蒼炎の魔法使い

山野

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第五話 リールモルト王国1

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 あれがヴァンパイアの国リールモルト王国」

「あーどうしたらいい?俺金もないし」

「それは心配ない、こっち」
 周りの大きな木よりもさらに一際大きい木の前に立つとルーが可愛く手招きする。何それ抱きしめたい!とんでもなく緩んだ顔をキリ顔に戻し近づく

「ここに何かあるの?」

 大きな木に手を置き目を閉じるとルーの周りに力の流れを感じる。
「リールモルトの名において命ずる、真の姿を見せよ」
 ん?何故に国の名前?
 ルーがそう命じると、大きな木に穴が開き地下に通ずる道が現れた

「昔遊んでた時に見つけた。これなら門番にも見つからずに入れる。」
 そう言い終わると梯子を使って下に降り上を見上げて手招きする。

「……俺不法入国ってやつじゃないですかねぇ?!大丈夫なの?」
 ハシゴを使って降りて暗がりの中ぶつぶつ言う。

「大丈夫、入っちゃえば一緒。最初だけだから。一回だけだから」
 何でそんなラブホの前で懇願するチャラ男みたいな言い方なんですか?!
 とはいえこうしてても仕方ないのでしぶしぶ頷く。
 真っ暗なので光魔法で照明魔法ライトで照らす

「何も言わないと驚くから今度から魔法使う時は言ってくれない?この世界で使う時に何か口にしないと怪しまれるし。」

「あ、そっか。魔術っぽく見せる為にもなんか言わないとね、じゃあ、照明魔法ライト!」

「言う前から出でたけど……それじゃあ行こう」
 暗い地下を歩き出す。そういえばなんであの時あの狼を探してたんだろう?

「なぁルー、なんであのブラッティーウルフだっけ?何であれ探してたの?」

「妹が、お腹をあの爪で切り裂かれたの。内臓まで出ちゃって凄く痛そうでかわいそうで、その恨み。」

「……内臓出ちゃってって……大丈夫なの?」

「ヴァンパイアは血を飲めば再生力も高まるし大丈夫。もう傷跡もない」
 ファンタジー先輩パネェ

「どこにでも付いてくる子で、森に用があって出たんだけど外まで隠れて付いてきてしまったの。それで見つけて帰りなさいと怒ってる所にあいつが出てきてお腹をね……それで戦いになって目を傷つけて撃退した」

「でもあんな街から遠い場所でよくまた見つけれたね」

「私の鎌は最後に傷をつけた物が生きてると、どこにいるか教えてくれるの。」
 こえー死神アイテムかよ

「す、すごい能力だね」

「魔素も沢山持ってかれるけどね。ここを登れば地上」
 話しているとどうやらついたらしい

「私が先に上って様子を見る」
 ルーが梯子を使って上る………………おい!見えそうで見えないのやめーや!てか見ちゃダメだろ!見ないように見る!見るようにして見ない!

「……ショウはいやらしい……」

 バレてた!でもなぁスカートの中ってぇのはなぁ!魔境なんだよ!数えきれない数の男達がその魔境に挑み、どれだけの野郎の命が散った事か。魔境の奥にある果実を貪れるのはごく一部の選ばれた男のみ!だがその権利を貪る為ならば、俺は戦争も辞さない覚悟だ!さぁいざ参らん!正々堂々とスカートの中を見

「……ョゥ……ショウ!何してるの?大丈夫だよ上がってきて」

「はい。」
 考えすぎていたらボーナスタイム終わってた。
 落ち込みながら登るとそこは……

「お城?」

「城の裏庭の隅だよ、そこの木を登っていけば城壁を超えて外に出れる、行こう」
 音を出来るだけ立てないようにそそくさ超える。

「ここが異世界の街か!綺麗だなぁ!」
 そこは石畳のヨーロッパのような街並みだった。月明かりと優しい光で満たされて幻想的な街並みを作り上げている。
 結構人が行き来してるけどこの大半がヴァンパイアだというのだから驚きだ。

