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第六十五話 ククク…奴は四天王の中でも最強
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茶色いシミがこびりついた広く白い空間。
その白い空間には二体の死体が転がっており、役目を終えて体内から流れ出した紅い液体が至る所に広がっている。
そんな異常空間でも尚の事異常に感じる場所、肉片や臓物、生気を感じる目玉等が散乱している所にショウとストリンデは2人で座り込み、ストリンデがショウの丸まった背中に額を当てていた。
パンッ!
「もう大丈夫! 行こう!」
リンデが俺の背中を叩いて元気そうに言葉を発した
「本当に大丈夫?」
「おやおやー?? もしかして普段強い女が弱みを見せるとコロっといくタイプ? うりうりー」
俺が心配そうに顔だけ振り向いて声を掛けると、からかう様に答え頭を背中にグリグリと押し付けてくる
「もしそれが女性ならね、ゴリラ趣味じゃないんで悪いな」
「普通そんな事女の子に言う?」
「リンデにしか言わないかな」
「あーそうですか! ほんっっっと失礼しちゃうわ!」
そう言うとリンデは立ち上がったので俺も立ち上がると、彼女は生活魔術で体と服を綺麗にしながら両親の亡骸を眺めていた
「…リンデ、遺体は持って帰る?」
「うん、お願いしてもいい?」
「いいよ」
「ありがとうね、色々と」
今度の笑顔は悲壮感などはなく、人々を照らす太陽の様な眩しい笑顔だった
そもそもリンデは光属性なんだよなぁ、俺みたいな陰キャ闇属性には眩しい過ぎる
「お、おう…」
つい見惚れてしまい、誤魔化す様に頬をかき遺体を亜空間にしまった
「兄さん! 下から沢山の核の破片が上がってくるのを感じるよ! 」
レデリが慌てた様子で俺たちのいる白い部屋に入ってくる
「本格的な殺しに来たってことだな」
リンデとレデリが神妙に頷いた
「上に行こう、教皇は上にいるんだろ? 道わかる?」
「多分そうだと思うけど、道までは知らないわ。 ここに来たのだって初めてだし」
となるとどうにか階段を探すしかないな…
「あそこから出て階段を探そう」
俺達は入って来た所とは逆の扉から出て上へと向かう階段を探していると、大きな出窓を発見した
「二人ともちょっと待って、ここから空を飛んで上に行けばよくね?!」
「おー兄さんのスカスカの頭にしてはいい考えなんじゃない?」
誰が飴玉サイズの脳みそじゃ
「また私は汚されるのね…」
綺麗なゴリラから汚れたゴリラになるだけだから安心しろ
「【フライ】」
二人を脇に抱えて出窓から塔の上の方に向かって飛び立つ
一体何階建てだよこれ、40階ぐらいはあるんじゃないか?
外壁の周りを空を飛びながらぐるぐる回っていると五体程の空飛ぶ魔物がうなり声を上げながらこちらに向かってくる
「兄さん魔物から違和感を感じるよ、前にいたソードドラゴンと同じ!」
って事は核を埋め込まれて操られてる魔物か
「俺達が空から来るって事もバレてるって事か…ってうわっ!」
鋭利なくちばしを持つ全長三メート程の凶暴な魔物五体が、俺達にその殺傷能力の高いくちばしを突き立て突進してきたのを何とか躱す
「ちょっとあんた何処触ってんのよ! そこは…ぃゃん! ダメだってば!」
「兄さん! そういう事はせめてベットの上でやってくれない? 初めてが空中とか斬新過ぎるよ!」
「うるさいなー! 俺は今…よっと… 避けるのに必死なんだよ! お前ら二人を抱えて動きずらいんだぞ!」
俺は二人を両脇に抱えている為避けるので精いっぱいだ
こちとらガチなんだよ、じゃないとどこぞのアイドルグループみたいに空中分解してしまうからな!
『世界に一つだけのエメだよ!』
何をいっとるんだね君は
「何よ重たいって言いたいの?! ちょっと左から来てるわよ!」
「わかってるよっ! っておいマジかよ! あれ食らったら風穴空くぞ!」
俺は何とか鋭利なくちばしを避けたが、そのくちばしは塔の壁面に深く突き刺さり、食らえば間違いなく致命傷になる事を予感させゾッとした
俺は螺旋状に塔の周りを上昇していく
「兄さんあそこ!」
レデリが指さした方に大きな出窓を発見!
