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第五十話 ラッキースケベは小悪魔のしらべ
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明るいブラウンの髪で30代程の男が静かな部屋の一室で夜空に輝く満天の星を眺めながらワインを傾けていた。
空に近い塔の最上階が彼の自室だ。
バタン! 部屋の脇に控えていた男が突然倒れた。
夜空を見上げている男には、まるで予期していたかの様にこれと言って変わった様子はない。
「逝ったかブライケル。 長い間ご苦労だった。 我等の悲願必ず…」
男はワイン夜空に掲げる、落ちてきそうな程よく見える星々輝く夜空は、先程倒れた男にブライケルの固有魔術で憑依させた霊を介して交わしたブライケルとの会話の夜を思い起こさせた。
『ブライケルよ、その男は我々にとってどれだけの障害になる?』
『今はまだ未知数です。 ですが我々が長年準備してきた計画が台無しになる可能性も否定できません。』
『それほどか… ならば計画を早めるか』
『いえそれは、得策ではないでしょう、彼の力はとても大きいですが心がまだ未熟です、正義感で動いてる訳ではないでしょうが、とても揺れやすく脆い。』
『ほう、それはまた』
『はい、なのでもし私が死んだその時は…』
『あぁわかった。 だが死ぬなどは全てが終わってからでも出来る。 死に急ぐな。』
『そうですね、それではまだ仕事がありますので失礼します。 ふぇふぇふぇ』
「待っていろブライケル、遅かれ早かれ私の行き着く先も同じ場所だ。 その時は先に散った同胞達と共に地獄で飲み明かそう…」
先立ったブライケルに送った言葉が夜空に消えると掲げたワインを一気に飲み干した。
彼こそが殺人でも強奪でも強姦でも何でもやるこの大陸を裏で牛耳る犯罪集団アラトラスのボスその人だ。
残虐非道な組織のボスの先立った友を想うその顔は、とても優しく慈悲深い物だった。
◇ ◇ ◇ ◇
レデリをおんぶして屋敷に戻るとルーとフララも無事に帰って来ており暖かく出迎えてくれてホッと胸をなでおろした。
レデリを寝室のベットに降ろすと、小さくありがとうと言って名残惜しそうな顔をしながら俺の背中を見送る
先刻から異常に可愛さが増したレデリにドキドキしながら事の成り行きを語るために、後ろ髪引かれつつみんなの元に向かった。
「…そう。 そんな事があったの。 大丈夫?」
何があったか聞いたルーは俺のメンタルが心配になったのだろう
「スッキリはしない幕引きだったけど、今回はレデリも居たから前よりマシだよ」
勿論人殺しに慣れた訳じゃない。 ブライケルを切った感覚は今でも鮮明だ。
「今回も一緒には居られなかったけど、一先ずは安心したわ。 それでそのペンダントどうするの?」
フララがリビングのテーブルに置かれたブライケルのペンダントを指差して言った
「………」
俺が考えていると、イレスティとルチルに風呂に入れられたストフが出てきてペンダントを見つける
「あ、兄貴それ!」
やっぱり気付くよな…
「あぁ俺たちの向かった先のオークション会場で出品さる予定の商品だったんだ」
「そうなんだ、じゃあオイラの父さんがいた訳じゃないんだな」
「あぁ。」
言えなかった。 彼の為になんて理由じゃない、自分が殺したと言った時の彼の反応が怖かったのだ。 俺は臆病で卑怯な人間だから
「そっか、でもこれだけでも母さんの下に帰って来て良かったよ。 ありがとう兄貴!」
ストフの感謝に満ち溢れた表情がブライケルと重なり胸が締め付けられる想いだった。
そのままイレスティの作ったご飯を帰ってきたエメとストフとみんなで食べて床に就いたのだが、ブライケルの事やストフの事が頭から離れずに両手を後頭部に置き何もない天井を見上げていた。
あいつスリの元締めなんてやって自分の息子をなんだかんだ守ってたりしてたのかな、本当は自分が親父だって名乗りたかったんだろうか? まっとうに生きてりゃどうだったんだろうな
