蒼炎の魔法使い

山野

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第十八話 本契約

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とても心地いい…このまま起きたくない、そろそろ学校かな…このままこの寝床に居る事によって、堕落して大学にも行かなくなり、就職も失敗して日銭を稼ぐ仕事、両親から迷惑そうにされ。自分の事をみじめに感じて引きこもり、引きこもってる間に、世界が崩壊して、世界に残されたのが俺ただ一人だと知って絶望するが、海を渡り人影を見つけて嬉しくなる、だがそれがゾンビで、生き残るために必死でゾンビと戦う毎日を生きるようになってしまう未来が待っていたとしても、俺はこの寝心地を手放したくない…


枕に手を入れて寝がえりを打つ、ん?凄く柔らかいなぁ


「うぅんっ」

何この艶めかしい声?!


「坊や起きてるんじゃないかしら?」

は?!異世界の膝枕だった!!

起きてるけど起きたら殺される?!生き残ったのに殺される?!


「大丈夫よ、殺しても私のアンデッドとして一生使ってあげるから」

狂気!


つか何故バレたし!


「どうせ大方起きたら殺されるから寝たふりしようとかそんなんでしょ?」


「いやー起きたのは本当にさっきなんですよ…だからアンデッド化はやめてください」


「あら?不眠不休で働き放題の素敵な環境よ?」

ブラック企業も卒倒レベルの労働環境!


「一応俺騎士に就職しちゃってるんで…」


「人材を引き抜くのはトップには必要な事よ」

そんな経営論を聞いていると倒した狼が目を覚ましたらしい


「うぅ…小僧やってくれたな、わらわがたかが人間なぞに負けるなどとは思わなんだ」


絞り出すような声だ


「俺も必死でしたからねぇ。とりあえず怒りを収めてくれましたか?」


「さっきのでだいぶ収まった。というか体が動かん。」


ぴくぴくっと動かしただけだった


「結構やっちゃいましたもんね、俺動くんで治しますよ」


「そうか、それならば厚意に甘えようかの、しかしお主、自分が先じゃろうに」


「そっちのが重症っぽいんでね」


何とか動けるようになった体を動かし【アナライズ】で雷狼の状態を確認する。


「体の中もぐちゃぐちゃですね…」


「お主の氷で中身を破壊され、外は切り刻まれたのでな。お主面妖な技を使うのぉ」


「ちょっと特殊でしてね、それじゃあまず前足くっつけますよ」

再生魔法で治していく


「む?早いのぉ!普通なら時間かかるもんじゃが。」

ニコっと笑って体の中まで癒す


「のぉお主、名前はなんと申す?」

体を横にし、俺に魔法で癒されながら問うてくる


「ショウですよ」


「そうかショウよならばお主はこれからどうする?」


「俺には守るべき人がいるんですが、このままじゃいつか戦争になって守れそうにありません。 事前にどうにかできればいいんですが。」


「ほう、わらわも眷属達も迷惑しておる。 解決してくれると助かるのぉ。」


「善処します。」

苦笑いする


「ならばわらわと契約するがいい。少しは役に立つであろう、外の世界に出たとしてもな。いつでも召喚して呼び出すがよい」


「え?いいんですか?」


「あぁ頼む、お主になら任せてもよさそうじゃしな。フラミレッラも信頼しておるようじゃしの」


「私はただからかうのが楽しいだけよ?」


「その割には以前のような作り物の様な笑顔が減ったのではないか?」


「…」

彼女は黙る


「さぁ契約を。」

手をのせお互いの魔素を流し合いこれで契約完了だ


「そういえば名前はなんていうんですか?」


「わらわに名前はない、特に必要なかったのでのぉ、つけてくれんか? 主様よ」


「主様?」


「主であろう?契約したんじゃから。わらわに丁寧に接する必要はない、いつも通りでよいぞ」


「あーありがとう、じゃあ… ルチルで!」


「かわいらしい名前じゃな、こうもっと強い名前の方がわらわは…」


「いいじゃん女の子だし…」

少し不満そうだが特に思いつかないし押し通した。


「かわいいじゃない、ルチルちゃん?」

フラミレッラがからかうようにいう


「やめてたも! なんか恥ずかし!」

そう楽しく談笑していると地震が起こった。

激しく戦って落盤でもしたか?


