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第六十七話 神罰の蒼炎
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雲一つなく澄んだ夜の空に三日月や星々が煌々と輝く真夜中の草原で、四つのピアスを付けた死体を前に立ち尽くす黒髪黒目の男が一人
ショウはアステルニア王都の屋敷に戻り、事の顛末を全て語り終わってすぐにベットへ行き眠ろうとしたのだが全く眠れずみなが寝ている中こっそりと抜け出していた
「こっちの世界はどうやるかわからないので、俺の故郷流でやらせてもらいますね」
俺は安らかな顔で眠る男、アラトラスのトップでありダルシエルの教皇、そしてピンゲラ王族最後の生き残りだったガスパヴィオに向かって白い息と共にそう告げると魔力を練り彼の遺体に火をつけた
蒼い炎が徐々に彼の体を包み暗い草原で炎の揺らめきをじっとみつめる
これで良かったのか? 俺は確かに親友との約束は果たした。 大事な人を殺そうとした奴ら、大事な親友を殺した奴ら、十分に殺すに値する奴らだ。 なのに何でこんなにすっきりしない?
ブライケルがストフの父で密かに息子を見守っていた事を知ったから?
モルガの両親の悲惨な殺され方を事を知ったから?
エグバードがピンゲラの民の為に罪の意識に苛まれながら手を汚していたことを知ったから?
ガスパヴィオの壮絶な過去を知ったから?
何が正しくて何が間違っている?
俺は何をする?
俺は何もしない?
わからない…
ショウの心はガスパヴィオを包む蒼い炎の揺らめきの様に揺れていた。
ガスパヴィオが最後にショウに託したのはピンゲラの奪還。 そしてもう一つ…
ショウは目を閉じてガスパヴィオの過去やガスパヴィオが見た現在のピンゲラの状況を思い出した
「うっ…」
胃から固形物が上ってきて思わず吐き出してしまう
「はぁ…冷静になって思い出すと正気を保つのだけでやっとじゃねぇーか… もしルーやフララ、俺の大事な誰かがこんな事になれば…」
一瞬でもそんな想像をすると激しい怒りと狂気に飲み込まれて全てを壊してしまいそうだった
「あなたはよく耐えれましたね…」
灰になっていく彼を見ながら考える。
彼は何故壊れなかったのか、それはピンゲラの民の事を考えていたからだろう。 悪人の癖になんて矛盾だよ全く…俺はあんた達を恨み切れないじゃないか…
「はぁ…俺の負けですよ…」
溜息をつき、完全に灰になった彼に向かって呟き彼の灰を亜空間にしまうと、骨が所々むき出しの空飛ぶ魔物が現れて、そこから女性が飛び降り綺麗な紫色の髪を靡かせながら音もなく着地した。 ただそれだけの事なのだが一つ一つの所作には気品が溢れており高貴な美しさを持つ女性がショウの元へと優美に歩を進める
「フララ…」
「やっぱり貴方だったのね。 蒼い炎が見えてそうなんじゃないかと思ったわ」
フララが俺の下まで来てニコっと笑った
「どうしてこんなところに?」
「貴方を追って来たんじゃない、あんな顔して出ていく貴方をほっとけないわ」
「起きてたんだ」
「私はいつも貴方の寝顔を見るまで寝ないのよ?」
フララが優しく俺の頬を撫でながら優しく微笑む
「…行くんでしょ?」
多くの言葉はいらない。 彼女はわかってる
「うん…」
「じゃあ私も一緒に行ってあげる」
俺の頬にそっと添えられた暖かい手に自分の手を重ねる
「ありがとう、心強いよ」
そう言って目を合わせると二人とも自然と笑みがこぼれた
「【眷属召喚】」
辺りの温度を上げてしまう程の巨大な赤い炎の渦が巻き起こり、それがグリフォンへと姿を変えた
「おぉ、主かどうしたのだ?」
ベリルが俺達に気付き声をかけてくる
「遅くに悪いね、乗せて欲しくてさ、後ちょっと手伝ってほしい事があって」
「いいだろう、まずは背中に乗るがいい」
そう言ってベリルは伏せるような体制をとり俺とフララが乗り込んだ
「それで何をすればいいのだ?」
「着いてから教えるよ」
俺はニコっと笑っていた
◇ ◇ ◇ ◇
「見張りって退屈だよなぁ、早くピンゲラに行きてぇーよ」
「あそこは俺達兵士は好き放題だからな、嫌がる女を無理やりっていうのがたまんねぇよな」
オウマの城壁に備え付けられた見張り台にいる兵士が、寒さで白くなった息を吐きだしながら下種な会話をしていると一人が異変に気付く
「ん? あそこなんか見えないか?」
「いや何も見えない、そろそろ日が昇ってくるからそしたら見えると思うけど」
「そうか? いーややっぱりなんかいる、あれは… 蛇?」
「こんな所に蛇型の魔物なんていねぇーよ、森じゃあるまいし」
そうやって話しているうちに日が昇り始め闇に隠れていた者たちが姿を現す
「おいおい冗談だろ?! 100体以上いるぞ! こっちに向かってきてる!」
「それにあの一番後ろの蛇が三体絡まってるやつトライデントスネークじゃないのか?!」
