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反抗期と彼の過去
悪夢
しおりを挟む文化祭の景品で貰えるはずのアイスクリームの商品券。それを貰う為だけに皆が力を合わせたが、私のクラスは学年2位の成績で終わる。あれだけ生徒から人気のイケメン教師が接客して何故2位なのか…クラス全員がレオにブーイングを投げ付けた。
そして1位だった隼人のクラス。
展示物がメインだった彼らのとった作戦は、人気俳優“須屋凛仁”のブロマイド写真配布と募金箱設置だった。
そんな中、今日も私はレオの家で彼の膝に座らされ宿題を見てもらってます。何故、膝の上かって?そりゃ私が文化祭でやらかしたからに決まってる。
もう1週間は経つと言うのに、未だに離してくれない綾城レオこと、レオ・グリシヤの独占欲と嫉妬心はとても強いのだ。
「……」
「おい莉緒聞いてんのか?」
「え?あっごめん何?」
「何じゃねぇよ、今寝かけてたろ」
「そんな事ないよ」
「はぁ…今日はもう終わりにするか」
「えぇ、大丈夫なのに」
「夜寝てねぇんだろ?そこで仮眠取っとけ。飯作ってくる」
そう言って私を膝から下ろしたレオは、キッチンへと向かい料理を始めた。時計を見ると19時を過ぎ、小さく欠伸した私はテーブルの上の勉強道具を片付ける事にした。
最近、寝不足が続いているのをレオは気付いている様だが理由までは聞いて来ないし、私も言うつもりは無かった。
けど最近、日にちが過ぎる度に家に来るのが次第に嫌になってきてるのは…寝不足の理由となってる悪夢のお陰だ。
レオが他の女性と抱き合う姿…勿論、未成年の私は手を出して貰えない。小さな檻の中でただ彼が女性を抱くのを眺めるだけの夢。
例え夢でも、レオが誰かを抱くのは嫌に決まってる…おかげで私は一睡も出来ずに居る。夜中まで起きてる事でコンビニで夜食も増えたし、こんな夢を毎日繰り返せば、彼には女なんて腐るほど居て…例え私が居なくても彼は直ぐに新しい人を見つけれる。
そんな気がしてしまうんだ…
「私にはレオしか居ないのに…」
思わず口から零れた独り言にレオは「なんか言ったか?」とコチラを振り向いた。悔しいけどアレだけ顔が整っていれば、女に不自由しないなんて当然か。
「何でもない」
そう言ってソファーに顔を埋めて寝転がった。悪夢を見る原因は自分で分かっていた…調べる気も無かったし見たくないと思ってたのに、私は「レオ・グリシヤ」を調べてしまったんだ。
分かってるだけでも20人以上の女性と関係を持ち、作品でもキスシーンやベッドシーン。彼の居た過去どれもが、私の知らない世界で何故レオの名前を調べてしまったのか…つくづく自分が嫌になる。
この日もいつも通り美味しいレオの手作りご飯を食べるも、喉を通らない私を心配する彼に家まで送って貰った。
翌日
「ーーと、山本ッ起きろ」
頭にゴツッと鈍い痛み…ゆっくりと顔を上げると、レオは少し怒った様子で「何寝てんだ」と文句を吐いた。
「痛かった」
「授業中に寝といて文句とは、いい度胸じゃねぇか」
「ちょっとうたた寝してただけじゃん」
「反抗期かお前は…ここの問題解いてみろ」
「え?」
「山崎、手を貸すなよ」
「はーい」
ヤバ…私どれだけ寝てたの?全然…ってか教科書2ページも進んでるっ!
「はい、先生」
「何だ」
「時間を巻き戻して。そしたら寝ない」
「アホが…もう良い後で職員室こい」
「えー」
「えぇじゃねェ。授業終わるまで、そのまま立ってろ」
「鬼っ!?」
「はい次、解けるやつ居るか?」
シカトされた!
結局、立ったまま残りの30分授業を受けた…我ながらよく頑張った。授業を終えレオが教室を出ると、私は大きな溜息を吐いて席に座った。
「莉緒、大丈夫か?」
「最近よく寝てるよね?」
「あー…うん夜寝れなくて」
「そうなの?顔色も良くないし綾城に言って保険室行ったら?」
「大丈夫」
学校で寝てる間、悪夢を見なかったのは不幸中の幸いだ。
「けど夜中まで起きて何してんだ?」
「特には、なんか寝れないだけだし」
「何かあったら相談乗るからね?」
「困った時は言えよ?」
「うん」
葵達の気使いはとても有難いけど隼人以外に友達が居なかった私は、こんな時どう頼れば良いのか分からない。そもそも二人はレオの事を知らないんだから、話そうにも難しい…。
行き場の無い気持ちを抱え机に伏せていると、教室の扉を開いた隼人は「莉緒居る?」なんて珍しく確認してくる。
「どうしたの?いつも聞かないのに」
「綾城先生が莉緒呼んで来いって、黙って待ってたら呼び出しすっぽかすから」
「行かないって言ったら?」
「校内放送で呼び出すって」
「うわぁ…綾城嫌い」
私の反応に笑った三人は「行ってらっしゃい」と手を振って私を教室から追い出した。今日はレオも不機嫌だし、あまり顔は見たくないけど…仕方ない。
「…で、何で体育館倉庫?」
「俺にも仕事あんだよ」
体育館の扉を閉め片付けをしながら「最近どうした」と話し始めるレオ。まぁ私がレオのご飯に食欲湧かない時点で、何かあると勘づいちゃうか…
「別に…ただ寝不足なだけ」
「家に来ても休もうとしねぇし、最近は飯も程々だよな?」
「……」
「聞いたぞ?坂島とのランニングもやってねぇんだって?」
「やる気出ない」
…心は凄くモヤモヤなのに、何で声だけでこんなに落ち着くんだろ。目の前にいつも居るだけなのに、なんか泣きそうになってくる…
「じゃあなんか怒ってんのか…って泣いてんのか?」
「泣いてないッ」
「はぁ、ただの反抗期って訳でもねェだろ。話してみろ」
「…ただの反抗期」
「そーかよ」
その後は何を問うでも無くて、ただ横でレオを眺めるのを黙認してくれた。
こんな自分じゃダメだ。
もっとちゃんと、一人で何でも出来るように頑張らないと…迷惑かけちゃダメだ。守られるだけじゃなくて、もっと大人の女性みたいにしっかりしないと…捨てられない為に努力しないと…
「ーーお、莉緒」
「え?」
「ボーっとしてねぇで、片付け終わったし職員室戻んぞ」
「……ねェレオ」
「ん?」
「好き」
「おう、ならもう泣くな。今日は夜手伝いもねぇし泊まり来て良いから、職員室で珈琲入れてくれ」
「でた最低教師…それ慰め?」
「話さねぇお前が悪いだろ。行くぞ」
「はーい」
流石に泊まらないって言うのは変か…
でもレオと居れば悪夢見なくて済むかも…?
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