8 / 46
第8話 いただきます
しおりを挟む
買い込んだ食材をテーブルに並べる。うん、これだけあれば一週間は持ちそうだ。
「食事なんて関係あるのか……? 」
怪訝そうな顔をするアステル。そんな彼に私は言ってやる。
「良いですか、アステル様? 今の貴方は痩せすぎだし、不健康ですよ」
確かに顔立ちは整っているが、パサパサの髪の毛にガリガリの体、病的なぐらい真っ白な肌がその美貌を台無しにしている。
「ふ、不健康……」
「そりゃ毎日そんなクッキーばかり食べてたらそうなるわよ。一応聞くけど……一日何食食べてる? 」
「……えっーと……一……」
「え? 」
「一日一食を食べたり食べなかったりかな……」
ほらみろ、まずはここから変えていかなければなるまい。
「今日から私が三食作るからちゃんと食べなさい」
「……でもお腹空かない」
「死にたくないんでしょ? 」
そう言うとアステルはこくんと頷いた。
素直でよろしい、そして私はキッチンに入ると前世の記憶を頼りに夕食を作り始めたのであった。
◇◇◇
「おお……!! 」
食卓に並べられたのはほかほかのご飯、味噌汁、豚のしょうが焼きに、おひたし。
……西洋ファンタジーには似つかわしくないものばかりだ。でも仕方ない、お洒落なおフレンチなんて私には作れないのだから。
というかそもそも王子様は味噌汁なんて飲むのだろうか……?
「凄いなステラ、どれも美味しそう」
「久々に作ったけど、私もまだ中々ね」
二人でいただきますと、手を合わせて食べ始める。
味噌汁を一口飲んだアステルが目を丸くした。
「美味しい……! これは何て言う料理なんだ? 」
「えーっと、味噌スープ? 」
「豚肉も美味しいし、これは……米? ステラは米を食べる文化だったのか」
「そうよ、この国の人はパンを食べるかもしれないけどね」
「俺たちはあまり米は食べないな。でも美味しい。この味噌スープには米の方が合ってるな」
パクパクと美味しそうに食べるアステル。お腹が空かないと言っていたので少な目に作っていたのだが、このままだとあっという間に完食してしまいそうだ。
「こら、野菜残さない」
おひたしだけそのまま残っていることに気がついた私はじろりと睨む。
「……バレた? 」
「栄養が偏った食事ばかりしてると死ぬわよ」
「死ぬ……!? 」
そう言うと顔色を変えたアステルは野菜を口に放り込んだ。うん、こう言えば何でも言うこと聞いてくれそうだ。
「……あ、美味しい」
「でしょ! 食わず嫌いは良くないよ」
お母さん直伝のおひたし!
これを不味いなんて言わせない。
……そしてアステルはあっという間に全ての料理を完食してしまった。
食後のフルーツを剥いていると、アステルが不意にぽつりと呟いた。
「誰かと食事をするなんて母が死んで以来初めてだ」
「え、そうなの」
と言っても私も前世以来か……。
「ああ、母が生きていた頃は手料理を食べていたが、亡くなってからはずっと適当に済ませてきた」
「そうなんだ……」
「だからありがとう、ステラ。久しぶりに誰かと食卓を囲むことが出来て嬉しい」
ふわっとした笑みを浮かべるアステル。おお、こうしてみるとやっぱりイケメンだ!
「気にしないで、これが私のお仕事なんだから」
「そうだな」
これで食事問題は解決!!
……後は。
「で、アステル、その長すぎる髪切った方が良いわよ」
「え!? 」
「前髪長すぎだし、髪もボサボサ。まさかとは思うけどちゃんとお風呂入ってるでしょうね」
ギクッとした表情で目をそらすアステル。
「シャワーだけで済ませたりしてないでしょうね」
「……」
沈黙は同意と取るぞ。
「それ食べたらお風呂行きましょう、身なりは大事よ」
嫌がるアステルを引きずって私はアステルをお風呂に連れていったのだった。
「食事なんて関係あるのか……? 」
怪訝そうな顔をするアステル。そんな彼に私は言ってやる。
「良いですか、アステル様? 今の貴方は痩せすぎだし、不健康ですよ」
確かに顔立ちは整っているが、パサパサの髪の毛にガリガリの体、病的なぐらい真っ白な肌がその美貌を台無しにしている。
「ふ、不健康……」
「そりゃ毎日そんなクッキーばかり食べてたらそうなるわよ。一応聞くけど……一日何食食べてる? 」
「……えっーと……一……」
「え? 」
「一日一食を食べたり食べなかったりかな……」
ほらみろ、まずはここから変えていかなければなるまい。
「今日から私が三食作るからちゃんと食べなさい」
「……でもお腹空かない」
「死にたくないんでしょ? 」
そう言うとアステルはこくんと頷いた。
素直でよろしい、そして私はキッチンに入ると前世の記憶を頼りに夕食を作り始めたのであった。
◇◇◇
「おお……!! 」
食卓に並べられたのはほかほかのご飯、味噌汁、豚のしょうが焼きに、おひたし。
……西洋ファンタジーには似つかわしくないものばかりだ。でも仕方ない、お洒落なおフレンチなんて私には作れないのだから。
というかそもそも王子様は味噌汁なんて飲むのだろうか……?