「SS級の魔物だぞ?!どうしてこんな所に! 早く敵襲の鐘を鳴らせ!」
闇に紛れていたせいで発見が遅れすぐそこ迄魔物達が迫っていた
男が鐘を鳴らそうとした瞬間とんできた何かに上半身を吹き飛ばされ臓物をまき散らしながら下半身が崩れ落ちいる
「ひっ!」
もう一人の男が驚きのあまりへたり込んで震えているとトライデントスネークが見張り台にいる男をのぞき込みながらチロチロと舌を出し話しかけた
「兵士の宿舎、貴族街、王族は何処にいる?」
「いるの?」
「いるだろう?」
その声は男を更に震え上がらせ床を湿らせたが、何とか聞かれた場所を指さした
「な、何をするのですか?」
男は震えながらなんとか声を絞り出す
「王族以外殺す。 主殿の命令なのでな」
「なのだ」
「なの?」
「そ、それじゃ…」
男は何か言おうとしていたが、全ていい終わる前に頭を吹き飛ばされ絶命した
その頃ドプロットでもオウマと同じような事態に陥っていた。
「何なのだあのグリフォンの群れは! 兵士はどうした?!」
城の中に丸々太った男の声が響く
「国王陛下、兵士の多くは薬のせいでまともに戦う事は出来ませぬ… 力のある者もダルシエルへと向かい現在のわが国では…」
と兵士の一人が説明をしていると貴族街の方から激しい爆発音がしたので、城の者達は慌てて窓から街をみる
「なんという事だ…」
貴族街の美しかった街並みは激しい炎に焼かれ悲惨な光景へ変わってしまっていた
「しかし何故あのグリフォンは達は住民を攻撃しない?」
「わかりません、国王陛下よ… ここから逃げた方がよいでしょう」
「…仕方あるまい、妻達や、子供達を連れてこい!」
そうして国王の親族は集められ逃げようとしたのだが、激しい衝撃と耳が痛くなる程の爆音と共に城の天井が吹き飛ばされむき出しの状態となってしまう
「お前がこの国の王か?」
赤い毛並みに鋭いくちばし、鉄をも切り裂くであろう爪を持った恐ろしいグリフォンが、低く恐怖を掻き立てるような声で冷たく見下ろし問いかけた
「そ、そうだ、お、お前は一体何がしたい?!」
国王はなくなった天井から見下ろすグリフォンに吠えた
「我は命令されただけだ、貴族と兵士を皆殺し。 王族は連れてこいとな」
「私達王族は殺されないのか?」
「ああ、我が主から殺すなと命じられている。 王族を集めろ」
良かった多分自分は殺されない。そう国王は思い安堵した表情を浮かべる
「わ、私はどうなるのですか?」
50代位のひげを生やした男がグリフォンに問いかけた
「お前はなんだ?」
「わ、私はこの国の宰相です! きっと役に立つので是非貴方の主人に…ん? うわぁぁああああ」
男が宰相と名乗ると、綺麗な一片の羽がゆっくりと男に向かって飛んで行き、頭に着地するや否や男を炎が包み一瞬で塵へと変えた
「主を待たせるわけにはいかん。 早くしろ」
「は、はい!」
苛立ちを感じさせるような物言いに国王は慌てて返事した
肉の焼ける匂いから来る吐き気を我慢しながら国王が親族を集めると、他の者は焼き殺され王族の者は足で掴まれ何処かへと連れ去られた…
◇ ◇ ◇ ◇
「さてやるか」
「早くしないとイレスティの朝ごはんに間に合わないわ」
「それはまずいな」
朝日が昇り始めた頃、腕を組みながらピンゲラの城壁へと近づく男女を見つけた兵士が見張り塔から声をかけた
「お前達何の用だ! この国へは今一般人は入国できんぞ!」
男は兵士を無視し、紫の髪の女性を少し下がらせる、男の動きはまるで見えず、剣が鞘にしまわれた音を認識し時には城壁が細切れにされ二人の侵入を許してしまう
「侵入者だ! 警報の鐘を鳴らせ!」
男がそういうと国中に侵入者が居る事が甲高い音と共に伝えられた
「うるさいわね」
「でもこれで勝手に集まってくれるよ、この国には今兵士はあまりいないみたいだけどね」
「まぁそうよね、ほら早速来たわよ」
切り裂いた城門の抜けると兵士達に一瞬で囲まれた
「何しに来た!」
「………」
「何…を…」
男が二度目の質問を投げかけようとしたところ、周りに居た兵士達諸共切られた事すら認識できずただの肉塊にされた
「【蒼炎弾】」
大量に量産された死体を焼くと辺りにたんぱく質が焼ける嫌な臭いが広がる
「あら以外と優しいのね?」
「あー邪魔だからね、ゴミみたいなもんだから」
何も感じない、こいつらはただのゴミだ
「そうね」
フララは俺の顔をただじっと見てるだけだった
そうして街を歩きまわり兵士を殺しては燃やしを繰り返す。 中にはこんな時だというのに服を引き裂き女を犯そうとしている者までいた。 兵士が終われはこの国に滞在している貴族達、同じ様に殺しては燃やす。 泣き叫び助けを乞うが無視して切り刻む。貴族の家族も殺す。俺は読み取った記憶で知ってる。 こいつらが住民に何をしているか。 気に入らなければ笑いながら住民を殺すような奴らだ。 俺だって笑いながら殺してもいいよな?
フララは何もせずただ俺の顔を見てるだけ
それでもいい。側にいてくれるだけで俺は壊れずに済む
断末魔と肉の焼ける音ばかりが聞こえていたが、気が付くと辺りはいつの間にか歓喜の声に包まれていた
住民達だ、兵士や貴族達の死体を何度も蹴りながら歓喜の声を上げ俺に感謝するものまでいる
止めてくれ、そんなんじゃない
粗方片付いた時には街中蒼い火海だ
そして俺は城へと入り、向かってくる者を切り伏せ燃やしながら進むと謁見の間らしき広い場所に出る。 そこには俺の記憶にもしっかり焼き付いてしまった二人の王子が俺を見て驚いた表情をしていた
「貴様か侵入者というのは!!」
「ここへ来るまでの衛兵はどうした?!」
二人の王子が俺に吠える
「殺したさ」
「なんだと?!」
「あの数をか?!」
こいつらあの時と同じで仲悪いはずなのに共通の敵がいる時だけは仲いいんだな
「な、何が目的だ!」
「うるさい…」
俺は速攻で二人の鳩尾を殴りうずくまらせる
俺が見下ろしていると城が激しく揺れ天井が吹き飛びベリルが顔をのぞかせた
「主よ、連れて来たぞ、」
「ありがとう」
そう言ってベリルは俺にオウマとドプロットの王族達を引き渡した
国王二人とその妻達と思われる女が7人
成人しているであろう男女が6人に、まだ10歳程の男の子と女の子が2人
「お、お前がこの事態を引き起こした元凶か! 貴様こんな事をしてただで…」
俺は騒ぐ豚の鳴き声を風魔法で声をかき消した
「無属性魔法【結束魔糸】」
【魔糸】の束で出来た頑丈な縄で10歳位の2人以外の手足を縛り、足の部分には導火線の様に何メートルか余裕を持たせてある
子供二人は【シーリングボックス】に閉じ込め死にゆく家族を見てもらう
縛り終わると亜空間からガスパヴィオの灰と紅血砂漠の砂を取り出した
「結晶土魔法【歯車】」
ガスパヴィオの灰と砂が混ざり合い二つの大きな硬化された歯車が出来上がり、そこに先程余裕を持たせた縄の部分を歯車に噛ませる
「【起動】」
ガコン
歯車がゆっくり回り出し王族達が引きずられる、彼、彼女らは忍び寄る死を感じ酷く動揺して奇声をあげているが、その声は心地いい
「お、おいお前何故こんな事をするんだ?!」
ガスパヴィオの家族を犯しまくっていた男の片割れの声が、奇声を堪能している俺の邪魔をした
「…お前も今までそうやって聞かれてきたんじゃないか?」
「………」
王子は黙ってしまった
歯車が回りまた全員が引きずられまた一歩死に近づく
一番最初に死ぬのはあの誰か知らない女だろうな、そんな事を思っているともう一人の王子が必死な様子で口を開く
「頼む! そこの女性は助けてくれ! 俺の妻なんだ! 彼女は関係ない! お腹には子供もいる!」
その言葉に俺はピクリと反応してしまう
「お前だって散々関係ない女を犯しては殺してきたじゃないか」
歯車が回る
「お腹の子供に罪はない!」
「その通り。わかってるじゃないか、お前はそんな女でも犯して殺したよな?」
「………お前誰だ」
「…自分でもわからない」
俺はゆっくりと首を振りながら言った
歯車がぶつかる音を鳴らしながら皆を引きづっていく
「お願いします!助けて下さい!」「嫌だ死にたくない!」「た、頼む!金でも女でも何でもやろう!だからこれを解いてくれ!」
部屋中に助けを求め懇願する声がいくつも重なり、それはまるで楽器の奏でる音色の様に素晴らしい物に思えた
俺はもっとその音色を堪能したくなり事前にフララと話していた事を実行する
「フララ頼む」
フララは俺の顔をじっとみる
どうしたんだろう? さっきからずっと俺の顔見てるな…
「わかったわ【黄泉の口づけ】」
背筋が凍るような霧が部屋を満たしそれが半透明な女性を模り、引きずられている者達一人一人に口づけしていくとさっきよりも激しい絶叫が部屋中を満たした
「うふふふ、いい声で鳴くわね」
フララが見せているのは死にたくなる手前まで何日も男達に暴行され犯され続けるという物だ、死にたくなってしまってはこの歯車がご褒美になってしまう
俺はついついお尻を手で隠してした… 俺にそういう趣味はないからな!