「みんな頭押さえろ!」
「キャーー」
「ちょっとあんたーー」
やっと見つけた上層階の大きな出窓に体当りして激しい破砕音と共に塔内に転がり込んだ
塔の中に入ったからといって逃がしてくれるはずもなく五体とも猛スピードで鋭利なくちばしを煌めかせこちらにダーツの如く飛んできていた
「蒼炎魔法【蒼炎弾】」
五発連射で飛んでくる魔物に蒼い炎の弾丸を打ち込んで蒼白い炎で焼き尽くした
前の蒼い炎とはどこか違う、麒麟が纏っていた蒼い炎とどこか似てる
「やっぱり! さっきも思ったけどあんたのその蒼い炎、神聖属性が混じってるわよ」
「え? 何で?」
「腕輪の効果ね、神聖属性の適正は後天的にある程度得ることが出来るの。 その方法は神聖な物に長い間触れる事。 あんたずっと腕輪つけてたんでしょ?」
「だからか。 神はいないのに神聖属性ってのも変な話だな」
「神聖属性っていうのは邪悪な力に対抗する力の総称みたいなもんだからね、神とは無関係なのよ」
リンデが苦笑いをしていた、まだ完全に割り切れた訳じゃないのだろう
「そっか」
「兄さんあそこに階段があるよ!」
レデリが指さした先には下へと続く階段と上に繋がる長い階段があった
よし行こう! 俺達が階段の方に駆け出すと下に下る階段から大量の魔物が沸き出来て、先程飛び込んできた窓からもちらほら飛んでくる魔物の姿が見える
俺は先行して道を開ける為に魔物を切りまくるがひっきりなしに下から沸いてくるので終わりが見えない
「くそ、全部倒してたらきりがない、ここは二人を呼ぶか【眷属召喚】」
激しい放電現象が起こりそれが人の形をとると、ルチルが現れた
続いていつもの大きな両開きの骨の扉が開かれ、その先からお気に入りの日傘を差したフララが現れる。
登場する前にワザワザ日傘を広げる所を想像するとなんか可愛いな
「随分待ったわよ、それでこの状況は何? まるで魔物がゴミのようね」
フララはいつものように日傘を回しながら大量に沸いて出た魔物を見て、どこかの大佐のような事を言う
すると魔物が激しい閃光と共にレーザーの様な物を射出してきたのでさっと横に避けた
「目がぁ! 目がぁ!」
ルチルは避けたが光を直接見てしまったようだ。 フララのせいだぞ! フララがあんなこというから!
目を抑えながら狼耳をピコピコさせてお尻と尻尾をフリフリしてる姿は戦場とは思えない程愛らしい
「上に行きたいんだけどこいつらが邪魔でさ、それに追ってきても面倒だから二人に足止めを頼みたい!」
「なんだそんな事、お安い御用よ。」
「任せるのじゃ!」
「ここじゃ魔素や魔力は使えないけど大丈夫?」
「私の【腐敗】はスキルだから問題ないわ」
「わらわも鍛えてるから問題ないのじゃ!」
「流石に頼もしいね、それじゃあ行くわ! また後でね」
そう言って俺達三人は階段を駆け上がると下から魔物の絶叫や、骨が地面に転がる音が引っ切り無しに三人の耳に届いた
「うわーご愁傷様です」
「あの二人なら問題なさそうね」
「フララ姉さんとるっちーは私達のパーティで最強の二人だからね」
二人とも魔力でぐんぐん力を伸ばしてるし、本気で殺し合ったら実際俺勝てるのか?
俺ももっと強くならないといけないなぁ…
そのまま三人で階段を駆け上がり進むと広い部屋に出るが、部屋一面を狂信者らしい大群が覆い尽くしていた
『エメ眠らせれるか?』
『出来るけど二人も巻き込むよ?』
『マジか…』
「どうするか…」
「じゃあここは私達が残るわ」
「兄さんは先に行って、外から見た様子じゃ最上階まで後二三階程度だよ」
この数はまずいだろ… 1000人以上は部屋にいる様に見える
「大丈夫階段を利用して戦えば囲まれる事もない」
天才か!
「流石俺の妹!」
「それは全く誉め言葉ではないけど、早く決着つけてきて。 レオナルド兄さんの為にも」
レデリはそう言って拳を突き出して来た
「あぁ、行ってくるよ」
俺はレデリの突き出した拳に自分の拳を合わせて長い階段を駆け上がった
すると無暗矢鱈に広い部屋にでる。 その部屋には扉が一つ。 そしてその前には
「久しぶりですね」
顎に手を置き何度も頷いていた。 彼の癖だ
「エグバードさんですか…」
「スラムの地下以来ですね。 貴方とは必ず決着をつける時が来ると思っていましたよ」
「俺もですよ」
「今回は逃げませんし、負けるわけにもいきません。 という事で…」
彼は液体の入った瓶を取り出しそれを一気に飲み干し瓶を捨てると、何もない部屋に転がる音が部屋に鳴り響いた
「それは?」
「これはパラメーターを10倍程引き上げる薬ですよ」
そういうとエグバードから部屋全体を揺るがすような力が溢れ出す
肌にびりびりと感じる威圧感。 能力ではバフをかけても確実に下だろうな…
超一流の薬師のレデリが作った物でも全身筋肉痛で暫く動けなくなる代物だった。
となると…
「何を代償にするんですか?」
「察しがいいですね。 まぁもう戦う事はできないでしょう」
いつもの様に頷いているがその顔に悲壮感はない
「そうですか…」
この人ともやはり殺し合うしかないのか…
バフを掛け結晶障壁を張り、【リジェネーション】を掛けてから【晶刀・紅玉・蒼玉】を出した
「『【フィールド展開・玄冬・月下美人】』」
床に手を置くとただっぴろい部屋一面に落ち葉が敷き詰められ、冬木が天井まで無数に生え、裸の樹に一夜限りしか咲かない儚い月下美人が不自然に咲き誇っていた
「相変わらず凄い魔術ですね、自然を操る魔術なんて聞いた事ありませんよ」
そりゃ大精霊様の力だからな
『えっへん』
エメのドヤ顔が見えたような気がして苦笑いしてしまう
「ふふふ、余裕ですねではこちらから行きますよ!」
煽ったみたいになってしまった! まだ心の準備が!