「凄いなステラ、どれも美味しそう」
「久々に作ったけど、私もまだ中々ね」
二人でいただきますと、手を合わせて食べ始める。
味噌汁を一口飲んだアステルが目を丸くした。
「美味しい……! これは何て言う料理なんだ? 」
「えーっと、味噌スープ? 」
「豚肉も美味しいし、これは……米? ステラは米を食べる文化だったのか」
「そうよ、この国の人はパンを食べるかもしれないけどね」
「俺たちはあまり米は食べないな。でも美味しい。この味噌スープには米の方が合ってるな」
パクパクと美味しそうに食べるアステル。お腹が空かないと言っていたので少な目に作っていたのだが、このままだとあっという間に完食してしまいそうだ。
「こら、野菜残さない」
おひたしだけそのまま残っていることに気がついた私はじろりと睨む。
「……バレた? 」
「栄養が偏った食事ばかりしてると死ぬわよ」
「死ぬ……!? 」
そう言うと顔色を変えたアステルは野菜を口に放り込んだ。うん、こう言えば何でも言うこと聞いてくれそうだ。
「……あ、美味しい」
「でしょ! 食わず嫌いは良くないよ」
お母さん直伝のおひたし!
これを不味いなんて言わせない。
……そしてアステルはあっという間に全ての料理を完食してしまった。
食後のフルーツを剥いていると、アステルが不意にぽつりと呟いた。
「誰かと食事をするなんて母が死んで以来初めてだ」
「え、そうなの」
と言っても私も前世以来か……。
「ああ、母が生きていた頃は手料理を食べていたが、亡くなってからはずっと適当に済ませてきた」
「そうなんだ……」
「だからありがとう、ステラ。久しぶりに誰かと食卓を囲むことが出来て嬉しい」
ふわっとした笑みを浮かべるアステル。おお、こうしてみるとやっぱりイケメンだ!
「気にしないで、これが私のお仕事なんだから」
「そうだな」
これで食事問題は解決!!
……後は。
「で、アステル、その長すぎる髪切った方が良いわよ」
「え!? 」
「前髪長すぎだし、髪もボサボサ。まさかとは思うけどちゃんとお風呂入ってるでしょうね」
ギクッとした表情で目をそらすアステル。
「シャワーだけで済ませたりしてないでしょうね」
「……」
沈黙は同意と取るぞ。
「それ食べたらお風呂行きましょう、身なりは大事よ」
嫌がるアステルを引きずって私はアステルをお風呂に連れていったのだった。
0
お気に入りに追加
2,472
あなたにおすすめの小説
転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです
狼蝶
恋愛
転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?
学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
異世界細腕奮闘記〜貧乏伯爵家を立て直してみせます!〜
くろねこ
恋愛
気付いたら赤ん坊だった。
いや、ちょっと待て。ここはどこ?
私の顔をニコニコと覗き込んでいるのは、薄い翠の瞳に美しい金髪のご婦人。
マジか、、、てかついに異世界デビューきた!とワクワクしていたのもつかの間。
私の生まれた伯爵家は超貧乏とか、、、こうなったら前世の無駄知識をフル活用して、我が家を成り上げてみせますわ!
だって、このままじゃロクなところに嫁にいけないじゃないの!
前世で独身アラフォーだったミコトが、なんとか頑張って幸せを掴む、、、まで。
異世界の美醜と私の認識について
佐藤 ちな
恋愛
ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。
そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。
そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。
不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!
美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。
* 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる