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1年記念日
遅れて来た1年記念日 前半
しおりを挟む英語の勉強を教えて貰った翌週の日曜日。
レオに誘われ出掛ける事になったけど、本当に大丈夫なのだろうか?彼と付き合って1年が経つが、二人で何処かへデートなんて初めてだ。
ソワソワと家の前で待つ私の前に車が止まり、サングラスと帽子を深くかぶったレオが降りてきた。レオとして出掛けてくれるの?まぁ確かに担任の綾城が生徒と白昼堂々デートなんて出来るわけも無いけど、そんなに周りを警戒してまでどこに連れて行ってくれるんだろ?
車に乗り込んだ私は、そんな疑問を口に出してみた。
「ねぇどこ行くの?」
「内緒っつったろ。それよりその袋ん中、飯あるから腹ごしらえしとけ」
車を走らせる彼を横目に助手席付近に置かれていた袋を漁れば、中にはサンドイッチやおにぎりなど具材も私の好物ばかりが入っていた。
「あったまごサンドある。食べて良い?」
「おう」
そうして1時間。
「着いた」というレオの声で外に顔を向けると、私は大きな動物園に来ていた。確か地域最大らしいこの動物園は、子供や大人まで人気の小さな遊園地も付いていた気がする。
私、動物園なんて幼稚園の遠足ぶりだ。
車を降りた私がボケっと入口に立ち尽くして居れば、いつの間に離れていたレオはチケットを買い戻ってくる。
「まだボーっとしてんのか?」
「ねぇレオ、ここ動物園?」
「他に何に見えんだよ」
「だ、だって良いの?誰かに見られたら?」
「んな事いちいち気にすんな」
そう笑ったレオは、私の手をしっかり繋ぎ「ほら行くぞ」と園の中へと引っ張ってくれた。
園の中に入り初めに目に付く大きなキリンのモニュメント。広々とした広場の真ん中に置かれ、多くの人が記念撮影をしている。
「ねぇ私達も写真撮ろっ?」
「おう」
モニュメントの真ん前まで行き記念写真を撮った私達。レオと2人で撮るなんて滅多にないから凄い嬉しい!いつもは葵や健人が気を使ってくれるもんね…何だろ、凄い楽しい!
撮影を終え満足した私は地図を取り出した。
「ええっと、マップがこうだから…」
「こっちから行くか?餌やりもしてぇだろ?」
「うん。昼ごはんもこの辺で食べれそう」
「決まりだな」
私はレオと手を繋ぎ動物園内を歩き始める。ゾウやキリンなど定番の動物からミーヤキャット、ハイエナまで飼育され私の心を弾ませた。
「あっ見てレオだ!」
「ライオンだろ」
「ラテン語でレオでしょ?」
「くだらねぇ事ばっか覚えやがって」
「レオの名前だもん」
「そーかよ」
少しニヤけた様に見えたレオは、照れくさくなってスタスタと歩き始めてしまう。慌てて追い掛けるとウサギの餌やり場で立ち止まる彼が私の方へ振り向いて「やるか?」と問い掛ける。
「うさぎの餌やり?やるっ!」
「おっ結構いるな」
小屋へ入れば10匹以上は居るウサギがぴょこぴょこと小屋の中を元気に飛び回り、小さな子供が餌を与えていた。
「可愛いっ」
「ほら、これ餌」
「ありがとう」
買って貰った餌を持ちその場に屈むと、餌を求めて近寄ってくる小さなウサギ達。小さな生き物の仕草は自然と心も安らぐものだ。
「ヤバッどうしよっ…餌食べてくれてるっ」
「そのまま手も食われねぇか心配だな」
「それは流石に大丈夫って、餌を箱ごと取っちゃダメええっ!」
「力強ぇな」
「もう餌無くなった…」
餌やりを終え小屋を出た私とレオは、次にアルパカと触れ合い体験が出来る場所へと向かった。
「可愛いっ凄いゴワゴワしてる」
「お前、今日は可愛いしか言ってねぇぞ」
「だってみんな可愛いしさ、レオも触ってごらん?モフモフのイメージがあったのに」
レオもアルパカへ手を当てると、すこし表情を和らげ「本当だ羊みてぇ」と微笑みを浮かべる。
「羊もゴワゴワなの?」
「おう、全く同じだ」
「なんか夢を打ち砕かれた気分」
「何でだよ」
「何となくフワフワモコモコをイメージしてたから。まぁいいや、ご飯食べに行こ?お腹空いた」
「そうだな、中間地点にも近いし昼飯食うか」
触れ合い体験を終え、中間地点のレストランへ入れば可愛らしい看板とメニュー表が出迎えてくれた。
「どれにしよう。パンダカレーも可愛いしコアラヌードルも気になるっ」
「好きなの2つ頼んでいいぞ」
「え?レオは?」
「両方半分貰う」
「なるほどっ賢い!じゃ、このパンダカレーとウサギパンとステーキっ!」
「3つじゃねぇか…」
文句を吐きながらも定員に注文してくれるレオ。休日の昼時って事もあるのか満席に近い店内で座れる場所を探した私は、2人がけのテーブル席に着くことが出来た。
流石に頼み過ぎたかと思ったけど、レオはペロッと3つの料理の余りを食べ切ってしまい心配は無用だった。
食事を終えショップへ向かう私は、ふと気になる疑問を投げかけてみる。
「ねぇレオ、どうして急に動物園に連れて来てくれたの?」
変装までしてデートしてくれるなんて、出会ってから1年間無かった気がする…もしかして葵が声掛けたから?
「葵に言われたから?」
「まぁ元から考えてはいた。考えてたら…まぁ…記念日過ぎてた」
私の直接的な質問に飲み物口に含め、視線を逸らし答えたレオ。彼が言い訳を考えている時、声が次第に小さくなるのを最近知った。
「ふふっ」
「な、なんだよ」
「ううん?ただ慣れてないんだなぁって」
「…記念日とか祝った事ねぇしな」
「へぇ?そうなんだ、なんか嬉しい」
「あ?何が」
「だってレオの初めてゲットしたんだもん」
「っ//あぁ、そうだな」
私の言葉な少し顔を赤らめたレオ。そんな彼と手を繋ぎ、次にやって来たのは土産コーナーのある大きなお店。
「あッこのぬいぐるみ可愛い」
「デカいな」
「立たせると150cmかぁ…大きいぬいぐるみって憧れてたけど、やっぱり結構高いねぇ」
「じゃ莉緒。これなんかどうだ?」
そう言ってレオが手にしたのは、男女ペアになるクマのストラップ。ペアの持ち物なんて絶対断られると思って今まで言わなかったのに、まさかレオの方から言ってくれるなんて驚きだ。
「え、良いの?レオ、そういうの嫌だと思ってた」
「確かにあんま好んで着けねぇけど、これなら財布の中とかにでも付けれんだろ?要るなら買ってくる」
「ッいるっ!」
「おう、なら買ってくるから他の見とけ」
「ううん。もう店の外いる」
「分かった」
私が店の外に出て早10分…レジが混んでいるんだろうか?少し遅い気がする。中の様子を見ようかとショップに顔を向けると、さっき見ていた大きなぬいぐるみを抱いたレオが店外へ向かって歩いてきた。
「え、それ買ったの!?」
「欲しかったんだろ?」
「そうだけどッ」
「俺からのプレゼントだ、気にすんな」
「ッありがとうレオ!大好き!」
「おう」
私は大きなクマを抱きしめ車へと乗り込んだ。
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