「 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 土魔術【サンドストーム】 」
「 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 水魔術【ウォーター】」
「複合魔術【マッドストーム】」
エグバードが詠唱を速攻で終え、術が完成すると大量の泥が暴風と共に俺の下へ飛んできたので俺は急いで樹の上へと退避したが、部屋中が泥にまみれてしまう
枯れ葉も泥にまみれで使えないな。 流石元ギルドマスターと言った所か
「貴方の剣は足を殺されては威力も半減なのではないですか?」
正解だ。 俺の流派の元になった雪月風花流は速さと技術の剣、速さを出すにはやはり足場は大事なのだ
だが俺はそもそも魔法使いだ!
「水魔法【アイスジャベリン】」
樹の上から放った大量の氷の槍がエグバードに向かって飛んでいくが破砕音と共に粉々に粉砕された
「おいおいまじかよ、筋肉ゴリラはうちの聖女だけで勘弁してくれ」
「流石に十倍ですからね、あれ位ならこのロッドでも砕けますよ」
「クソが、水魔法【氷柱】」
およそ三メートル程ある巨大な氷柱がエグバードを襲う
…がエグバードは余裕の表情で樹の上を華麗に移動しながら避けていく
攻撃の手を緩めずに連続で氷柱を出していたので、巨大な氷柱が床に突き刺さる爆音が幾度も部屋中に轟いた
「ほう、これを足場にしようという事ですか? 考えましたね?」
エグバードは顎に手を当てながら全てわかっているぞという様な顔で頷いている
腹立つわー
「蒼炎魔法【蒼炎弾】」
氷柱の上に立つエグバードに使い慣れた魔法を放つと氷柱に着弾して溶けて蒸発した
「自分で壊してたら意味がないのでは?」
「うるせー」
逃げ回るエグバードに【蒼炎弾】を打ちまくるが俊敏性が高すぎて距離があると当たらず、無数にあった氷柱にばかり着弾して巨大な氷柱は全て水蒸気となってしまっている
「 ※※※※ ※※※※ ※※※※ 水魔術【ウォーターブレイド】」
「 ※※※※ ※※※※ ※※※※ 風魔術【ウインドカッター】」
「複合魔術【水車輪】」
エグバードも避けてばかりではなく魔術で応戦してきた
風の力で高速で回転する幾つもの水の車輪が、俺のいる樹にその車輪を走らせた、おそらくウォーターカッターを車輪の形にしたのだろう、かなり厄介だな…
「蒼炎魔法【蒼炎壁】」
分厚い炎の壁が現れ水車輪をかき消した…
「ぐっ! 風は抜けて来たか!」
消せたのは水だけで風は貫通してショウの体を切り刻み鮮血が舞うが、【リジェネーション】が回復させた
「『結晶樹魔法【エメラルドウッドランス】』」
部屋中の天井高くまで聳え立つ樹の枝がエメラルドでコーティングされエグバードを攻撃するが難なく避ける
お互い樹の上に立ち向かい合うと前からそよ風が吹いていた
「ふぅまさに一進一退と言ったところですね」
エグバードが追い風に髪を靡かせながら涼しい顔で言った
「はぁ、やっぱりバレてますか」
俺はつい溜息をつく
「その花は明らかに不自然ですからね、毒の類ですか?」
不自然に咲き誇っている月下美人はエメの力によって常闇の森の猛毒植物と配合され、強力な神経毒を散布する凶悪な植物と化していた
「さぁどうでしょうか?」
「意外と姑息な手を使うのですね」
「僕は奇襲や不意打ちがメインですからね」
「ふふふ、そうでした」
エグバードはそう言い終わるとロッドを構えた
「 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※土魔術【アースブレイド】 」
「 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※土魔術【ロックレイン】」
「複合魔術【ビーストバイト】」
一秒もかからず詠唱を終えロッドに付いた石が輝くと、床と天井から広範囲に現れた鋭利な岩が、巨大で獰猛な獣が牙で獲物を噛み千切るかの如く上下からショウの体を狙い何度も襲い掛かる!
範囲が広い! ダメだ全ては避けきれない!
何度も噛みつくように上下から襲う鋭利な岩を躱しきれずついにショウの体を貫通した!