徐々に忍び寄る確実な死と、給えなく繰り返される暴力、凌辱され続ける苦しみが彼、彼女達を一度に襲い、彼らが奏でる音色は狂気一色となる
中には気絶する者もいたが、俺が水をかけ目を覚ますと再度その素晴らしい声で演奏を続けてくれた
そしてついに
ぐちゃ
「ぎゃーーーー!!」
女の足がガスパビィオの灰で出来た歯車に巻き込まれ骨が砕ける鈍い音と共に絶叫を上げる
「ビーネ!」
王子の片割れが叫ぶ
「助けてあなた…」
ぐちゃ
もう体の半分ほどまで巻き込まれており痛みに耐えるのでやっとの様だが何とか声を絞り出したようだ
歯車が合わさる場所の隙間からはすりつぶされた内臓や血液がじわりと流れ出てきていた
そして歯車は周りそのまま女の目は光を失う
「ビーネ… 酷い…何故こんな事…」
王子は泣いていた
「………」
そして一人また一人と悲痛な叫びを上げながら骨が潰れる鈍い音と共に歯車に潰されていき残るは俺も良く知る二人だ
「お前は悪魔だ…俺の大事な人を奪い… 俺達の子供さえも… それだって偽物だろ!」
それってなんだ?
「悪魔! 悪魔! 悪魔! 俺の家族を返せ!」
2人だけは泣き喚きながら最後迄俺を悪魔と呼びながら歯車に潰されて死んだ
役目を終えた歯車は血まみれでまるで歓喜の涙を流す様に血がぽたぽたと落ちている
「終わりましたよガスパヴィオさん…」
俺は血塗られた歯車に手を当て呟く。
ピンゲラの奪還、それともう一つの願いとは…出来るだけ苦しい殺し方での復讐だ
直接手を下したかっただろうけど、これで勘弁してください。
部屋には赤黒くなってしまった歯車と原形などもう残っていない潰された死体達
全てが終わってもフララは俺の顔をじっと黙ってみているだけだった
この日オウマとドプロット、ピンゲラの三国は滅び、悪政で苦しんでいた民は大いに喜び歓喜の声が国中を覆い尽くす。
ピンゲラに現れた黒髪黒目の男が使った蒼白い炎は神聖属性が宿っていた事から神罰の蒼炎と呼ばれ語り継がれる事となったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「ふぅ…」
俺はベリルの背中で朝日を浴びながらため息をついた
「朝ごはんには間に合いそうね」
フララは後ろで俺に抱き着いている
「そうだね… なぁ俺変わっちゃったのかな…」
「…貴方気付いてないの?」
「何が?」
「貴方ずっと泣いてたのよ?」
「え?」
フララが横から顔を出し俺の目から零れ堕ちた涙を指ですくった
俺いつから泣いてたんだろう
「ほら、貴方は何も変わってないじゃない。 最初からずっと辛そうだったわ」
「…沢山殺した。 罪のない人も」
「たかが数千でしょ? 私なんて何百万単位よ?」
「ははは、俺の婚約者は恐ろしいな」
「今更怖気づいた?」
フララの抱きしめる腕に力が入る
「そんな訳ないだろう」
俺はフララの手をギュッと握った
「それに貴方あの二人殺せなかったじゃない」
フララは【シーリングボックス】の中にいる10歳程の男女の方を向く
「…解」
俺が封印を解くと二人は怯える様に抱き合い震えていた
「お兄ちゃん、私達も殺すの?」
女の子が震えながら声を絞り出す
「…殺さない。 お前達俺が憎いか?」
家族を目の前で殺されたんだ、憎いだろう
「…わからない… でもお父さん達は皆に恨まれてた、お母さん達もお姉ちゃん達も… そんな所にいるの怖かった… ほっとしてる方が強いよ…」
「僕の所もそうだよ… 皆に恨まれてた… 僕も怖かった…ずっと一人だったんだ…」
「そうか…怯えてたんだね」
殺せなかったんじゃない… 俺は憎んでほしかったんだ… 罰を与えて欲しかったんだ… 俺が俺であるために…
「お兄ちゃん何で泣いてるの? 苦しいの?」
震える手で子供が俺の頬にそっと手を置く
胸の内から言葉に出来ない感情が沸きあがり涙という形で目から零れだす
「ごめん… ごめん… ごめん…」
俺は罪の意識に耐えきれず、懺悔の言葉を零しながら涙を流して許しを請うように彼女を抱きしめ泣いていた
ショウはアステルニア王都の屋敷に戻り、事の顛末を全て語り終わってすぐにベットへ行き眠ろうとしたのだが全く眠れずみなが寝ている中こっそりと抜け出していた
「こっちの世界はどうやるかわからないので、俺の故郷流でやらせてもらいますね」
俺は安らかな顔で眠る男、アラトラスのトップでありダルシエルの教皇、そしてピンゲラ王族最後の生き残りだったガスパヴィオに向かって白い息と共にそう告げると魔力を練り彼の遺体に火をつけた
蒼い炎が徐々に彼の体を包み暗い草原で炎の揺らめきをじっとみつめる
これで良かったのか? 俺は確かに親友との約束は果たした。 大事な人を殺そうとした奴ら、大事な親友を殺した奴ら、十分に殺すに値する奴らだ。 なのに何でこんなにすっきりしない?