「地震?!」

声をあげると俺とフラミレッラ様の立っている所が陥没して落下した。


二人で中に投げ出され体のバランスを失う。

とりあえず捕まえて何とか…


「クソ魔力もほとんどないっていうのに!」

彼女を下に、俺を上に、落下しながら悪態をつき落下方向に居る彼女に向かって手を伸ばす、指と指が触れ合いそうな所で


グチャ…彼女を下敷きに着床する…


彼女がクッションになり表面的な傷しかできなった。

衝撃でふっとんだ俺は急いで腹ばいに張って彼女の元までいくと


脚から着地したので脚から骨が飛び出し息も絶え絶え口から血を流していた。


「フラミレッラ様!大丈夫ですか?」


「…はぁ…はぁちょっとまずいわね… まさかこんなところで…」

魔力を使いすぎ再生魔法は使えなかった


「あーどうしたら… どうすれば?亜空間にポーションがって開けない!」


「…おち…つきなさい…坊やは自分の事を…考えなさい…私は…いいわ…」


「そんな…なんで…なんで」


「アンデッ…ド…一体…に…何泣いて…るのよ…アン…デッドは…討伐…しな…きゃで…しょ?」


「クソ、なんでこんな時に何もできないんだよ!なんで大事な人一人も助けられないんだよ!」


「…あら?…私…の事…そんなに…はぁ…大事…だった…の?」


「大事ですよ!もっと話したいですし、もっと…もっと…三人でいたいですよ…」


「…はぁ…はぁ…可愛い…わね…お嬢…ちゃんに…も…よろし…くいって…ちょうだい…」


「もう喋らないでください、もう…」

片腕だけで泣きながら抱きしめていた…


「私…これが…おわった…ら…国に帰…って結婚…する…の…」


「なんでこんな時にそんな事…バカなんですか…」


「…ちょっとだけ…休むわ…坊やは…生き…………」

俺の両頬を包んでいた手が力なく離れた…


「フラミレッラさん?!起きて下さいよ!フラミ………行かないで……」

体を揺するが反応はない…

その後は涙が止まらず膝を抱えずっと泣いていた…











静寂







何も聞こえない







誰もいない…







俺のすすり泣く声だけ

















「よいしょっと、あら、何辛気臭い顔してるの?」


「え?」

フラミレッラが起き上がり意地悪な顔で俺を見る


「何で?!死んだんじゃ?!」


「元々死んでるし、アンデッドだし、勝手に再生するし。神聖属性じゃないと私死なないわよ?ちょっと休むって言ったじゃない? 聞いてなかったの?」

クスクスと心底楽しそうに笑う


「聞いてましたけど……… この手の類の人の気持ちを考えない遊びはちょっと性格悪くありませんか?」


「そうかしら? 泣いちゃう位大事な大事な私とまた会えて嬉しいでしょ?」

つんつんと俺の頬を弄ぶ


「…あれはその時の勢いっていうか… なんていうか…」


「うふふ… 私は坊やの泣き顔が見れて大満足よ」

ニヤニヤ笑っている。


イライライライライライライライライライライライラ


「どれだけ心配したと思ってんだ!死んだと思ってどんだけ喪失感覚えたと思ってんだ! 返せこの気持ち! いつもからかうのだけに全力使いやがってこの野郎! ご立派に死亡フラグまで立てやがって! そもそもそういう趣味の悪い事は…」


首に手を回され、キスで唇を塞がれた。ラブコメか!

唇を離し唾液が糸を引き、光って消えて行く


「嬉しかったよ本当に…大事って言ってくれて…私を想って泣いてくれて…一人じゃないって…わかって…」


絞り出すように声をだし、涙が一粒零れ落ちた。 もう一度キスされる


「だから… これで許してね…」

それは今までに見ていた笑顔とは全く違っていた。 いつものどうすれば一番綺麗に見えるか、というのを計算尽くされた綺麗に整った笑顔ではなく、ぎこちなく、少し引きつってさえいるが、心からの本物の笑顔だった。


口も半開きで見惚れていると、くっと耳元に口をやり


「ルーちゃんには内緒だよ?」

内緒話のようなひそひそ声で俺の耳を犯しに来る


俺の中の何かが爆発しそうだった。 ルーという防波堤がなければもう完全に落とされてた。

逆チョロインと呼ぶなら呼べばいいさ! 男なんてもんはちょろいんだよ基本!