「流石に致命傷でしょう意外とあっけない物ですね…」
何度も体を鋭利な岩で貫かれては吐血するショウを見て頷きながらエグバードは呟いた
「そう簡単にやられるかよ!」
エグバードの後ろから攻撃を受けて致命傷を受けているはずのショウがエグバートを一刀両断し体が真っ二つなるが、それは前と同じただの砂だ
囮なのは知っている、ここは俺のフィールドだから何がどこにあるかなんて手に取るようにわかる
「晶二刀嘯風弄月流…【篠突雨】」
激しい横殴りの雨の様な大粒の斬撃がエグバードの本体が隠れている樹をなぎ倒し、本体を捕らえた
「ぐっ!何だと?!」
細かい斬撃に切り刻まれながらエグバードは混乱しているようだ
「ダメージは余りないみたいですね。 結構大技なんだけど…」
流石パラメーター10倍といった所か
「いえ十分ありましたよ、ほら見てください、指が三本なくなってしまいました」
そうやって彼は手を見せると左の人差し指から薬指がなくなっていた、それに体中至る所切り傷だらけだ
「しかし何故私の居場所が?」
「この樹がある範囲は俺の領域だからどこに隠れても無駄ですよ、油断させる為にわざと囮を攻撃したんです」
「ふっバレバレでしたか」
「俺が偽物ってのもバレてたでしょ?」
まさか光魔法【ミラージュ】まで見破られいたとは
「そうですね、ショウ君の事は結構分析しましたからね」
こいつはしっかり分析して対策してくるやりにくいタイプだ
ブライケルとの戦いの内容も知ってそうだな慎重にいかないと危険だ
だがこれは予想できたかな?
「おや雪ですか?」
室内だというのに天井から雪がパラパラと部屋一面に降り注いでいた
一片の雪が床に静かに落ちると小さかった雪が、雪の結晶を模った大きな鋭利な氷に肥大し頑丈な樹を貫く
終わりだ、もうどこにも逃げ場はない。 土の壁で防ごうとも俺の刀が貫く
「エグバードさんは火魔術が使えないでしょ?これは俺の水魔法【白姫】、触れたら貫かれます」
あえて氷柱を大量に出し溶かしていたのは蒸気を大量に発生させるためだ。
用心深いこの人の事だ、いきなり蒸気を充満させたら何かあると思って対策されただろう
「私もしっかり分析されてましたか。 その通り、逃げ場はなさそうですね… それならば!」
「 ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※ …」
エグバードの体に雪が落ち体を貫かれるがまだ詠唱は続いてる
何をする気だ?!
「 ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※… 」
多数の雪がエグバードに降り注ぎハチの巣の様に貫かれるが血反吐を吐きながらも詠唱は続けていた
「 ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※ 土禁術…【サンドベリアル】」
エグバードが雪の結晶に貫ぬかれながらもニヤリと笑うとどこからともなく砂嵐が巻き起こり、砂嵐は次第に勢いを強め広範囲に激しく展開されると、徐々に範囲が狭まって行った
なんだこれ? 逃がさない為か?
そして砂嵐が範囲を狭める度に大きな樹を巻き込んだ
『お兄ちゃん! この砂はまずいよ! 水分を全部持って行ってる! 触れたら一瞬でミイラだよ!』
どんだけ一瞬で水分吸収すんだよ! 吸水性というなら魔術名スク水にしろ!
『フララの【腐敗】のミイラ版って事か… まずいな』
と思うじゃん?
「よっと」
「?! い、一体どうやってあそこから出たというのですか?!」
「それは敵に言えないでしょ」
『お兄ちゃんは転移できるんだったね忘れてたよ』
『心配したか?』
『少しだけ』
『ありがとな』
しかし転移がなかったらかなり危ない魔術だったな。 床をぶち抜く以外対処の仕方がわからん。
禁術おそるべしだわ。王都の図書館にはそんな本なかったんだけどなー
ミイラにするってアイディアは良いな俺も何か考えよう
「ふふふ、まぁ私が死んでも悲願は達成されるでしょう」
「そんなにお前のボスは強いのか?」
「そりゃもう… 血の制裁の為にプランを色々変えさせられましたが、私達の目的は果たされますよ、それにあそこから脱出するのに大分消費したのは?」
その通りだ。 魔素を魔力に変換しても後三分の一ほどしかない。 こいつ最初から俺を消耗させる目的か
「その血の制裁ってなんですか?」
「それはあのドアに向こうにいる方に聞けばわかりますよ、全力で戦わないと負けますので、手加減しない方がいいでしょう」
エグバードは楽しそうに頷きながら笑っていた
「それは丁寧にどうも」
「これでやっと同胞の元へ行けます。 ピンゲラに栄光…あれ…」
エグバードはあらゆる方向から氷に貫かれおり、膝を曲げることも許されず立ったままその生を終えたのだが、右手を誇らしげに高く掲げたその顔はとても満足そうな表情だった
ブライケルもモルガも、どうして死ぬっていうのにそんな顔出来るんだよ
あんたは強かったよ。 俺じゃない誰かなら多分死んでた。 考えるとぞっとする
俺はなんとなくやりきれない気持ちを抱えたまま扉の前に立ちゆっくりと開いた
「待っていたよ、必ず君なら来ると思っていた」
「やっと会えましたね」
「あぁ…それじゃあ殺し合おう!」
男が椅子から立ちあがると、こちらにゆっくりと歩を進めてくる
俺は刀を再度握り直し神速の一刀を放つ準備に取り掛かった…
その白い空間には二体の死体が転がっており、役目を終えて体内から流れ出した紅い液体が至る所に広がっている。
そんな異常空間でも尚の事異常に感じる場所、肉片や臓物、生気を感じる目玉等が散乱している所にショウとストリンデは2人で座り込み、ストリンデがショウの丸まった背中に額を当てていた。
パンッ!
