私の担任は元世界的スター

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「で、何で僕も一緒にレオの尾行?」
「車無いもん」


私は今、凛仁さんと共にレオを尾行している。
ミアさんに会うと約束してくれたレオは、早速次の休みにミアさんへ会うためのアポをとっていた。二人の関係が気になる私は凛仁さんに無理やり仕事を休んでもらい、彼のあとを追う事にしたのだ。


「ミアちゃん、俺の事知ってるんだけどなぁ」
「だからサングラスと帽子渡したでしょ」
「変装これかァ…うんそうだね」
「あっミアさんと喫茶店入った、行くよ」
「はいはーい」


私と凛仁さんはレオに続いて喫茶店に入れば、少し離れた席で二人を観察を始めた。



ーーーーーー

レオside



「久しぶり」
「うん」


俺の前でほ口数の少ないミア。
莉緒は俺の誤解を解こうとしてるらしいが、実際はこれだ。目の前に置かれた珈琲とパンしか見ないミアは、まだ1度も俺と目を合わせようともしない。


「…家、来たんだってな」
「うん」


続かない会話…ここに来る途中の車の中でも、会話したのは挨拶程度。ミアは何か用があって俺の所に来たんじゃ無いのか?背後から着いてきていた莉緒と凛仁に呆れながらも、俺はキチンとミアと向き合うつもりでいた。

俺が静かに珈琲を飲むと、今度はミアの方から話題を出してくる。


「あの子、可愛かったね」
「莉緒か?」
「うん物事ハッキリ言えるし、桜さんにも反抗したって聞いた」
「あぁ…」
「私が言うのもアレだけど、あの子はうちの親の事を知ってるの?」
「あぁ、知ってると思う」
「思うって…はぁ。今まで恋愛感情すら持たなかった人が、あんな子供に色々背負わせて幸せに出来ると思ってんの?」
「正直分からねぇな、実際かなり不安にさせたのも事実だ」
「はぁホント昔から何も変わらない。兄さんは不器用なんだから動く前にしっかり考えてよ」


ミアの言う通りだ。昔から向こう見ずとは言われるが、ミアにも沢山の我慢をさせて来た気もする。だから俺はコイツにだけは頭が上がらないのだが、久しぶりに会ったと言うのに俺は再び説教を受けている。

これも懐かしさと捉えれば苦では無いが、今話しているのは莉緒に関することだ。コイツに心配され注意されるようでは俺もまだまだだな。


「あの子の親は?あんたの事知ってんの?」
「あぁ。あまり環境も良くなくてな…今は連れ出してアパート借りて一人で頑張ってる」
「ふーん」
「何だ、心配してくれてんのか?」
「はぁ?自惚れないで。久しぶりに顔みたから色々聞いただけよ、兄さんの事嫌いなのは変わらないから」
「そうか、なら良いんだ。けど莉緒とは仲良くしてやってくれねぇか?」
「まぁ…考えとくわ」


そう言ってお金だけ置いて店を出たミア。あの気の強さは母親譲りだと苦笑を浮かべれば、莉緒達へ声掛けるべく座る席へと向かう事にした。





ーーーーー莉緒side



着いてきたはいいけど…
ここからじゃ何も聞こえないッ!!!

レオ、子犬みたいにシュンとしてるし
一体何話してるの?


「莉緒ちゃんそんな気にしてないでさ、このハンバーグ美味しいよ?」
「あ…本当だ」
「でしょ♡」
「じゃなくて!レオ達、何話してんのかな?あんな子犬みたいに大人しいレオ初めて見た」
「レオは昔からミアちゃんに弱いからねぇ、きっとガツンと言われてんだと思うよ~?」
「ガツンと?何を?」


私が首を傾げると、ミアさんは席を離れレオが私達の元へとやって来て「お前ら聞いてたのか」と私の隣に腰かけた。


「全然聞こえなかったよ」
「それは良かった」
「ねぇレオ話してどうだった?」
「まぁ俺を好いてるようには見えなかったけど、いい機会だったとは思う。ありがとな莉緒」
「そっかぁ…」
「何で残念そうなんだよ」
「だってぇぇ」
「莉緒ちゃん、ずっと心配してたんだよねぇ♡」
「そっか、ありがとな」
「うん」


私達の食事が終わると家に送ってくれたレオ。その後の進展は無いようで、ミアさんの話題も次第にしなくなって行った。






…その2ヶ月後


関係性も変わらない様に見えたレオとミアさんだったけど、私がレオの家に泊まりに来ていた夏休みのある日の夜中…突然鳴ったインターホンの音に目を覚ます。

この家に寝泊まりする時、いつもレオはリビングのソファーで寝て私は彼の寝室を借りているのだが、時計を見れば時刻は夜中の2時を回っていた。ゆっくりと体を起こすと玄関の方からミアさんらしき人の声とレオの声が聞こえてくる。


「泊めて」
「はッ?お前今何時だと…」
「良いでしょ、入るわよ」
「ちょッお前勝手に…」
「あの子は?」
「部屋で寝てる。だからあんま大声出すな」
「そう、なら良いわ」
「こんな時間にどうしたんだよ」
「ストーカーから逃げて来た」


ストーカー?
やっぱりあれだけ綺麗だと
ファンの人とか対応が大変なのかな?