ブライケルがストフの父で密かに息子を見守っていた事を知ったから?
モルガの両親の悲惨な殺され方を事を知ったから?
エグバードがピンゲラの民の為に罪の意識に苛まれながら手を汚していたことを知ったから?
ガスパヴィオの壮絶な過去を知ったから?
何が正しくて何が間違っている?
俺は何をする?
俺は何もしない?
わからない…
ショウの心はガスパヴィオを包む蒼い炎の揺らめきの様に揺れていた。
ガスパヴィオが最後にショウに託したのはピンゲラの奪還。 そしてもう一つ…
ショウは目を閉じてガスパヴィオの過去やガスパヴィオが見た現在のピンゲラの状況を思い出した
「うっ…」
胃から固形物が上ってきて思わず吐き出してしまう
「はぁ…冷静になって思い出すと正気を保つのだけでやっとじゃねぇーか… もしルーやフララ、俺の大事な誰かがこんな事になれば…」
一瞬でもそんな想像をすると激しい怒りと狂気に飲み込まれて全てを壊してしまいそうだった
「あなたはよく耐えれましたね…」
灰になっていく彼を見ながら考える。
彼は何故壊れなかったのか、それはピンゲラの民の事を考えていたからだろう。 悪人の癖になんて矛盾だよ全く…俺はあんた達を恨み切れないじゃないか…
「はぁ…俺の負けですよ…」
溜息をつき、完全に灰になった彼に向かって呟き彼の灰を亜空間にしまうと、骨が所々むき出しの空飛ぶ魔物が現れて、そこから女性が飛び降り綺麗な紫色の髪を靡かせながら音もなく着地した。 ただそれだけの事なのだが一つ一つの所作には気品が溢れており高貴な美しさを持つ女性がショウの元へと優美に歩を進める
「フララ…」
「やっぱり貴方だったのね。 蒼い炎が見えてそうなんじゃないかと思ったわ」
フララが俺の下まで来てニコっと笑った
「どうしてこんなところに?」
「貴方を追って来たんじゃない、あんな顔して出ていく貴方をほっとけないわ」
「起きてたんだ」
「私はいつも貴方の寝顔を見るまで寝ないのよ?」
フララが優しく俺の頬を撫でながら優しく微笑む
「…行くんでしょ?」
多くの言葉はいらない。 彼女はわかってる
「うん…」
「じゃあ私も一緒に行ってあげる」
俺の頬にそっと添えられた暖かい手に自分の手を重ねる
「ありがとう、心強いよ」
そう言って目を合わせると二人とも自然と笑みがこぼれた
「【眷属召喚】」
辺りの温度を上げてしまう程の巨大な赤い炎の渦が巻き起こり、それがグリフォンへと姿を変えた
「おぉ、主かどうしたのだ?」
ベリルが俺達に気付き声をかけてくる
「遅くに悪いね、乗せて欲しくてさ、後ちょっと手伝ってほしい事があって」
「いいだろう、まずは背中に乗るがいい」
そう言ってベリルは伏せるような体制をとり俺とフララが乗り込んだ
「それで何をすればいいのだ?」
「着いてから教えるよ」
俺はニコっと笑っていた
◇ ◇ ◇ ◇
「見張りって退屈だよなぁ、早くピンゲラに行きてぇーよ」
「あそこは俺達兵士は好き放題だからな、嫌がる女を無理やりっていうのがたまんねぇよな」
オウマの城壁に備え付けられた見張り台にいる兵士が、寒さで白くなった息を吐きだしながら下種な会話をしていると一人が異変に気付く
「ん? あそこなんか見えないか?」
「いや何も見えない、そろそろ日が昇ってくるからそしたら見えると思うけど」
「そうか? いーややっぱりなんかいる、あれは… 蛇?」
「こんな所に蛇型の魔物なんていねぇーよ、森じゃあるまいし」
そうやって話しているうちに日が昇り始め闇に隠れていた者たちが姿を現す
「おいおい冗談だろ?! 100体以上いるぞ! こっちに向かってきてる!」
「それにあの一番後ろの蛇が三体絡まってるやつトライデントスネークじゃないのか?!」
「SS級の魔物だぞ?!どうしてこんな所に! 早く敵襲の鐘を鳴らせ!」
闇に紛れていたせいで発見が遅れすぐそこ迄魔物達が迫っていた
男が鐘を鳴らそうとした瞬間とんできた何かに上半身を吹き飛ばされ臓物をまき散らしながら下半身が崩れ落ちいる
「ひっ!」
もう一人の男が驚きのあまりへたり込んで震えているとトライデントスネークが見張り台にいる男をのぞき込みながらチロチロと舌を出し話しかけた
「兵士の宿舎、貴族街、王族は何処にいる?」
「いるの?」
「いるだろう?」
