。仮に私自身が会いに行っても、どうせ迷惑そうな顔をして追い返されるのが目に見えている。
次の日から、私は王妃教育と聖女教育を頑張った。泣きそうになりながらも耐えた。ルーが約束してくれた。朝、昼、夜。必ず、一度は会いに来るからと。部屋に私以外の気配がないのを確認してルーは毎日会いに来てくれた。ルーと会うことだけが私の生き甲斐となっていた。
「ルー!」
「はは、ミリーちゃん可愛いね」
王城で暮らし初めて半年が経過した。スノー殿下を何とも思わなくなった。代わりに、他人がいないのを見計らって会いに来てくれるルーに会えるのがとても楽しみになっていた。音も気配もなくルーは現れる。
嬉しげに駆け寄ると両手を広げて待っててくれるルー。大好き、大好きだよルー。
「俺も大好きだよミリーちゃん」
私の心を読んだかのように答えるルー。ぎゅうっと抱き付くと更に強く抱き締めてくれる。ルーから伝わる温もりは私のもの。
暫く抱き合っていると「ソファーに座ろう」と体が離れ、その代わり手を繋いで一緒に座った。
ルーと会う時は、いつも沢山お話をする。今日はどんな朝食だったか、何を習ったかを。どんな話でも微笑を浮かべて聞いてくれるルー。
「さあミリーちゃん。今夜は何を話してくれるの?」
「あのね、ルー。いつもは私がルーに聞いてもらってるから、今日はルーが話して」
「俺が?」
「うん。ルーの話聞きたい」
「いいよ。でも、その前に確認したい。ミリーちゃんは、俺がどんな奴でも嫌いにならないでくれる?」
「どうしてそんなことを聞くの?」
「とても大事だからだよ」
真剣な眼差しで私の答えを待つルー。気のせいか、赤い瞳に微かな怯えがあった。
私はルーを全然知らない。どうやってこの部屋に来るのかも、何処の誰かかも知らない。
一つだけ言えるのは、ルーといるととても安心出来る。お父様やお母様がいないこの環境の中で唯一温もりを与えてくれる人。
「うん。嫌いにならないよ。ルーは私の大事な人だもん」
「……ありがとう」
怯えは消え、安堵した色を浮かべた赤い瞳が嬉しげに細められた。もっとこっちにおいで、と隙間を無くすように腕を引っ張られルーと密着した。ちょっと恥ずかしいけどルーは温かいから心地いい。
「実はね、ミリーちゃん俺は――」
この時、ルーが告白した事実に大層驚いた。同時にどうしてこの部屋に入って来れるのかが理解出来た。未来の王妃であり聖女でもある私の部屋の前には、常に護衛の騎士が待機し、扉自体にも結界が貼られている。侵入を防ぐのと脱走防止の為。城内の移動も常に侍女と護衛の騎士が付いて回る。
再度、怯えた色を赤い瞳に浮かべて私に訊ねた。嫌いにならない? と。答えは決まってる。
「ならないよ。ずっと傍にいて、励まして慰めてくれたのはルーだけだもん。ルーがいるから私、頑張っていられるの」
「そっか。良かった」
「……ずっとね、お父様とお母様と会えてないの。侍女の人にお願いしても手紙を出す位なら許されて、会いに来てって書いてるのに返事も来ないの」
「酷いね、ミリーちゃんの両親は」
「一度だけ、聖女教育が終わった後にお父様にお会いしたの。話しかけたらね、これから王妃に聖女になるのだから甘えるな、って……言われたの」
初めて殿下と顔合わせをした日のお父様の表情を思い出す。置いて行ってほしくないと裾を引っ張った私を見下ろす厳しい顔。きっと、もうお父様の中では私は娘ではなく、未来の王妃であり聖女であるのだろう。
「丸で生け贄だね。国の為とは言え、自分の娘を王家に捧げて見向きもしなくなるなんてね。まあでも安心して。俺がいるから。俺がミリーちゃんを絶対に幸せにする」
ルーが抱き締めてきた。ルーに抱き締められると安心する。うん、うん、と泣きながらルーの背中に腕を回した。
ルーの告白を聞いて何日か経った頃、婚約者であるスノー殿下に呼ばれた。急な呼び出しだった。どうしようと慌てる私に侍女は落ち着いた様子ですぐに準備をと告げた。侍女達に綺麗に着飾れた私は、スノー殿下が待っている城の庭園へと向かった。色鮮やかな花が咲き誇る花壇の前に佇むスノー殿下。
此方へ振り返った殿下は、侍女と護衛騎士に下がるよう命じた。