「ショウ、まずは服を買おう、その服だと目立つ。」

 ジーンズにシャツだが、確かに周りにはそういった物を着てる人はいない。

「了解、ご案内願いしますねお姫様?」

 一瞬ルーがビクっとする

「え、ええ!それじゃあ行きましょうナイト様」

 ルーは意外とノリがいい。

「それで希望はある?ショウの世界の服とは全然違うかもしれないけど。」

「異世界の服!やっぱり異世界で魔法使いといえばローブだよなぁローブ!ローブ以外は断固拒否だね!見た目より実用性重視!」

「はいはいローブでもなんでもいいから行きますよー」
 手を引かれ店の中に入る。いらっしゃいませと店員が駆け寄ってきたのだが……硬直。何故か硬直。

「この方に合う服、ローブをいくつか見繕ってもらえますか?高級品でなくても構いませんので実用性重視でお願いします。また、今手持ちがなく、支払いは明日になるのですが……」

 ルーが申し訳なさそう頭を避けようとしたところで

「お、お、おやめください!明日でも一週間後でも大丈夫です!すぐに見繕ってきますので少々お待ちくださいませ!」

「なんか凄い勢いだね圧倒されたわ。この世界じゃ後払いでも問題ないの?もしかして常連?」

「父がこの国ではそこそこ有名だから……子供の私も多少信用があるの。だから本当はダメだけど融通利かせてくれてるんだと思う。ここに来たのは初めてだし」

「へぇ立派なお父さんなんだね、俺も間一髪の所を助けて貰ったし挨拶に行かないとね」

「そ、そうね。父が身元保証すれば多分ここに滞在するのも問題ないと思うし。後ショウ、事情説明どうするの?」

「んー記憶喪失であの森に倒れていた設定にするつもり。都合悪い事は覚えてないで何とかなるかなーと」

「ちょっと強引だけど異世界から来たとも言えないし、それでいいと思う。」

「私も出来るだけサポートするけど、ショウ自身がうまく交渉する必要がある。そこは心配してないけど。」

 え?なんで?そこ一番心配して欲しいとこなんだけど?

「お、おう、頑張るわ」

 話がまとまったところで奥から三つのローブと二セットの旅人風の服を持ってきた。
「こちらでどうでしょうか?見た目は地味ですが素材は申し分なく、丈夫なので長く使えると思います。」

「それではこちらをお願いします。」

「ルーなんか悪いな、ちゃんとお金は返すから!」

「私も助けられてるしそのお礼だと思って。」

「それでもなんか悪いなぁ……じゃあ稼げるようになったらご飯ごちそうするよ!」
 その瞬間、店内で会計をしようとしていた女性がお金らしきものをぶちまける。
 やっぱりお金は貨幣なんだな。

「ふふふ、デートのお誘い?」

「ま、まぁね」
 先程の女性が折角拾い上げたお金を再度ぶちまける。
 おっちょこちょいかよ

 とりあえずローブにそそくさ着替え、ニコニコと雑談をかわしながら店を後にして、見繕ってもらった服を人気のないところに行き亜空間にしまった。



 ◇  ◇  ◇  ◇

「店長先程の美しい女性は……」

「あぁ、お前の想像している通りのお方だ。こんな所にお越しいただけるなんて……お店やっててよかったよ!本当に!」

「やっぱりですかー、まさかお目にかかれるなんて……想像を絶する美しさをお持ちとは聞いていましたけど、噂以上でしたねー!」

「リールモント王国の至宝とまで言われる美貌は伊達じゃないな。しかし……一緒に居たあの男、一体何者だ?間違いなくただの人間。それに黒髪に黒い目にあの平面的な顔。見たことあるか?」

「ないですねー、私なんかは恐れ多くてあんなに気安く話すことなんて出来ませんよー、益々わかりませんねー。それに……見ました?」

「お前も気付いたか。あの男……首に噛まれた跡があったな……なぁ……あり得ると思うか?約500年間どんな男にもなびかなかったあのお方が……」

「もしあのお方が付けた物だとしたら……これは大変な事になりますねー、誰も手に入れる事が出来なかったリールモントの至宝ですよ?それも見たことも無いただの人間」

「ははっ自国他国の貴族たちが荒れ狂うな!外野から見る分には楽しそうだ!」

「領主が不機嫌になって領民に八つ当たりとかないといいですけどねー」

「それは笑えないな。笑うといえば……笑ってたな」

「ええ笑ってましたね、確かあのお方の笑顔は家族ですら滅多に見ることが出来ないと聞いてたんですけど……」

「これは……もしてしてもしかする……か?」
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