「もう大丈夫! 行こう!」
リンデが俺の背中を叩いて元気そうに言葉を発した
「本当に大丈夫?」
「おやおやー?? もしかして普段強い女が弱みを見せるとコロっといくタイプ? うりうりー」
俺が心配そうに顔だけ振り向いて声を掛けると、からかう様に答え頭を背中にグリグリと押し付けてくる
「もしそれが女性ならね、ゴリラ趣味じゃないんで悪いな」
「普通そんな事女の子に言う?」
「リンデにしか言わないかな」
「あーそうですか! ほんっっっと失礼しちゃうわ!」
そう言うとリンデは立ち上がったので俺も立ち上がると、彼女は生活魔術で体と服を綺麗にしながら両親の亡骸を眺めていた
「…リンデ、遺体は持って帰る?」
「うん、お願いしてもいい?」
「いいよ」
「ありがとうね、色々と」
今度の笑顔は悲壮感などはなく、人々を照らす太陽の様な眩しい笑顔だった
そもそもリンデは光属性なんだよなぁ、俺みたいな陰キャ闇属性には眩しい過ぎる
「お、おう…」
つい見惚れてしまい、誤魔化す様に頬をかき遺体を亜空間にしまった
「兄さん! 下から沢山の核の破片が上がってくるのを感じるよ! 」
レデリが慌てた様子で俺たちのいる白い部屋に入ってくる
「本格的な殺しに来たってことだな」
リンデとレデリが神妙に頷いた
「上に行こう、教皇は上にいるんだろ? 道わかる?」
「多分そうだと思うけど、道までは知らないわ。 ここに来たのだって初めてだし」
となるとどうにか階段を探すしかないな…
「あそこから出て階段を探そう」
俺達は入って来た所とは逆の扉から出て上へと向かう階段を探していると、大きな出窓を発見した
「二人ともちょっと待って、ここから空を飛んで上に行けばよくね?!」
「おー兄さんのスカスカの頭にしてはいい考えなんじゃない?」
誰が飴玉サイズの脳みそじゃ
「また私は汚されるのね…」
綺麗なゴリラから汚れたゴリラになるだけだから安心しろ
「【フライ】」
二人を脇に抱えて出窓から塔の上の方に向かって飛び立つ
一体何階建てだよこれ、40階ぐらいはあるんじゃないか?
外壁の周りを空を飛びながらぐるぐる回っていると五体程の空飛ぶ魔物がうなり声を上げながらこちらに向かってくる
「兄さん魔物から違和感を感じるよ、前にいたソードドラゴンと同じ!」
って事は核を埋め込まれて操られてる魔物か
「俺達が空から来るって事もバレてるって事か…ってうわっ!」
鋭利なくちばしを持つ全長三メート程の凶暴な魔物五体が、俺達にその殺傷能力の高いくちばしを突き立て突進してきたのを何とか躱す
「ちょっとあんた何処触ってんのよ! そこは…ぃゃん! ダメだってば!」
「兄さん! そういう事はせめてベットの上でやってくれない? 初めてが空中とか斬新過ぎるよ!」
「うるさいなー! 俺は今…よっと… 避けるのに必死なんだよ! お前ら二人を抱えて動きずらいんだぞ!」
俺は二人を両脇に抱えている為避けるので精いっぱいだ
こちとらガチなんだよ、じゃないとどこぞのアイドルグループみたいに空中分解してしまうからな!
『世界に一つだけのエメだよ!』
何をいっとるんだね君は
「何よ重たいって言いたいの?! ちょっと左から来てるわよ!」
「わかってるよっ! っておいマジかよ! あれ食らったら風穴空くぞ!」
俺は何とか鋭利なくちばしを避けたが、そのくちばしは塔の壁面に深く突き刺さり、食らえば間違いなく致命傷になる事を予感させゾッとした
俺は螺旋状に塔の周りを上昇していく
「兄さんあそこ!」
レデリが指さした方に大きな出窓を発見!