多分、遠くの方から見ているであろう侍女と護衛騎士だが気配はない。
私は初めての顔合わせ以来半年振りとなるスノー殿下との対面にかなり緊張していた。スノー殿下を慕う情も寄り添う情もない。ただ、どうしたら良いか分からないだけ。
「……」
「……」
お互いに無言。
何を話せば良いか必死に考えているとスノー殿下から声を出した。
「何故……何故、会いに来ない」
「え?」
発せられた言葉の意味を理解するのに時間がかかった。会いに来ない? 初対面の日、あんなにも私を拒絶していたのにこの人は何を言っているのだろう。
驚きの声を出した私に、前回時みたいな嫌悪はないが冷たい紫の瞳を向けていた。……その奥にある感情がどんな物なのか、私には読めない。
「王妃教育と聖女教育に精を出しているとは聞く。役目を果たすのはいい。だが、何故私に会いに来ない?」
「な、何故って……」
「婚約者の務めを果たすのもお前の役割だ」
「そ、だ、だって、殿下は最初、私との婚約を嫌がっていたではありませんかっ。嫌な相手に会いに来られたら、殿下だって嫌なはずですっ」
「っ! あ、あれは……!」
焦ったように声を出したスノー殿下に吃驚して、ついびくりと体が震えた。
苦しげに顔を歪めたスノー殿下だが、次の瞬間――突然無表情となった。一瞬の変わり様に背筋が凍った。
「あれは当然のことを言ったまでだ。お前みたいな聖女でなければ無価値な娘が王子である私と婚約を結ばれはしない」
「っ!!」
同じだ……初対面の時味わった恐怖がまた甦った。
怖い……怖い……怖いよルー……! 助けて……
その後の会話を私は覚えていない。前回と同じだ。いつの間にか部屋に戻った私だが、部屋にはルーがいて。ルーは私の姿を見るなり、目を見張り力強く抱き締めてくれた。
「ミリーちゃんっ、何て顔をしているんだい。何があったの?」
「る、るう、るー……怖い……怖い……殿下が、すごく……怖かった……!」
「殿下?」
安心させようと背中を撫でられる。気遣う手付きに安堵し、ルーから伝わる体温に更に安堵する。ルーは私をソファーまで連れると一緒に座って事情を話してと抱き締めたまま言った。私は途中で言葉を詰まらせながらも先程の出来事を話した。
「そう。怖かったねミリーちゃん」
「うん……でも、結局殿下がどうして私を呼んだのかが分からなかった」
まさか、あれを言いたい為に呼び出したのかな?
王となるスノー殿下も、日々忙しい毎日を送っていると聞く。
「……決めた。早めよう」
「? 早めるって何を?」
「前に、俺の言った提案を覚えてる?」
「うん。私がルーを好きになるってやつだよね」
「そう。で、だよミリーちゃん。ミリーちゃんは俺をどう思ってる?」
「好きだよ。大好きだよ」
「俺も大好きだよミリーちゃん」
叶うのなら、大好きになった人と一緒になりたい。
「叶えてあげよう。君の願い。俺の話を聞いて」
ルーが話した内容に私は「でも……」と俯いた。
「お父様とお母様にやっぱり迷惑が……」
「言おうか言わないか迷っていたんだけどね、この前アクアローズ伯爵家をこっそり見に行ったんだ」
「本当? お父様とお母様は元気にしてた?」
「……王妃教育と聖女教育を頑張っている君に、こんなことを言うのは酷だけど」
言い難そうに話し始めたルーの話に言葉を失った。私が城に移って数週間が経過して、お母様のお腹に新しい命が宿った。それ自体はとても素敵。だって、妹か弟が出来るんだよ。
問題はその後だった。
ある程度胎内で育った子の性別を魔法で検査してもらった所、その子は男の子。それも双子。元々、アクアローズ家の子は私一人だけだった。聖女として生まれた為に跡取りはいないも同然だった。だけど、双子の男児が宿り跡取りの問題はなくなった。
これもアクアローズ家にとっては目出度い話だ。しかし、お父様とお母様は私にこの事実を伝えるのはしないと決めた。
もう私はアクアローズ家の子じゃない。未来の王妃であり、繁栄と豊穣を司る聖女であるから。
身体中の体温が急速に冷えていく。何度手紙を出しても返事をくれないのはそのせい?
会いたいと願っても、もう私がアクアローズ家の子じゃないから会わないの?