「…眠れない?」
外で鳴く虫の声しか聞こえなかった部屋に、俺に抱き着き眠っていたルーの心配そうな声が耳に届く
「なんか色々考えちゃってさ」
「どんな事?」
ルーの赤い瞳が俺に向けられる
「ブライケルは悪人だったのかなーとか、ストフの事どう思ってたんだろうとか考えても意味のない事」
考えても何も解決しないもう終わった事。 本当に無駄な事
「…そう。」
ルーは何処か寂しげな顔だ
「意味のない事が、案外意味ある事だったりするのよ?」
反対側から抱きついて寝ていたフララの声が聞こえる
「聞いてたんだ、何その深そうで深くなさそうな言葉」
「さぁね、考えてみたら?」
フララが悪戯な笑みを浮かべる
「思考の海に溺れさせる気?」
「快楽になら溺れさせてあげるわよ?」
フララの悪戯な笑みが妖艶な笑みへと変わり胸が高鳴る
ゴクリ…
「そっちの方がわかりやすくていいね」
右の頬をルーの手が優しく包み、舌を首筋の下から耳へ向かって這わせ耳元迄顔を近づけた
「…じゃあ今だけでも忘れさせてあげる…」
フララも左の頬に手を置き耳をアマガミして甘い声で囁く
「今夜は私達に任せなさい…」
両方の耳からから聞こえる思考を奪う罠。 堕落への情欲的誘惑
二つの手がシーツの擦れる音を奏でながら優しく撫でると、血液が一気に体を駆け巡ったように体中が熱を帯びる
彼が持つ二つのルビーとサファイヤの様な宝石達は、月明かりに妖しく輝き絡み合い官能的に愛欲を貪り尽くす
妖しく煌めく二つの肉体に、取り留めない思考は絶え間ない快感で押さえつけられ、快楽に溺れていった…
◇ ◇ ◇ ◇
昨夜の激しい情事の後はぐっすり眠り、心地い疲労感と共に自然と目が覚めた
両腕を手をしっかりと掴み、二人に抱きかかえれているので動けない事に苦笑いしてしまう。
昨日は凄かったなぁ… 三人でするとあんなことになるんだあの二人…
てかエメとルチルは爆睡だったけど、イレスティ絶対起きてたよなぁ… レデリは自室で安静にしてるから問題ないけど…
「…ショウおはよう…」
「貴方珍しく先に起きてたの?」
ルーとフララが目を覚ましたみたいだ
「本当にさっきだけどね」
「…私も疲れてぐっすりだった」
「昨夜は凄かったものね?」
「お姉様にあんな事されるなんて…」
「でもあれ見てしょうも喜んでたわよ?」
「あれはエロ過ぎだよ… 思い出しただけで…」
「…ショウ…」
「ねぇ…」
昨夜の激しい絡みで感じた底なしの快感を三人共思い出し、情欲的な視線を二人から向けられてそういう気分になったのだが…
「おはよー! ドーン!」
朝から元気なエメがお腹の上にダイブしてきた
「うっ! 朝からこれはキツい」
「あれ? 何で三人共裸なの? あーエメに内緒で良い事してたなー?!」
「内緒っていうかエメは気持ちよく寝てたからな」
「起こせばいいのにー!」
頬を膨らませ俺の上でバタバタして怒ってる姿は無性に可愛い
「うるさいのぉ… 寒い朝は苦手なのじゃ… 主様、いつもみたいに抱き枕にしてたも」
モフモフを感じながら寝るのが最近のマイブームだ
目をグーにしてこすりながら、耳をピクピクさせ女の子座りしている姿はとても可愛い、今すぐ飛びついて愛でたい… 寝間着のだぼだぼTシャツがずれて左肩が見えているのもそそる…
「しゃむいのじゃ! フラミ入れてたも」
フララと俺の間に体を潜り込ませ、裸なのに気付く
「主様またかの? それも二人とはわらわも流石に驚きなのじゃ」
俺が一番驚きだよ。 そうやってぬくぬくみんなで仲良く過ごしていると
ガチャリ
寝室の扉が開く
「みなさんおはようございます、朝食の準備が出来ましたのでリビングまでいらして下さい」
イレスティが呼びに来たので、みんなしぶしぶ起き上がりイレスティが用意してくれた朝食を食べた
イレスティとフララが何か話してイレスティが耳まで顔を赤くしたが一体何の話をしてたのだろう?