その声は男を更に震え上がらせ床を湿らせたが、何とか聞かれた場所を指さした
「な、何をするのですか?」
男は震えながらなんとか声を絞り出す
「王族以外殺す。 主殿の命令なのでな」
「なのだ」
「なの?」
「そ、それじゃ…」
男は何か言おうとしていたが、全ていい終わる前に頭を吹き飛ばされ絶命した
その頃ドプロットでもオウマと同じような事態に陥っていた。
「何なのだあのグリフォンの群れは! 兵士はどうした?!」
城の中に丸々太った男の声が響く
「国王陛下、兵士の多くは薬のせいでまともに戦う事は出来ませぬ… 力のある者もダルシエルへと向かい現在のわが国では…」
と兵士の一人が説明をしていると貴族街の方から激しい爆発音がしたので、城の者達は慌てて窓から街をみる
「なんという事だ…」
貴族街の美しかった街並みは激しい炎に焼かれ悲惨な光景へ変わってしまっていた
「しかし何故あのグリフォンは達は住民を攻撃しない?」
「わかりません、国王陛下よ… ここから逃げた方がよいでしょう」
「…仕方あるまい、妻達や、子供達を連れてこい!」
そうして国王の親族は集められ逃げようとしたのだが、激しい衝撃と耳が痛くなる程の爆音と共に城の天井が吹き飛ばされむき出しの状態となってしまう
「お前がこの国の王か?」
赤い毛並みに鋭いくちばし、鉄をも切り裂くであろう爪を持った恐ろしいグリフォンが、低く恐怖を掻き立てるような声で冷たく見下ろし問いかけた
「そ、そうだ、お、お前は一体何がしたい?!」
国王はなくなった天井から見下ろすグリフォンに吠えた
「我は命令されただけだ、貴族と兵士を皆殺し。 王族は連れてこいとな」
「私達王族は殺されないのか?」
「ああ、我が主から殺すなと命じられている。 王族を集めろ」
良かった多分自分は殺されない。そう国王は思い安堵した表情を浮かべる
「わ、私はどうなるのですか?」
50代位のひげを生やした男がグリフォンに問いかけた
「お前はなんだ?」
「わ、私はこの国の宰相です! きっと役に立つので是非貴方の主人に…ん? うわぁぁああああ」
男が宰相と名乗ると、綺麗な一片の羽がゆっくりと男に向かって飛んで行き、頭に着地するや否や男を炎が包み一瞬で塵へと変えた
「主を待たせるわけにはいかん。 早くしろ」
「は、はい!」
苛立ちを感じさせるような物言いに国王は慌てて返事した
肉の焼ける匂いから来る吐き気を我慢しながら国王が親族を集めると、他の者は焼き殺され王族の者は足で掴まれ何処かへと連れ去られた…
◇ ◇ ◇ ◇
「さてやるか」
「早くしないとイレスティの朝ごはんに間に合わないわ」
「それはまずいな」
朝日が昇り始めた頃、腕を組みながらピンゲラの城壁へと近づく男女を見つけた兵士が見張り塔から声をかけた
「お前達何の用だ! この国へは今一般人は入国できんぞ!」
男は兵士を無視し、紫の髪の女性を少し下がらせる、男の動きはまるで見えず、剣が鞘にしまわれた音を認識し時には城壁が細切れにされ二人の侵入を許してしまう
「侵入者だ! 警報の鐘を鳴らせ!」
男がそういうと国中に侵入者が居る事が甲高い音と共に伝えられた
「うるさいわね」
「でもこれで勝手に集まってくれるよ、この国には今兵士はあまりいないみたいだけどね」
「まぁそうよね、ほら早速来たわよ」
切り裂いた城門の抜けると兵士達に一瞬で囲まれた
「何しに来た!」
「………」
「何…を…」
男が二度目の質問を投げかけようとしたところ、周りに居た兵士達諸共切られた事すら認識できずただの肉塊にされた
「【蒼炎弾】」
大量に量産された死体を焼くと辺りにたんぱく質が焼ける嫌な臭いが広がる
「あら以外と優しいのね?」
「あー邪魔だからね、ゴミみたいなもんだから」
何も感じない、こいつらはただのゴミだ
「そうね」
フララは俺の顔をただじっと見てるだけだった
そうして街を歩きまわり兵士を殺しては燃やしを繰り返す。 中にはこんな時だというのに服を引き裂き女を犯そうとしている者までいた。 兵士が終われはこの国に滞在している貴族達、同じ様に殺しては燃やす。 泣き叫び助けを乞うが無視して切り刻む。貴族の家族も殺す。俺は読み取った記憶で知ってる。 こいつらが住民に何をしているか。 気に入らなければ笑いながら住民を殺すような奴らだ。 俺だって笑いながら殺してもいいよな?
