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第41話 謎の女
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チート級の私の足で彼女に追い付くのはそう難しいことではなく、私たちは町から外れた廃墟のような場所に辿り着いた。
辺りは木々が生い茂り、人気もない。ただ家のなかを少しだけ覗くと、先程まで誰かがいたような跡が残っていた。
「……匂いが強い。この辺りにいそうね」
「そうなのか? 俺にはさっぱり分からないが」
すると、扉がゆっくりと開き、何者かが現れた。
思わず身構える私たちだったが、その姿を見て拍子抜けする。
長い黒髪を一つに束ね、質素なワンピースを纏った女性。
困惑したように私たちを見ていた。
「な、何なんですか……? あなたたちは……? 」
か細く震えるような声。
細身の彼女の体は小刻みに震えていた。
「えー、えっとその、怪しいものではありません。飼い犬を散歩させていまして」
「随分大きな飼い犬ですのね……」
この女は何者なのだろうか? グレンの反応を見るに、面識はないらしい。
しかしマザーの匂いを辿った先にいたこの女。疑っていないと言えば嘘になる。
「大きい犬でしょう? 珍しい種類なんですよ。散歩しているうちに森の奥に迷い混んでしまったみたいで。すみませんが町はどちらでしょう? 」
グレン……暗殺者の癖に意外と演技が下手だな。
「町ならこの道を真っ直ぐ行ったところですけど……もう暗いですし、今日はここで休んでいきませんか?」
ほんわりとした声、露出はほとんどないのにドキッとするような魅力を振り撒いている。
「あ、じゃ、じゃあ」
っておい! 何、行こうとしてるんだよグレン!
私が抗議の意味も込めて、軽く彼の腰の辺りを押すと、はっとしたように彼が言う。
「じゃれるなよ、別に俺が女にほだされる馬鹿ってわけじゃない」
ほんとかなー。と喋ると不審がられるので、じとっとした目でグレンを睨む私。
「ふふ、ワンちゃんはちょっと嫉妬してるみたいですね。ご主人様を取られてご機嫌斜め、かな? 」
「いやぁ~……嫉妬深いやつでして」
さっきより強くグレンの腰を叩く私。
誰がご主人様だ!! 私のご主人様はアステルだけだ!!!
……って、私何つまらないことでムキになってるんだろう。
反省反省。
と言っても、彼女を探ればマザーに辿り着くかもしれない。
ここは無害な飼い犬のフリをして、おとなしくしていよう。
「さぁどうぞ。丁度ご飯にしようと思っていたんです」
柔らかな笑みを浮かべる女。
私はそんな彼女に向かって、ワン! と吠えて見せた。
見てろよ、絶対にマザーに繋がるヒントを見つけてやる。
いくら優しい笑顔を浮かべたって、私の鼻は誤魔化せないんだから!
辺りは木々が生い茂り、人気もない。ただ家のなかを少しだけ覗くと、先程まで誰かがいたような跡が残っていた。
「……匂いが強い。この辺りにいそうね」
「そうなのか? 俺にはさっぱり分からないが」
すると、扉がゆっくりと開き、何者かが現れた。
思わず身構える私たちだったが、その姿を見て拍子抜けする。
長い黒髪を一つに束ね、質素なワンピースを纏った女性。
困惑したように私たちを見ていた。
「な、何なんですか……? あなたたちは……? 」
か細く震えるような声。
細身の彼女の体は小刻みに震えていた。
「えー、えっとその、怪しいものではありません。飼い犬を散歩させていまして」
「随分大きな飼い犬ですのね……」
この女は何者なのだろうか? グレンの反応を見るに、面識はないらしい。
しかしマザーの匂いを辿った先にいたこの女。疑っていないと言えば嘘になる。
「大きい犬でしょう? 珍しい種類なんですよ。散歩しているうちに森の奥に迷い混んでしまったみたいで。すみませんが町はどちらでしょう? 」
グレン……暗殺者の癖に意外と演技が下手だな。
「町ならこの道を真っ直ぐ行ったところですけど……もう暗いですし、今日はここで休んでいきませんか?」
ほんわりとした声、露出はほとんどないのにドキッとするような魅力を振り撒いている。
「あ、じゃ、じゃあ」
っておい! 何、行こうとしてるんだよグレン!
私が抗議の意味も込めて、軽く彼の腰の辺りを押すと、はっとしたように彼が言う。
「じゃれるなよ、別に俺が女にほだされる馬鹿ってわけじゃない」
ほんとかなー。と喋ると不審がられるので、じとっとした目でグレンを睨む私。
「ふふ、ワンちゃんはちょっと嫉妬してるみたいですね。ご主人様を取られてご機嫌斜め、かな? 」
「いやぁ~……嫉妬深いやつでして」
さっきより強くグレンの腰を叩く私。
誰がご主人様だ!! 私のご主人様はアステルだけだ!!!
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「さぁどうぞ。丁度ご飯にしようと思っていたんです」
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私はそんな彼女に向かって、ワン! と吠えて見せた。
見てろよ、絶対にマザーに繋がるヒントを見つけてやる。
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