「うふふふ、これで私をいつでも召喚で呼べるわよ」

ボーナスタイムは終わってしまったようだ。 お姉さんバージョンにからかわれるんも実は悪い気はしてないが、さっきの着飾ってないのもやっぱりいい。 ギャップやめーや


「どういう事ですか?」


「貴方、もう敬語はやめて。 あんな姿みられたらもう… 呼び方もね」


「もう…なんですか?! わかったよじゃあフララで!」


「誰も私をそう呼ばないわ、今は貴方だけのフララよ、うふふふ」

いつもの調子で弄んでくる


「召喚っていうのはお互いが納得して認めないと呼べないよ。 私ちゃんと貴方の事を認めていなかったのね。 なんとなくわかってはいたんだけど… 今までは仮契約みたいな感じだったわけよ。」


「そういう事だったんですか、何か認めれない理由でもあったんですか?」


「認められないというか… 少し昔話でもどうかしら?」

そういって自分がアンデッドになる前の事を話し始めた。









「…うわぁぁぁああ… グスン」

めっちゃ泣いた。 マジでめっちゃ泣いた。


壮絶すぎて堪えれなかった。


「もぉどうしたの? 今じゃ気にしてないわ、こっちいらっしゃい」

両手を広げる

吸い込まれるようにその胸に飛び込んでまう。 当たり前だよね?


「はいはいよしよし」

辛いのはフララの方なのに俺の方が慰められてしまっていた

優しく抱き締め頭を撫でられる。 どこか甘く落ち着きを覚える匂いだ。


無駄に頭を胸にこすり付けているのは内緒だぞ?


「気づいてるわよ?」

なん…だと?


「そ、それ話してくれたって事は俺の事信用してくれたった事?」

動揺は悟られてないはず


「まぁ私の事、大事みたいだし?」

ジャブなど効かん


「私の事を想って泣いてたし?」

ストーレートパンチ! 大丈夫だまだ耐えれる


「キスまでしちゃったし? 初めてだったのに…」

もう一発ストレートでKOです!


「私ずっと一人だったのよね、そんな私が誰かと居たいなんて思うとはね… 自分が一番驚きよ」


「…気付いてないと思うけど、フララは多分ずっと一人じゃなかったよ」


「どうして? 二度も裏切られて、みんな殺して。 アンデッドになったせいで【腐敗】の力に目覚めて生き物に触れる事が出来ず、周りに居るアンデットは私に絶対服従。 私は一人だったわよ?」


「師匠とかその旦那さんがいたじゃん」


「あの二人は…」


「わかってるでしょ? あの二人がフララを守りたかったって。 今でもそう思ってるって。」


「でも私がアンデッドかもしれないのにまだ守るのかって聞かれた時、すぐに答えなかったよ!私の事アンデッドだから… 気味悪がってたよ…」


「なら聞いてみればいいよ、絶対服従なんだから、質問に本心で答えろっていえばそれですむし」


「…嫌だ知りたくないよ。 聞くことは今までも出来たけど、多分本心を聞くのが怖かったのよ… 心なんてもう昔に壊れちゃってるのにね」

悲しげに自嘲する。


「そこはさ、俺を信じてよ。 最悪の場合は俺の所にくればいい。 今度は逆に慰めるよ」


「…わかった… その時はお願い…」


「惚れた?」

実はすんなり言えず語尾が異常に上がってしまっている。惚れたぁ↑?


「二回もあんな情けなく泣き散らす顔見せられて惚れろっていうの?」

バカにしたように、でも優しさも込めて笑う


「ねぇ… ずっとそばにいてなんて言わない…。 でも、ちょっとだけ私の事を頭の中に止めておいてね…」


「勿論。 忘れるわけないよ… ってなんかお別れフラグみたいなのやめろ!」


「ショウは、なんでもフラグにしちゃうね」

心から楽しそうに笑い合っていると落ちて来た所から声が聞こえて来た


「お嬢~大丈夫ですか~?」


「お嬢いらっしゃいますか?!」

側近の二人がフララに向かって声をかける。


「ええここに居るわ、早く出して頂戴」

あ、姉モードに戻った


「お、そんなところにいるんですか? じゃあロープ降ろすんで!」

一人抱えて飛ぶまで魔力がまだ足りなかったので助かった。


「お嬢よかった、死ぬことはないでしょうけど万が一って事がありますからねーいやーよかった! あ、ショウ君もおつかれっす、腕ざまぁ」

俺の扱い雑じゃね?!