◇ ◇ ◇ ◇
レデリは薬の副作用で暫くの間動けないので俺は朝食を持って行く事にした
コンコン
「レデリ、朝ごはん持ってきたぞー」
「もごもごもご」
「なんだって? 入るぞー」
「兄さんちょっとま」
ドアを開けるとベットから起き上がりブラ一枚のレデリと目が合う
「………異世界ラッキースケベキターーーーーーーーー!!」
バサ! とても女性らしいいい匂いの服が俺の顔に飛んできた
「出てって!」
「はい!」
魔法も何も使っていないのに今までで一番早く動けたと思う
少しすると入っていいという声が聞こえたのでそぉっと入る
「あーレデリ… なんていうかごめん…」
レデリのベッドの側に行き、朝食の乗ったトレーを置きながら謝った
「本当に兄さんは兄さん! 一週間洗わなかった下着より、道端の犬の糞より兄さん!」
それどういう意味で兄さんって使ってるの?!
「ごめん、まさか俺の異世界ライフにラッキースケベなんてイベントがあるなんて思ってなかったから油断した」
こっちに来て結構経ったが俺には全くそんなイベントなかったのだ、新鮮過ぎて興奮したのは否めない
「違う意味で興奮してたよね?」
レデリの目は男性用ブラを着用している父親を見た時の思春期の少女の様に冷たい
「こういうイベントってテンプレなんだよ、主人公属性なんだよ! 俺にもついに来たんだよ!」
「…よくわからないけど女性の下着姿を見たのにそっちに興奮するって、いくらゴミの様な兄さんでも失礼じゃないの?」
冷たい目という表現に収まらない程の冷たい目に、俺は寒気すら覚える
「ゴミの様な兄さんは、妹に欲情はしないのだよ」
「ふーん」
レデリの顔は懐疑的だ
「えい」
レデリがにやりと笑い俺の手を唐突に掴むと胸に押し当てた
「な、何すんだよ!」
「あれ~? おかしいなぁ~? 妹の胸なんかじゃ何とも思わないんだよねぇ~?」
こいついつから小悪魔属性身に着けたし! 非常に腹立つが悪魔的に可愛い。 小悪魔だけに!
「は、はぁ? 別にしてねぇし!」
「でも大きくなってるよ」
「え?! 嘘?!」
「嘘」
レデリがクスっと笑う
「………やりやがったな…」
ぶっちゃけなってると思ってた… という衣服の上からではかわからないレベルではなってしまっているのだがバレなきゃいいんだよ!
「腕の動かない妹に欲情する変態で社会的に抹殺されるべき兄さんには、胸を触ったバツが必要です」
お前の動かない腕で俺の腕を掴んだんだよな?!
「意義あり! 冤罪だ!」
別に逆転する必要はないが、これは違うぞレデリ!
「ひどい… まだ私誰にも体を許した事ないのに兄さんの兄さんに汚された…」
兄さんの兄さんってなに?! 俺の手って兄さんっていうんだっけ? っていうか兄さんってなんだっけ?!
「で、何してほしいんだ? 出来るかわからないけど一応聞いてみるよ」
レデリが恥ずかしそうにモジモジしながら髪をいじり口を開く
「朝ごはん… 食べさせて。 治るまでずっと…」
何だよそのしおらしい感じ… めちゃくちゃ可愛いじゃんよ
「なんだそんな事か、元々そのつもりだよ」
「そ、そうだったんだ。 ちょっと見直した」
レデリの光り輝く宝石のような笑顔が眩しい
「それとゴミからチリ位に昇格したよ、やったね!」
それは昇格なのかい? 不快な物ではなくなったけど、眼中から消えたってことだよね? 元の世界の俺に逆戻りって事だよね?!
「でもお前さっき俺の腕を掴んで胸に持ってった時、普通に腕動いたよね?」
「…やっぱりゴミに降格だね」
何で?!
