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2人に訪れた危機
突然の別れ
しおりを挟む三年生として日常を送って暫く、平和で少し寂しい何気無い日常は突然崩れ始める。
ーーーーー
その日の私は隼人の家で勉強を教わっていた。夕方を迎え勉強も一息ついた私と隼人はリビングへと向かい、私は隼人ママの横で料理の手伝いを始める。
「ママ、これみじん切り?」
「えぇお願いね♡」
私が野菜を切っていると玄関から呼び鈴が聞こえ、誰かが訪れた事を告げる。
「あらッこんな時間に誰かしら?」
「私が出ようか?」
「ご飯手伝ってくれてるでしょ♡」
微笑みを見せた隼人ママが玄関へ向かったけど、直ぐにママは困った顔で戻って来る。
「あれ?母さんどうしたの?」
「それが…大きな外国の方が二人、莉緒ちゃんに会いに来たって…莉緒ちゃん覚えある?」
「ううん、なんで私?それに何で此処?」
尋ねて来た人物に疑問だらけの私と隼人は、ママと一緒に玄関へ向かった。するとそこに居たのはレオより細身だが長身の二人の男性。
「は、ハロー?」
「Hello! I've always wanted to see you.Oh, you're Sakasima rio, right?」
「え、えっと…イエス?」
よく分からない言葉に答えてみると、今度は困った表情の日本人の男性が前に出て来た。
「ちょっとッ莉緒さん見たいからって、先に行かないで下さいよ」
私たちへの挨拶も無しに話し始める日本人男性。隼人ママは少しムスッと眉を寄せ、男性に問い掛ける。
「あの、こんな時間に何の用ですか?」
「お騒がせしまして申し訳ありません。私、こういう者でして…」
差し出された名刺には芸能プロダクションの会社名が書かれ、隼人ママはそれを読み上げる。
「芸能事務所の方が何の用です?」
「あッ母さんそれ!」
「隼人、知ってるの?」
「綾…レオさんの居た事務所だよ!」
「レオさんの?」
「でも何でレオの事務所の人が此処に?」
「私はそこでレオ・グリシヤのマネージャーをしていた松居と申します。本日はレオの件で…」
松居…?
確かレオが電話で話してた人…?
まさかレオに何かあったの?
今朝だって生徒の相手してたよ?
私の思考はどんどん悪い方へ向かい気付けば「レオに何があったのッ!?」って身を乗り出していた。
「莉緒ちゃんッ落ち着いて。大丈夫よ…何かあれば金木先生や須屋さんが教えてくれるはずよ」
隼人ママに背中を撫でられ優しく諭されると少し気分が落ち着いた。確かに金木や倫太郎からは何も連絡が無い…きっと大丈夫だよね?
三人の男性をリビングへと招いた隼人ママは、それぞれにお茶を出し「それで御用件は?」と話を詳しく聞くことにした。
「今回レオが俳優業の復帰として、アメリカへ行った事についてでして…」
「え?アメリ…カ?レオ、日本に居ないの?」
「ご存知無かったですか?先程、空港を発ちましたよ」
うそ…嘘だよ…だって学校は?
私、何も聞いてないよ?
どうして…何でッ…
「莉緒、大丈夫?」
隼人は震える私の手を握って心配してくれる。よく分からないままの私は静かに頷いて、男性たちを真っ直ぐ見る事にした。
「…レオは…もう戻ってこないの?」
「予定ではそのつもりかと」
「…ちょっと電話してくる」
「莉緒…」
私は静かに席を立ち、リビングを出ればレオに電話をかけた。思えば私からレオに電話掛けるなんて…初めての事かもしれない。
……お願い。
出て…レオ…
だが何度かけ直してもレオが電話に出る事はなかった。大人しくリビングに戻ると男達は帰る準備をしていた。
「結局、貴方たちが来た理由は…もう帰って来ないからレオの事は忘れてって事?」
「そうです」
「莉緒ちゃん、先生は?」
「電話出なかった」
「そう……あの、私が見た限りでもレオさんはこの子をそんな風に扱う人で無いと思っています。何か事情があるのでは無いですか?」
「いえ、私からはお伝えした事以上の事は何も」
隼人ママの問に淡々と答える松居さん。彼らが玄関で靴を履き扉に手を掛けた時、私の意志は固まった。
「…私も行く」
「え?」
「莉緒ッ!?」
「貴方、レオのマネージャーでしょ?なら貴方もアメリカに行くんだよね?私を連れてって」
「こら莉緒ちゃん、人を困らせちゃダメよッ」
「どうして?この人達は私達を困らせたのに、こっちはダメなの?」
私が隼人ママに答えると豪快に笑い、ドアノブから手を離した松居は私の方へ振り返る。
「なるほど、あの彼が貴方に夢中になったのも分かった気もします。では共に着いてきてください、パスポートと等はコチラで用意致しましょう」
「うん、よろしく」
こうして急遽アメリカに行く事になった私。何度も隼人とママに止められたが私の意志は固かった。
待ってろレオ
アンタにその気が無くても
私は絶対納得しないんだからッ!!
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