「みんな頭押さえろ!」
「キャーー」
「ちょっとあんたーー」
やっと見つけた上層階の大きな出窓に体当りして激しい破砕音と共に塔内に転がり込んだ
塔の中に入ったからといって逃がしてくれるはずもなく五体とも猛スピードで鋭利なくちばしを煌めかせこちらにダーツの如く飛んできていた
「蒼炎魔法【蒼炎弾】」
五発連射で飛んでくる魔物に蒼い炎の弾丸を打ち込んで蒼白い炎で焼き尽くした
前の蒼い炎とはどこか違う、麒麟が纏っていた蒼い炎とどこか似てる
「やっぱり! さっきも思ったけどあんたのその蒼い炎、神聖属性が混じってるわよ」
「え? 何で?」
「腕輪の効果ね、神聖属性の適正は後天的にある程度得ることが出来るの。 その方法は神聖な物に長い間触れる事。 あんたずっと腕輪つけてたんでしょ?」
「だからか。 神はいないのに神聖属性ってのも変な話だな」
「神聖属性っていうのは邪悪な力に対抗する力の総称みたいなもんだからね、神とは無関係なのよ」
リンデが苦笑いをしていた、まだ完全に割り切れた訳じゃないのだろう
「そっか」
「兄さんあそこに階段があるよ!」
レデリが指さした先には下へと続く階段と上に繋がる長い階段があった
よし行こう! 俺達が階段の方に駆け出すと下に下る階段から大量の魔物が沸き出来て、先程飛び込んできた窓からもちらほら飛んでくる魔物の姿が見える
俺は先行して道を開ける為に魔物を切りまくるがひっきりなしに下から沸いてくるので終わりが見えない
「くそ、全部倒してたらきりがない、ここは二人を呼ぶか【眷属召喚】」
激しい放電現象が起こりそれが人の形をとると、ルチルが現れた
続いていつもの大きな両開きの骨の扉が開かれ、その先からお気に入りの日傘を差したフララが現れる。
登場する前にワザワザ日傘を広げる所を想像するとなんか可愛いな
「随分待ったわよ、それでこの状況は何? まるで魔物がゴミのようね」
フララはいつものように日傘を回しながら大量に沸いて出た魔物を見て、どこかの大佐のような事を言う
すると魔物が激しい閃光と共にレーザーの様な物を射出してきたのでさっと横に避けた
「目がぁ! 目がぁ!」
ルチルは避けたが光を直接見てしまったようだ。 フララのせいだぞ! フララがあんなこというから!
目を抑えながら狼耳をピコピコさせてお尻と尻尾をフリフリしてる姿は戦場とは思えない程愛らしい
「上に行きたいんだけどこいつらが邪魔でさ、それに追ってきても面倒だから二人に足止めを頼みたい!」
「なんだそんな事、お安い御用よ。」
「任せるのじゃ!」
「ここじゃ魔素や魔力は使えないけど大丈夫?」
「私の【腐敗】はスキルだから問題ないわ」
「わらわも鍛えてるから問題ないのじゃ!」
「流石に頼もしいね、それじゃあ行くわ! また後でね」
そう言って俺達三人は階段を駆け上がると下から魔物の絶叫や、骨が地面に転がる音が引っ切り無しに三人の耳に届いた
「うわーご愁傷様です」
「あの二人なら問題なさそうね」
「フララ姉さんとるっちーは私達のパーティで最強の二人だからね」
二人とも魔力でぐんぐん力を伸ばしてるし、本気で殺し合ったら実際俺勝てるのか?
俺ももっと強くならないといけないなぁ…
そのまま三人で階段を駆け上がり進むと広い部屋に出るが、部屋一面を狂信者らしい大群が覆い尽くしていた
『エメ眠らせれるか?』
『出来るけど二人も巻き込むよ?』
『マジか…』
「どうするか…」
「じゃあここは私達が残るわ」
「兄さんは先に行って、外から見た様子じゃ最上階まで後二三階程度だよ」
この数はまずいだろ… 1000人以上は部屋にいる様に見える
「大丈夫階段を利用して戦えば囲まれる事もない」
天才か!
「流石俺の妹!」
「それは全く誉め言葉ではないけど、早く決着つけてきて。 レオナルド兄さんの為にも」
レデリはそう言って拳を突き出して来た
「あぁ、行ってくるよ」
俺はレデリの突き出した拳に自分の拳を合わせて長い階段を駆け上がった
すると無暗矢鱈に広い部屋にでる。 その部屋には扉が一つ。 そしてその前には
「久しぶりですね」
顎に手を置き何度も頷いていた。 彼の癖だ
「エグバードさんですか…」
「スラムの地下以来ですね。 貴方とは必ず決着をつける時が来ると思っていましたよ」
「俺もですよ」
「今回は逃げませんし、負けるわけにもいきません。 という事で…」
彼は液体の入った瓶を取り出しそれを一気に飲み干し瓶を捨てると、何もない部屋に転がる音が部屋に鳴り響いた
「それは?」
「これはパラメーターを10倍程引き上げる薬ですよ」
そういうとエグバードから部屋全体を揺るがすような力が溢れ出す
肌にびりびりと感じる威圧感。 能力ではバフをかけても確実に下だろうな…
超一流の薬師のレデリが作った物でも全身筋肉痛で暫く動けなくなる代物だった。
となると…
「何を代償にするんですか?」
「察しがいいですね。 まぁもう戦う事はできないでしょう」
いつもの様に頷いているがその顔に悲壮感はない
「そうですか…」
この人ともやはり殺し合うしかないのか…
バフを掛け結晶障壁を張り、【リジェネーション】を掛けてから【晶刀・紅玉・蒼玉】を出した
「『【フィールド展開・玄冬・月下美人】』」
床に手を置くとただっぴろい部屋一面に落ち葉が敷き詰められ、冬木が天井まで無数に生え、裸の樹に一夜限りしか咲かない儚い月下美人が不自然に咲き誇っていた
「相変わらず凄い魔術ですね、自然を操る魔術なんて聞いた事ありませんよ」
そりゃ大精霊様の力だからな
『えっへん』
エメのドヤ顔が見えたような気がして苦笑いしてしまう
「ふふふ、余裕ですねではこちらから行きますよ!」
煽ったみたいになってしまった! まだ心の準備が!