なんで……なんで……
「ミリーちゃん」
呆然とする私をルーの赤い瞳が覗き込んだ。強い意思を宿した眼に息を呑む。
「俺はミリーちゃん達とは全く異なる種族だ。いや、敵と言ってもいい。
だけど、絶対にミリーちゃんを傷付けたりしない。
寂しい思いも、悲しい思いもさせない。
幸せにすると誓うから、どうか俺と一緒に『魔界』に来て。俺の花嫁になって」
『魔界』……
私達人間が住む世界を『人間界』
神様や天使様が住む世界を『天界』
人々に害を成す悪魔がすむ世界を『魔界』
初めてルーに自分が悪魔で、その中でも強い力を持つ魔王の子である魔族であると告げられた時は驚き過ぎて声が出なかった。聞けば、ルーは魔界の第二王子で、元々聖女の力を持った私を始末するよう魔王に命じられていたのだとか。
最初はそのまま殺そうと思ったけど、部屋で一人泣いている理由が気になって声を掛けて以降、ずっと私といたいと思うようになったのだとか。
直ぐにでも侍女や護衛騎士に悪魔がいると騒がなければならなかった。悪魔は何処へでも現れ、人に甘い誘惑を施し、最後には喰らう。聖女教育には、無論神に仕える教会の神官が加わる。人々の祈りあってこそ、神は強くいられるのだと。私達は常に神に祈りを捧げなければなrない。聖女である私が祈ると神は更に強くなると常に言われ続けた。
……しかし、元々聖女として生まれたせいで私は家族から引き離され、冷たいスノー殿下と婚約を結ばれた。何度も聖女の力はいらないと願った。今になるとあって良かったと思える。ルーと出会えたから。
ルーに出会えたのは私が聖女だから。聖女じゃなければ、きっと出会えていない。
「ミリーちゃんがいなくなってもヘーリオス王国は滅ばないよ。聖女がいない時代が何百年も続いた時だってあるんだ。必ずしも、聖女は必要じゃない。まあ、いたらその時代が極めて繁栄されるってだけ。ミリーちゃんが俺と来ても心配はない。君の生家には、来年双子が生まれるんだし」
「うん……。ルーと行くよ。でも、私が『魔界』に行って大丈夫なの? 私、まだまだ下手だけど聖女の力を使えるんだよ?」
「使わなければいいんだよ。ミリーちゃんの為に頑丈な結界で守られた部屋を用意する。危険な目には遭わせない。勿論、俺もずっと一緒にいる」
「ルーと一緒? ルーは絶対にずっと一緒にいてくれる?」
「いるよ。ミリーちゃん。俺の可愛いミリーちゃん」
ゆっくりと近付いてくる端整な顔。
初めて唇を重ねたのは、この日だった。
*ー*ー*ー*ー*
「なあに考えてるの? ミリーちゃん」
「ああぁっ!」
ルーが聖女、なんて言うからつい昔を思い出していた。表面を撫でるだけだった指が割れ目の間にある突起を摘まんだ。強い快楽と意識がこっちになかったのもあって、甲高い声を上げてしまった。
「俺がいるのに考え事をするなんて、拗ねちゃうよ?」
「あああん……ああっ! だ、だって、ルーが、聖女なんて言うから、んあ……! 思い出しちゃったのっ」
「事実じゃないか。まあ、国民に披露する大分前に俺がミリーちゃんを『魔界』に連れて帰って来たから、王国全体で君が聖女とは認識されていなかったけどね」
一番敏感な突起をルーの指が蜜を絡めて擦る。滑りがいいせいで余計気持ちいい。
「ミリーちゃんのここ、ぬるぬるできちんと摘まめないね。こんな淫乱な身体をしてる子が聖女だなんて、誰が信じるのかな?」
酷いよ、私を淫乱な子にしたのはルーなのに。
ルーは私の背後から退くと私をベッドに寝かせた。足を自分の方へ引き寄せると左右に大きく開かれた。顔を近付けたルーが何をしようとしてるか察し、駄目と言う前にルーの舌が中心を舐めた。
「だ、めえ、舐めちゃ、だめだよお」
「ん……? 嘘はいけないよ。ミリーちゃんは……俺に舐められるのが……んう……好きなんだから……」
「あ、あああ! あん、あああぁ……!!」
指で触られるよりも温かい舌で舐められるのが好き。気持ち良すぎて、おかしくなりそうだから。
指で弄っていた突起を舐めていたと思えば、ジュースを吸うように強く吸われて軽く意識が飛んだ。真っ白になりかけた意識は、中に入った指の動きによって現実に留まった。
ひっきりなしに喘ぎ声を上げる私に構わず、ルーは突起を舐めながら中に入れた指を動かすのを忘れない。
くちゅくちゅくちゅくちゅ……
耳を塞ぎたくなる水音が室内に響く。続いて響くのは私が快楽に溺れる声。溢れる蜜はお尻を伝ってシーツの上に大量に落ちる。
「ああ……可愛いよミリーちゃん。とても淫乱な俺の聖女」
「ああっ……くうん……あっああぁ……」
「今日も一杯、気持ち良くなろうね」
そう言って指の数を増やし、更に激しく動きを早めたルー。
その後、ルーのものを入れられる前に何度も達した私の意識は消えかかっていたのに、まだこれからだよ、と大きく膨張したルーのものを挿入され……ルーが満足するまで何十回も達するはめになりました。
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細かいことは気にしないでください!
他サイトにも掲載しています。
注意 ヒロインが腕を切る描写が出てきます。苦手な方はご自衛をお願いします。
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