「あぁ…珈琲飲むか?」
「ありがとう、桜さんはまだ兄さんの事を諦めてないみたいね…間に入るように頼まれたわ。小娘を何とかしてってさ、莉緒ちゃんだっけ?」

「…だから来たのか?」
「いやきっかけの1つなだけよ。私は口挟む気無いしね。兄さんが俳優業辞めて以来、色んな人から質問攻め酷かったんだから、文句のひとつでも言わないと気が済まなかったのよ」
「あぁ、悪かった」


そんな会話が耳に入り私もリビングに顔を出そうとした時、再び玄関が開き「あれ?鍵空いてる」なんて凛仁さんの陽気な声が聞こえてきた。


「お前まで来たのか…今何時だと思ってんだ」
「わかんなァい♡ミアちゃんが入ったの見たから着いてきちゃった」
「凛仁、ミアが日本来る度にストーカーすんの辞めてやれよ」
「ええぇ!俺の身は常にミアちゃんと共にあるんだぞッ?!」
「うるさいわね、莉緒ちゃんが起きるでしょッ?この酔っ払い」
「僕はまだ酔ってないっまだまだ飲めるぞ!」
「あーうるさ」


ミアさんのストーカーって凛仁さんの事?

私がドアを開けリビングの様子を見に行くと、凛仁さんは嫌な顔をするミアさんを背後から抱き締めていた。


「レオ、凛仁さん来たの?」
「あぁ悪い起こしたか」
「ううん大丈夫」
「莉緒ちゃんやっほ~♡」


陽気な凛仁さんは、私に寄り掛かるように抱き締めたが正直かなり酒臭い…

「おい、莉緒にまで抱き着くんじゃねぇよ」
「だってミアちゃんが抱き締めてくれないッ!!!」
「凛仁さん…お酒臭い」
「酷いッ!!!酒は男の勲章よ!」
「凛仁、莉緒ちゃんから離れないと鬼が出るわよ?」
「鬼?」


ふとレオへ視線を向けると鬼の形相で凛仁さんを睨みつけていた。今にも珈琲でも頭からぶっかけそうだ…。そんなレオの表情に苦笑いを浮かべた凛仁さんは、ミアさんに「ならキスしていい?」なんて問い掛ける。相変わらず怖いもの知らずというか、なんと言うか…


「頬ならね」
「やったー!」


そうして私から手を離した凛仁さんは、ミアさんに抱き着き頬にキスをして見せた。口では文句を言っていたが嫌な顔はしないミアさんを見る限り二人は両思いなのかもしれない。


「そうだミア。莉緒にちゃんと自己紹介しとけ?この前は押し掛けて終わったんだろ」
「そうね莉緒ちゃん、夜遅くにごめんね。改めまして私はミア・グリシヤ。兄がいつもお世話になっているわ。先日は驚かせてしまってごめんなさい」
「あ、いえ…山本莉緒です。えっと…」
「俺の彼女だ」
「知ってるわ。あなた度胸あって好きよ」
「へ?」

「私が兄さん罵倒した時、はっきりと否定してくれたじゃない?凄く嬉しかったわ。それにあの桜さんにも立ち向かうなんてレオが気に入るくらいだから、ただの学生じゃないとは思ってたけど…これからも兄さんをよろしくね」


あ…やっぱりこの人はレオの事ちゃんと好きなんだ。お世辞なんかでこんな困った様に笑うとか無いよね?


「ねぇ兄さん、凛仁寝た。重いんだけど」
「あぁ、今客室運ぶわ」


ミアさんに抱き着いたまま寝てしまう凛仁さんを引き離し、その場を離れたレオ。するとミアさんは笑顔で私に話し掛けてくれた。


「ねぇ莉緒ちゃん、私とお友達にならない?」
「えっ??」
「ダメかな?ほら、兄さんっていう共通の話題も有るしさ?」
「わ、私で良ければ…」
「やった♡私の事はミアって呼んで?」
「ミア…さん」
「ミーア!」
「わ、分かったミア」
「うん!OK!」


この日ミアさ…ミアは泊まる事になり私と一緒に寝室で眠るけど、レオともあんな風に明るく話せば良いのに…なんて考えが止まらず一睡も出来なかった。









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