「 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 土魔術【サンドストーム】 」
「 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 水魔術【ウォーター】」
「複合魔術【マッドストーム】」
エグバードが詠唱を速攻で終え、術が完成すると大量の泥が暴風と共に俺の下へ飛んできたので俺は急いで樹の上へと退避したが、部屋中が泥にまみれてしまう
枯れ葉も泥にまみれで使えないな。 流石元ギルドマスターと言った所か
「貴方の剣は足を殺されては威力も半減なのではないですか?」
正解だ。 俺の流派の元になった雪月風花流は速さと技術の剣、速さを出すにはやはり足場は大事なのだ
だが俺はそもそも魔法使いだ!
「水魔法【アイスジャベリン】」
樹の上から放った大量の氷の槍がエグバードに向かって飛んでいくが破砕音と共に粉々に粉砕された
「おいおいまじかよ、筋肉ゴリラはうちの聖女だけで勘弁してくれ」
「流石に十倍ですからね、あれ位ならこのロッドでも砕けますよ」
「クソが、水魔法【氷柱】」
およそ三メートル程ある巨大な氷柱がエグバードを襲う
…がエグバードは余裕の表情で樹の上を華麗に移動しながら避けていく
攻撃の手を緩めずに連続で氷柱を出していたので、巨大な氷柱が床に突き刺さる爆音が幾度も部屋中に轟いた
「ほう、これを足場にしようという事ですか? 考えましたね?」
エグバードは顎に手を当てながら全てわかっているぞという様な顔で頷いている
腹立つわー
「蒼炎魔法【蒼炎弾】」
氷柱の上に立つエグバードに使い慣れた魔法を放つと氷柱に着弾して溶けて蒸発した
「自分で壊してたら意味がないのでは?」
「うるせー」
逃げ回るエグバードに【蒼炎弾】を打ちまくるが俊敏性が高すぎて距離があると当たらず、無数にあった氷柱にばかり着弾して巨大な氷柱は全て水蒸気となってしまっている
「 ※※※※ ※※※※ ※※※※ 水魔術【ウォーターブレイド】」
「 ※※※※ ※※※※ ※※※※ 風魔術【ウインドカッター】」
「複合魔術【水車輪】」
エグバードも避けてばかりではなく魔術で応戦してきた
風の力で高速で回転する幾つもの水の車輪が、俺のいる樹にその車輪を走らせた、おそらくウォーターカッターを車輪の形にしたのだろう、かなり厄介だな…
「蒼炎魔法【蒼炎壁】」
分厚い炎の壁が現れ水車輪をかき消した…
「ぐっ! 風は抜けて来たか!」
消せたのは水だけで風は貫通してショウの体を切り刻み鮮血が舞うが、【リジェネーション】が回復させた
「『結晶樹魔法【エメラルドウッドランス】』」
部屋中の天井高くまで聳え立つ樹の枝がエメラルドでコーティングされエグバードを攻撃するが難なく避ける
お互い樹の上に立ち向かい合うと前からそよ風が吹いていた
「ふぅまさに一進一退と言ったところですね」
エグバードが追い風に髪を靡かせながら涼しい顔で言った
「はぁ、やっぱりバレてますか」
俺はつい溜息をつく
「その花は明らかに不自然ですからね、毒の類ですか?」
不自然に咲き誇っている月下美人はエメの力によって常闇の森の猛毒植物と配合され、強力な神経毒を散布する凶悪な植物と化していた
「さぁどうでしょうか?」
「意外と姑息な手を使うのですね」
「僕は奇襲や不意打ちがメインですからね」
「ふふふ、そうでした」
エグバードはそう言い終わるとロッドを構えた
「 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※土魔術【アースブレイド】 」
「 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※土魔術【ロックレイン】」
「複合魔術【ビーストバイト】」
一秒もかからず詠唱を終えロッドに付いた石が輝くと、床と天井から広範囲に現れた鋭利な岩が、巨大で獰猛な獣が牙で獲物を噛み千切るかの如く上下からショウの体を狙い何度も襲い掛かる!
範囲が広い! ダメだ全ては避けきれない!
何度も噛みつくように上下から襲う鋭利な岩を躱しきれずついにショウの体を貫通した!