「はいはいわかりましたよ、それより妹様、可愛いお口をあけて下さいあ~ん」
「よろしいよろしい! あ~ん モグモグ うん今日もおいしい」
口元にオムレツのケチャップが付く
「子供かよ、ケチャップ付いてるぞ」
俺が自然とレデリの可愛い口元についたケチャップを指で取ると
パクリ
口元を拭った俺の人差し指を咥えた
チュパッ
「おいしい」
小悪魔の様にニコっと笑うレデリに正直かなりドキドキしてる
「イ、イレスティは料理うまいからな、レデリも夕食の準備手伝ったりしてたよね?」
慌ててなんとか動揺を悟られないように話を振る
「うんでもこれじゃあ出来ないから申し訳ないなー」
とても残念そうだ、いつも楽しそうに話しながら手伝ってたもんな
「そんなの気にするなよ。 メンタルえぐって来るけど顔は可愛いし、料理もうまいしレデリはいい奥さんになるね」
「それはどうも」
レデリがちょこんと頭を下げる
「でも兄さんが兄さんである限り嫁には行けないかな」
また兄さんを何か蔑んだ意味で使ってるのか?
「何それどういう事? つかお前は俺をどんだけダメだと思ってんだよ」
「どういうことかは… 気付くか気付かないかの違いかな?」
レデリは髪のをいじりながらニコっと可憐に笑った。 意味深だなぁ… つか髪いじれる位腕上がってますやん…
「それに兄さんは妹が常にいてあげないといけない位にダメだと思ってるよ」
まぁ俺も一緒には居て欲しいとは思ってるよ
「はいはい、じゃあ今後とも末永くよろしくお願いします」
「はいはーい、あ、それ食べさせて!」
「お前今指差したよな?」
「しらなーい」
髪をいじりながらとぼけた顔をするが、これまた可愛い! 腹立つけど可愛いは正義なので許す!
そんなこんなでレデリとほのぼの朝食を終えて、王のいる城に向かう事にする、昨日の件を内密に報告するためだ。 同行者はルーとフララのみ。
「はぁ… 俺って王様関係にはいい思い出ないんだよね…」
「…勘違いされがち」
「流石に今回は何もないわよ、流石にね?」
「フラグ乙」
「…ショウ…今回は流石に大丈夫だから。 すぐに終わるから。 シミの数えてる間に終わるから」
「そうよ、大丈夫大丈夫少しだけだから。 何も感じる間もなく終わるから」
何かこいつらの言い回し違う事するように聞こえるんだが…
「君たち何の話してるの?」
「「王との密談」」
そうだけど何か違う!
「なぁ絶対わざとだよな?」
ルーとフララはただニコっと笑っただけだった。
空に近い塔の最上階が彼の自室だ。
バタン! 部屋の脇に控えていた男が突然倒れた。
夜空を見上げている男には、まるで予期していたかの様にこれと言って変わった様子はない。
「逝ったかブライケル。 長い間ご苦労だった。 我等の悲願必ず…」
男はワイン夜空に掲げる、落ちてきそうな程よく見える星々輝く夜空は、先程倒れた男にブライケルの固有魔術で憑依させた霊を介して交わしたブライケルとの会話の夜を思い起こさせた。
『ブライケルよ、その男は我々にとってどれだけの障害になる?』
『今はまだ未知数です。 ですが我々が長年準備してきた計画が台無しになる可能性も否定できません。』
『それほどか… ならば計画を早めるか』
『いえそれは、得策ではないでしょう、彼の力はとても大きいですが心がまだ未熟です、正義感で動いてる訳ではないでしょうが、とても揺れやすく脆い。』
『ほう、それはまた』
『はい、なのでもし私が死んだその時は…』
『あぁわかった。 だが死ぬなどは全てが終わってからでも出来る。 死に急ぐな。』
『そうですね、それではまだ仕事がありますので失礼します。 ふぇふぇふぇ』
「待っていろブライケル、遅かれ早かれ私の行き着く先も同じ場所だ。 その時は先に散った同胞達と共に地獄で飲み明かそう…」
先立ったブライケルに送った言葉が夜空に消えると掲げたワインを一気に飲み干した。
彼こそが殺人でも強奪でも強姦でも何でもやるこの大陸を裏で牛耳る犯罪集団アラトラスのボスその人だ。