フララは何もせずただ俺の顔を見てるだけ
それでもいい。側にいてくれるだけで俺は壊れずに済む
断末魔と肉の焼ける音ばかりが聞こえていたが、気が付くと辺りはいつの間にか歓喜の声に包まれていた
住民達だ、兵士や貴族達の死体を何度も蹴りながら歓喜の声を上げ俺に感謝するものまでいる
止めてくれ、そんなんじゃない
粗方片付いた時には街中蒼い火海だ
そして俺は城へと入り、向かってくる者を切り伏せ燃やしながら進むと謁見の間らしき広い場所に出る。 そこには俺の記憶にもしっかり焼き付いてしまった二人の王子が俺を見て驚いた表情をしていた
「貴様か侵入者というのは!!」
「ここへ来るまでの衛兵はどうした?!」
二人の王子が俺に吠える
「殺したさ」
「なんだと?!」
「あの数をか?!」
こいつらあの時と同じで仲悪いはずなのに共通の敵がいる時だけは仲いいんだな
「な、何が目的だ!」
「うるさい…」
俺は速攻で二人の鳩尾を殴りうずくまらせる
俺が見下ろしていると城が激しく揺れ天井が吹き飛びベリルが顔をのぞかせた
「主よ、連れて来たぞ、」
「ありがとう」
そう言ってベリルは俺にオウマとドプロットの王族達を引き渡した
国王二人とその妻達と思われる女が7人
成人しているであろう男女が6人に、まだ10歳程の男の子と女の子が2人
「お、お前がこの事態を引き起こした元凶か! 貴様こんな事をしてただで…」
俺は騒ぐ豚の鳴き声を風魔法で声をかき消した
「無属性魔法【結束魔糸】」
【魔糸】の束で出来た頑丈な縄で10歳位の2人以外の手足を縛り、足の部分には導火線の様に何メートルか余裕を持たせてある
子供二人は【シーリングボックス】に閉じ込め死にゆく家族を見てもらう
縛り終わると亜空間からガスパヴィオの灰と紅血砂漠の砂を取り出した
「結晶土魔法【歯車】」
ガスパヴィオの灰と砂が混ざり合い二つの大きな硬化された歯車が出来上がり、そこに先程余裕を持たせた縄の部分を歯車に噛ませる
「【起動】」
ガコン
歯車がゆっくり回り出し王族達が引きずられる、彼、彼女らは忍び寄る死を感じ酷く動揺して奇声をあげているが、その声は心地いい
「お、おいお前何故こんな事をするんだ?!」
ガスパヴィオの家族を犯しまくっていた男の片割れの声が、奇声を堪能している俺の邪魔をした
「…お前も今までそうやって聞かれてきたんじゃないか?」
「………」
王子は黙ってしまった
歯車が回りまた全員が引きずられまた一歩死に近づく
一番最初に死ぬのはあの誰か知らない女だろうな、そんな事を思っているともう一人の王子が必死な様子で口を開く
「頼む! そこの女性は助けてくれ! 俺の妻なんだ! 彼女は関係ない! お腹には子供もいる!」
その言葉に俺はピクリと反応してしまう
「お前だって散々関係ない女を犯しては殺してきたじゃないか」
歯車が回る
「お腹の子供に罪はない!」
「その通り。わかってるじゃないか、お前はそんな女でも犯して殺したよな?」
「………お前誰だ」
「…自分でもわからない」
俺はゆっくりと首を振りながら言った
歯車がぶつかる音を鳴らしながら皆を引きづっていく
「お願いします!助けて下さい!」「嫌だ死にたくない!」「た、頼む!金でも女でも何でもやろう!だからこれを解いてくれ!」
部屋中に助けを求め懇願する声がいくつも重なり、それはまるで楽器の奏でる音色の様に素晴らしい物に思えた
俺はもっとその音色を堪能したくなり事前にフララと話していた事を実行する
「フララ頼む」
フララは俺の顔をじっとみる
どうしたんだろう? さっきからずっと俺の顔見てるな…
「わかったわ【黄泉の口づけ】」
背筋が凍るような霧が部屋を満たしそれが半透明な女性を模り、引きずられている者達一人一人に口づけしていくとさっきよりも激しい絶叫が部屋中を満たした
「うふふふ、いい声で鳴くわね」
フララが見せているのは死にたくなる手前まで何日も男達に暴行され犯され続けるという物だ、死にたくなってしまってはこの歯車がご褒美になってしまう
俺はついついお尻を手で隠してした… 俺にそういう趣味はないからな!