「流石に致命傷でしょう意外とあっけない物ですね…」
何度も体を鋭利な岩で貫かれては吐血するショウを見て頷きながらエグバードは呟いた
「そう簡単にやられるかよ!」
エグバードの後ろから攻撃を受けて致命傷を受けているはずのショウがエグバートを一刀両断し体が真っ二つなるが、それは前と同じただの砂だ
囮なのは知っている、ここは俺のフィールドだから何がどこにあるかなんて手に取るようにわかる
「晶二刀嘯風弄月流…【篠突雨】」
激しい横殴りの雨の様な大粒の斬撃がエグバードの本体が隠れている樹をなぎ倒し、本体を捕らえた
「ぐっ!何だと?!」
細かい斬撃に切り刻まれながらエグバードは混乱しているようだ
「ダメージは余りないみたいですね。 結構大技なんだけど…」
流石パラメーター10倍といった所か
「いえ十分ありましたよ、ほら見てください、指が三本なくなってしまいました」
そうやって彼は手を見せると左の人差し指から薬指がなくなっていた、それに体中至る所切り傷だらけだ
「しかし何故私の居場所が?」
「この樹がある範囲は俺の領域だからどこに隠れても無駄ですよ、油断させる為にわざと囮を攻撃したんです」
「ふっバレバレでしたか」
「俺が偽物ってのもバレてたでしょ?」
まさか光魔法【ミラージュ】まで見破られいたとは
「そうですね、ショウ君の事は結構分析しましたからね」
こいつはしっかり分析して対策してくるやりにくいタイプだ
ブライケルとの戦いの内容も知ってそうだな慎重にいかないと危険だ
だがこれは予想できたかな?
「おや雪ですか?」
室内だというのに天井から雪がパラパラと部屋一面に降り注いでいた
一片の雪が床に静かに落ちると小さかった雪が、雪の結晶を模った大きな鋭利な氷に肥大し頑丈な樹を貫く
終わりだ、もうどこにも逃げ場はない。 土の壁で防ごうとも俺の刀が貫く
「エグバードさんは火魔術が使えないでしょ?これは俺の水魔法【白姫】、触れたら貫かれます」
あえて氷柱を大量に出し溶かしていたのは蒸気を大量に発生させるためだ。
用心深いこの人の事だ、いきなり蒸気を充満させたら何かあると思って対策されただろう
「私もしっかり分析されてましたか。 その通り、逃げ場はなさそうですね… それならば!」
「 ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※ …」
エグバードの体に雪が落ち体を貫かれるがまだ詠唱は続いてる
何をする気だ?!
「 ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※… 」
多数の雪がエグバードに降り注ぎハチの巣の様に貫かれるが血反吐を吐きながらも詠唱は続けていた
「 ※※※※ ※※※※ ※※※※ ※※※※ 土禁術…【サンドベリアル】」
エグバードが雪の結晶に貫ぬかれながらもニヤリと笑うとどこからともなく砂嵐が巻き起こり、砂嵐は次第に勢いを強め広範囲に激しく展開されると、徐々に範囲が狭まって行った
なんだこれ? 逃がさない為か?
そして砂嵐が範囲を狭める度に大きな樹を巻き込んだ
『お兄ちゃん! この砂はまずいよ! 水分を全部持って行ってる! 触れたら一瞬でミイラだよ!』
どんだけ一瞬で水分吸収すんだよ! 吸水性というなら魔術名スク水にしろ!
『フララの【腐敗】のミイラ版って事か… まずいな』
と思うじゃん?
「よっと」
「?! い、一体どうやってあそこから出たというのですか?!」
「それは敵に言えないでしょ」
『お兄ちゃんは転移できるんだったね忘れてたよ』
『心配したか?』
『少しだけ』
『ありがとな』
しかし転移がなかったらかなり危ない魔術だったな。 床をぶち抜く以外対処の仕方がわからん。
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ミイラにするってアイディアは良いな俺も何か考えよう
「ふふふ、まぁ私が死んでも悲願は達成されるでしょう」
「そんなにお前のボスは強いのか?」
「そりゃもう… 血の制裁の為にプランを色々変えさせられましたが、私達の目的は果たされますよ、それにあそこから脱出するのに大分消費したのは?」
その通りだ。 魔素を魔力に変換しても後三分の一ほどしかない。 こいつ最初から俺を消耗させる目的か
「その血の制裁ってなんですか?」
「それはあのドアに向こうにいる方に聞けばわかりますよ、全力で戦わないと負けますので、手加減しない方がいいでしょう」
エグバードは楽しそうに頷きながら笑っていた
「それは丁寧にどうも」
「これでやっと同胞の元へ行けます。 ピンゲラに栄光…あれ…」
エグバードはあらゆる方向から氷に貫かれおり、膝を曲げることも許されず立ったままその生を終えたのだが、右手を誇らしげに高く掲げたその顔はとても満足そうな表情だった
ブライケルもモルガも、どうして死ぬっていうのにそんな顔出来るんだよ
あんたは強かったよ。 俺じゃない誰かなら多分死んでた。 考えるとぞっとする
俺はなんとなくやりきれない気持ちを抱えたまま扉の前に立ちゆっくりと開いた
「待っていたよ、必ず君なら来ると思っていた」
「やっと会えましたね」
「あぁ…それじゃあ殺し合おう!」
男が椅子から立ちあがると、こちらにゆっくりと歩を進めてくる
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