残虐非道な組織のボスの先立った友を想うその顔は、とても優しく慈悲深い物だった。
◇ ◇ ◇ ◇
レデリをおんぶして屋敷に戻るとルーとフララも無事に帰って来ており暖かく出迎えてくれてホッと胸をなでおろした。
レデリを寝室のベットに降ろすと、小さくありがとうと言って名残惜しそうな顔をしながら俺の背中を見送る
先刻から異常に可愛さが増したレデリにドキドキしながら事の成り行きを語るために、後ろ髪引かれつつみんなの元に向かった。
「…そう。 そんな事があったの。 大丈夫?」
何があったか聞いたルーは俺のメンタルが心配になったのだろう
「スッキリはしない幕引きだったけど、今回はレデリも居たから前よりマシだよ」
勿論人殺しに慣れた訳じゃない。 ブライケルを切った感覚は今でも鮮明だ。
「今回も一緒には居られなかったけど、一先ずは安心したわ。 それでそのペンダントどうするの?」
フララがリビングのテーブルに置かれたブライケルのペンダントを指差して言った
「………」
俺が考えていると、イレスティとルチルに風呂に入れられたストフが出てきてペンダントを見つける
「あ、兄貴それ!」
やっぱり気付くよな…
「あぁ俺たちの向かった先のオークション会場で出品さる予定の商品だったんだ」
「そうなんだ、じゃあオイラの父さんがいた訳じゃないんだな」
「あぁ。」
言えなかった。 彼の為になんて理由じゃない、自分が殺したと言った時の彼の反応が怖かったのだ。 俺は臆病で卑怯な人間だから
「そっか、でもこれだけでも母さんの下に帰って来て良かったよ。 ありがとう兄貴!」
ストフの感謝に満ち溢れた表情がブライケルと重なり胸が締め付けられる想いだった。
そのままイレスティの作ったご飯を帰ってきたエメとストフとみんなで食べて床に就いたのだが、ブライケルの事やストフの事が頭から離れずに両手を後頭部に置き何もない天井を見上げていた。
あいつスリの元締めなんてやって自分の息子をなんだかんだ守ってたりしてたのかな、本当は自分が親父だって名乗りたかったんだろうか? まっとうに生きてりゃどうだったんだろうな
「…眠れない?」
外で鳴く虫の声しか聞こえなかった部屋に、俺に抱き着き眠っていたルーの心配そうな声が耳に届く
「なんか色々考えちゃってさ」
「どんな事?」
ルーの赤い瞳が俺に向けられる
「ブライケルは悪人だったのかなーとか、ストフの事どう思ってたんだろうとか考えても意味のない事」
考えても何も解決しないもう終わった事。 本当に無駄な事
「…そう。」
ルーは何処か寂しげな顔だ
「意味のない事が、案外意味ある事だったりするのよ?」
反対側から抱きついて寝ていたフララの声が聞こえる
「聞いてたんだ、何その深そうで深くなさそうな言葉」
「さぁね、考えてみたら?」
フララが悪戯な笑みを浮かべる
「思考の海に溺れさせる気?」
「快楽になら溺れさせてあげるわよ?」
フララの悪戯な笑みが妖艶な笑みへと変わり胸が高鳴る
ゴクリ…
「そっちの方がわかりやすくていいね」
右の頬をルーの手が優しく包み、舌を首筋の下から耳へ向かって這わせ耳元迄顔を近づけた
「…じゃあ今だけでも忘れさせてあげる…」
フララも左の頬に手を置き耳をアマガミして甘い声で囁く
「今夜は私達に任せなさい…」
両方の耳からから聞こえる思考を奪う罠。 堕落への情欲的誘惑
二つの手がシーツの擦れる音を奏でながら優しく撫でると、血液が一気に体を駆け巡ったように体中が熱を帯びる
彼が持つ二つのルビーとサファイヤの様な宝石達は、月明かりに妖しく輝き絡み合い官能的に愛欲を貪り尽くす
妖しく煌めく二つの肉体に、取り留めない思考は絶え間ない快感で押さえつけられ、快楽に溺れていった…
◇ ◇ ◇ ◇
昨夜の激しい情事の後はぐっすり眠り、心地い疲労感と共に自然と目が覚めた
両腕を手をしっかりと掴み、二人に抱きかかえれているので動けない事に苦笑いしてしまう。
昨日は凄かったなぁ… 三人でするとあんなことになるんだあの二人…
