凌辱カキコ

島村春穂

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極彩色情狂

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 肉づきのよい鼠径部とこれまた肉づきのよい太腿に挟まれた充の顔つきが幸せそうに酩酊していた。鼻さきから吸った息を熱い吐息に変えて、媚肉の小高い丘に繁茂した叢に浴びせつけている。情に厚いあの荒川らしく、恥毛が些か濃いせいか鼠径部の中心部ではベージュピンクのパンティストッキングをこんもりとさせている。充はひたすら呻きあげながら、そこをしきりに甘噛みしていた。


 敏感なところに歯が突き立てられて、豊腰が、いやよいやよ、とくねりだす。次に充はパンティストッキングのみを噛むと、前歯を剥き出して食いしばり、そのまま引っ張り上げた。ボスン! といったような小さな爆発音とともに噛んださきが楕円に破れた。もさッとした叢がその破れた穴から茫々と広がった。毛むらのさきには、所々付着した愛液がだまになっていて白っぽくこびり付いている。


 吸い寄せられるようにといったような言い方では余りにも使い古されているかもしれないけれど、本当にそれくらいしか言葉が見当たらない。もしくは少し気を利かせてみて、たとえば排水溝でもがいているたまに見かけるけれど名前も知らないような二センチ大ほどの黒い虫が水流に巻かれていくかのように、充の顔が漆黒の原生林へと引っ張られていった。


 毛むらのさきまで近づくと、奴は二、三目を瞬かせて見せた。おそらくは、荒川の体臭をぎゅっと濃縮して閉じ込めたような匂いと混じって、密度の濃い甘ったるいアソコ独特の臭気が立ち込めていることだろう。原生林だとか、叢だとか例えてはみるが、楕円に破れたパンティストッキングからもさッと出てきた毛脚の長い恥毛の塊はまるで毬藻のようでもある。


 女が既婚者ともなれば、お手入れをする人とそうでない人が極端に分かれるものだが、セックスレスの荒川はおそらく後者のほうであった。だが、あの器量好しで、職掌柄白衣の天使、清楚というイメージがありながら、その実裸になってみれば、この下品な恥毛の生え方というのは寧ろ男心を、こう下腹部の深層からこそばゆくくすぐってくれるものがある。あの充だっておそらくはそう思っていたに違いない。


 その証拠として眼前で茫々と広がる光景に暫し圧倒されながら、それこそ没入といった様子で魅入っていた。心拍数が上がっているのだろう。半びらいた口と小鼻を立たせた鼻の穴から、浅く、また早い呼吸を交互に繰り返し、せわしく肩を上下させている。充もそうだが、外気に晒された大事な部分をむやみやたらと嗅がれている荒川のほうだってほとんど同じようなものであった。


 毬藻のような恥毛の渦に鼻さきが埋没したと同時に、充と荒川の二人は一緒になって身悶えた。それぞれが触れた箇所から高圧電流でも流されたかのようなウブな反応を示すところを、神の視点から覗き下ろす蒼甫にありありと見せつけてくれた。蒼甫にとってもこれはただ事ではない。肉冠が卵型のオナホによって捏ねくられている。その手つきから蒼甫がどのくらい昂奮しているかは察しがつく。そして、「故障中」の貼り紙が貼ってある一番奥の個室便所から僅かに卑猥な水音が立っていてもあの二人はまるで気がつかないのだ。それだけ充と荒川も夢中になって二人の世界に入り浸っているようであった。


 やがて童貞の指さきが、毬藻のように繁茂した恥毛を分け入っていって未踏の肌触りに挑んでいく。股ぐらの奥からは触っただけで粘っこい音が鳴った。ひどく濡れているらしかった。にちにちと、聞かされているほうまで恥ずかしくなるくらいに。おそらく柔らかい肉扉がいま指でくつ拡げられているに違いなかった。


 青年童貞の指さきを伝い、手首に滴り落ちてきた透明な愛液が肘の辺りまで流れていく。およそナメクジが這ったような筋状の跡が一本、二本、三本と卑猥な音が鳴るとともに増えていった。そのうち、パンプスのヒールがその場で姦しく音を立てて、鼠径部と太腿のあいだには益益すき間がひろがっていった。未踏の肌触りに興味津々な充だから、片方の手で密生した恥毛を掻き上げつつ、またもう一方の手では亀裂の溝に沿って行ったり来たりと前後させた。


「いっ、痛くないッスか?」
 うん、大丈夫、という言葉の代わりに、遠慮ぎみに頷くことで荒川は意思表示をした。鼠径部と太腿にほどよいすき間が出来たことで、下から覗き込むと、女の道具がどうなっているのか見えなくもない。こう熱視線に視姦されてしまうと、未熟女とはいえたまらないものがあるようだ。


「恥ずかしい、恥ずかしいよ」
 経験のおおい、それも既婚の未熟女とはとても思えないような口ぶりだ。おそらくだが、青年童貞の充の緊張が荒川をそうさせているらしかった。


 荒川の口数が増えていった。何度も恥ずかしい、といったニュアンスの哀願を口走り、その時々で、何を言っているのかわからないほど声がうわずった。そのあいだにも青年童貞の指さきに虐められ続けていくものだから、溢れ出てくる愛液の量は次第次第に増えていってしまう。


「だめぇ……」
 感じすぎると女は指戯に耽る腕を掴んでくるものだ。荒川も例に漏れずそうした。掴んだ手の薬指には結婚指輪が光っていた。充はそれを一瞥したあと、「アソコをよく見てみたいッス」と丁寧にお願いをした。無垢ゆえにド直球であった。しかも、熱い視線にこうも見つめられたら荒川は到頭断れなかったのである。



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