俺達を引き上げ、フララと俺に挟まれる形で骸骨二人が跪きながら喜んでいた


「東の主、今はルチルというんでしたか? が来て事情を説明された時一瞬肝が冷えましたぞ。 神聖属性のトラップなんてないとは思いますが…」


「心配かけたわね、ルチルちゃんにお礼言って帰るわよ」

ルチルサンクス! あいつデカいから何もできないだろうし…


二人に背を向け、フララは支配者らしく二人に声をかける


「ねぇ貴方達… 私が昔殺された時…………」

後ろに組んだ手に少し力が入る。

フっと自嘲気味に笑うと


一泊置いて


「なんでもないわ… 今までありがとうね、そしてこれからもよろしくっ」

二人に振り返り満面の笑みで心の底からの感謝を伝えた

二人とも泣きそうな顔<そう感じるだけ←これそろそろ必要ないよな?>下を向き跪いていた。


「フララいいのか?」

俺が声をかける。


「うん、本当はずっと前からわかってた事だから… 貴方を信じてあげる。 ショウも、ありがとっ!」

そう輝かんばかりの笑顔と共に俺に感謝を伝え先にその場を離れていく。 ぴょんと顔を近づけてお礼を言った彼女のが脳裏に焼き付き、未だ胸が高鳴ったままだった。


二人?は俺の方に向き直り跪いた


「お嬢を救っていただきありがとうございますショウ様。」


「し、師匠?!やめてくださいどうしたんですか?」


「私達はお嬢を二度も救えませんでした。 一度目は毒殺された時。 二度目は死んでいく心を見殺しにしていた事です。」


「おれっち達ではお嬢を救えませんでした。 お礼の言葉では表現しきれません。 死んでもいいぐらいです。」

いや死んでるよね?アンデッドジョーク下手か


「私達には子供はできませんでした。 彼女は私達にとっては娘同然なのですよ。」


二人?が少し緊張感を漂わせる。


「「我が主の主よ、我々は永遠の忠誠を貴方に誓います。」」


「え?!いやいやフララの眷属でしょ?」


「お嬢の旦那様は私共の主でもありますので」


「旦那って… 俺ルーいるんですが…」


「二人娶ればいいじゃないですか、一人はリールモルトの至宝、もう一人は負けじと劣らぬ美貌のアンデッドクイーン。 両手に花ですよ?おれっちの弟子も隅におけないですね?! それに歳取っても二人は若いまま、ウハウハじゃないっすか!」


「そんな物語の主人公みたいな…」


「あんまりお嬢をまたせると悪いんで行きますねそれじゃあ! 戻っても修業っすよ!」


「全くお前の気安さはどうなっとるんだ… それでは主よ、お先に失礼します」


「あ、ちょっと待って… はぁ…行ってしまったかぁ…」

骸骨二人を見送った…


そりゃ地球には間違いなく存在しないような美貌を誇る二人と一緒になるなんて最高だけど… 俺には無理だと思う… 自分一人でも手一杯なのに…


気を紛らわすためにステータスを確認してみる…なんだこれ

【名前】ササヤマショウ

【種族】人間

【年齢】18

【生命力】6000

【魔素量】14800

【魔力量】70000

【筋力】 1560

【速さ】 1490

【知力】 7500

【体力】 1610

【適正魔術】【火・水・風・土・白・召喚】

【スキル】【剣術Lv7】【短刀術Lv7】【二刀流Lv6】【体術Lv5】【魔法剣Lv7】【魔法拳Lv5】【気配感知Lv4】【気配遮断Lv3】【魔素操作】【魔素⇔魔力変換】【魔力操作】【魔法創造】【魔力回復大】【マナ操作】【マナ生成】

【称号】【異世界人】【王女の騎士】【王女の血袋】【宝石泥棒】【二刀嘯風弄月流(笑)開祖】【グールエンペラーの主】【雷狼の主】


…ルチルと戦ったからまたちょっと上がってるな。っていうか…


【宝石泥棒】

※リールモルトの至宝と呼ばれる美姫を盗んだ男。彼はとんでもない物を盗んでいきました。貴方の…


おい!最後まではみねぇぞ! 誰が悪い魔法使いじゃ!


【二刀嘯風弄月流(笑)開祖】

※疾風流、水明流の流れを汲む独自の流派、雪月風花流を軸に誕生した新興流派。 人に言う時少し恥ずかしい。


うるせぇよ! 俺のステータスで遊ぶな! てか称号で確定したって事は変更不可じゃん…


【グールエンペラーの主】

※伝説のグールエンペラー、フラミレッラの主。 召喚で呼び出せる


【雷狼の主】

※伝説の雷狼、ルチルの主。召喚で呼び出せる


このステータスっていうのは誰が決めてんだ?そういうのも気になるな…

取り合えず帰るか。

そろそろルー帰ってるかなー。会いたいなー。
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