てかエメとルチルは爆睡だったけど、イレスティ絶対起きてたよなぁ… レデリは自室で安静にしてるから問題ないけど…
「…ショウおはよう…」
「貴方珍しく先に起きてたの?」
ルーとフララが目を覚ましたみたいだ
「本当にさっきだけどね」
「…私も疲れてぐっすりだった」
「昨夜は凄かったものね?」
「お姉様にあんな事されるなんて…」
「でもあれ見てしょうも喜んでたわよ?」
「あれはエロ過ぎだよ… 思い出しただけで…」
「…ショウ…」
「ねぇ…」
昨夜の激しい絡みで感じた底なしの快感を三人共思い出し、情欲的な視線を二人から向けられてそういう気分になったのだが…
「おはよー! ドーン!」
朝から元気なエメがお腹の上にダイブしてきた
「うっ! 朝からこれはキツい」
「あれ? 何で三人共裸なの? あーエメに内緒で良い事してたなー?!」
「内緒っていうかエメは気持ちよく寝てたからな」
「起こせばいいのにー!」
頬を膨らませ俺の上でバタバタして怒ってる姿は無性に可愛い
「うるさいのぉ… 寒い朝は苦手なのじゃ… 主様、いつもみたいに抱き枕にしてたも」
モフモフを感じながら寝るのが最近のマイブームだ
目をグーにしてこすりながら、耳をピクピクさせ女の子座りしている姿はとても可愛い、今すぐ飛びついて愛でたい… 寝間着のだぼだぼTシャツがずれて左肩が見えているのもそそる…
「しゃむいのじゃ! フラミ入れてたも」
フララと俺の間に体を潜り込ませ、裸なのに気付く
「主様またかの? それも二人とはわらわも流石に驚きなのじゃ」
俺が一番驚きだよ。 そうやってぬくぬくみんなで仲良く過ごしていると
ガチャリ
寝室の扉が開く
「みなさんおはようございます、朝食の準備が出来ましたのでリビングまでいらして下さい」
イレスティが呼びに来たので、みんなしぶしぶ起き上がりイレスティが用意してくれた朝食を食べた
イレスティとフララが何か話してイレスティが耳まで顔を赤くしたが一体何の話をしてたのだろう?
◇ ◇ ◇ ◇
レデリは薬の副作用で暫くの間動けないので俺は朝食を持って行く事にした
コンコン
「レデリ、朝ごはん持ってきたぞー」
「もごもごもご」
「なんだって? 入るぞー」
「兄さんちょっとま」
ドアを開けるとベットから起き上がりブラ一枚のレデリと目が合う
「………異世界ラッキースケベキターーーーーーーーー!!」
バサ! とても女性らしいいい匂いの服が俺の顔に飛んできた
「出てって!」
「はい!」
魔法も何も使っていないのに今までで一番早く動けたと思う
少しすると入っていいという声が聞こえたのでそぉっと入る
「あーレデリ… なんていうかごめん…」
レデリのベッドの側に行き、朝食の乗ったトレーを置きながら謝った
「本当に兄さんは兄さん! 一週間洗わなかった下着より、道端の犬の糞より兄さん!」
それどういう意味で兄さんって使ってるの?!
「ごめん、まさか俺の異世界ライフにラッキースケベなんてイベントがあるなんて思ってなかったから油断した」
こっちに来て結構経ったが俺には全くそんなイベントなかったのだ、新鮮過ぎて興奮したのは否めない
「違う意味で興奮してたよね?」
レデリの目は男性用ブラを着用している父親を見た時の思春期の少女の様に冷たい
「こういうイベントってテンプレなんだよ、主人公属性なんだよ! 俺にもついに来たんだよ!」
「…よくわからないけど女性の下着姿を見たのにそっちに興奮するって、いくらゴミの様な兄さんでも失礼じゃないの?」
冷たい目という表現に収まらない程の冷たい目に、俺は寒気すら覚える
「ゴミの様な兄さんは、妹に欲情はしないのだよ」
「ふーん」
レデリの顔は懐疑的だ
「えい」
レデリがにやりと笑い俺の手を唐突に掴むと胸に押し当てた
「な、何すんだよ!」
「あれ~? おかしいなぁ~? 妹の胸なんかじゃ何とも思わないんだよねぇ~?」
こいついつから小悪魔属性身に着けたし! 非常に腹立つが悪魔的に可愛い。 小悪魔だけに!