徐々に忍び寄る確実な死と、給えなく繰り返される暴力、凌辱され続ける苦しみが彼、彼女達を一度に襲い、彼らが奏でる音色は狂気一色となる
中には気絶する者もいたが、俺が水をかけ目を覚ますと再度その素晴らしい声で演奏を続けてくれた
そしてついに
ぐちゃ
「ぎゃーーーー!!」
女の足がガスパビィオの灰で出来た歯車に巻き込まれ骨が砕ける鈍い音と共に絶叫を上げる
「ビーネ!」
王子の片割れが叫ぶ
「助けてあなた…」
ぐちゃ
もう体の半分ほどまで巻き込まれており痛みに耐えるのでやっとの様だが何とか声を絞り出したようだ
歯車が合わさる場所の隙間からはすりつぶされた内臓や血液がじわりと流れ出てきていた
そして歯車は周りそのまま女の目は光を失う
「ビーネ… 酷い…何故こんな事…」
王子は泣いていた
「………」
そして一人また一人と悲痛な叫びを上げながら骨が潰れる鈍い音と共に歯車に潰されていき残るは俺も良く知る二人だ
「お前は悪魔だ…俺の大事な人を奪い… 俺達の子供さえも… それだって偽物だろ!」
それってなんだ?
「悪魔! 悪魔! 悪魔! 俺の家族を返せ!」
2人だけは泣き喚きながら最後迄俺を悪魔と呼びながら歯車に潰されて死んだ
役目を終えた歯車は血まみれでまるで歓喜の涙を流す様に血がぽたぽたと落ちている
「終わりましたよガスパヴィオさん…」
俺は血塗られた歯車に手を当て呟く。
ピンゲラの奪還、それともう一つの願いとは…出来るだけ苦しい殺し方での復讐だ
直接手を下したかっただろうけど、これで勘弁してください。
部屋には赤黒くなってしまった歯車と原形などもう残っていない潰された死体達
全てが終わってもフララは俺の顔をじっと黙ってみているだけだった
この日オウマとドプロット、ピンゲラの三国は滅び、悪政で苦しんでいた民は大いに喜び歓喜の声が国中を覆い尽くす。
ピンゲラに現れた黒髪黒目の男が使った蒼白い炎は神聖属性が宿っていた事から神罰の蒼炎と呼ばれ語り継がれる事となったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「ふぅ…」
俺はベリルの背中で朝日を浴びながらため息をついた
「朝ごはんには間に合いそうね」
フララは後ろで俺に抱き着いている
「そうだね… なぁ俺変わっちゃったのかな…」
「…貴方気付いてないの?」
「何が?」
「貴方ずっと泣いてたのよ?」
「え?」
フララが横から顔を出し俺の目から零れ堕ちた涙を指ですくった
俺いつから泣いてたんだろう
「ほら、貴方は何も変わってないじゃない。 最初からずっと辛そうだったわ」
「…沢山殺した。 罪のない人も」
「たかが数千でしょ? 私なんて何百万単位よ?」
「ははは、俺の婚約者は恐ろしいな」
「今更怖気づいた?」
フララの抱きしめる腕に力が入る
「そんな訳ないだろう」
俺はフララの手をギュッと握った
「それに貴方あの二人殺せなかったじゃない」
フララは【シーリングボックス】の中にいる10歳程の男女の方を向く
「…解」
俺が封印を解くと二人は怯える様に抱き合い震えていた
「お兄ちゃん、私達も殺すの?」
女の子が震えながら声を絞り出す
「…殺さない。 お前達俺が憎いか?」
家族を目の前で殺されたんだ、憎いだろう
「…わからない… でもお父さん達は皆に恨まれてた、お母さん達もお姉ちゃん達も… そんな所にいるの怖かった… ほっとしてる方が強いよ…」
「僕の所もそうだよ… 皆に恨まれてた… 僕も怖かった…ずっと一人だったんだ…」
「そうか…怯えてたんだね」
殺せなかったんじゃない… 俺は憎んでほしかったんだ… 罰を与えて欲しかったんだ… 俺が俺であるために…
「お兄ちゃん何で泣いてるの? 苦しいの?」
震える手で子供が俺の頬にそっと手を置く
胸の内から言葉に出来ない感情が沸きあがり涙という形で目から零れだす
「ごめん… ごめん… ごめん…」
俺は罪の意識に耐えきれず、懺悔の言葉を零しながら涙を流して許しを請うように彼女を抱きしめ泣いていた
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