「は、はぁ? 別にしてねぇし!」
「でも大きくなってるよ」
「え?! 嘘?!」
「嘘」
レデリがクスっと笑う
「………やりやがったな…」
ぶっちゃけなってると思ってた… という衣服の上からではかわからないレベルではなってしまっているのだがバレなきゃいいんだよ!
「腕の動かない妹に欲情する変態で社会的に抹殺されるべき兄さんには、胸を触ったバツが必要です」
お前の動かない腕で俺の腕を掴んだんだよな?!
「意義あり! 冤罪だ!」
別に逆転する必要はないが、これは違うぞレデリ!
「ひどい… まだ私誰にも体を許した事ないのに兄さんの兄さんに汚された…」
兄さんの兄さんってなに?! 俺の手って兄さんっていうんだっけ? っていうか兄さんってなんだっけ?!
「で、何してほしいんだ? 出来るかわからないけど一応聞いてみるよ」
レデリが恥ずかしそうにモジモジしながら髪をいじり口を開く
「朝ごはん… 食べさせて。 治るまでずっと…」
何だよそのしおらしい感じ… めちゃくちゃ可愛いじゃんよ
「なんだそんな事か、元々そのつもりだよ」
「そ、そうだったんだ。 ちょっと見直した」
レデリの光り輝く宝石のような笑顔が眩しい
「それとゴミからチリ位に昇格したよ、やったね!」
それは昇格なのかい? 不快な物ではなくなったけど、眼中から消えたってことだよね? 元の世界の俺に逆戻りって事だよね?!
「でもお前さっき俺の腕を掴んで胸に持ってった時、普通に腕動いたよね?」
「…やっぱりゴミに降格だね」
何で?!
「はいはいわかりましたよ、それより妹様、可愛いお口をあけて下さいあ~ん」
「よろしいよろしい! あ~ん モグモグ うん今日もおいしい」
口元にオムレツのケチャップが付く
「子供かよ、ケチャップ付いてるぞ」
俺が自然とレデリの可愛い口元についたケチャップを指で取ると
パクリ
口元を拭った俺の人差し指を咥えた
チュパッ
「おいしい」
小悪魔の様にニコっと笑うレデリに正直かなりドキドキしてる
「イ、イレスティは料理うまいからな、レデリも夕食の準備手伝ったりしてたよね?」
慌ててなんとか動揺を悟られないように話を振る
「うんでもこれじゃあ出来ないから申し訳ないなー」
とても残念そうだ、いつも楽しそうに話しながら手伝ってたもんな
「そんなの気にするなよ。 メンタルえぐって来るけど顔は可愛いし、料理もうまいしレデリはいい奥さんになるね」
「それはどうも」
レデリがちょこんと頭を下げる
「でも兄さんが兄さんである限り嫁には行けないかな」
また兄さんを何か蔑んだ意味で使ってるのか?
「何それどういう事? つかお前は俺をどんだけダメだと思ってんだよ」
「どういうことかは… 気付くか気付かないかの違いかな?」
レデリは髪のをいじりながらニコっと可憐に笑った。 意味深だなぁ… つか髪いじれる位腕上がってますやん…
「それに兄さんは妹が常にいてあげないといけない位にダメだと思ってるよ」
まぁ俺も一緒には居て欲しいとは思ってるよ
「はいはい、じゃあ今後とも末永くよろしくお願いします」
「はいはーい、あ、それ食べさせて!」
「お前今指差したよな?」
「しらなーい」
髪をいじりながらとぼけた顔をするが、これまた可愛い! 腹立つけど可愛いは正義なので許す!
そんなこんなでレデリとほのぼの朝食を終えて、王のいる城に向かう事にする、昨日の件を内密に報告するためだ。 同行者はルーとフララのみ。
「はぁ… 俺って王様関係にはいい思い出ないんだよね…」
「…勘違いされがち」
「流石に今回は何もないわよ、流石にね?」
「フラグ乙」
「…ショウ…今回は流石に大丈夫だから。 すぐに終わるから。 シミの数えてる間に終わるから」
「そうよ、大丈夫大丈夫少しだけだから。 何も感じる間もなく終わるから」
何かこいつらの言い回し違う事するように聞こえるんだが…
「君たち何の話してるの?」
「「王との密談」」
そうだけど何か違う!
「なぁ絶対わざとだよな?」
ルーとフララはただニコっと笑っただけだった。
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優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
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ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。
晴行
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ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。
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